耳鼻と臨床
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40 巻, 5 号
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  • 古田 茂, 松崎 勉, 出口 浩二, 平瀬 博之
    1994 年 40 巻 5 号 p. 733-736
    発行日: 1994/09/20
    公開日: 2013/05/10
    ジャーナル フリー
    口腔乾燥感を伴う咽喉頭異常感症患者11例における唾液腺機能を, 99mTc-pertechnetateを用いた唾液腺シンチグラフィーで質的量的に検討した. 動態曲線におけるCmaxによる検討で, 患者の半数に顎下腺の機能異常が認められた. 唾液腺の刺激分泌比は正常唾液腺と比較して, 有意の差は認めなかつた. 以上の結果から, 咽喉頭異常感発症の局所因子として, 唾液腺機能にも着目する必要が考えられ, 本法の客観性, 安全性, 感受性から考え, 積極的に咽喉頭異常感患者に応用することが可能である.
  • 安田 宏一
    1994 年 40 巻 5 号 p. 737-743
    発行日: 1994年
    公開日: 2013/05/10
    ジャーナル フリー
    めまい発作をくりかえしていた59歳の男性に, MRI (magnetic resonance imaging) で左側の聴神経腫瘍が見つかり, 1987年に摘出した. 1989年から, 再びめまいをくりかえすようになり, 発作時には眼振や偏筒を伴つた. この症例は, 次の点で興味深い.
    1) 左聴神経腫瘍摘出後に, メニエール病の発作をおこした. これは右内耳におこつたものである.
    2) 発作中に, 右向き眼振だけでなく, 左向き眼振も見られた. 左迷路機能はゼロに相当するため, これは左迷路に対する中枢代償と右迷路の応答でおこつた麻痺性眼振である.
    3) 発作中眼振の方向いかんにかかわらず, 足踏回転角は, 左向きかもしくは0°であつた. このことは, 迷路眼反射と迷路脊髄反射の代償を行う場所や程度が異なつていることを示唆している.
    4) 発作の主導権が, 左内耳から右内耳へ移つたのは, 腫瘍摘出直前の第3回目の発作からである. このことは, 温度検査の分析から証明できる.
  • 栗原 秀雄, 酒井 昇, 犬山 征夫, 佐野 宏行, 佐々木 幸弘
    1994 年 40 巻 5 号 p. 744-746
    発行日: 1994/09/20
    公開日: 2013/05/10
    ジャーナル フリー
    3年前の右上顎根本術の既往を持つ上顎洞粘液腫の1例を経験した. 術前, 上顎嚢胞を疑つていたが, 試験開洞により洞内に粘液様物質の充満を認め可及的にこれを除去した. 病理診断は粘液腫であつた. 8カ月後に再発をきたし, 周囲組織を含め切除した. その後再発なく今日に至つている. 粘液腫には特有の症状はなく, 診断が困難な例が多いため, 上顎骨の破壊を伴う病変では粘液腫も念頭におくことが重要と考えられた. また粘液腫は再発が多いため適切な手術法の選択, 手術範囲の設定とともに, 術後も長期にわたる慎重な経過観察が必要であると考えられた.
  • 内損傷の臨床統計的観察
    岩田 重信, 高須 昭彦, 桜井 一生, 森 茂樹, 浦野 誠, 岩田 義弘
    1994 年 40 巻 5 号 p. 747-753
    発行日: 1994/09/20
    公開日: 2013/05/10
    ジャーナル フリー
    喉頭内損傷はまれであるが, 医原性によるものが多いと言われる. そこで, 当教室過去5年間の喉頭内損傷の統計観察を施行した. 症例は78例 (男性56例, 女性22例) で, 喉頭内損傷の原因は熱傷1例, 喉頭異物4例 (魚骨), 披裂関節脱臼3例, 喉頭内芽腫11例, 喉頭気管狭窄9例, web形成5例, 術後性の反回神経麻痺45例, うち挿管性麻痺は12例, 甲状腺術後の麻痺24例, 胸部内手術後7例, 頸部術後2例であつた. このうち, 広義での医原性と考えられる症例の頻度は73例, 94%の高頻度であり, 内視鏡検葦や挿管麻酔下での手術, 特に甲状腺手術時の反回神経麻痺を来さないように, 充分な配慮と患者への術後合併症の説明が必要である. 甲状腺手術は腫瘍の性状が異なる点や, 反回神経分枝の末梢走行異常と下甲状腺動脈の走行異常の高いことから, 甲状腺手術後の麻痺を喉頭内損傷の分類から除くべきである.
