耳鼻と臨床
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47 巻, 5 号
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  • 古川 太一
    2001 年 47 巻 5 号 p. 347-360
    発行日: 2001/09/20
    公開日: 2013/05/10
    ジャーナル フリー
    成犬10匹を用い、声帯に注入された自家組織由来の筋膜の組織学的、免疫組織化学的、電子顕微鏡的検討を行った。観察期間は2週間から6カ月であり、いずれの時期においても筋膜は声帯内に残存していた。注入された筋膜内やその周囲組織における炎症性反応はごく軽微なものであり、筋膜周囲には被膜の形成は認められなかった。組織反応は注入3カ月後にはほぼ沈静化しており、それ以降は周囲組織の影響を強く受けることなく存在するものと思われた。筋膜は、声帯内注入療法における注入材料として優れた特質を備え、今後活用されるべき注入材料と考えられる。
  • 井上 裕章
    2001 年 47 巻 5 号 p. 361-366
    発行日: 2001/09/20
    公開日: 2013/05/10
    ジャーナル フリー
    成人滲出性中耳炎急性例34人46耳を対象として、小青竜湯エキスと越婢加朮湯エキスの併用投与 (漢方群: 20人28耳) の効果を、カルボシステインとクラリスロマイシンの併用群 (対照群: 14人18耳) を対照として検討した。漢方群は投与7日間までの短期間の評価で、有効以上-ティンパノグラムの正常化もしくは改善、かつ鼓室貯留液の消失が診察用顕微鏡下に確認されたものが75.0%であり、対照群は38.9%であった。漢方群は対照群に比し有意に (p=0.02、Wilcoxon順位和検定) 優れた成績であった。ティンパノグラムの型別では、初診時ティンパノグラムが悪いほど、漢方群が対照群に比し高い治療効果が得られる傾向にあった。また、自覚的耳症状改善開始時期が漢方群は対照群に比し有意に (p=0.005) 早期であった。これらのことから、成人滲出性中耳炎急性例に対して、小青竜湯エキスと越婢加朮湯エキスの併用投与は、滲出液を消失させ耳症状を改善させる効果が高く、かつ速効性であるといえた。副作用は嘔気が漢方群で1例認められたが、他にはなかった。
  • 楠 威志, 西田 升三, 沖田 有弘, 岸本 誠司, 中谷 宏章, 三浦 隆男, 小橋 和雄, 村田 清高, 戸村 隆訓
    2001 年 47 巻 5 号 p. 367-373
    発行日: 2001/09/20
    公開日: 2013/05/10
    ジャーナル フリー
    頭頸部扁平上皮癌27例において抗Fasリガンドポリクローナル抗体を用いた免疫染色を行った。27例中8例で癌細胞に陽性像を示した。しかし、Fasリガンド発現性と術後TNM分類、分化度、放射線治療の奏功度との関連性は認めなかった。症例によっては癌細胞以外に癌細胞周囲において間質および正常上皮細胞にもFasのリガンド発現を認めた。以上の結果から、癌細胞はFasリガンドの発現を持つものはアポトーシスを誘導により癌の進展を抑える。しかし、その反面、癌周囲組織である間質、正常上皮細胞にFasリガンドによるアポトーシスを誘導させることは癌の浸潤、転移にとっては有利と考える。
  • 藤山 大祐, 菊地 俊彦, 崎浜 教之, 須賀 美奈子, 石丸 幸太郎, 高野 潤, 神田 幸彦, 小林 俊光, 田丸 直江
    2001 年 47 巻 5 号 p. 374-378
    発行日: 2001/09/20
    公開日: 2013/05/10
    ジャーナル フリー
    右上顎嚢胞および両側慢性副鼻腔炎との術前診断にて、内視鏡的副鼻腔手術を行い、術中の迅速病理診断により、右上顎癌と診断された症例を経験した。症例は63歳、男性で、主訴は右鼻閉および右鼻根部痛であった。CTおよびMRI画像上、右上顎洞に嚢胞性陰影を認め、さらに両側篩骨洞および左上顎洞に軟部組織陰影を認めた。局所麻酔下に、内視鏡的副鼻腔手術を行い、術中迅速診にて右上顎洞に生じた上皮性悪性腫瘍との結果を得た。癌細胞の播種の危険性を考慮し、対側への操作を行わず、手術を終了した。嚢胞性の副鼻腔病変においてもまれではあるが悪性腫瘍の危険性もあり、内視鏡的副鼻腔手術による病理学的検索の重要性を再確認させられた症例であった。
