耳鼻と臨床
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38 巻, 2 号
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  • 古謝 静男, 長田 紀与志, 渡口 明, 滝澤 義和
    1992 年 38 巻 2 号 p. 75-78
    発行日: 1992/03/20
    公開日: 2013/05/10
    ジャーナル フリー
    左上顎洞に発生した血管外皮腫 (hemangiopericytoma) の1例を経験した. 本腫瘍は毛細血管周囲を取りまく血管外皮細胞から発生する腫瘍で稀であり, 本邦では10例が報告されている. 腫瘍は左上顎洞から左鼻腔に進展し, 左鯖骨洞にもおよんでいた. 病理学的確定診断の後, 栄養動脈である左上顎動脈の塞栓術を施行し, 外科的切除, 術中照射および術後照射を行つた. 鼻・副鼻腔に発生した本腫瘍の予後は必ずしも良好ではない。本症例は術後10ヵ月を経過しているが, 腫瘍の再発を認めていない. 今後厳重な経過観察を要すると考えられる.
  • 鼻過敏症患者の血清補体
    入船 盛弘, 荻野 敏, 原田 保, 松永 亨
    1992 年 38 巻 2 号 p. 79-85
    発行日: 1992/03/20
    公開日: 2013/05/10
    ジャーナル フリー
    炎症と深く関係する補体が, 鼻アレルギーを代表とする鼻過敏症と実際にどの様に関わるかを調べるため, 鼻過敏症患者の血清補体価 (CH50), C3, C4を測定し, 臨床的な背景及び成績との関係を検討した.
    その結果, 血清補体の各値は検査時年齢に従い上昇する傾向がみられた. また罹病期間の長い例ほど高値を示す傾向があつた. 20才から39才の成人例のうちハウスダスト鼻アレルギー例では, C4値が罹病期間20年以上の長期例ほど, それ以下の罹病期間例に比べて有意に高値を示した. また罹患年数とC4値の間に有意な相関を認めた. しかしながら, スギ花粉症例では上記の関係は認められなかつた. 副鼻腔X線検査結果と血清補体各値の関係から, 鼻過敏症患者において (特にハウスダスト鼻アレルギー例において), 副鼻腟炎の存在が血清補体と関係することが考えられた.
  • 測定法の妥当性と簡易測定法の検討
    杉浦 友昭, 大崎 勝一郎, 藤村 哲也, 田村 耕三, 中桐 伸五
    1992 年 38 巻 2 号 p. 86-93
    発行日: 1992/03/20
    公開日: 2013/05/10
    ジャーナル フリー
    自覚的耳鳴に対する7音音階ピッチ・マッチ検査の測定基準の妥当性を検討した.
    各症例 (18例) は, 一度の検査で連続10回の測定を行つた. これらの測定値の中で, 最頻値とこれに全音または半音隣接する測定値を加えた両者の占有率が70%以上となつた症例は全例にみられた. 本検査法尺度の最小単位幅 (全音または半音) を生理的変動とみなすとき, 測定値の再現性は十分であると考えられた. そこで10測定値を6種類に分類し, これらと最頻値の一致率を検討したところ, 2回の予備検査後の測定値のうち, 連続2回以上同一となった測定値 (A), および連続しなくとも最初に2回同一となった測定値 (B) の最頻値との一致率は他の測定値よりも高率 (94%, 89%) であつた. 現在, 本検査法の実施においては, 測定値Aを耳鳴ピッチの近似周波数として採用しているが, この測定基準は妥当なものであり, 一方測定値Bも簡易測定法として採用しうると思われる.
  • 柊山 幹子, 松浦 宏司, 永田 祐子, 森満 保
    1992 年 38 巻 2 号 p. 94-99
    発行日: 1992/03/20
    公開日: 2013/05/10
    ジャーナル フリー
    内耳の電気刺激によつて生じる聴覚心理学的反応を明らかにするため, 知覚の表現が対側耳の聴覚との比較によつて容易と思われる一側聾12耳にプロモントリーテストを行つた. その結果, 9耳に明らかな音感覚が生じ, 残りの3耳に音なのか音でないのか表現困難な感覚が生じた. 刺激周波数あるいは刺激強度が増加したとき, 7耳に痛覚などの体性感覚が生じた. 不快域値は音が大きすぎる場合と痛覚などの感覚が生じる場合の 2種類であつた. また, パルス周波数別のピッチ感覚の差は非常に小さく, その識別はこのような対象者にとつて容易でないと推察された.