  • 糸数 哲郎, 古謝 静男, 真栄城 徳秀, 江洲 浩明, 饒波 正吉, 野田 寛
    1994 年 40 巻 5 号 p. 754-758
    発行日: 1994/09/20
    公開日: 2013/05/10
    ジャーナル フリー
    刃物ならびに産業事故による開放性の喉頭外傷を2例経験した.
    症例1: 31歳, 男性. 同僚と喧嘩しナイフで首を切りつけられ受傷. 創部は舌骨と甲状軟骨の間に約15cmの長さで, 喉頭蓋, 咽頭前壁, 側壁が切断されていた. 予防的に気管切開を施行し粘膜を縫合した. 気管切開孔の閉鎖後も誤嚥, 呼吸苦の出現もなく, 術後経過は良好であった.
    症例2: 32歳, 男性. グラインダーで作業中に刃が折れ, 飛散した破片で頸部を受傷. 喉頭外傷と脊髄の損傷を合併していた. 喉頭の損傷が激しく, 喉頭再建を断念し喉頭摘出術を施行した.
  • 井野 千代徳, 稲村 達哉, 木下 卓也, 加藤 真子, 柳田 亜由子, 井野 素子
    1994 年 40 巻 5 号 p. 759-764
    発行日: 1994/09/20
    公開日: 2013/05/10
    ジャーナル フリー
    唾液腺型の高アミラーゼ血症を主訴とした2症例を報告した. 1例目は, 20歳の女性で, 嘔吐などがあり, 20kgを越す体重の減少があり, anorexia nervosaが疑われた. 両側の顎下腺腫脹があり, 穿刺組織診で唾液腺症と診断された. 2例目は, 40歳の女性で, 既往歴として高尿酸血症と甲状腺機能亢進症がある. 後者の方は, 現在コントロールされているが, 前者は, 依然として高値のままである. 両側の耳下腺の腫脹があり, 穿刺組織診で唾液腺症と診断された. 唾液腺症に高アミラーゼ血症を伴う例は, anorexia neruosaに合併した唾液腺症以外は報告されていない. 唾液腺症の腺房細胞の顆粒は, clear, dark, mixedに分類されるが, clearな顆粒を有した腺房からは, 唾液中にアミラーゼが多く分泌されるという. 今回報告した2症例の分泌顆粒はclearなものが優位なため, 高アミラーゼ血症を呈したものと考えた.
  • 菅 喜郎, 梅野 祐芳, 野田 哲哉
    1994 年 40 巻 5 号 p. 765-768
    発行日: 1994/09/20
    公開日: 2013/05/10
    ジャーナル フリー
    頸部脂肪腫術後に発生した喉頭脂肪腫の1例を報告し, 神経鞘腫例と比較検討した. 術前診断には, CTにおけるdensity値およびMRIにおけるintensityの差の比較検討が有効と思われ, 手術法の選択にも役立つと考えられた. 手術に際して, 術前の気管切開が術中・術後のトラブル防止のためにも必要と思われた. 脂肪腫と神経鞘腫は組織学的に鑑別困難な例もあり, S-100蛋白を用いた免疫染色も有効と思われた. 脂肪腫は一般的に進行が緩徐と言われているが, 早期進行の可能性も示唆された.
  • 渡邉 昭仁, 白戸 勝, 上戸 敏彦
    1994 年 40 巻 5 号 p. 769-773
    発行日: 1994/09/20
    公開日: 2013/05/10
    ジャーナル フリー
    1. 副咽頭腔にみられた腺様嚢胞癌症例を経験した. 症例は62歳女性, 咽頭痛を主訴に来院した.
    2. 腫瘍はCT, MRI画像上頭蓋底に接して存在しており, 手術は下顎骨正中離断による頸部と咽頭の両方からアプローチを用い腫瘍を摘出した.
    3. 病理学的には篩状構造を中心とした腺様嚢胞癌であり切除断端に腫瘍をみとめた. そのために術後放射線療法 (60Gy) を追加した.
    4. 術後約2年10カ月経過するが再発転移傾向なく良好で外来経過観察している.
    5. 副咽頭腔腫瘍, 腺様嚢胞癌の文献的考察をおこなつた.
