耳鼻と臨床
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47 巻, 4 号
選択された号の論文の8件中1~8を表示しています
  • 大輪 達仁, 宇良 政治, 野田 寛
    2001 年 47 巻 4 号 p. 243-246
    発行日: 2001/07/20
    公開日: 2013/05/10
    ジャーナル フリー
    1989年から1998年の10年間における当科の耳硬化症初回手術45例65耳について検討した。年齢では10歳以下の小児が6例10耳と比較的多く見られたことが特徴的であった。聴力改善の成績判定案2000 (3分法にて気骨導差15dB、聴力改善15dB、聴力レベル30dB) での成功率は56耳86.1%、著明改善とした気骨導差10dB以内は42耳64.6%であった。術後時期別では、1-3カ月の時点で改善しており、その後もほぼ安定していた。術式はテフロンピストンを用いたstapedotomy (STO) が44耳と多かった。術後聴力レベルではstapedectomy (SDE) との差はなかったが、合併症の点でSTOが有利と思われた。削岩機使用者で術後3年後に外リンパ瘻による高度感音難聴例が1例あり、症例によっては術後長期例でも注意が必要と考えられた
  • 安達 正明, 北南 和彦, 吉田 真子, 原渕 保明
    2001 年 47 巻 4 号 p. 247-250
    発行日: 2001/07/20
    公開日: 2013/05/10
    ジャーナル フリー
    先行する扁桃周囲炎が原因と考えられる、ガス産生菌による顔面、深頸部膿瘍の症例を経験した。症例は基礎疾患のない64歳の男性で、抗生剤の全身投与と二度にわたる頸部の外切開排膿、洗浄、免疫グロブリンの投与で、比較的速やかに症状の改善が得られた。
  • 菊地 俊彦, 高村 博光, 藤山 大佑, 須賀 美奈子, 石丸 幸太郎, 高野 潤, 神田 幸彦, 小林 俊光, 吉見 龍一郎
    2001 年 47 巻 4 号 p. 251-255
    発行日: 2001/07/20
    公開日: 2013/05/10
    ジャーナル フリー
    アンギオテンシン変換酵素阻害剤 (ACE阻害剤) およびアンギオテンシンII受容体拮抗薬の重大な副作用として血管性浮腫の存在が知られている。今回、われわれは、ACE阻害剤の一つであるマレイン酸エナラプリルを内服後、重篤な喉頭浮腫を来した1症例を経験した。患者は62歳、男性で、マレイン酸エナラプリルの投与開始後、約1週間で発症しており、舌、喉頭および顎下部に高度の浮腫性病変を呈していた。ステロイドの投与およびマレイン酸エナラプリルの投与中止により治癒せしめることができた。現在、ニフェジピンにより血圧のコントロールを行っているが、血管浮腫の再発もみられず、経過良好である。このように、ACE阻害剤およびアンギオテンシンII受容体拮抗薬の投与により、時に致死的な高度の浮腫性病変を来すことがあるため、われわれ耳鼻咽喉科医も本疾患の存在を十分に理解しておく必要があろう。
  • 井上 裕章
    2001 年 47 巻 4 号 p. 256-260
    発行日: 2001/07/20
    公開日: 2013/05/10
    ジャーナル フリー
    漢方薬の補中益気湯が有効であったいびき、嗄声および嚥下困難の3症例を報告した。症例1は75歳の男性。1年前より続く榎声と声の出しにくさがある。発声時に紡錘状の声門間隙ができる。軽度の気息性嗄声でG1R0B1A0S0、MPTは15秒であった。いわゆる老人性嗄声と診断した。補中益気湯の投与により、1カ月後には嗄声は改善、MPTは25秒に延長。発声時声門間隙もほとんど目立たなくなった。症例2は48歳の女性。主訴はいびきで、睡眠時無呼吸はない。鼻閉なく、上気道の器質的狭窄部位もないことから、睡眠時の軟口蓋や舌の筋緊張低下によるいびきと考えられた。補中益気湯の1週間の投与により、投与前10のいびきの強さが、1.5に小さくなった。症例3は71歳の女性。睡眠時無呼吸を伴わないいびきがあり、手足がだるく食後に眠くなりやすい。また、3カ月前より飲食物がのどにひっかかることがあり、むせやすい。筋緊張低下によるいびきと診断し、これに対して補中益気湯を投与したところ、いびきは半分以下となっただけでなく、嚥下困難および手足のだるさと食後の眠気も改善した。嚥下困難は加齢によるものと思われた。補中益気湯には筋緊張と運動を高める作用があるといわれており、これらの症例では、軟口蓋、舌、咽頭、喉頭などの筋肉の緊張や運動性が高まり、症状の改善がみられたと考えられる。
