耳鼻と臨床
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48 巻, 3 号
選択された号の論文の8件中1~8を表示しています
  • 太田黒 元, 坂田 俊文, 今村 明秀, 加藤 寿彦
    2002 年 48 巻 3 号 p. 161-174
    発行日: 2002/05/20
    公開日: 2013/05/10
    ジャーナル フリー
    内耳圧の変化が関与する内耳疾患の病態機序の解明の序として、内頸静脈の圧迫を行い、tympanometryおよびsweep tympanometryを測定し、そのパラメータと、乳突蜂巣面積、蝸牛小管径とを比較検討し、蝸牛小管の機能評価を検討した。内頸静脈圧迫による中耳インピーダンスの変化は、中耳腔の圧変化でなく、上昇した脳脊髄圧が蝸牛小管を経て内耳に伝搬することで生じると考えられた。また、安静時と内頸静脈圧迫時のtympanogramを比較することにより、蝸牛小管径を推定し得ることが示唆され、内頸静脈圧迫時に認められたcompliance減少・回復の軌跡は、蝸牛小管径の影響を受けることが示された。本研究より、内頸静脈圧迫によるtympanometryのpeak pressure、static complianceの変化が蝸牛小管の機能評価につながることが推測された。
  • 宇良 政治, 親泊 美香, 大輪 達仁, 喜友名 朝則, 野田 寛
    2002 年 48 巻 3 号 p. 175-179
    発行日: 2002/05/20
    公開日: 2013/05/10
    ジャーナル フリー
    1990年から1999年までの10年間に琉球大学耳鼻咽喉科にて行われた小児の真珠腫性中耳炎初回手術を検討し、以下の結果を得た。1) 4歳から17歳 (平均9.8歳) の23耳で男女比は3:1であった。2) 先天性3例、弛緩部型15例、緊張部型5例であった。3) 日本耳科学会の新判定基準による成功率は65.3% (旧基準では82.6%) であった。4) 再発は6例 (26.1%) で、うち5例は後壁保存群であった。5) 後壁削開例の聴力改善は不良であったが、再建と保存の間には術後聴力の差はなかった。6) 術前に耳漏を認めた11例では術後聴力が不良の例が多く、再発例はすべて耳漏があった。以上より、良好な術後聴力と再発防止のためには、術前の感染の制御と、後壁削開をためらわずに、一次再建を行う方法が勧められる。
  • 喜友名 朝則, 宇良 政治, 大輪 達仁, 中村 由紀夫, 親泊 美香, 野田 寛
    2002 年 48 巻 3 号 p. 180-183
    発行日: 2002/05/20
    公開日: 2013/05/10
    ジャーナル フリー
    1990年から1999年までの10年間に琉球大学付属病院耳鼻咽喉科にて手術を行った18歳以上の成人の真珠腫性中耳炎症例64例 (64耳) について検討した。年齢では30歳台から60歳台に多い傾向がみられた。日本耳鼻咽喉科学会の新判定基準 (3分法にて気骨導差15dB、聴力改善15dB、聴力レベル30dB) に従うと、全体としての術後聴力改善率は50.0%であった。耳小骨病変の高度な症例ほど術後聴力改善率は低い傾向にあった。外耳道後壁を術後保存するか、削除するかの処理法に関しては術後の聴力改善率に有意差はなかった。外耳道後壁を削除した例では術後再発は認めなかった。
  • 田中 克典, 糸数 哲郎, 小田口 尚幸
    2002 年 48 巻 3 号 p. 184-186
    発行日: 2002/05/20
    公開日: 2013/05/10
    ジャーナル フリー
