耳鼻と臨床
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38 巻, 4 号
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  • 平 俊明, 小宗 静男, 井上 裕章, 上村 卓也
    1992 年 38 巻 4 号 p. 459-463
    発行日: 1992/07/20
    公開日: 2013/05/10
    ジャーナル フリー
    1979年Tosが報告したobliterative otitis mediaと臨床像がよく一致する, 4症例を経験した. 鼓膜所見では, 穿孔や耳漏はなく, 多くの症例に軽度の陥凹が認められた. ティンパノグラムは, B型を示した. 耳X線写真では, 乳突蜂巣の発育は, きわめて不良であつた. 手術所見では, 線維性組織や小嚢胞が石灰化や硝子化を伴わずに増殖し, 中耳腔を充たしているのが特徴的であつた. 4症例とも手術にて聴力の改善は認められなかつた.
  • 古謝 静男, 長田 紀与志, 神谷 聰, 知念 信雄
    1992 年 38 巻 4 号 p. 464-468
    発行日: 1992/07/20
    公開日: 2013/05/10
    ジャーナル フリー
    1) 1980年から1984年の5年間に当科を訪れた喉頭癌患者は61例で, そのうち47例について分析を行つた.
    2) 年齢別では60代に多く, 部位では声門癌の頻度が最も高かつた.
    3) 47例の治療成績は, 5年粗生存率72%で, その内訳はStage I 93%, Stage II 78%, Stage III 67%, Stage IV 46%であつた.
    4) 局所再発を減少させること, およびStage II症例に対する治療成績向上が今後の課題と考えられた.
  • 中野 富夫, 安 宗超
    1992 年 38 巻 4 号 p. 469-472
    発行日: 1992/07/20
    公開日: 2013/05/10
    ジャーナル フリー
    下垂体腫瘍 (pituitary tumor) の治療としては手術, 放射線療法などが知られている. しかし, 手術による再発や死亡率は欧米諸家の報告によれば極めて高い. いかなる治療でも, 生存期間の5年以上の経過を見なければ, 健康で長寿が治療の目的であるので慎重に考えると療法や術効果の信頼性は薄れよう. 放射線療法では外部からの脳内下垂体への多量照射ではなく, トルコ鞍内に直接少量のβ線を放出するisotope液の挿入法が, 欧・米では効果が良いと報じられている. しかし本法は何故か未だ遠隔成績が得られていない.
    われわれの教室では経鼻・蝶形骨洞穿刺により, トルコ鞍内でβ線源量isotope32P液挿入法を実施してきた. 26歳, 男性, 下垂体腺腫 (pituitary adenoma) の患者に本法を実施し4年後に失明は恢復した. 遠隔成績として6年半後の必要検査やCTでも腫瘍像は消失していた. 9年半後の現在も再発の兆しは全く認めていないので報告した.
  • 伊牟田 美晴, 笠野 藤彦, 永井 知幸
    1992 年 38 巻 4 号 p. 473-475
    発行日: 1992/07/20
    公開日: 2013/05/10
    ジャーナル フリー
    1. 経蝶形骨洞的下垂体術後に生じた, 蝶形骨洞嚢胞 (粘液膿胞) を経験した.
    2. 嚢胞の成因として, 経蝶形骨洞的下垂体手術による洞自然口の閉塞が考えられた.
    3. CTでは, mass legionと周囲骨組織との関係は明瞭であるが, その病変が腺腫の再発か, 嚢胞か, あるいは術後の肉芽なのかは不明であつた.
    4. mass legionの質的診断には, CTよりMRIのほうが有用であり, とくにT1強調画像は下垂体周辺の描出に優れていた.
    5. 粘液嚢胞は, T1, T2画像共に高信号に描出された.
