耳鼻と臨床
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44 巻, 4Supplement3 号
選択された号の論文の5件中1~5を表示しています
  • 彭 解人, 程 雷, 黄 暁明, 三好 彰, 陳 潔珠
    1998 年 44 巻 4Supplement3 号 p. 609-623
    発行日: 1998/09/20
    公開日: 2013/05/10
    ジャーナル フリー
    上咽頭癌 (nasopharyngeal carcinoma: NPC) は中国では最も多い悪性腫瘍の一つである。疫学的には広東省を中心とする中国南部の住民に多発する傾向がある。疫学的特徴としては、著しい地域集中性、群体易感性と家族集中現象および発癌率の一定性がみられる。病因学研究では、発癌の要因にEBウィルスの関与をはじめとする生活環境因子の影響が強い。中国におけるNPCと遺伝子との関連性について、癌遺伝子ras、c-myc、c-erB-2と癌抑制遺伝子RB、p53、p16などが注目されている。なお、遺伝子TX の発現に関して検討した。早期診断について、1986-1995年、中山医科大学癌センターは広東省のNPC高発生地域で10万人の住民を対象として集団健診を行った。健診の結果に基づき、NPC高発生地域での癌健診方式を提案し、NPCの前癌状態、前癌病変の判断基準を定めてきた。臨床分類に関しては、1992年に中国は新たなNPC臨床分類法を出した。この分類法はUICC分類法 (1996、改訂案) と比較して、両分類法とも大体一致しているが、NPC臨床分類法のほうが癌の進展と浸潤程度をより重視し、TN 分類についても合理性が高い。治療の面では、NPCは放射線感受性の高いものが多いので放射線治療が主体となる。多分割照射法・加速多分割照射法および個体化治療方案も重視されている。三次元照射治療はNPC放射線治療の技術で最も技術的に進歩をとげたものである。放射線療法に化学療法、外科治療を併用することで、生存率とQOLの改善はより効果的になる。前癌病変阻害剤と遺伝子治療に関する研究は重要な課題であり、新たな治療法として期待が持たれている。
  • 最近5年間の経験
    彭 解人, 鄭 億慶, 張 華, 劉 均遅, 陳 潔珠, 許 耀東, 丁 健慧, 盧 善亭, 三好 彰, 程 雷
    1998 年 44 巻 4Supplement3 号 p. 624-629
    発行日: 1998/09/20
    公開日: 2013/05/10
    ジャーナル フリー
    われわれは、1992年-1996年の間に行われた17例の下咽頭・頸部食道癌術後の再建について、本論文で検討した。病期分類では、Stage III、IVの進行癌が15例で全体の88 %を占めた。初診時に頸部リンパ節転移を認めた症例は10例の59%であった。17例のうち、下咽頭頸部食道再建について (1) 残存粘膜による一次的縫合2例、(2) 遊離前腕皮弁による再建1例、(3) 遊離大腿前外側皮弁による再建2例、(4) 遊離空腸による再建1例、(5) 胃管による再建11例、を経験した。なお、11例に患側頸部郭清、5例に患側甲状腺合併切除を行った。また全症例で、術後照射を追加した。予後は生存10例 (59%)、腫瘍死6例 (35%)、手術関連死1例 (6%) であった。生存例の術後観察期間は1年2カ月から5年2カ月であった。1年生存率は88% (15/17)、2年生存率は73% (8/11)、3年生存率は60% (3/5) であった。現在、長期生存率を観察中である。
  • 程 雷, 殷 敏, 卜 行寛, 三好 彰, 今田 隆一, 彭 解人
    1998 年 44 巻 4Supplement3 号 p. 630-633
    発行日: 1998/09/20
    公開日: 2013/05/10
    ジャーナル フリー
    突発難聴を初発症状とした聴神経腫瘍の2症例を報告した。耳鼻咽喉科検査で強く聴神経腫瘍を疑わせる所見がなく、MRIで診断が可能であった。本論文では、聴神経腫瘍の症状ならびに診断と治療につき若干の文献的考察を行った。
  • その日本との比較
    由 栄, 田口 喜雄, 三好 彰, 久道 茂, 程 雷, 殷 敏, 徐 其昌, 殷 明徳, 彭 解人, 陳 潔珠, 三邉 武幸, 国井 修
    1998 年 44 巻 4Supplement3 号 p. 634-643
    発行日: 1998/09/20
    公開日: 2013/05/10
    ジャーナル フリー
    日本と中国におけるわれわれの9651例の鼻アレルギー疫学調査から、日本人の鼻アレルギー有病率に較べ中国人の有病率が顕著に低いことが明らかとなった。この差は人種的な相違とは考えにくく、鼻アレルギーの背景に存在する社会的経済的要因の差異によるものと推測される。日本はすでに社会的経済的発展を遂げ、鼻アレルギーも増加している。増加してしまった鼻アレルギーについて、過去を振り返って増加要因解析を試みてもそれは困難と思われる。それに対し現在増加中の中国において、鼻アレルギーの増加傾向を確認しながら社会や経済の変貌を観察できるならば、鼻アレルギーの増加要素を明確に特定できる可能性がある。それは逆に、鼻アレルギーを始めアレルギー性疾患の原因究明に役立ち、日本のアレルギー性疾患解決、そして中国のアレルギー性疾患予防の糸口となるかも知れない。
  • 三好 彰, 彭 解人, 陳 潔珠, 程 雷, 殷 敏, 徐 其昌, 殷 明徳, 由 栄, 田口 喜雄, 陳 萍, 塚原 保夫, 国井 修, ...
    1998 年 44 巻 4Supplement3 号 p. 644-666
    発行日: 1998/09/20
    公開日: 2013/05/10
    ジャーナル フリー
    近年の日本における鼻アレルギー激増について、原因として寄生虫の減少に注目する意見がある。それに対しわれわれは、日本より鼻アレルギー有病率の低い中国で、医学生を対象として鼻アレルギー調査に、検便、血清IgE抗体値測定、好酸球測定を並行して実施した。その結果、鼻アレルギー有病率は低いこと、寄生虫感染率も決して高くないこと、寄生虫感染例で血清IgE抗体値も好酸球数もさほど上昇していないこと、寄生虫感染例でアレルギー皮膚反応検査陽性例の少なくないこと、が判明した。臨床的に寄生虫感染は、鼻アレルギー発症を必ずしも抑制していないものと思われ、戦後の寄生虫感染の減少が日本の鼻アレルギーを増加せしめたとは考えにくい。鼻アレルギー増加要因としてわれわれは、アレルゲンの増加がもっとも深く関与しているものと考察した。日本スギと同一の性質を持つスギの植生は中国でも見られ、花粉症の原因となり得る。スギ花粉症は、日本独特のものとは断言できない。
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