    表現困難な感覚を生じた3耳は長期失聴の原因不明一側聾と両側性特発性難聴であつた. 人工内耳の適応決定にあたつて失聴原因の明確な耳は, プロモントリーテストが同等に陽性と判断されても失聴原因の不明確な耳より手術の適応性が高いことが示唆された.
  • 益田 宗幸, 有馬 敏夫, 新里 祐一, 池田 佳充, 小宮山 荘太郎
    1992 年 38 巻 2 号 p. 100-106
    発行日: 1992/03/20
    公開日: 2013/05/10
    ジャーナル フリー
    電子顕微鏡, 並びに免疫組織化学染色による検索により, Spindle cell carcinomaの主な成分である紡錘形細胞は, 上皮由来のcarcinomaと考えられるようになり, また, 光顕レベルのヘマトキシリン・エオジン染色のみでは分類不能であつたmonophasic spindle cell tumor (紡錘形細胞のみで扁平上皮癌成分の混在を認めない) の中に, Spindle cell carcinomaが含まれることが明らかになつた. この結果, monophasic spindle cell carcinomaという新しい分類が生まれ, 本腫瘍の診断基準が変化しつつある. 今回, われわれは喉頭に発生したmonophasic spindle cell carcinomaの一例を経験し, 本腫瘍の, 若干の混乱がある診断基準の整理を試みた.
  • 古川 實人, 鮫島 靖浩, 犬童 直哉, 田中 英一, 石川 哮
    1992 年 38 巻 2 号 p. 107-110
    発行日: 1992/03/20
    公開日: 2013/05/10
    ジャーナル フリー
    頸部より喉頭にまで進展し, 著明な呼吸困難をきたした叢状神経線維腫の稀な1例を報告した. 頸部腫瘍の中で神経原性腫瘍は多くはなく, その大部分は神経鞘腫で, 神経線維腫は更に少ない. 叢状神経線維腫は神経線維腫の1型であるが, その多くがvon Recklinghausen病の1症状としてみられ, 単発性のものは少ない. 本腫瘍の肉眼的及び病理学的所見より, von Recklinghausen病に随伴しない叢状神経線維腫と診断した.
    腫瘍は完全に摘出され, 神経の脱落症状を呈さなかつた.
  • 古謝 静男, 平良 章
    1992 年 38 巻 2 号 p. 111-116
    発行日: 1992/03/20
    公開日: 2013/05/10
    ジャーナル フリー
    1986年1月から1988年9月までに琉球大学医学部耳鼻咽喉科で根治的頸部郭清術を施行された43例を対象に観察を行つた.
    1. 臨床的触知リンパ節腫大と病理学的転移リンパ節の一致率53, 5%で, 臨床的評価が過少評価になつたものが34.9%, 過大評価になつたものが11.6%であつた.
    2. 病理学的転移リンパ節の数が多い程, また転移リンパ節のレベルが進行する程, 術後頸部再発する傾向にあつた.
    3.43例中12例 (27.9%) に術後合併症が生じ, 縦隔炎を生じた1例は縦隔炎が原因で死亡した.
    4. 頸部郭清術を厳密に行い, 再発をなくすると同時に, 術後合併症の予防に努めるべきと考えられた.
  • 谷垣内 由之, 村井 信之, 早田 寛紀, 馬場 廣太郎
    1992 年 38 巻 2 号 p. 117-123
    発行日: 1992/03/20
    公開日: 2013/05/10
    ジャーナル フリー
    耳下腺定型手術において, 顔面神経主幹露出の困難であつた2症例について検討を行つた.
    術前診断では, 2例とも深葉腫瘍と診断された. 手術所見では, 2例ともに顔面神経主幹の部で, 腫瘍は神経の外側に位置していた. 腫瘍は深葉に原発し, 主幹部で浅葉側に大きくなつたものと思われた. CT-MRI検査をみると, 腫瘍は, 下顎骨と乳様突起・茎状突起の間に存在し, 茎乳突孔を中心に上下に広く深葉部を占拠していた. 内側には耳下腺陰影はなく, 外側に浅葉の陰影を認めた.
    このような所見を示す場合, 末梢での神経露出も考え手術に臨むべきであると考えられる. 末梢での発見は, 下枝において最も容易であると思われた.