  • 澤津橋 基広, 高木 誠治, 溝上 宏幸, 鷲崎 政治, 津田 邦良, 井之口 昭
    2001 年 47 巻 4 号 p. 261-266
    発行日: 2001/07/20
    公開日: 2013/05/10
    ジャーナル フリー
    成人の唾液腺に発生する血管腫はまれであり、特に顎下腺に発生した血管腫の報告は、極めて少数である。今回われわれは、唾液腺炎を伴った顎下腺海綿状血管腫を経験したので、文献的考察を加えて報告する。症例は50歳男性。右下顎第一大臼歯の抜歯後より、右顎下部の腫瘤に気付くも放置していた。その後腫瘤が徐々に増大するため、当院紹介受診した。診察時、右顎下部に5cm×3.6cmの比較的柔らかい腫瘤を触知した。病歴上、嚢胞性変性を来した慢性顎下腺炎などを疑い、約1カ月間ABPC2000mg内服にて経過観察を行った。一時的に腫瘤の縮小傾向を認めるも、腫瘤は消失せず、その後のCT、エコー検査にて、良性腫瘍性病変が考えられたため、右顎下腺腫瘍摘出術施行した。摘出された標本は、顎下腺と連続して、血流に富んだ多房性嚢胞性腫瘍で、病理組織学的に慢性顎下腺炎を伴った海綿状血管腫の診断を得た。術後経過良好で、現在外来経過観察中である。
  • 岸本 麻子, 浜野 巨志, 中川 のぶ子, 南 豊彦, 井野 千代徳, 山下 敏夫
    2001 年 47 巻 4 号 p. 267-274
    発行日: 2001/07/20
    公開日: 2013/05/10
    ジャーナル フリー
    咽喉頭異常感症と胃食道逆流 (GER) との関連性について検討した。その検査方法として、生理的でかつ逆流現象を客観的にとらえることができるRI法を選択した。そして、過去に咽喉頭異常感症と診断されて通常の内服治療を受けたが効果を認めなかった46例を対象として検査を施行したところ、31例に逆流を確認した。この検査において、食前坐位 (a) 、食前仰臥位 (b) 、食後坐位 (c) 、食後仰臥位 (d) に条件を設定して検査を施行した結果、食後坐位 (c) の状態で最も多く逆流を認めた。また、逆流の到達距離を測定したところ、20cm以上が最も多く、それも食後坐位で多く認められた。逆流パターンは坐位ではspike pattern、仰臥位ではdelayed patternが主に認められた。局所所見との関係では、梨状窩において唾液の貯留が認められた症例は6例であり、その中で逆流 (+) の症例群は5例で全例食前坐位 (a) において認められた。また、披裂部の発赤は13例に認められ、その中で逆流 (+) の症例は11例であり、中でも10例が食後の条件下で生じていた。そして、逆流値が20cm以上の症例が5例であり、下咽頭喉頭まで達しているものと考えた。その上、3例の食後仰臥位 (d) ではすべて20cmを超えており、この体位ではdelayed patternが多いため逆流物の停滞時間が長くなり、侵襲が大きくなると思われた。
  • 野田 哲哉
    2001 年 47 巻 4 号 p. 275-281
    発行日: 2001/07/20
    公開日: 2013/05/10
    ジャーナル フリー
    動揺病の発症を最も説明できるのは感覚混乱説といわれているが、筆者には次のような疑問がある。感覚混乱の分類は適切か。自律神経症状の発現を説明できるのか。動揺病の発症に前庭が不可欠なのは本当か。これらの疑問に対する筆者の答えはいずれも否定的である。動揺病の発症には感覚混乱ではなく、平衡機能障害が重要な役割を果たしている。
  • 立木 孝
    2001 年 47 巻 4 号 p. 285-302
    発行日: 2001/07/20
    公開日: 2013/05/10
    ジャーナル フリー
    耳疾患の症状として最近注目されてきた耳閉塞感の臨床的意味を探ることを目的としてセミナーが持たれた。今世紀初頭には主として中耳カタルの症状とされていた耳閉塞感の、自覚症としての疾患別出現状況を述べ、この症状の発生因子について考察した。
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