耳鼻と臨床
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38 巻, 6 号
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  • 青柳 満喜, 牧嶋 和見, 吉田 雅文, 黒田 嘉紀
    1992 年 38 巻 6 号 p. 747-751
    発行日: 1992/11/20
    公開日: 2013/05/10
    ジャーナル フリー
    今回われわれは, 慢性中耳炎患者の耳漏培養検査結果を細菌学的に検討した. とくに, ブドウ糖非醸酵グラム陰性桿菌に注目し考察した. 従来弱毒菌であるため雑菌として軽視されていた菌群であるが, 近年臨床的に数々の問題を提起してきている. ほとんどは日和見感染であるが, 高度の薬剤耐性を有しているために, 一旦感染をきたせば治療に難渋する.
    慢性中耳炎患者の多くは耳漏の不快感を訴える. しかし, ブドウ糖非醗酵グラム陰性桿菌が感染してしまえば, 耳漏の停止は困難となる. したがつて, 耳漏培養検査の結果をもとに感染早期の段階で消炎させることが重要と思われる.
  • MASTシステムを用いた測定
    齋藤 滋, 玉城 昇, 小杉 忠誠
    1992 年 38 巻 6 号 p. 752-756
    発行日: 1992/11/20
    公開日: 2013/05/10
    ジャーナル フリー
    1) アレルギー性鼻炎患者の血清特異的IgE抗体量の測定を, MAST法とRAST法とで行つた. 両者の相関係数は0.90であつた.
    2) 血清総IgE値が3001U/ml以上の患者では, 皮内テスト, MASTともに陽性を示す症例が多かつた.
    3) 血清総IgE値が3001U/ml未満の患者では, 皮内テスト陽性で, MAST陰性の症例が多かつた.
    4) MAST法によるアレルゲン特異的IgE量の定量には, 血清総IgE値を参考にすべきと思われた.
  • 鳥原 康治, 永井 知幸, 狩野 季代, 松浦 宏司, 坪井 康浩, 森満 保
    1992 年 38 巻 6 号 p. 757-761
    発行日: 1992/11/20
    公開日: 2013/05/10
    ジャーナル フリー
    宮崎医科大学耳鼻咽喉科外来において過去14年間で経験した嗅覚障害102例について検討し報告した.
    原因としては, 感冒31例, 慢性副鼻腔炎18例, 頭部外傷15例の順に多かつた. 感冒によるものは改善率30%, 外傷によるものは0%と予後不良であつた. 年齢別, 男女別には改善率に有位差を認めない.
    静脈性嗅覚テスト陽性例に67%, 陰性例に8%の改善率を認めた. 陰性例ではオルファクトグラムでも完全脱失型を呈した症例が多かつた.
    味覚・嗅覚同時障害例のうち感冒に起因するものでは, 味覚は改善しても嗅覚障害は不変のもめが多い傾向にあつた.
  • 1981年-1990年における症例報告の文献的考察を含めて
    肥後 隆三郎, 菅沢 正, 水野 正浩, 浅井 昌大
    1992 年 38 巻 6 号 p. 762-767
    発行日: 1992/11/20
    公開日: 2013/05/10
    ジャーナル フリー
    1981年から1990年までの10年間に当教室で経験した鼻・副鼻腔原発悪性黒色腫5例を報告した. 年齢は44歳より71歳, 男性2・女性3であつた. 治療としては手術, 放射線治療, 化学療法および免疫療法を組み合わせ集学的療法を施行した. また同時期に耳鼻咽喉科に関連した各医学誌に報告のあつた鼻・副鼻腔原発悪性黒色腫70例を併せ文献による統計的観察を行つた. 2年生存率は56%, 5年生存率は20%であり, 局所の制御率は向上しているが, 遠隔転移に関してはいまだ制御し得ていないという結果が得られた. 最後に, 当教室における鼻・副鼻腔原発悪性黒色腫の治療システムを提示した.