  • 茶園 篤男, 渡辺 徳武, 鈴木 正志, 茂木 五郎
    1992 年 38 巻 2 号 p. 124-127
    発行日: 1992/03/20
    公開日: 2013/05/10
    ジャーナル フリー
    15歳男児の顎下型ガマ腫の1症例を経験した. CTでは左顎舌骨筋外側に境界明瞭な low density腫瘤陰影が存在し, 顎舌骨筋内には, 嚢胞の導管を思わせる円形low density 像を認め, 顎下部の嚢胞と舌下腺との連続性を疑わせた. 顎下部切開により舌下腺の一部と共に嚢胞を摘出した. 嚢胞は被覆上皮を有さない偽嚢胞で, 顎舌骨筋裂隙を通つて顎下部に進展していた. 術後15か月を経過した現在まで再発を認めていない. 診断には CTが有用であつた. 顎舌骨筋の先天性裂隙は正常人の約30%に見られ, これが本症の発生原因として考えられた. 本症のほとんどが被覆上皮を持たない偽嚢胞であることより, 本症の治療においては嚢胞のみの摘出では不十分で, 舌下腺を含めた処置が必要である. 本報告例でも舌下腺の一部を含めた嚢胞摘出術を行い経過良好である.
  • 岡部 陽三, 伊藤 真人, 長山 郁生, 古川 仭
    1992 年 38 巻 2 号 p. 128-130
    発行日: 1992/03/20
    公開日: 2013/05/10
    ジャーナル フリー
    58歳, 女性の左外耳道癌に対して拡大中耳根本術を行つた. 手術時, 顔面神経の走行異常を認めた. 顔面神経は垂直部において浅い位置を走行する細い枝と, 通常の位置を走行する太い枝の2本に分岐していた. 鼓索神経は細い枝から分岐していた. この細い枝は術中切断されたが顔面神経麻痺は来さなかつた. 顔面神経の側頭骨内異常分岐について文献的検討を加えた.
  • 井野 素子, 松山 浩吉, 中川 のぶ子, 加藤 真子, 渡辺 尚代, 金子 明弘, 井野 千代徳
    1992 年 38 巻 2 号 p. 131-134
    発行日: 1992/03/20
    公開日: 2013/05/10
    ジャーナル フリー
    下口唇嚢胞219例につき検討した. 性差, 年齢分布は, 今日までの報告と同様に, 女性に多く, 若年者に集中していた. 口腔外科医よりの報告との比較では, 大筋において一致したが, 症例の年齢分布に若干の相違を認めた. Blandin-Nuhn腺嚢胞, ranulaについても調べたが, 女性に多く, 若年者に集中する傾向は同じであつた. これらの事実は mucoceleの一種である下口唇嚢胞の発生に, 局所的要因のみならず全身的な要因の関与を示唆した. 病悩期間と組織所見との関係は明確ではなかつたが, これは下口唇嚢胞の初期においては, 無意識に経過する症例, 軽快再発を繰り返す症例が存在するためと考えた. 0-9才, 40才以上の症例は, 病悩期間が比較的短いものが多く, これは, 0-9才においては, 親が早期受診に関与し, 40才以上では腫瘍性病変を疑うためと考えた.
  • -九州地区24施設における共同プロトコールによる抗アレルギー剤併用群との比較試験成績-
    大山 勝, 石川 哮, 茂木 五郎, 上村 卓也, 森満 保, 宗 信夫, 家守 千鶴子, 本多 一至, 山本 智矢, 伊藤 正博, 岩元 ...
    1992 年 38 巻 2 号 p. 135-163
    発行日: 1992/03/20
    公開日: 2013/05/10
    ジャーナル フリー
    九州地区24施設の耳鼻咽喉科において鼻アレルギー患者96名, 血管運動性鼻炎患者20 名計116名を対象に共同プロトコールによるフルブロンの臨床試験を行つた. 対象患者はフルブロン単独投与例とフルブロンに抗アレルギー剤併用投与例とした. 全般改善度において2週後の改善率は“やや有効”以上の効果を含めて, 単独群80.4%, 併用群81.3% で両者間に有意差は認めなかつた. 臨床症状の推移については, すべての群において症状の有意な改善が認められた (p<0.05). 副作用は単独群で2例, 併用群で2例の計4例にみられたが, いずれの副作用症状も軽度なものであつた. 有用度においては, 単独群 76.7%, 併用群78.6%で両者間に有意差は認められなかつた. 今回の結果より, フルブロンは単独投与により鼻アレルギー, 血管運動性鼻炎の症状を改善し, また, 抗アレルギー剤と併用した場合でも臨床上問題となる副作用のみられないことが判明した.
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