耳鼻と臨床
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37 巻, 6 号
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  • 小川 晃弘, 後藤 昭一, 明海 国賢, 滝口 峻, 浅野 拓, 真鍋 武聰
    1991 年 37 巻 6 号 p. 1359-1363
    発行日: 1991/11/20
    公開日: 2013/05/10
    ジャーナル フリー
    反復する大量鼻出血症例に遭遇した場合, 動脈瘤からの出血を忘れてはならない. とくに頭蓋内内頸動脈瘤からの出血の場合診断が遅れたり, 適切な治療がなされないと重大な結果をきたすこととなる. 今回我々は当初外頸動脈系からの出血を疑って治療したが鼻出血を反復し, 脳血管撮影により内頸動脈瘤が海綿静脈洞内に存在することが判明した1症例を経験した. 一般にこの部位の動脈瘤が鼻出血単独で発症することは殆どない. この稀なる内頸動脈瘤の1症例を診断と治療を中心に報告した.
  • 安田 宏一
    1991 年 37 巻 6 号 p. 1364-1374
    発行日: 1991/11/20
    公開日: 2013/05/10
    ジャーナル フリー
    P. Ménièreは, その症例の中に, しばしば失神があったと記載している. はたしてメニエール病患者に失神が起こるか否かについて検討した.
    1980年から1989年の10年間にわが科を受診したメニエール病患者の中に, 失神したと言った症例が16例あった. これはメニエール病患者の0.4%に相当すると推定した.
    16例中3例には, 失神の原因とみられる器質的病変が見つかり, それぞれ脳梗塞, Adams-Stokes症候群, てんかんと診断された. 残る13例には器質的病変は見出せなかった. しかし発作の起り方や失神時の検査結果から, 血管迷走神経失神7例, 起立性低血圧6例と考えた. 失神後最初の受診日に, 眼振-偏倚に異常を示したものが15例 (94%) あった. 中枢性めまいを疑わせる所見, すなわち特殊な眼振, dysdiadochokinesis, 第八以外の脳神経症状は全くなかった.
    結論として, めまいはメニエール病の発作であり, 失神は脳梗塞, Adams-Stokes症候群, てんかん, 血管迷走神経失神, 起立性低血圧などであると考えた.
  • 劉 以誠, 持松 いづみ, 宮田 佳代子, 澤木 修二, 佃 守
    1991 年 37 巻 6 号 p. 1375-1382
    発行日: 1991/11/20
    公開日: 2013/05/10
    ジャーナル フリー
    NPC 17例について抗EBV抗体価を検討し, また免疫能を末梢血リンパ球subset, リンパ球絶対数などのパラメーターを用いて検討し, つぎの結論を得た.
    (1) 抗VCA-IgG抗体価は, NPC群において他の頭頸部癌群や健康者群に比べ有意に高く, NPCの診断の一つの指標として有用である.
    (2) NPC症例のEBV関連の各抗体価を検討したところ, 治療によく反応した予後のよい症例では, 病態の寛解に伴つて正常化したが, 転移により全身状態が悪化した症例では, 上昇していた. 抗体価の変動は臨床像とよく相関することを示し, これらの抗体価の経時的測定はNPCの経過観察に不可欠であることが認められた.
    (3) NPC患者のリンパ球subsetでは, OKT 4値の低下, OKT 8値の増加が著しく, ひいてはOKT 4/8比が著明に低下し, Leu lla値も有意な低下を認めた.
    (4) 以上の結果により, NPC患者の免疫能は明らかに低下し, 免疫療法を含む全身的治療が重要であると考えられた.
  • 安田 知久, 西平 修, 益田 明典, 小宮山 荘太郎, 上村 卓也
    1991 年 37 巻 6 号 p. 1383-1388
    発行日: 1991/11/20
    公開日: 2013/05/10
    ジャーナル フリー
    副咽頭間隙腫瘍は稀な疾患であり, 当教室では過去10年間に15例が認められた.
    咽頭, 顎下, 耳下の腫脹を来して来院した例が11例, 耳下部痛に顔面神経麻痺を伴ったもの2例, 咽頭痛に耳痛を伴うもの1例, 舌, 頸部のしびれをきたしたもの1例であった.