  • 電気生理学的および組織学的検討
    高橋 国広, 松島 純一, 熊谷 雅彦, 犬山 征夫, 伊福部 達
    1992 年 38 巻 4 号 p. 476-480
    発行日: 1992/07/20
    公開日: 2013/05/10
    ジャーナル フリー
    正円窓膜上に置く人工内耳用電極の被覆に使用する高含水ゴムの安定性について検討した. 6カ月間および1年間モルモットの正円窓膜上に高含水ゴムを留置し, 蝸牛と電極のインピーダンスを調べたところ, 経年による電気生理学的な変化は認められなかつた. 組織学的にも, 高含水ゴム, 正円窓膜およびその周囲組織の変化はほとんど認められなかつた.
    以上より, 今回の留置実験では, 高含水ゴムは正円窓膜上に置く人工内耳用刺激電極の被覆材料として安全かつ有用であると思われた.
  • 柿木 章伸, 中谷 宏章
    1992 年 38 巻 4 号 p. 481-484
    発行日: 1992/07/20
    公開日: 2013/05/10
    ジャーナル フリー
    下鼻甲介原発の血管平滑筋腫症例の臨床経過および病理学的所見について述べ, 文献的考察を行い, 病因, 臨床症状, 治療についてまとめた.
    鼻閉および鼻出血を主訴とした下鼻甲介原発の血管平滑筋腫症例に対し, 腫瘍全摘術を行い良好な結果を得た.
    血管平滑筋腫は小血管の平滑筋より発生すると考えられており, 四肢の皮膚もしくは皮下組織に好発する良性腫瘍である.
    鼻副鼻腔領域における発生はまれであり, 今回われわれが渉猟しえた本邦における鼻副鼻腔の血管平滑筋腫は, 本症例を含め23例にすぎなかつた.
    症状は腫瘤による鼻閉, 鼻出血を認めることが多い.
    治療は他の良性腫瘍と同様に外科的全摘出である.
  • 増山 敬祐, 定永 恭明, 鮫島 靖浩, 宇野 正志, 谷 栄一郎, 國米 秀幸, 中崎 孝志, 石川 哮
    1992 年 38 巻 4 号 p. 485-490
    発行日: 1992/07/20
    公開日: 2013/05/10
    ジャーナル フリー
    われわれは1982年よりスギ花粉飛散状況を調査しているが, スギ以外の樹木花粉の飛散もかなりみられることがわかった. そこで, 1987年における樹木花粉を詳細に同定・カウントし, その飛散時期にアレルギー外来を受診した患者の樹木花粉による感作状況をRAST法にて検査した. その結果スギ以外の樹木花粉による単独感作症例はなく, スギ花粉症患者の28%に他の樹木花粉の重複感作がみられた. この原因としてヒノキは共通抗原で説明できるが, ヒノキ以外の重複感作成立の要因として, HLAを介する遺伝的類似性のある個体が抗原性の弱い樹木花粉の大量暴露を受けることが必要ではないかと推察した.
  • 井野 素子, 松山 浩吉, 中川 のぶ子, 渡辺 尚代, 金子 明弘, 井野 千代徳, 田辺 正博
    1992 年 38 巻 4 号 p. 491-495
    発行日: 1992/07/20
    公開日: 2013/05/10
    ジャーナル フリー
    比較的まれな頸部気管原発の腺様嚢胞癌の一症例を経験した. 症例は57歳女性で, 呼吸困難を主訴として来院した. 外科的治療は段階的に行つた. 腫瘍を気管前壁と共に切除し, 頸部気管は開窓状態として一次手術を終えた. 10カ月後, 頸部皮弁と自家肋軟骨移植により, 二次的に気管再建を行つた. 気管切開口は, さらに2カ月後に閉鎖した. 気管原発腺様嚢胞癌と扁平上皮癌における発生部位の文献的考察によると, 扁平上皮癌が気管の下部3分の1に多く見られるのに対し, 腺様嚢胞癌は上部3分の1に発生したものが多いと報告されている.
  • 馬場 駿吉, 宮本 直哉, 山本 真一郎, 加藤 眞二, 伊藤 晴夫, 横田 明, 伊藤 弘美, 小林 武弘, 伊佐治 弘子, 三宅 浩郷, ...