  • 岩元 純一, 片岡 真吾, 田中 弘之, 涌谷 忠雄
    1994 年 40 巻 5 号 p. 774-779
    発行日: 1994/09/20
    公開日: 2013/05/10
    ジャーナル フリー
    平均寿命の延長や診断・治療技術の進歩などに伴い, 癌患者の生存率が延びたことにより, 徐々に重複癌の発生頻度は増加傾向にある. 頭頸部癌の内, 下咽頭癌は重複癌が多いとされる. しかし, 甲状腺との重複例は少なく, われわれが検索しえた範囲では12例に過ぎなかつた. 今回, われわれは下咽頭癌 (後壁型, T2) と微小甲状腺癌の同時重複癌を経験したので報告した. 術前超音波検査にて甲状腺右葉に8mm大の病変を認めた. 頸部郭清術による摘出リンパ節の病理検査で甲状腺癌の多発転移を認めた. さらに, 甲状腺癌は腺内転移も被膜外浸潤も有していた. 頭頸部管腔癌患者については, 甲状腺の重複癌の存在と甲状腺微小癌であつても臨床癌像を呈する可能性を念頭に置く必要があると思われた.
  • 蓑田 涼生, 宇野 研吾, 福島 正人, 土生 健二郎, 杉 宣宏, 石川 哮
    1994 年 40 巻 5 号 p. 780-786
    発行日: 1994/09/20
    公開日: 2013/05/10
    ジャーナル フリー
    オフロキサシン (以下OFLX) はグラム陽性菌, グラム陰性菌に広い抗菌力が認められているキノロン系抗菌剤で, 耳用液は各種感染性耳疾患において用いられている. 耳浴時間は従来の耳浴時間にならつて10分間とされているが, 薬剤の性質を考慮すると, 耳浴時間の短縮は充分可能であると思われる. 今回, 従来通りの10分耳浴群と2~3分の短縮耳浴群の2群においての臨床効果について比較検討を行い, その可能性について検討した. その結果2~3分耳浴両群においても10分耳浴と同様に高い臨床効果と安全性を認めた.
  • 三邉 武右衛門, 添田 百枝, 三邉 武幸
    1994 年 40 巻 5 号 p. 787-791
    発行日: 1994/09/20
    公開日: 2013/05/10
    ジャーナル フリー
    掌蹠膿疱症 (以下PPPと異す) は原因, 発生機序など不明な難治の慢性皮膚疾患で, Andrewsは病巣感染説に基づき, 扁摘による完治例をあげ, 病巣感染の重要性を指摘している. しかし本症に対し決定的治療法がないのが現況である. MS-Aの臨床研究中, 難治のPPPにMS-A20mg, 2回の皮下注射で, 膿疱が黒褐化し, MS-Aは本症に著明に反応した. MS-A40mg, 9回の投与で全治せしめ, その後PPPは本剤の投与により良好な治療成績を収めた. 石川らは本症の組織学的検索で, その出血, 細胞浸潤および血管の変化は酸性多糖類アレルギーによるアレルギー性血管炎ないしアルサス現象であると発表している. MS-Aはアルサス現象に対し強い抑制効果を有し, 本症は石川らの考えるアルサス現象とする立場から, MS-Aはこれを抑制して, みるべき成績を収めたものと考えられる.
  • 安田 宏一
    1994 年 40 巻 5 号 p. 792-798
    発行日: 1994/09/20
    公開日: 2013/05/10
    ジャーナル フリー
    メニエール病患者に伴う睡眠障害の改善に, brotizolam (レンドルミン) が有効か否かを検討した. 睡眠障害のあるメニエール病患者20例に, レンドルミンを1~2錠 (0.25-0.5mg) 眠前1回投与で, 2週間以上使用した.
    その結果睡眠障害全般で, 著名改善と改善を合わせると19例 (95%) になつた. 不変はなく, 悪化が1例 (5%) あつた. 悪化の1例は, 抗うつ剤中止の影響であつた. 睡眠障害の中では特に, 入眠障害と熟睡感の不足に効果があつた. 20例中17例に抗うつ剤を併用した. 抗うつ剤の中途覚醒と早朝覚醒に対する治療効果と, 本剤は良い相乗効果を示した. またメニエール病の発作の鎮静にも, 睡眠を十分とることで有効に働いた.
    本剤は, メニエール病患者で睡眠障害を伴う場合, 単独ないしは抗うつ剤と併用して, 大変有用である.
  • 大山 勝, 松崎 勉, 原口 兼明, 宮崎 康博, 内薗 明裕, 村野 健三, 森山 一郎, 坂本 邦彦, 矢野 博美, 鶴丸 浩士, 小幡 ...
    1994 年 40 巻 5 号 p. 799-816
    発行日: 1994/09/20
    公開日: 2013/05/10
    ジャーナル フリー
    副鼻腔炎に対するcefozopran (CZOP) の有効性と安全性を多施設同一プロトコールによる基礎的ならびに臨床的検討を行い, 次の結果を得た.
    1. 臨床分離菌42株のCZOPのMIC90は1.56μg/mlであつた.