    急激に発症した咽頭痛で耳鼻咽喉科を受診した急性心筋梗塞の症例を経験した。症例は糖尿病や高血圧の既往がない66歳の男性で、洗浄スプレーを使用中に咽頭痛が出現した。発症の状況や、視診にて咽頭の発赤を認めたことより、当初は咽頭への洗剤による刺激が原因であろうと考えた。しかし、心電図にて急性心筋梗塞が疑われ、心臓カテーテル検査にて確定診断に至った。頻度としては多くはないが、急性心筋梗塞等の狭心痛は、耳鼻科領域へ放散痛を生じることがあり、また診断を誤ると患者の生命にかかわる疾患であるため、常に念頭に置いて診療に当たることが肝要であると考えられた。
  • 中村 由紀夫, 宇良 政治, 楠見 彰
    2002 年 48 巻 3 号 p. 187-192
    発行日: 2002/05/20
    公開日: 2013/05/10
    ジャーナル フリー
    口蓋裂特有の構音障害を持ちながら壮年期まで過ごした成人口蓋裂の3症例に対して、初回口蓋形成術を施行し、言語治療を施行した。術後に軽度の鼻咽腔閉鎖不全を認め、2例では単語レベルでの構音の改善はみられたが、会話レベルでの明瞭度は2にとどまった。1例は約半年で訓練から脱落し、構音の改善は得られなかった。成人口蓋裂患者の術後訓練の重要性とともに、精神的サポートの重要性を痛感した。
  • 加瀬 敬一, 菊地 俊彦, 高野 潤, 小林 俊光
    2002 年 48 巻 3 号 p. 193-197
    発行日: 2002/05/20
    公開日: 2013/05/10
    ジャーナル フリー
    われわれは、蝶形骨洞に基部を持つ後鼻孔ポリープ (sphenochoanal polyp) の1例を経験した。症例は24歳、女性。蝶形骨洞内より上咽頭に至る巨大なポリープが観察された。同時に上顎洞に基部を有するポリープも合併しており、極めてまれな症例と考えられた。内視鏡的副鼻腔手術 (endoscopic sinus surgery: ESS) にて、これらの病変を切除した。再発を防止するためには、ポリープの基部を十分に除去することが肝要であるが、蝶形骨洞内の操作を行う際には重篤な副損傷を回避するために慎重な操作が必要といえる。
  • 石丸 幸太朗, 菊地 俊彦, 山野辺 滋晴, 小林 俊光
    2002 年 48 巻 3 号 p. 198-202
    発行日: 2002/05/20
    公開日: 2013/05/10
    ジャーナル フリー
    視神経管隆起、内頸動脈隆起、前頭蓋底に骨欠損を伴った後部副鼻腔嚢胞症例を経験した。症例は62歳の男性。主訴は右眼の視力低下であった。CTおよびMRI画像上、右後部副鼻腔に嚢胞様陰影を認め、さらに嚢胞壁に接する視神経管隆起、内頸動脈隆起、前頭蓋底に骨欠損の存在が認められた。局所麻酔下に内視鏡的副鼻腔手術 (endoscopic sinus surgery: ESS) を施行した。嚢胞を開放し、内腔より黄色透明な漿液性液体の排出をみた。本症例のように、後部副鼻腔嚢胞においては、周囲の重要な構造物との間に骨欠損を伴っていることがあり、手術時には十分な注意が必要であると思われた。
  • 佐伯 修
    2002 年 48 巻 3 号 p. 203-207
    発行日: 2002/05/20
    公開日: 2013/05/10
    ジャーナル フリー
    鼻出血の多くは上皮下毛細血管網などからの、出血点が明瞭で止血しやすいものである。しかし、少数例ではあるが、頻回の噴出性で比較的多量の出血があるにもかかわらず、正確な出血部位が認めにくく、なかなか止血し得ない症例を経験することがある。それらの鼻出血の中でたまたま噴出する血流により、その出血位置を確認して、電気凝固によって止血し得た一例を報告するとともに、鼻粘膜の各破綻個所による鼻出血の分類を試みた。私は日頃あらかじめ作製した表によって番号の順を追って出血部位を検索して、止血するようにしている。これらの臨床上様相を異にしている鼻出血の症例に対して、それぞれに適応した治療を行うことが必要であると思われる。
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