    病理診断は, 唾液腺由来11例 (多形腺腫6例, 粘表皮癌2例, 腺癌, 腺様嚢胞癌, 未分化癌各1例), 神経由来2例, 不明1例であった.
    腫瘍の部位と造影効果から, CTにより術前の病理組織学的な推測も可能である.
    手術法は, 腫瘍が内頸動脈より内側であり良性が考えられる場合は口内法が, また外側であれば十分な視野が得られより安全である外頸法が選択される. ダンベルタイプであれば, 耳下腺腫瘍に準じて経耳下腺法が選択される.
  • Open cavity耳に対する
    児玉 章, 山本 信和, 井上 敬子, 川島 悦子, 黒田 令子
    1991 年 37 巻 6 号 p. 1389-1394
    発行日: 1991/11/20
    公開日: 2013/05/10
    ジャーナル フリー
    上鼓室・乳突洞が開放創となっている術後耳11耳と自然根治耳2耳に対して, 上鼓室・乳突洞形成をおこない再含気化をはかる全中耳再建手術をおこなった. 各症例について, 術前の自覚症状, 中耳病変, 耳管通気度, さらに術前, 術後の耳鏡所見, 平均聴力について調べた.
    術後, 耳漏の再発をみた例はなく, また, 聴力改善手術がおこなえた10例中7例は40dB以内の術後聴力がえられた. 耳管機能が不良な7例中2例に術後の鼓膜に部分的内陥癒着がみられ, 今後の問題点として残った.
  • 藤田 浩志, 山本 英一, 折田 洋造
    1991 年 37 巻 6 号 p. 1395-1398
    発行日: 1991/11/20
    公開日: 2013/05/10
    ジャーナル フリー
    胃潰瘍手術に対する全身麻酔の気管内挿管時に, 喉頭蓋に発生した巨大乳頭腫が偶然発見され, そのために挿管ができず手術を中止した症例を経験したので報告した. 全身麻酔時の咽喉頭病変の有無の検討の重要性と挿管困難症例に遭遇した時の“勇気ある撤退”を強調した
  • 吉鶴 博生, 田中 克彦, 栗原 秀雄, 西尾 正道, 藤田 昌広
    1991 年 37 巻 6 号 p. 1399-1402
    発行日: 1991/11/20
    公開日: 2013/05/10
    ジャーナル フリー
    1. 耳下腺, 頸部リンパ節転移を来した70歳女性のマイボーム腺癌の1例について報告した.
    2. 治療は耳下腺全摘, 頸部郭清術, 左眼摘および上下眼瞼切除を施行し, 術後照射を行った.
    3. 眼瞼の1次リンパ節は耳前部リンパ節であり, 下眼瞼では顎下リンパ節に向かう. そのためリンパ節転移を認めた場合には, 耳下腺摘出を含めた頸部郭清が必要となると思われた.
    4. 病理組織診断では脂肪染色 (ズダンIII) が有用であった
  • 最高語音明瞭度の変化から見た分析
    梅田 悦生, 植松 美紀子, 吉岡 博英
    1991 年 37 巻 6 号 p. 1403-1407
    発行日: 1991/11/20
    公開日: 2013/05/10
    ジャーナル フリー
    塩酸ビフェメランの老人性難聴に対する効果の有無を確認すべく, 難聴を自覚する外来患者49例に対して同薬剤の臨床応用を実施した. 対象は年令は61歳から85歳, 平均71歳. 性別は男性19例, 女30例. 方法として塩酸ビフェメランを一日量3錠分3として, 1カ月から18カ月, 平均7カ月間投与した. その結果,(a) 純音聴力検査では, 聴力レベルの変化はない,(b) 語音明瞭度検査では最高語音明瞭度はより高齢者において4カ月を越えて薬物投与した群において改善率が高い傾向にあった,(c) 数字では表わしにくい, 日常生活での改善が認められた.
  • 田村 悦代, 池田 真, 北原 哲, 小倉 雅實, 福田 宏之, 井上 鐵三
    1991 年 37 巻 6 号 p. 1408-1413
    発行日: 1991/11/20
    公開日: 2013/05/10
    ジャーナル フリー
    注入用コラーゲンは, 声門閉鎖不全疾患に対する非観血的音声改善療法としての声帯内注入療法に応用されるようになったが, コラーゲンが, 異種タンパク質由来である以上, 臨床上, 生体に対する免疫活性に関しての不安は, 皆無ではない. われわれは, シリコン・オイルの声帯内注入の既往があり, コラーゲン注入後に声帯粘膜の著しい発赤を生じた症例を経験した.