    2. CZOPの組織移行は上顎洞粘膜, 鼻茸および鼻汁で臨床分離菌のMIC90を上回る良好な成績を示した.
    3. 臨床効果は40例で解析可能で, 有効率は主治医判定で68% (27/40), 委員会判定で78% (31/40) であつた.
    4. 細菌学的には, 臨床例からの分離菌株32株中30株が消失し, 消失率94%であつた.
    5. 副作用は皆無であつたが, 臨床検査値異常で, プロトロンビン値の上昇が1例にみられた. しかし, その程度は軽度の変動であり, 臨床上問題となるものではなかつた.
    以上の成績からCZOPは副鼻腔炎に対して有用性の高い薬剤と考えられる.
  • 馬場 駿吉, 宮本 直哉, 山本 真一郎, 田中 伊佐武, 小関 晶嗣, 横田 明, 伊藤 弘美, 伊藤 晴夫, 伊佐治 広子, 加藤 真二 ...
    1994 年 40 巻 5 号 p. 817-831
    発行日: 1994/09/20
    公開日: 2013/05/10
    ジャーナル フリー
    化膿性中耳炎に対するcefozopran (CZOP) の基礎的・臨床的検討を行い、次の結果を得た。
    1. 化膿性中耳炎患者の分離菌に対するCZOPの感受性は, グラム陽性菌ではceftazidime (CAZ) より明らかに優れており, グラム陰性菌ではCAZと同程度であつた.
    2. CZOP1.0g静注後の耳漏中濃度は投与0.5~6.0時間後で0.8~33.6μg/gであり, 中耳粘膜組織内濃度は投与後0.67~4.12時間後で8.1~57.9μg/gであつた.
    3. 臨床効果は, 主治医判定による有効率が83% (38/46), 委員会判定では78% (36/ 46) であつた.
    4. 細菌学的には, 52株中44株が消失し、消失率は85%であつた.
    5. 副作用としては, 1例で軽度の発疹が認められた. 臨床検査値異常は白血球増多, GPT上昇, LDH上昇が各1例認められたが, いずれも軽度のものであつた.
    以上の結果より, CZOPは化膿性中耳炎に対して有用性の高い薬剤と考えられる.
  • 三宅 浩郷, 新川 敦, 木村 栄成, 高橋 秀明, 秋田谷 直, 出井 教雄, 坂井 真, 佐藤 むつみ, 加賀 達美, 小川 裕, 穴原 ...
    1994 年 40 巻 5 号 p. 832-850
    発行日: 1994/09/20
    公開日: 2013/05/10
    ジャーナル フリー
    扁桃炎およびその他の耳鼻咽喉科領域感染症に対するcefozopran (CZOP) の基礎的・臨床的検討を行い, 以下の結果を得た.
    1. 患者より分離された細菌に対する感受性分布は, グラム陰性菌においてはCAZ にやや劣るものの, グラム陽性菌および嫌気性菌においてはCAZより優れていた.
    2. CZOP1.0g点滴静注後の扁桃組織内濃度は0.7~31.9μg/g, 顎下腺組織内濃度は3.7~28.8μg/g, 耳下腺組織内濃度は4.6~30.5μg/gであつた.
    3. 主治医判定による有効率は89.6% (120/134), 委員会判定のそれが88.1% (118/ 134) であつた.
    4. 細菌学的には分離された菌のうち投与前後で消長が観察できた139株中135株 (97.1%) の消失がみられた.
    5.141症例中重篤な副作用は全くみられなかつた.
    6. 臨床検査値の異常としては血清トランスアミナーゼの上昇を中心に18例で認められたが重篤なものはなかつた.
  • 田中 文雄, 赤木 成子, 藤本 政明, 結縁 晃治, 杉原 博子, 増田 游, 斉藤 稚里, 小河原 利彰, 中井 貴世子, 難波 正行, ...
    1994 年 40 巻 5 号 p. 851-856
    発行日: 1994/09/20
    公開日: 2013/05/10
    ジャーナル フリー
    めまいおよび耳鳴を主訴に来院した59症例に対してトフィソパムを投与し, 自覚症状, 他覚所見の改善度を検討した. 同時に心理テストであるTMIおよびシェロング起立試験を施行した. 全般改善度は軽度改善以上で, めまいに対して85%, 耳鳴に対して83 %であつた. めまいでは併用薬を用いた群で改善率が高かつたが, 耳鳴では併用薬のない群でも高い改善率が得られた. TMIでは, II型+IV型での著明改善の割合が1型での著明改善の割合より高い傾向を示した. またシェロングの起立試験では, 施行したすべての症例で陰性化を認めた. トフィソパムは自律神経機能不全の悪循環を断ち切ることにより, めまいおよび耳鳴を改善することが示唆された.
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