耳鼻と臨床
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42 巻, 1 号
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  • 山口 隆, 隈上 秀伯
    1996 年 42 巻 1 号 p. 1-6
    発行日: 1996/01/20
    公開日: 2013/05/10
    ジャーナル フリー
    耳管機能検査を4歳から14歳の正常な小児224耳, 24歳から74歳までの正常成人106耳を対象に行い, 4歳から11歳までの小児1484人 (2968耳) に対しティンパノメトリーの年齢別検査を行い, さらに, 1988年から1992年の間に当科外来を受診した滲出性中耳炎の年齢別患者数調査を行ったところ以下の結果が得られた.
    1) 耳管機能が圧依存型から嚥下依存型へ変化し始める年齢とティンパノグラムB型・ C型の割合が減少しはじめる年齢, 小児滲出性中耳炎の患者数が減少しはじめる年齢はいずれも8歳からであった.
    2) 耳管機能の劣化は50歳代から生じはじめ, 成人型滲出性中耳炎も50歳代に多発した.
  • 後藤 穣, 青木 秀治, 馬場 俊吉, 八木 聰明
    1996 年 42 巻 1 号 p. 7-11
    発行日: 1996/01/20
    公開日: 2013/05/10
    ジャーナル フリー
    神経耳科学的検査の中で, 聴性脳幹反応 (ABR) は聴神経腫瘍の診断において陽性率が高く, 有用な検査であるとされてきた. これまで, ABRの聴神経腫瘍の診断における陽性率は90%か, それ以上という報告が多かつた.
    近年, 画像診断技術が進歩し, ABRに異常を示さない聴神経腫瘍症例の報告が散見されるようになつた. また, いくつかの報告ではこれまでの常識的な数字より陽性率が低いと言われている.
    今回われわれは日本医科大学耳鼻咽喉科で聴神経腫瘍と診断された50例 (55耳) について検討した. ABRの異常は, 1. 波の一部消失2. IV波間潜時の延長3. 無反応, の3種に大別した. その結果, 11耳 (20%) は波の一部消失があり, 27耳 (54%) は1-V波間潜時の延長を認め, 16耳 (30%) は無反応だつた. 今回の検討ではすべての症例でABRの異常を認めた.
    したがつて, ABR検査は聴神経腫瘍の診断において, 慎重に検査すればやはり有用な検査であることが確かめられた.
  • 上野 則之, 服部 康夫, 柏戸 泉, 大橋 晋吾, 鈴木 重剛, 町野 満, 山本 薫, 鈴木 栄一, 松生 愛彦, 渡辺 芳江, 中村 ...
    1996 年 42 巻 1 号 p. 12-17
    発行日: 1996/01/20
    公開日: 2013/05/10
    ジャーナル フリー
    1991年6月からの1年6ヵ月の間に, 耳介後部結合組織および下鼻甲介粘膜を用いた乳突充填術を行つた. 中耳真珠腫の15症例16耳に対しては, 一時的に外耳道後壁を除去し真珠腫上皮を清掃した後, また, 乳突創腔障害を起こした再手術の11症例12耳では病巣の清掃を行つた後, 耳介後部結合組織を用いた乳突充填を行つた. さらに, 鼓室粘膜の状況などにより, 乳突洞口, 上鼓室, 鼓室に下鼻甲介粘膜を移植する方法を11例12耳に対して併用した. 術後耳漏を4耳14%に, 外耳道後壁の拡大を6耳21% に, 鼓膜の再穿孔を1耳4%にみたが, 乳突創腔の感染はみられなかつた. この充填法は, 生理的で組織の萎縮が少なく, 簡便で有用な方法であると考える.
  • 本多 一至, 東 啓子, 牧嶋 和見
    1996 年 42 巻 1 号 p. 18-21
    発行日: 1996/01/20
    公開日: 2013/05/10
    ジャーナル フリー
    通年性鼻アレルギー患者27症例を対象として, 外来において80%w/vトリクロール酢酸の局所塗布療法を施行した. 鼻アレルギーの3主徴に対し本療法はそれぞれ効果を示した. 本療法施行後長期観察を行つた結果, 60%の症例に症状の再燃・増悪を認めたが, 治療後正しく抗アレルギー剤を服用できればこれを防止できた. 一方, この治療法では特に重篤な副作用を認めなかつた. したがって, トリクロール酢酸局所塗布療法は有効で安全かつ簡便な治療法と考えた.
  • 岸本 麻子, 加藤 真子, 稲村 達哉, 松本 あゆみ, 名和 照晃, 井野 素子, 井野 千代徳, 山下 敏夫
    1996 年 42 巻 1 号 p. 22-25
    発行日: 1996/01/20
    公開日: 2013/05/10
    ジャーナル フリー
    気管支喘息に合併した頸部・縦隔気腫症例の報告は多いが, 発声時に発症した症例の報告は極めて少ない.
    一般に気腫の発生機序としては, 気道内圧の急激な上昇により肺胞内圧が高くなり, その結果, 部分的な肺胞の破綻を生じ, 肺間質内に空気が漏出して縦隔気腫へと移行し, さらには頸部皮下気腫を形成するとされている.
    今回筆者らは, 強度発声時に発症した頸部・縦隔気腫の3症例を経験し, 気腫の原因部位が声門下, 頸部気管である症例の存在も考えられることを報告した.
