耳鼻と臨床
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46 巻, 3 号
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  • 酒井 昇, 松島 純一, 西澤 典子, 國分 武彦, 山地 誠一, 小市 健一
    2000 年 46 巻 3 号 p. 175-179
    発行日: 2000/05/20
    公開日: 2013/05/10
    ジャーナル フリー
    外耳皮膚片を用いた外来的鼓膜形成術の方法と術後成績を紹介した。術式としては経外耳道的に鼓膜麻酔液で鼓膜を麻酔後、穿孔縁周囲上皮を除去し外耳の皮膚片を採取してオーバーレイ法で置くものである。この方法を30例の患者すなわち、慢性中耳炎24例、滲出性中耳炎に対するチューブ留置後の穿孔5例、外傷性穿孔1例に実施した。初回手術で83.3% (25/30例) の患者の穿孔の閉鎖に成功し、5例の再穿孔例は再手術でそれぞれ穿孔の閉鎖に成功した。われわれの方法は手技が比較的簡単であり、外来手術に適した方法と考えられる。また麻酔および手術侵襲が少なく、外耳道パッキングや生体接着剤を必要とせず、美容的にも優れているなどの利点を有する。今後さらに症例を増やし本法の有用性を検討する予定である。
  • 宮崎 和浩, 石川 雅洋, 杉原 功一, 楠 威志, 村田 清高
    2000 年 46 巻 3 号 p. 180-184
    発行日: 2000/05/20
    公開日: 2013/05/10
    ジャーナル フリー
    laryngoceleは1829年Larryが最初の症例を報告し、その後1863年Virchowによって命名されたといわれている。本症患は喉頭室より上方に伸びたモルガニー小嚢 (laryngeal saccule) に空気が入りこみ拡大したものと考えられている。今回、両側反回神経麻痺による気道狭窄を伴う気道内圧の上昇が原因と考えられる外側型laryngocele症例を経験した。症例は57歳男性、左顎下部腫脹を主訴として来院した。腫留は表面平滑、弾性硬であり、喉頭断層撮影にて左側頸部に辺縁が滑らかな透亮像を認めCT所見にても嚢胞疾患が疑われたため、外切開にて腫留を摘出した。腫留は甲状舌骨間膜由来であった。病理所見は嚢胞の内側面は多列線毛上皮によって覆われており、上皮下には少数のリンパ球を主体とする炎症細胞浸潤を認めlaryngoceleと診断した。
  • 山本 英一, 東 祐史, 田村 奈々子, 垣内 仁
    2000 年 46 巻 3 号 p. 185-189
    発行日: 2000/05/20
    公開日: 2013/05/10
    ジャーナル フリー
    症例は70歳男性。5年前から認めた耳下腺部腫脹が増大したため受診した。腫瘍は両側性で、CT、MRIにて右側は深葉にも存在した。腫瘍マーカーはCEA: 11.3ng/ml、SCC: 2.9ng/mlと高値を呈し、右側を摘出したところ、Warthin腫瘍の病理診断を得、CEA、SCCともに低下した。左側切除にて、腫瘍マーカーは正常範囲となり、病理も右側と同様であった。さらに免疫組織学的にCEAとCA19-9およびサイトケラチンの腫瘍内の局在についても検討した。Warthin腫瘍で腫瘍マーカーが陽性であったこと、手術によって正常化したことは興味あることである。
  • 松山 篤二, 宮崎 純二, 高木 誠治, 津田 邦良, LIQING WU, 米満 伸久, 井之口 昭
    2000 年 46 巻 3 号 p. 190-196
    発行日: 2000/05/20
    公開日: 2013/05/10
    ジャーナル フリー
    当科において原発不明頸部転移癌の診断で初回治療を開始した16例について検討した。病理組織別には扁平上皮癌10例、腺癌2例、未分化癌1例、移行上皮癌1例、濾胞癌1例、悪性リンパ腫1例であった。このうち最終診断が初回生検時と異なる診断となったものが2例あった。転移したリンパ節は上深頸リンパ節7例、中深頸リンパ節7例に次いで、鎖骨上リンパ節が6例であった。原発巣が判明したのは6例であった。このうち経過中に判明したものが3例で、下咽頭、歯肉、膀胱各1例であった。剖検で原発巣が判明したものは3例で肺、胆嚢、子宮頸部であった。剖検でも原発巣が判明しなかったものは3例であった。病理学的に鰓性癌が疑われたものが1例あった。節外浸潤の有無を検討し得た12例のうち11例で節外浸潤が認められた。2年累積生存率は33.3%であった。これらの症例の取り扱いにおいては、早期に頸部郭清術を含めた積極的治療を開始し、さらに転移巣の病理組織像から検査を絞り込むことなく治療中も原発巣検索を行っていく必要があると考えられた。