  • 山本 薫, 鈴木 勲, 中村 兼一, 弓削 庫太
    1992 年 38 巻 6 号 p. 768-772
    発行日: 1992/11/20
    公開日: 2013/05/10
    ジャーナル フリー
    カルチノイド腫瘍は, 主に消化管, 気管, 気管支に発生する腫瘍であり, 中耳に発生することは非常に稀であり, 本邦では過去5例の報告があるのみである. われわれは57歳女性の中耳カルチノイド腫瘍の1症例を経験した. 腫瘍の組織診断には透過電顕, 免疫組織化学的検査が有用であつた.
  • 外耳道皮質骨コルメラ使用例
    柿木 章伸, 竹内 俊二, 竹田 泰三, 齋藤 春雄
    1992 年 38 巻 6 号 p. 773-776
    発行日: 1992/11/20
    公開日: 2013/05/10
    ジャーナル フリー
    今回われわれは, 真珠腫性中耳炎の初回手術時に症例を選んで一期的に伝音連鎖の再建を行つた. 症例選択の基準としては, 弛緩部型真珠腫であること, 鼓膜緊張部は半分以上残せること, 鼓室内病変が軽度でありアブミ骨が保存されていること, 耳管鼓室口周辺の病変が軽度であることとした. 術式は鼓室形成術III型変法 (canal down法) を用い, コルメラには骨部外耳道より採取した皮質骨を使用した. 聴力判定は, 術後少なくとも1年以上経過した最新のものを検討した. 判定基準は, 臨床耳科学会の判定基準案1) を用いた. 聴力良好例は16例と全体の80%であり満足のいく結果であつた. 真珠腫再発の可能性は若干あるが, 現在のところ外来経過観察中にコルメラの排出や真珠腫の再発は認めていない. 再手術の可能性があることを前提に症例を十分選択すれば, この術式は有用であると思われる.
    今後, 長期の経過観察が必要である.
  • 古謝 静男, 神谷 聰, 長田 紀与志
    1992 年 38 巻 6 号 p. 777-780
    発行日: 1992/11/20
    公開日: 2013/05/10
    ジャーナル フリー
    1973年から1985年までの13年間に当科で一次治療した舌癌患者53例を分析し, 以下の結果を得た.
    1. 男性が34例, 女性が19例で男女比は1.8対1であつた. 年齢別では60代が最多であつた. 主訴は舌痛が最多で発生部位は舌縁が最多であつた.
    2. 進行度分類ではStage Iが14例 (26%), Stage IIが18例 (34%), Stage IIIが12例 (23%), Stage IVが9例 (17%) であつた.
    3.5年生存率はStage Iが64%, Stage IIが67%, Stage IIIが25%, Stage IVが0%, であつた.
  • 伊藤 信輔, 田中 康政, 武富 正夫, 山口 勝矢, 平木 基裕, 井立 睦子, 黒木 岳人
    1992 年 38 巻 6 号 p. 781-785
    発行日: 1992/11/20
    公開日: 2013/05/10
    ジャーナル フリー
    久留米大学耳鼻咽喉科において1988年から1990年までの間に治療した16例の急性乳様突起炎について検討した. 8例は急性中耳炎に続発し, その他は真珠腫性中耳炎に続発したものであつた. 前者は, 全身症状の穏やかであつた一人の成人を除いて, 可及的すみやかに手術的に治療した. 後者に対してはまず真珠腫と炎症性肉芽を除去する手術を行い, アブミ骨が正常で高度の感音難聴のなかつた2例では, 2週間後に鼓室形成術を施した.
  • 谷垣内 由之, 森 朗子, 林 振堂, 馬場 廣太郎
    1992 年 38 巻 6 号 p. 786-791
    発行日: 1992/11/20
    公開日: 2013/05/10
    ジャーナル フリー
    大唾液腺ではまれとされる, 29歳女性に発生した, 耳下腺polymorphous adenocarcinomaの1例を報告した. 本腫瘍は同一腫瘍内にさまざまな組織学的パターン-solid, tubular, papillary, cribriform (pseudoadenoid cystic), fascicular-を有することを特徴とし, 腺様のう胞癌との鑑別が最も重要である. 臨床病理学的には, lowgrade malignancyとされているが, high-grade malignancyとする報告もあり検討が必要である. 今後正確な病理診断が行われるようになれば, 症例が増え, 臨床的特徴もより明らかになるものと期待される.