  • 山本 英一, 垣内 仁, 田村 奈々子
    2001 年 47 巻 5 号 p. 379-382
    発行日: 2001/09/20
    公開日: 2013/05/10
    ジャーナル フリー
    慢性炎症と皮膚疾患との関係と言えば、口蓋扁桃と掌蹟膿疱症との関係が有名であるが、著者は歯根嚢胞の悪化に伴い全身に皮疹が出現した1症例を経験した。症例は42歳男性で、硬口蓋腫脹と全身の皮疹を主訴とした。X線にて硬口蓋の病変は側切歯から発生した嚢胞であり、嚢胞摘出と抜歯により、皮膚病変は消長しながら約半年間で消失した。病理検査にて歯根嚢胞と診断された。歯根嚢胞は上顎側切歯部に好発し、口蓋側に腫脹を来すことが多い。嚢胞の内壁は扁平上皮で、外側のリンパ球の浸潤した慢性炎症性肉芽組織層の部分で皮膚の角質に対する抗体が産生されれば、自己免疫機序により皮膚病変が生じる可能がある。極めてまれなことではあるが、原因不明の皮疹を認めた場合は歯性病巣感染の可能性も考慮すべきである。
  • 山本 一宏
    2001 年 47 巻 5 号 p. 383-387
    発行日: 2001/09/20
    公開日: 2013/05/10
    ジャーナル フリー
    まれな鼻石の2症例を報告した。鼻石は有核のものと無核のものに大別され、統計学的には有核鼻石は外因性異物を核した鼻石が多く認められるが、最近では真菌を核とした鼻石の報告例が散見される。症例1は鼻副鼻腔では非常にまれといわれている放線菌、症例2は逆生歯を核とした有核鼻石症例であった。2症例とも主訴は鼻閉であり、鼻石の診断は局所所見、内視鏡下の観察により比較的容易であった。放線菌および歯牙が核となっていることは病理組織所見にて判明した。
  • 菊地 俊彦, 馬場 明子, 高野 潤, 小林 俊光, 安倍 邦子, 田丸 直江, 林 徳真吉
    2001 年 47 巻 5 号 p. 388-392
    発行日: 2001/09/20
    公開日: 2013/05/10
    ジャーナル フリー
    副鼻腔真菌症は、一側性に発生することがほとんどであり、両側性の症例は本邦においては全副鼻腔真菌症の2%前後と推定され、まれなものと考えられる。今回、われわれは両側上顎洞に生じた真菌症の1例を経験した。症例は、52歳、男性。血性の後鼻漏を主訴に、近医受診。副鼻腔CTを施行され、右上顎腫瘍の疑いにて、長崎大学医学部附属病院耳鼻咽喉科紹介となった。右中鼻道に乾酪様の物質を認め、病理学的検索によりアスペルギルスと思われる真菌塊が検出された。CTにて、両側鼻副鼻腔に石灰化様の高吸収域を伴った軟部組織陰影を認め、さらに右上顎洞の内側壁および鈎状突起に骨融解像を認めた。MRIT2強調画像にて両側上顎洞内に低信号の陰影を認めた。両側上顎洞真菌症との診断にて全身麻酔下に内視鏡的副鼻腔手術を施行。両側上顎洞内に乾酪様物質の存在を認めた。両側上顎洞膜様部を十分に切除した後、真菌塊を除去し、手術を終了した。術後経過は良好で、現在、外来にて経過観察中である。副鼻腔真菌症は一側性という固定観念があるが、まれではあるものの、本症例のように両側性の場合も確実に存在する。両側性副鼻腔疾患においても真菌症の可能性をも念頭に置き、内視鏡、CT、MRI等による十分な検索と的確な治療が必要と考えられる。
  • 田村 奈々子, 垣内 仁, 山本 英一, 尾嶋 有美, 江木 邦晃
    2001 年 47 巻 5 号 p. 393-397
    発行日: 2001/09/20
    公開日: 2013/05/10
    ジャーナル フリー
    涙道閉塞症の手術療法に、涙嚢と鼻腔内への新たな交通を作成する涙嚢鼻腔吻合術dacryocystorhinostomy (以下DCR) があるが、内視鏡下鼻内手術の普及に伴い耳鼻科医がDCR鼻内法を行う機会も増えてきた。今回、眼科医と耳鼻科医が共同でDCR鼻内法を7例8側経験した。DCR鼻内法は、鼻外法と異なり顔面への切開を加えることなく低侵襲で行えるという利点があるが、現在、開窓が大きく行える鼻外法の方が成功率が高い。しかし今後ライトガイドやその他の手術器具との併用で至適位置への開窓を行えば、鼻内法の成功率も高くなると予想される。今回、ライトガイドの涙嚢側から鼻腔内への徹照が、開窓場所の位置確認に有用であった。また、N-Sチューブを留置し開窓場所の狭窄防止に努めた。
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