  • 香取 秀明, 鵜飼 潤, 宇留間 哲也, 吉積 隆, 佐竹 文介
    2000 年 46 巻 3 号 p. 197-200
    発行日: 2000/05/20
    公開日: 2013/05/10
    ジャーナル フリー
    今回われわれは、群馬県立がんセンター頭頸科で過去25年間に経験した原発巣不明頸部リンパ節転移癌 (以降原発不明頸部癌と略す) 23例の臨床的検討を行った。23例のうち治療途上で原発巣が判明したのは10例であり、剖検で原発巣が判明したのは5例であった。原発不明頸部癌の診断においては頭頸部粘膜面の十分な検索と常に他臓器原発の可能性も念頭に置いておくことが必要と思われた。治療に際しては、たとえ原発巣不明であっても可能な限り頸部郭清術が行われるべきと思われた。
  • 松尾 聡, 中原 啓, 浜崎 理恵, 竹内 裕美, 生駒 尚秋
    2000 年 46 巻 3 号 p. 201-204
    発行日: 2000/05/20
    公開日: 2013/05/10
    ジャーナル フリー
    症例は70歳の男性で、主訴は頸部痛であった。下咽頭癌が再発し腫瘍が頸椎に浸潤していた。疼痛に対してモルヒネ投与を90mg/dayの投与量から経口投与を開始し、漸増し500mg/dayの投与量で頸部痛はコントロールされた。1ヵ月後下咽頭腫瘍が増大し疼痛が強くなったため、モルヒネ投与を8mg/hの静脈内投与に替え、腫瘍の浸潤の進行とともに急速に400mg/hまで増量した。呼吸抑制はなく、痛みは良くコントロールされた。
  • 溝上 宏幸, 草野 謙一郎, 澤津橋 基広, 宮崎 純二, 高木 誠治, 井之口 昭
    2000 年 46 巻 3 号 p. 205-209
    発行日: 2000/05/20
    公開日: 2013/05/10
    ジャーナル フリー
    悪性線維性組織球腫 (malignant fibrous histiocytoma; MFH) は全身の骨・軟部組織に生じる肉腫で、頭頸部では鼻・副鼻腔に原発することが多い。今回われわれは、術前診断に苦慮した上顎洞原発のMFHを経験したので報告する。症例は27歳の男性。慢性副鼻腔炎にて加療中であり、臨床経過ならびに病理学的にその急性増悪との鑑別が困難であった。組織学的に腫瘍細胞は線維芽細胞様細胞と組織球様細胞よりなり、免疫染色ではα1-antitrypsinとα1-antichymotrypsinが陽性であり、上顎洞原発MFH と診断した。治療法については、外科療法あるいは外科療法に放射線・化学療法を併用する治療が推賞されているが、いまだ確立したものではなく、今回われわれは、上顎洞部分切除術のみを行った。若年者であっても難治性の片側性副鼻腔炎がある場合には腫瘍性病変の存在を考慮すべきであると再認識した。
  • 篠 昭男, 吉原 俊雄, 篠 美和, 山崎 たくみ, 石井 哲夫, 児玉 章
    2000 年 46 巻 3 号 p. 210-216
    発行日: 2000/05/20
    公開日: 2013/05/10
    ジャーナル フリー
    鼻中隔原発腺様嚢胞癌の11年1ヵ月の長期にわたる臨床経過を報告した。症例は47歳男性で鼻閉を主訴に来院した。右鼻中隔前下方に膨隆あり、生検にて腺様嚢胞癌と診断された。硬口蓋を含め腫瘍摘出を行い術後照射、化学療法を施行した。切除断端陰性であったが5年4ヵ月後再発し拡大手術の後、小線源治療を施行し現在まで再発および遠隔転移を認めていない。鼻中隔原発腺様嚢胞癌の本邦報告例は自験例を含め15例であった。
  • 山崎 たくみ, 吉原 俊雄, 石井 哲夫, 清水 俊彦
    2000 年 46 巻 3 号 p. 217-222
    発行日: 2000/05/20
    公開日: 2013/05/10
    ジャーナル フリー
    鼻副鼻腔癌の発生頻度は上顎洞原発が多く篩骨洞は比較的少ない。病理組織学的に約60%が扁平上皮癌であり腺癌は約4%にすぎない。今回われわれは脳外科にて脳腫瘍として治療された後、篩骨洞原発腺癌と診断した1例を経験した。症例は53歳男性で頭痛、嘔気、意識障害にて近医脳外科で巨大脳腫瘍とし手術された。病理検査で腺癌と診断され原発巣検索のため紹介され、検査にて篩骨洞原発腺癌と診断された。本邦の篩骨洞原発腺癌の報告例は検索し得た限り14例であった。
