耳鼻と臨床
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41 巻, 6 号
選択された号の論文の10件中1~10を表示しています
  • 武田 秀隆
    1995 年 41 巻 6 号 p. 879-882
    発行日: 1995/11/20
    公開日: 2013/05/10
    ジャーナル フリー
    著者は蝸牛組織および血清電解質でイオンの検討を行い, 聴器障害時のK+値異常所見を報告した. このことより, K+などの陽イオンが蝸牛障害に関係するのではないかと考えた. 耳鳴を神経賦活剤と電解質代謝剤, 磁気療法で治療した. 内耳性難聴に伴う耳鳴は電解質のコントロールでも治療可能であるが, それを長く持続させるには細胞賦活剤の併用が重要であつた. これらのことより, 耳鳴の一つの原因として, 細胞膜の異常電位と神経伝達物質の異常を推測した.
  • 安田 宏一
    1995 年 41 巻 6 号 p. 883-888
    発行日: 1995/11/20
    公開日: 2013/05/10
    ジャーナル フリー
    メニエール病患者の中に, ある時かなり激しく一側性の耳痛を訴える者がある. 耳鏡検査をしてみても, 耳痛の原因になるような異常を発見できない. このような患者の胸鎖乳突筋を指でつまむと, 耳痛側に一致して圧痛がある.
    1994年4月から2カ月間に, このような耳痛を訴えた者が12例あつた. 発作中の者が7例, 間歇期の者が5例あつた. 間歇期の者は, 半日の臥床, あるいは眠前にセレスタミンを1錠のむことで, 翌日には耳痛がとれていた. 発作中の者は, 4日間の臥床安静とセレスタミン1日4錠の内服で, 眼振と偏筒が消失し, 多くの者では耳痛も同時に消失した. なお耳痛のとれない者には, 耳痛側の胸鎖乳突筋と僧帽筋に, リンデロン2mgと1%塩酸プロカイン10mlの混合液を局注することにより, 耳痛は消失した.
    この耳痛の原因は, 前庭脊髄反射が胸鎖乳突筋で亢進したものと考える.
  • 村上 順子, 村上 裕, 小笠原 眞, 村井 和夫, 立木 孝
    1995 年 41 巻 6 号 p. 889-895
    発行日: 1995/11/20
    公開日: 2013/05/10
    ジャーナル フリー
    正中鼻瘻孔は外鼻の正中部に開口部を持つ皮膚瘻孔で, しばしば皮様嚢胞の併発を見るまれな疾患の一つである. しかし, その瘻管や嚢胞の走行によつては頭蓋内進展を認め, 安易な治療から脳膜炎や髄膜炎などの重篤な合併症を引き起こしかねない疾患である.
    今回われわれは2歳の男児の前頭蓋底に進展し, 脳硬膜に強く癒着していた先天性正中鼻瘻孔の症例を経験したので, 本邦報告例とともに若干の文献的考察を加え報告する.
    乳幼児の正中鼻瘻孔で, 瘻孔が鼻根部に存在する例では, 瘻孔から伸びる瘻管・嚢胞が鼻骨前頭縫合に伸び, 頭蓋内進展を来す例が多く認められるため, 慎重な精査・治療が必要であると思われた.
  • 村上 裕, 村上 順子, 高橋 秀親, 千葉 隆史, 小笠原 眞, 村井 和夫, 立木 孝, 近 芳久
    1995 年 41 巻 6 号 p. 896-901
    発行日: 1995/11/20
    公開日: 2013/05/10
    ジャーナル フリー
    Ewing肉腫は長管骨や骨盤に好発し, 頭頸部領域に原発するのは稀と言われている.
    今回われわれは62歳男性で左上顎原発と思われたEwing肉腫症例を経験したので報告した. この症例の腫瘍細胞の胞体にはPAS染色にて陽性のグリコーゲン顆粒が認められた. これはEwing肉腫に特徴的と言われている.
    入院の上放射線治療ならびに化学療法 (VACA療法) を施行した結果, 発症から1年6カ月経過した現在も遠隔転移の所見もなく小康を保つている.
  • 酒井 昇, 西澤 典子, 依田 明治, 石部 祐子, 原 敏浩, 大渡 隆一郎, 栗原 秀雄, 犬山 征夫
    1995 年 41 巻 6 号 p. 902-906
    発行日: 1995/11/20
    公開日: 2013/05/10
    ジャーナル フリー
    長期気管内挿管に伴う合併症としての声帯癒着症の1例を経験した.
    症例は48歳の女性で7日間の気管内挿管を受けた後, 嗄声・労作時の呼吸困難を訴えて当科を受診し, 声門後部の癒着が確認された. 症状が比較的軽く手術操作で癒着部が悪化することも考えられたため, 保存的に経過観察していたところ, 声門後端の癒着は脱落し声帯突起部間の帯状の癒着のみが残存した. その時点で喉頭直達鏡下に癒着部を切除し, 現在まで良好な経過を辿つている.
    このような声門後部癒着症から声帯突起部癒着症に移行した症例は, われわれが調べた範囲では初めての例であつた. 症例の呈示と声帯癒着症の本邦報告例のまとめを行い, 併せて本疾患の原因, 分類, 治療などについて言及した.
