耳鼻と臨床
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47 巻, 3 号
選択された号の論文の9件中1~9を表示しています
  • 宮崎 和浩, 石川 雅洋, 木村 毅, 吉川 構, 村田 清高
    2001 年 47 巻 3 号 p. 167-170
    発行日: 2001/05/20
    公開日: 2013/05/10
    ジャーナル フリー
    カルチノイド腫瘍は、主に消化管、気管、気管支などの原腸由来の臓器より発生する腫瘍で、中耳に発生する事は非常にまれであり、本邦では過去10例の報告があるのみである。症例は、60歳女性、左難聴、左耳閉感を主訴として来院し、中耳腫瘍または中耳真珠腫を疑われ左鼓室内腫瘍摘出術を施行した。術中迅速病理にて耳垢腺腺腫と診断されたが、永久標本にて中耳カルチノイド腫瘍と診断された。中耳に腫瘍性病変を認めた場合中耳カルチノイドも念頭に置き診断や治療を行う必要がある。
  • 宮城 司道, 久保田 由紀子, 古瀬 幸子, 池田 研, 森園 哲夫
    2001 年 47 巻 3 号 p. 171-173
    発行日: 2001/05/20
    公開日: 2013/05/10
    ジャーナル フリー
    外傷性鼓膜穿孔の際の骨導値の変化に関する報告はまだ見られない。今回われわれは外傷性鼓膜穿孔の5症例について、その骨導値の変化を検討したところ、聴力障害は全周波数帯域に起こり、低周波数帯域では著明な改善が認められることを見出した。その聴力障害のメカニズムとして、急激な内耳への物理的な衝撃がTTSおよびPTSを起こすことを推測した。
  • 玉城 三七夫, 宇良 政治, 安田 忍, 真栄田 裕行, 野田 寛
    2001 年 47 巻 3 号 p. 174-178
    発行日: 2001/05/20
    公開日: 2013/05/10
    ジャーナル フリー
    中耳の奇形は耳介や外耳道などの外表奇形を伴う場合が多いとされているが、中耳単独の奇形も必ずしもまれではない。1993年4月から1998年3月までに当科が経験した、耳介・外耳道奇形を伴わない中耳奇形10症例14耳を1: キヌタ骨長脚の異常、2: アブミ骨底板の固着、3: アブミ骨下部構造の欠損の3群に分類し、性別、左右差、術式、手術による聴力の変化について検討した。その結果、中耳奇形全体では性差, 左右差はみられず、術前の平均聴力は1群が42dB、2群55dB, 3群71dBであった。手術による聴力の改善は全例で良好であり、各群とも約20dB前後まで平均聴力の改善を得られた。中耳奇形症例に対する、手術的治療の効果は著しいものであった。
  • 長内 洋史, 渡邉 昭仁, 川堀 眞一, 原渕 保明
    2001 年 47 巻 3 号 p. 179-184
    発行日: 2001/05/20
    公開日: 2013/05/10
    ジャーナル フリー
    咽後膿瘍の発生頻度は抗生物質の発達により減少した。最近筆者らは成人の咽後膿瘍の1例を経験した。患者は32歳男性で、最初に扁桃周囲炎に罹患し、治療10日後に頸部の痛みと頸部の回転運動の制限を感じた。咽後膿瘍の診断はCT所見からなされ、抗生物質の点滴静注が行われた。患者は切開することなく、1週間で治癒した。本症例を含め、1988年以後に本邦で報告されている咽後膿瘍の52例を検討した。この疾患の年齢、原因、細菌検査、CTの有用性および治療について述べた。
  • 国部 勇, 東松 琢郎, 高橋 光明, 原渕 保明
    2001 年 47 巻 3 号 p. 185-189
    発行日: 2001/05/20
    公開日: 2013/05/10
    ジャーナル フリー
    甲状軟骨壊死は頭頸部癌に対する放射線治療の合併症の一つで、まれではあるが保存的治療に抵抗し最終的には喉頭全摘術を余儀なくされることもある。今回われわれは、上咽頭癌頸部リンパ節転移の治療として放射線治療を受けた後、長期を経過し、甲状軟骨壊死を発症した症例を経験したので報告する。症例は65歳男性。8年前に他医にて上咽頭癌頸部リンパ節転移の診断を受け、化学療法および放射線根治照射を施行された。その後、残存頸部リンパ節に対して両側頸部郭清術を施行された。治療後の経過は良好で再発・転移を認めなかったが、急性上気道炎を契機として甲状軟骨壊死に伴う咽頭皮膚痩を生じた。頻回の生検にて癌の再発は否定された。軟骨の壊死は部分的であり、喉頭の温存が可能であった。甲状軟骨部分切除術、咽頭皮膚瘻切除術、DP皮弁による再建術を施行し、発声機能、嚥下機能とも満足できる結果が得られた。
  • 山本 一宏
    2001 年 47 巻 3 号 p. 190-193
    発行日: 2001/05/20
    公開日: 2013/05/10
    ジャーナル フリー
    甲状腺良性疾患による反回神経麻痺はまれと言われている。今回初診時に声帯麻痺が認められず、2週後の再診時に左声帯麻痺が認められた甲状腺嚢胞例を経験した。血液検査では炎症所見が認められ、CT検査で左傍気管部に巨大な嚢胞性腫瘤が認められた。またこの腫瘤により気管は右側に偏位、圧排されており、前頸筋群と思われる部位には肥厚所見が認められ、嚢胞壁との境界は不明瞭であった。術中所見、病理組織検査よりa) 甲状腺嚢胞による反回神経の圧迫、b) 甲状腺嚢胞による反回神経の牽引、伸展、c) 嚢胞液漏出により反回神経周囲に波及した炎症、が反回神経麻痺 (声帯麻痺) の原因になったものと考えた。術後約2カ月で左声帯麻痺は完全に回復した。