  • スギ花粉症のQOLと背景因子
    荻野 敏, 入船 盛弘, 坂口 喜清, 丹生 真理子, 馬場 謙治, 三宅 陽子, 原田 隆雄
    2000 年 46 巻 3 号 p. 223-229
    発行日: 2000/05/20
    公開日: 2013/05/10
    ジャーナル フリー
    前回、スギ花粉症240例を対象に、世界的に認知されたHRQOLであるSF-36調査表を用い、スギ花粉飛散ピーク時のQOLを検討、報告した。今回は前回と同様な対象でQOLに影響を与える背景因子などをさらに細かく解析した。罹病期間とは一定の関係は見られなかった。受診回数の関係では、回数が多い症例ほどQOLスコアは低下を示した。合併症との関係では前回と同様QOLに極めて影響を与えるという成績が得られ、疾患数が増すほどQOLスコアは低下する傾向が見られた。QOLと喫煙、飲酒との関係では、両者に違いが見られた。すなわち、喫煙はQOLに影響を与えない結果であったのに対し、飲酒ではいずれのサブ・スケールでも飲酒する群では飲酒しない群に比較しQOLスコアは高値を示していた。職種では、全体としてはほとんど違いが見られなかったが、GH、REでは学生で最もQOLスコアは低く、VT では無職が最も高いなどの成績が見られた。外出機会の頻度、学生では受験、試験などと関係しているのかもしれない。以上のように、スギ花粉症においてもQOLへの影響は少なくなく、このような面を考慮して患者の治療、生活指導に当たっていくことが重要と思われた。
  • 古川 太一, 田村 悦代, 小倉 雅實, 甲能 直幸, 北原 哲
    2000 年 46 巻 3 号 p. 233-238
    発行日: 2000/05/20
    公開日: 2013/05/10
    ジャーナル フリー
    触診不可能である喉頭病変の診断において視診は重要な診断手技であり、肉眼的所見と組織学的所見が一致しなかった症例を検討することは極めて重要である。症例は71歳男性で6ヵ月続く嗄声を主訴に紹介を受けた。Blinkman指数は2,000。両側声帯の前中1/3に病変を認めた。左声帯の病変は声帯遊離縁部に存在し表面不整で白色病変を伴い腫瘍性病変を疑わせた。右声帯の病変は声帯のやや下唇に存在し表面平滑で、左側病変と完全な対面ではなかったが反応性の結節を思わせた。ストロボスコピーでは両側声帯共に、病変より前方には粘膜波動を認めたが、病変から後方にかけては粘膜波動を認めなかった。喉頭顕微鏡下精査を行った結果、右声帯病変は高分化型扁平上皮癌で、左声帯病変は上皮内癌という結果であった。両側声帯に声帯結節様に孤立性に発生した本症例の術前診断がどこまで可能であったか再検討を加えた。
  • 西山 耕一郎, 山中 盾, 廣島屋 孝, 横堀 学, 竹田 昌彦, 廣瀬 肇, 岡本 牧人
    2000 年 46 巻 3 号 p. 239-240
    発行日: 2000/05/20
    公開日: 2013/05/10
    ジャーナル フリー
  • 手術における問題点とその対策
    角田 晃一
    2000 年 46 巻 3 号 p. 241-242
    発行日: 2000/05/20
    公開日: 2013/05/10
    ジャーナル フリー
    手術施行に際してはこれまでの経験から術後約3ヵ月間は自・他覚的に声の改善は期待できず。術後3-6ヵ月頃より、音声および発声持続時間の改善が認められる。考えられることは移植筋膜片が声帯内で結合組織として、何らかの変化を来しているものと思われる。この点がこれまでの音声外科手術との決定的な違いである。従って術前に十分なインフォームド・コンセントが必要である。声帯内側頭筋膜自家移植1) は現在のところ最長で27カ月の経過観察であり今後さらに検討を加える必要がある。長期経過での成績・問題点などいずれ報告する所存である。また、移植片が声帯内でどう変化するものか、今後の実験的考察が望まれる。
  • 2000 年 46 巻 3 号 p. 243-245
    発行日: 2000/05/20
    公開日: 2013/05/10
    ジャーナル フリー
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