  • 楠 正恵, 山川 卓也, 安藤 一郎, 甲能 直幸, 見上 光平, 上田 源次郎
    1995 年 41 巻 6 号 p. 907-912
    発行日: 1995/11/20
    公開日: 2013/05/10
    ジャーナル フリー
    頸部に発生したデスモイド腫瘍の1例を経験した. 症例は30歳の男性で2年前に左頸部腫瘍摘出術を施行された. 病理組織学的診断は線維腫症であつた. 9カ月後に局所再発し, 増大傾向を認めた.
    30歳時に再度入院し, 摘出術施行した. 病理診断は腹壁外デスモイド腫瘍であつた. 術後, 放射線療法を追加して経過観察中である.
    当院において検索し得た腹壁外デスモイド11例においては, 男女はほぼ同数, 発生年齢は, 30歳以下に多く, 頸部は本例のみで他に下腿, 腎部, 胸壁などであつた.
  • 松根 彰志, 江川 雅彦, 上野 員義, 福田 勝則, 花牟礼 豊, 古田 茂, 大山 勝, 川畑 政治, 富山 由美子, 納 光弘
    1995 年 41 巻 6 号 p. 913-918
    発行日: 1995/11/20
    公開日: 2013/05/10
    ジャーナル フリー
    60歳女性で後鼻漏と咳を主訴とした副鼻腔気管支炎症の複合治療が有効であつた例を報告した.
    1) 鼻茸切除および中鼻道の可及的開大術を外来通院にてYAGレーザーを用いて行つた後にYAMIK (副鼻腔炎治療用カテーテル) 治療を行つた.
    2) この間抗生剤の1週間点滴静注を先行させた後, RXM 300mg/dayを継続投与とした.
    3) YAGレーザー手術終了時点で, 後鼻漏, 咳症状の著明改善が見られ, 胸部X線検査にて気管支炎像のほぼ消失が認められた.
    4) YAMIK療法終了後, 顔面X線検査にて上顎洞の含気の改善を認めた.
  • 吉田 哲二
    1995 年 41 巻 6 号 p. 919-926
    発行日: 1995/11/20
    公開日: 2013/05/10
    ジャーナル フリー
    慢性副鼻腔炎患者20例に対し, 最近開発されたエリスロマイシン誘導体であるクラリスロマイシンを3週間連続投与し, その投与前後の自覚症状, 他覚所見, X線所見の変化を検討した. 自覚症状は55%以上の有効率を認め, やや改善を含めると85%の改善を認めた. 他覚所見は45%以上の有効率を認め, やや改善を含めると85%の改善を認めた. X線所見は70%の有効率を認め, やや改善を含めると85%の改善を認めた. X 線所見が全く改善しなかつた症例は手術を行ってみると, 乾酪性上顎洞炎であつた. 以上により慢性副鼻腔炎の治療として, クラリスロマイシンを3週間連続投与し, 効果判定を行う. 著効例は投薬を中止し, やや改善か改善例にはさらに3週間投与し, 不変例では手術を考慮する方針が良いのではないかと考える.
  • その客観的評価としての圧負荷検査の検討
    坂田 俊文, 加藤 寿彦, 白石 君男
    1995 年 41 巻 6 号 p. 927-945
    発行日: 1995/11/20
    公開日: 2013/05/10
    ジャーナル フリー
    耳閉塞感の定義は曖昧で, 定性的にも定量的にも, その評価がなされていないのが現状である. われわれは耳疾患患者に対し, 耳閉塞感の性状についてのアンケート調査を行い統計処理を行つた. その結果, 疾患に起因する耳閉塞感は, 聴器が気圧変化を受けた時の感覚と類似していたことから, 聴器の気圧感知機構と耳閉塞感との間に, 関連性があることを予測し, 圧負荷検査法を独自に考案して, 本検査における圧感知機構, ならびに有用性について考察した.
    圧負荷検査の結果, 聴器には圧感知に対する閾値が存在し, 本検査での圧感知部位は主に鼓膜であることが示された. さらに感音性難聴例の閾値が, 耳閉塞感の有無に追従し変化したことから, 圧負荷検査が耳閉塞感の個人差, もしくは個体内変動を監察する目的で有用であることが確認され, 従来評価が困難とされてきた耳閉塞感を, 検査によつて評価しうる可能性が見い出せた.
  • 馬場 駿吉, 宮本 直哉, 海野 徳二, 野中 聡, 金井 直樹, 渡辺 昭仁, 林 浩, 上戸 敏彦, 市川 銀一郎, 桜井 淳, 山川 ...
    1995 年 41 巻 6 号 p. 946-963
    発行日: 1995/11/20
    公開日: 2013/05/10
    ジャーナル フリー
    耳鼻咽喉科領域感染症に対するazithromycin (AZM) の基礎的ならびに臨床的検討を行つた.
    体液・組織内移行においてAZMは中耳粘膜, 副鼻腔 (上顎洞, 篩骨洞) 粘膜, 扁桃, 顎下腺へ良好な移行を示し, 長時間組織内濃度が維持された.
    総症例180症例に原則として3日間投与した結果, 効果判定が可能であつた139例の有効率は中耳炎73%, 副鼻腔炎77%, 扁桃炎79%, 咽喉頭炎74%など全体として76 %であつた. 細菌学的効果は, 全体で85%の菌消失率であつた. 副作用は1例 (発現率1%), 臨床検査値の異常変動は計8例 (発現率6%) に認められた.
    以上の結果から, AZMは中耳炎, 副鼻腔炎, 扁桃炎, 咽喉頭炎などをはじめとする耳鼻咽喉科領域感染症に対して有用性の高い薬剤と考えられた.
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