  • 池田 元久, 渡辺 勇, 武藤 二郎
    1992 年 38 巻 6 号 p. 792-796
    発行日: 1992/11/20
    公開日: 2013/05/10
    ジャーナル フリー
    1) 比較的稀であると思われる頚神経 (C3) 領域の帯状庖疹と蝸牛・前庭障害のみを示した, 24歳女性の症例について, 発症時から2年1カ月間にわたつて神経耳科検査を中心とした臨床経過観察を行つた. その結果, めまい・平衡障害を自覚しなくなつた後も頭位眼振が認められたことと, 発症時には高度低下を示した患側耳の温度眼振反応が, 2年間で徐々に回復したことが特徴であつた.
    2) 本症例の症状発現機序について, 末梢神経の吻合を介する経路とクモ膜下腔を介する経路の可能性について若干の文献的考察を行つた.
  • 今野 昭義, 山越 隆行, 藤田 洋祐, 片桐 仁一
    1992 年 38 巻 6 号 p. 797-811
    発行日: 1992/11/20
    公開日: 2013/05/10
    ジャーナル フリー
    局所ステロイド薬Fluticasone propionate (FPと略) の鼻粘膜ヒスタミン過敏性, 抗原誘発後の即時型反応に与える効果の作用機序を解明するために, 通年性鼻アレルギー症例を対象に, 二重盲検法にて1回抗原誘発後の鼻腔洗浄液中好酸球, 好塩基性細胞, tryptaseおよびECP濃度の経時的変化, 鼻粘膜ヒスタミン過敏性, 抗原誘発鼻粘膜反応の変化を検討した. FPはそのいずれをも推計学的に有意に抑制した. 治療によるtryptase濃度の低下率は即時型反応の抑制率と有意に相関し, また, tryptase濃度の低下率は臨床症状の改善を認めた症例で有意に大きかつた. また, 鼻粘膜ヒスタミン過敏性の改善はECP濃度の低下率と有意に相関した.
    本研究はFPは抗原誘発後の即時型および鼻粘膜ヒスタミン過敏性を有意に抑制し, その機序には好塩基性細胞数と本細胞由来のchemicalmediator量の減少, 好酸球数の減少とその活性化の抑制が関与することを示した.
  • 黒岩 泰直
    1992 年 38 巻 6 号 p. 812-824
    発行日: 1992/11/20
    公開日: 2013/05/10
    ジャーナル フリー
    口腔癌および中咽頭癌98例について, その切除範囲と術後の嚥下障害との関係を検討丁し以下の結論を得た.(1) 舌可動部を1/2まで切除しても嚥下障害はないが, 1/2から3/ 4まで切除すると, 舌根を含んで切除してもしなくても軽度の嚥下障害をきたす.(2) 舌可動部を亜全摘および全摘した場合, 舌根が残存しておれば軽度の嚥下障害ですむが, 舌根を合併切除すると重篤な嚥下障害をきたす.(3) 中咽頭側壁を切除した場合, 軟口蓋を1/2まで合併切除してもほとんど嚥下障害はおこらないが, それ以上切除すると嚥下障害をきたす.(4) 中咽頭後壁や前壁を1/2以上切除すればするほど, より高度な嚥下障害をきたす.
  • 小児通年性鼻アレルギーにおける長期投与試験
    馬場 駿吉, 松永 亨, 荻野 敏, 西村 穣, 纐纈 正和, 横田 明, 伊藤 弘美, 大屋 靖彦, 坂口 喜清, 森松 圭三, 吉田 淳 ...
    1992 年 38 巻 6 号 p. 825-840
    発行日: 1992/11/20
    公開日: 2013/05/10
    ジャーナル フリー
    小児通年性鼻アレルギー患児を対象に, Fluticasone propionateエアゾール剤長期連続投与時の安全性および有効性について検討した. なお, 投与量は1日2回投与による100μg/日 (25μg各鼻腔1噴霧) または, 200μg/日 (25μg各鼻腔2噴霧) とした.
    1. 総投与例数は34例であり, このうち最終全般改善度および有用度は27例, また概括安全度は32例について検討した.
    2. 最終全般改善度解析対象例27例のうち100μg/日投与13例, 200μg/日投与14例, 最長投与期間は15週であつた. 著明改善率は63%, 中等度改善以上が96%であつた.