    1992 年 38 巻 4 号 p. 496-508
    発行日: 1992/07/20
    公開日: 2013/05/10
    ジャーナル フリー
    化膿性中耳炎に対するmeropenem (MEPM) の有効性と安全性を客観的に評価する目的で, 患者分離株の感受性分布, 中耳粘膜組織への移行ならびに多施設同一プロトコールによる臨床的検討を行い, 次の結果を得た.
    1. 化膿性中耳炎患者より分離されたグラム陽性菌25株および陰性菌13株に対する感受性分布は, グラム陽性菌ではimipenemに次いで, またグラム陰性菌では試験薬剤中最も優れていた.
    2. MEPM 0.5g30分間点滴静注後の中耳粘膜組織中濃度は0.69~7.83μg/gであつた.
    3. 臨床効果は総投与症例52例中46例で検討し, 主治医判定による有効率は80% (37/46) であつた.
    4. 副作用は52例中まったく認められず, また臨床検査値異常はGPTの上昇2例, 尿糖の陽性化1例を認めたがいずれも軽度の変動であつた. 以上の成績より, MEPMは化膿性中耳炎に対して有用性の高い薬剤と考えられる.
  • 三宅 浩郷, 木村 栄成, 高橋 秀明, 新川 敦, 秋田谷 直, 出井 教雄, 坂井 真, 佐藤 むつみ, 加賀 達美, 鈴木 理文, 泰 ...
    1992 年 38 巻 4 号 p. 509-523
    発行日: 1992/07/20
    公開日: 2013/05/10
    ジャーナル フリー
    副鼻腔炎に対するMeropenem (MEPM) の有効性と安全性を客観的に評価する目的で臨床分離株の感受性分布, 鼻粘膜などの組織内移行ならびに多施設同一プロトコールによる臨床的検討を行い, 次の結果を得た.
    1. 臨床分離29株のMEPMのMIC80はIPMと同様0.39μg/mlであり検討薬剤中で最も強い抗菌力を示した.
    2. MEPMは上顎洞粘膜, 上顎洞貯留液および節骨洞粘膜への良好な移行を示した.
    3. 臨床効果は29例で解析可能で, 有効率は主治医判定で76% (22/29), 委員会判定で93% (27/29) であった.
    4. 細菌学的には, 臨床症例からの分離株32株すべてが消失した.
    5. 副作用は1例も認められず, 臨床検査値異常は4例にみられたが, いずれの症例も軽度の変動であり臨床上問題となるものではなかった.
    以上の成績からMEPMは副鼻腔炎に対して有用性の高い薬剤と考えられる.
  • 大山 勝, 内薗 明裕, 島 哲也, 村野 健三, 松崎 勉, 深水 浩三, 宮崎 康博, 矢野 博美, 鶴丸 浩士, 飯田 富美子, 三宅 ...
    1992 年 38 巻 4 号 p. 524-537
    発行日: 1992/07/20
    公開日: 2013/05/10
    ジャーナル フリー
    扁桃炎およびその他耳鼻咽喉科領域感染症に対するmeropenem (MEPM) の基礎的・臨床的検討を多施設同一プロトコールにより行い, 以下の結果を得た.
    1. 患者より分離されたグラム陽性菌56株およびグラム陰性菌22株に対する感受性分布はグラム陽性菌ではimipenemに次いで, グラム陰性菌に対しては試験薬剤中最も優れていた.
    2. MEPM0.5g点滴静注後の扁桃組織内濃度は0.35~2.85μg/g, 顎下腺組織内濃度は0.55~3.8μg/gであつた.
    3. 主治医判定による有効率は97% (83/86), 委員会判定のそれが93% (80/86) であつた.
    4. 細菌学的には連鎖球菌属感染症の1例と3菌種感染症の1例を除いてすべての症例で菌の消失がみられた.
    5. 91症例中重篤な副作用はまったく認められなかつた.
    6. 臨床検査値の異常としては白血球滅少1例, 好酸球増多1例, 血清トランスアミラーゼ上昇5例がみられた.
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