  • クリック音の極性変化による病態解析
    近藤 毅, 森園 哲夫, 宮城 司道, 今村 明秀, 白石 君男
    2001 年 47 巻 3 号 p. 194-202
    発行日: 2001/05/20
    公開日: 2013/05/10
    ジャーナル フリー
    メニエール病の実験モデルとして内リンパ水腫モルモットを作成し、クリック音の極性を変化させ経時的にCAPの潜時と振幅を測定した。N1の潜時は水腫側で術後早期にC相のみが延長し、術後の週数が進むとR相、C相ともに延長していた。また、R-C値は術後早期に延長したが、それ以降の週数では一定度以上の延長傾向を認めなかった。このことは、内リンパ水腫が生じると初期に基底板の偏位を来し、音刺激による基底板の下方への偏位が上方への偏位よりも強く障害されるが、それ以降の時期は基底板の偏位は非常に緩やかに進行するものと考えられた。一方、振幅は水腫側で術後早期よりR相、C相ともに術後週数に比例して減少しており、その減少は潜時と比べ急激であった。このことは、水腫の早期に基底板の偏位が起きるとそれに伴い外有毛細胞の機能的障害が生じ、この障害は術後週数に比例して進行していくものと考えられた。
  • 二井 一則, 橋本 敏光, 佐藤 淳子, 松原 篤, 新川 秀一
    2001 年 47 巻 3 号 p. 203-207
    発行日: 2001/05/20
    公開日: 2013/05/10
    ジャーナル フリー
    Interleukin-6 (IL-6) がラセン神経節細胞の成長や細胞保護に対してどのような効果を示すのか培養細胞を用いて研究を行った。また、neurotrophin-3 (NT-3) のラセン神経節細胞に対する生存効果はよく知られているが、IL-6との同時併用についても検討した。生後5日のマウスラセン神経節を単離し各因子を添加して培養したのち、neurofilamentに対する抗体を用いて免疫染色を行い神経突起を持っ神経細胞数を生存細胞として計測した。IL-6群では用量依存性に生存細胞数が有意に増加し、さらにIL-6、NT-3併用群では相加的な効果が認められた。これまで知られている細胞栄養因子に加えてIL-6もラセン神経節細胞の生存に効果を有することが示された
  • 稲葉 順子, 大橋 充, 松田 圭二, 小宗 静男, 松浦 宏司, 外山 勝浩, 竹中 美香, 定永 正之, 鳥原 康治
    2001 年 47 巻 3 号 p. 208-215
    発行日: 2001/05/20
    公開日: 2013/05/10
    ジャーナル フリー
    We tried to investigate the effectiveness of Faropenemsodium (FRPM) in the treatment of infections otorhinolaryngological disease. FRPM was administered to 91 patients. Clinical efficacy was 65.5% (21/32 cases) n ear diseases, 81.8% (18/22) in nasal diseases, 78.8% (26/33) in pharyngeal and laryngeal diseases, 75% (3/4) in other diseases (acute parotitis 1/1, lymphadenitis 2/3). The total clinical efficiency was 74.7% (68/91). All patients were divided into 4 groups in order to evaluate the additional effects of treatments other than FRPM as follows: 1) 55% (11/20) received FRPM alone 2) 84.1% (37/44) received FRPM and analgesics 3) 80% (8/10) received FRPM and local treatment 4) 70.6% (12/17) received FRPM as well as both analgesics and local treatment. Side effects were only observed in two cases who developed diarrhea, however, no serious side effects were seen. Bases on these findings, we consider FRPM to be a useful chemotherapeutic drug for the treatment of infections disorders in the field of otorhinolaryngology.
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