注入用コラーゲンは, 声門閉鎖不全疾患に対する非観血的音声改善療法としての声帯内注入療法に応用されるようになったが, コラーゲンが, 異種タンパク質由来である以上, 臨床上, 生体に対する免疫活性に関しての不安は, 皆無ではない. われわれは, シリコン・オイルの声帯内注入の既往があり, コラーゲン注入後に声帯粘膜の著しい発赤を生じた症例を経験した.
そこで, コラーゲンの抗原性の有無, およびコラーゲンの抗原性に対してシリコン・オイルが関与しているか否か, マウスを用い, 遅延型アレルギー反応を
in vitroにマクロファージ遊走阻止試験法にて検討した.
コラーゲン単独注入のマウスで, コラーゲンを抗原とした遅延型アレルギーが成立し, シリコン・オイルとの組合せにより, より強い反応を認めた.
以上により, コラーゲンの抗原性が確認されたと同時に, シリコン・オイルにより, 増幅される可能性があり, コラーゲンの声帯内注入術施行に際し, 既往および家族歴における自己免疫疾患の有無のみならず, シリコン・オイルの声帯内注入術の既往にも注意をはらうべきと考えられた.
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