    そこで, コラーゲンの抗原性の有無, およびコラーゲンの抗原性に対してシリコン・オイルが関与しているか否か, マウスを用い, 遅延型アレルギー反応をin vitroにマクロファージ遊走阻止試験法にて検討した.
    コラーゲン単独注入のマウスで, コラーゲンを抗原とした遅延型アレルギーが成立し, シリコン・オイルとの組合せにより, より強い反応を認めた.
    以上により, コラーゲンの抗原性が確認されたと同時に, シリコン・オイルにより, 増幅される可能性があり, コラーゲンの声帯内注入術施行に際し, 既往および家族歴における自己免疫疾患の有無のみならず, シリコン・オイルの声帯内注入術の既往にも注意をはらうべきと考えられた.
  • その考え方について
    五十嵐 眞
    1991 年 37 巻 6 号 p. 1415-1418
    発行日: 1991/11/20
    公開日: 2013/05/10
    ジャーナル フリー
    人体が未経験の宇宙微小重力環境に入った際, 身体各系は直ちにその新状況に適応を開始するが, その過程で数多くの問題が発生してくる. そのうち前庭及び中枢神経系や, 心循環器系に関連したものが初期に発生するトラブルとして良く知られているが, 宇宙よい (Space Motion Sicknessi) 2) 3) 4) 又はSpace Adaptation Syndrome) は微小重力環境に入った最初の3日前後にわたって体験され, 全宇宙飛行士の約30%がその終末点である嘔吐に至つている. この宇宙よいに関しては既に数多くの報告がなされているので, 今回は反復をさけて問題点の幾つかに焦点をしぼって討論してみたい.
  • 中沢 洋一
    1991 年 37 巻 6 号 p. 1419-1425
    発行日: 1991/11/20
    公開日: 2013/05/10
    ジャーナル フリー
    最初に, 24時間周期の生物リズムに関する研究の歴史を簡単に述べた. 重要な発見はすでに260年前に天文学者によつて行われたが, ゲッシ類のリズムの発振器が脳内の部位に同定されたのは約20年前にすぎない. ヒトのリズム現象が生体の機能や病態と関連していることが分かってきたのは, もっと最近のことである. ヒトも動物も, 睡眠・覚醒と深部体温のリズムはともに24時間の周期を示し, 正常な環境下では両者の位相は一定している. しかし両者の自由継続リズム (内因性の周期) には違いがあるので, 時刻の手掛かりが得られない環境下ではリズムの位相にずれが起こり, 健康に障害が起こることもある. 時差ぼけや頻回の交代勤務による心身の障害も, 同じ機序で起こる. 最後に, 我々の教室ではビタミンB12が明暗周期に対するラットのリズムの再同調を促進することを証明したので, それについて簡単に述べた.
  • 野末 道彦
    1991 年 37 巻 6 号 p. 1426-1430
    発行日: 1991/11/20
    公開日: 2013/05/10
    ジャーナル フリー
    めまいと神経血管圧迫症 (以下NVC) との関係は未だ明確でない. しかしすでにいくつかの報告があり, 我々も9例経験している.
    今回報告する第1例はメニエール病様の症状を, 第2例は良性発作性頭位めまい症の症状を示した. 2例とも神経と血管の圧迫をとる手術でめまいは改善した. 他の例の手術結果もめまいに対しては良好であった. 一方ネコにおいて前下小脳動脈と内耳動脈の血行をそれぞれ遮断して, 蝸電図APの変化をみると, 前下小脳動脈では, 軽度の一過性のAPの変化が認められた. これに対して内耳動脈の血行遮断では, 急速でより明瞭なAPの消失をみた, 以上のような臨床経験ならびに動物実験の結果から, 第8脳神経のNVCでめまいが発症する機序について考察した. 多くのめまい疾患の原因が不明である現在, NVCはめまい発症機序を考える上で興味深い問題であることを述べた.
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