副鼻腔真菌症は、一側性に発生することがほとんどであり、両側性の症例は本邦においては全副鼻腔真菌症の2%前後と推定され、まれなものと考えられる。今回、われわれは両側上顎洞に生じた真菌症の1例を経験した。症例は、52歳、男性。血性の後鼻漏を主訴に、近医受診。副鼻腔CTを施行され、右上顎腫瘍の疑いにて、長崎大学医学部附属病院耳鼻咽喉科紹介となった。右中鼻道に乾酪様の物質を認め、病理学的検索によりアスペルギルスと思われる真菌塊が検出された。CTにて、両側鼻副鼻腔に石灰化様の高吸収域を伴った軟部組織陰影を認め、さらに右上顎洞の内側壁および鈎状突起に骨融解像を認めた。MRIT2強調画像にて両側上顎洞内に低信号の陰影を認めた。両側上顎洞真菌症との診断にて全身麻酔下に内視鏡的副鼻腔手術を施行。両側上顎洞内に乾酪様物質の存在を認めた。両側上顎洞膜様部を十分に切除した後、真菌塊を除去し、手術を終了した。術後経過は良好で、現在、外来にて経過観察中である。副鼻腔真菌症は一側性という固定観念があるが、まれではあるものの、本症例のように両側性の場合も確実に存在する。両側性副鼻腔疾患においても真菌症の可能性をも念頭に置き、内視鏡、CT、MRI等による十分な検索と的確な治療が必要と考えられる。
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