  • 経皮的摘出の試み
    長山 郁生, 大尾嘉 宏巳
    1996 年 42 巻 1 号 p. 26-29
    発行日: 1996/01/20
    公開日: 2013/05/10
    ジャーナル フリー
    57歳男性, 耳下腺管内唾石の1症例を報告した. 患者は頬部の腫脹および痛みを過去6ヵ月にわたつて繰り返していた. 単純X-P, CT検査, 超音波検査などによる画像診断によつて, 咬筋後縁近くに存在する耳下腺管内唾石と診断された. 唾石摘出が必要と判断されたが, 耳下腺切除術は過大な治療法であると考えられ, また唾石の占拠部位が耳下腺前端近くにあつたため口腔外からの経皮的切開により摘出を行つた. 術前にステノン管を青染しておくと神経との区別が容易となる. この手術法では神経へのアプローチが盲目的になるが, 注意深く操作をすすめることにより神経を損傷することなく露出することができた. 唾石摘出後腺管内にチューブを留置し術をおえた. 術後合併症などは特にみとめられなかつた. この方法は症例によつては簡便で有用な方法であると考えた.
  • 嶋崎 孝嗣, 吉田 義一
    1996 年 42 巻 1 号 p. 30-33
    発行日: 1996/01/20
    公開日: 2013/05/10
    ジャーナル フリー
    被刺激型脂漏性角化症 (irritated seborrheic keratosis) は, 脂漏性角化症に物理的・化学的刺激, あるいは感染, 炎症が加わり, 組織学的に有棘細胞の著明な増殖を生じたものと定義されているが外耳道に発症することは極めて稀で, 過去2例の報告があるのみである. われわれは17歳男性の右外耳道に生じた被刺激型脂漏性角化症の1例を経験した. 病理生検で錯角化症, 棘細胞症, 多くのsquamous eddiesなどの特徴的所見が見られた. 治療として腫瘤摘出術, 遊離植皮術が行なわれた. 術後4年4ヵ月以上経過した現在でも, 再発の兆候は見られていない.
  • 辻 恒治郎, 西山 正司, 田島 和幸
    1996 年 42 巻 1 号 p. 34-37
    発行日: 1996/01/20
    公開日: 2013/05/10
    ジャーナル フリー
    咽後膿瘍は, 近年抗生物質の発達で比較的稀な疾患となつている. しかし咽後膿瘍は現在でも散見され, 小児においては呼吸困難を来す深頸部感染症として重要である. 今回われわれは, 呼吸困難を来した乳児咽後膿瘍の1例を経験したので報告する. 症例は11ヵ月男児, 左顎下部腫脹, 発熱にて当院小児科入院となつた. 翌日, 呼吸困難のため当科紹介となつた. 頸部高圧X線, 喉頭ファイバースコープにより咽後膿瘍と診断した. 全身麻酔下, 口内法による緊急切開排膿を行い症状は著明に改善し, 術後の化学療法により3週間後には完治した. 咽後膿瘍における早期診断の重要性と治療法について考察を行つた.
  • その4: 伝音損失量の定義
    ト部 晋平, 浜村 亮次, 片岡 真吾, 加藤 太二, 川内 秀之
    1996 年 42 巻 1 号 p. 38-41
    発行日: 1996/01/20
    公開日: 2013/05/10
    ジャーナル フリー
    1) 外耳・中耳伝音系 (気導経路) の障害の程度を表す量を伝音損失量 (conduction loss, CL) とよぶ. CLは, 伝音障害のない気導経路を基準とした任意の気導経路の相対的な減衰量である.
    2) CLと気導音の両耳間移行減衰量 (IaA) は互いに制約を受けない独立した減衰量である. そのため, A-B gapはCLとIaAのうち, より小さい方に等しくなる. このことから, A-BgapとIaAの関係式 (A-Bgap≤IaA) が導き出される.
    3) 気導・骨導経路での物理的な音圧変化を相対的にみると, 音 (気導音・骨導音) は一定量 (IaA・IaB・CL) 減衰して内耳へ到達するとみなせる.
    4) 量を表すdBをdByと表示した. レベルと量は区別すべきである.
  • 馬場 駿吉, 宮本 直哉, 大西 信治郎, 宗 永浩, 伊藤 依子, 市川 銀一郎, 江渡 篤子, 桜井 淳, 板橋 隆嗣, 和田 昌士, ...
    1996 年 42 巻 1 号 p. 42-59
    発行日: 1996/01/20
    公開日: 2013/05/10
    ジャーナル フリー
    耳鼻咽喉科領域感染症に対するgrepafloxacin (GPFX) の臨床的検討を行い, 次の成績を得た.
    1. 臨床効果は, 中耳炎88.3%, 外耳炎80.0%, 副鼻腔炎83.7%, 扁桃炎84.6%, その他の感染症80.0%で, 全体では85.1%の有効率であつた.
    2. 分離菌別細菌学的効果は, グラム陽性菌91.2%, グラム陰性菌94.4%で, 全体では91.3%の消失率であつた.
    3. 副作用は150例中9例 (6.0%) に認められ, 消化器系のものが中心であつた. 臨床検査値異常は83例中6例 (7.2%) に認められ, s-GPTの上昇が中心であつた.
    4. 有用性は, 中耳炎85.2%, 外耳炎72.7%, 副鼻腔炎88.4%, 扁桃炎84.6%, その他の感染症80.0%で, 全体では84.0%の有用率であつた.
    以上の成績より, GPFXは耳鼻咽喉科領域感染症に対して有用性の高い薬剤であると考えられた.
  • 1996 年 42 巻 1 号 p. 63-67
    発行日: 1996/01/20
    公開日: 2013/05/10
    ジャーナル フリー
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