    3. 副作用または臨床検査値異常の発現は, 1例もみられなかつた.
    以上の成績より, 小児通年性鼻アレルギー患児において本剤は有効かつ長期連続投与しても安全な薬剤であると判断された.
  • 吉川 茂樹, 益田 宗幸, 中村 恭子
    1992 年 38 巻 6 号 p. 841-843
    発行日: 1992/11/20
    公開日: 2013/05/10
    ジャーナル フリー
    1.1歳から7歳までの小児の滲出性中耳炎 (otitismedia with effusion: OME) 30例, 50耳に対して抗アレルギー剤Oxatomideの内服治療をおこなつた.
    2.8週間の連続投与を行い, ティンパノグラムの結果から効果 (改善度) を判定した.
    3. アレルギー性鼻炎を合併する群 (19例, 31耳) と合併しない群 (11例, 19耳) に分け, 効果を検討した.
    4. 改善以上で各々55%, 68%と他の抗アレルギー剤の結果より良好な成績が得られた.
    5. Oxatomideはその効果, 使いやすさ, 安全性からOMEの治療薬として有用であると考えられた.
  • 山本 智矢
    1992 年 38 巻 6 号 p. 845-851
    発行日: 1992/11/20
    公開日: 2013/05/10
    ジャーナル フリー
    近年のSQUID (超伝導量子干渉素子) の実用化により, 生体の神経活動に伴つて発生する微弱な磁気を測定できるようになつた. 頭皮上の磁気の分布から, 神経活動の位置をmm単位で同定が可能である.
    聴覚の分野では14チャンネルSQUID装置を用いて, 一次性聴覚野での周波数に対する機能局在を明らかにした. また, 一次性体性感覚野では, 各手指の知覚が三次元的にどのように分布しているかを示した. このように, MRI画像と組み合わせることにより, 神経活動が中枢のどの構造に由来するかを把握することができる.
    今回九州大学付属病院に37チャンネルSQUID装置を導入し, すでに中枢の機能局在や疾患の診断をはじめ, てんかんの焦点の同定などの臨床応用の研究が始まつている.
  • 田代 信維
    1992 年 38 巻 6 号 p. 852-856
    発行日: 1992/11/20
    公開日: 2013/05/10
    ジャーナル フリー
    「めまい」を伴う神経科疾患, 恐慌性 (パニック) 障害について, その診断と治療について述べた. この「めまい」は浮動性のめまいであり, 自発性であつたり誘発されたりするが, 健常者に比べて, 患者はその閾値が低い特徴がある. その原因としては, 中枢または末梢神経の受容体が過敏であるとする見方と, 不安緊張といつた情動興奮状態の持続の反動として起こる恒常性機能 (ホメオスタシス) によるとする見方がある. 近似疾患に, 心臓神経症, 過換気症候群, 自律神経失調症や神経循環無力症などがある. これまで, 触れられることのなかつた「こころ」と脳の関係が, 向精神薬の作用やSPECT などによつて, 論じられるようになつてきた.
  • 高橋 昭
    1992 年 38 巻 6 号 p. 857-862
    発行日: 1992/11/20
    公開日: 2013/05/10
    ジャーナル フリー
    「めまい」の意味する内容は人によつて異なる. 英語圏で用いられるdizziness, giddiness, vertigoも必ずしも厳格に定義されたものではなく, これらの用語を実際の臨床の場で用いる時は, 訴えの内容を十分把握し, 注意深く用いる必要がある. 回転感を伴う典型的めまいは一般に急性の前庭ないし後頭蓋窩の疾患に発現することが多い. しかし, 慢性経過を示すFriedreich病においても周期性交代性眼振とともにめまいを発現することを示した. 延髄外側部の梗塞によるWallenberg症候群では, 必ずしもめまいは初発症状ではなく, 頭痛, 悪心, 嘔吐などや他の症候に遅れて発症することがある. 本症候群では, 衝動性眼球運動においてocularIateropulsionを示し, めまいに関係する可能性がある. Shy-Drager症候群では糖分摂取後に著しい血圧低下によるdizzinessを示すことがあり, 急死の一因として重要である.
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