耳鼻と臨床
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49 巻, 3 号
選択された号の論文の10件中1~10を表示しています
  • 中条 恭子, 中川 尚志, 龍頭 正浩, 貫名 麻紀, 小宮山 荘太郎
    2003 年 49 巻 3 号 p. 155-158
    発行日: 2003/05/20
    公開日: 2013/05/10
    ジャーナル フリー
    水溶性ヨード性造影剤であるアミドトリゾアートを突発性難聴の治療で用いたところ、遅発性アレルギーと思われる症状を呈した症例を経験した。右突発性難聴を発症した61歳男性にステロイド、プロスタグランデインE1を投与したが効果は得られなかったので、アミドトリゾアート治療に切り替えた。この直後より聴力に改善がみられたため、治療を継続した。アミドトリゾアート投与開始17日目に意識混濁、肺水腫等のショック症状を呈した。対症的治療により、幸いなことに後遺症もなく回復した。当症例には脳血管障害の既往があった。脳血管障害はヨード性造影剤により副作用が出やすいことが知られている。アミドトリゾアート治療の選択は腎機能障害のある糖尿病患者や脳疾患の既往のある症例に対して慎重に行わなければならないと考えた。
  • 井口 貴史, 中川 尚志, 中条 恭子, 原 崇, 小宮山 荘太郎
    2003 年 49 巻 3 号 p. 159-162
    発行日: 2003/05/20
    公開日: 2013/05/10
    ジャーナル フリー
    深部静脈血栓症は近年エコノミークラス症候群が周知されるようになり注目されている疾患である。また、周術期においても肺塞栓症などの危機的状況を招く主因であり、十分な注意が必要とされる。しかし、耳鼻咽喉科領域では報告例が乏しいこともあって配慮され難い概念である。今回九州大学耳鼻咽喉科にて耳硬化症に対するアブミ骨手術後に深部静脈血栓症を生じた症例を経験した。文献的考察も含めて報告するとともに、発生防止において留意すべき点を考察した。症例は49歳女性で、肥満はなかった。42歳に子宮筋腫にて子宮全摘術を施行され、その後よりホルモン療法を継続している。手術時間が1時間30分であったstapedectomyを施行した。術後合併症として一過性のめまいが生じ、必要時以外は臥床がちであった。術後5日目に下腿部疼痛および全身倦怠感が出現、両下腿の軽度腫脹、それに伴う歩行困難も生じた。いったん、自然軽快したものの、術後10日目に再発した。CTとMRI、MRAにて左外-総腸骨静脈に血栓形成が示唆され、深部静脈血栓症と診断された。このため、ワーファリンおよび経ロヘパリンを内服開始し、その後、下腿炎症の消退および腫脹の経時的改善がみられている。
  • 佐藤 慎太郎, 門司 幹夫, 津田 邦良, 進 武幹
    2003 年 49 巻 3 号 p. 163-167
    発行日: 2003/05/20
    公開日: 2013/05/10
    ジャーナル フリー
    乳頭状汗管嚢胞腺腫は汗器官 (主としてアポクリン腺) 由来の良性腫瘍であるが、外耳道原発の症例はまれである。今回われわれは、外耳道に発生した乳頭状汗管嚢胞腺腫の1例を経験した。症例は56歳の男性である。主訴は左耳難聴で、約20年ほど前から左外耳道入口部に増大する小腫瘤があった。初診時、左外耳道入口部は腫瘤により完全に閉塞しており、気導骨導差を認めた。外科的に完全摘出することができた。腫瘍は嚢胞性の病変であり、病理組織学的に乳頭状汗管嚢胞腺腫と診断された。術後経過は良好で、気導骨導差も改善した。耳垢腺は、組織学的にはアポクリン腺の一種とされ、自験例も耳垢腺由来であると考えられた。広義には耳垢腺腫と言えるが、耳垢腺由来の腫瘍は汗腺由来の腫瘍としての特有の分化形態に応じた診断をする必要があると考えられる。
  • 黒木 岳人, 橋本 清, 松田 洋一, 上田 祥久, 伊藤 信輔
    2003 年 49 巻 3 号 p. 168-171
    発行日: 2003/05/20
    公開日: 2013/05/10
    ジャーナル フリー
    1988年から2001年までの14年間に、久留米大学病院耳鼻咽喉科で手術を行った耳硬化症症例29例、40耳について検討した。術前平均聴力は40耳の平均で53.5dBであった。stiffness curveが40耳すべてで、Carhart's notchが40耳中22耳でみられた。ティンパノグラムはA型、As型が多かったが、他の型も少数ながらみられた。手術は全例stape dotomyを行った。術後聴力レベルは73%で30dB以内に改善した。また、95%で15dB 以上の聴力改善がみられた。術後の気導骨導差は90%で15dB以内に改善した。骨導聴力も1kHz、2kHzで軽度の改善がみられた。耳硬化症は手術により高率に改善することができるので、発見したら積極的に手術を勧めることが患者のQOLの向上につながると考えられた。
  • 安達 一雄, 梅崎 俊郎, 宮内 裕爾, 小宮山 荘太郎
    2003 年 49 巻 3 号 p. 172-177
    発行日: 2003/05/20
    公開日: 2013/05/10
    ジャーナル フリー
    声門上レベルに発生したMALTリンパ腫を経験した。MALTリンパ腫は胃を中心として発生することが多く、喉頭に原発するものは非常にまれである。MALTリンパ腫は悪性度の低いBcell由来のリンパ腫であり、放射線、化学療法といった治療に対する反応性が非常に良好な腫瘍である。今回の症例ではCO2レーザーにて減量した後、放射線単独にて40Gy照射を行い、追加治療もなく腫瘍は消失し、現在まで再発を認めず、音声も改善し経過良好であった。
  • 酒井 昇, 酒井 博史, 神谷 正男, 秋田 久美, 白峰 克彦
    2003 年 49 巻 3 号 p. 178-183
    発行日: 2003/05/20
    公開日: 2013/05/10
    ジャーナル フリー
    口蓋扁桃アニサキス症の1例と原因幼虫の病理を報告した。症例は35歳女性でボラ生食後咽頭異物感を来し、右口蓋扁桃中央の陰窩に寄生虫が迷入しているのが認められた。摘出した虫体は病理学的にPseudoterranova decipiensの第4期幼虫と判明した。アニサキス症で胃や腸などの消化管以外の異所寄生の報告は時にみられるが、耳鼻咽喉科領域でも口腔、咽頭の症例が少数報告されている。扁桃のアニサキス症はこれまで4例報告されているのみで、いずれも原因幼虫はアニサキスであり、記載不明の1例を除いた3例に急性扁桃炎が伴っていた。本症例では原因幼虫が口蓋扁桃で最初の報告となるPseudoterranova decipiensであり、また扁桃の炎症症状が全くみられなかったが、その理由としてシュードテラノーバ幼虫は感染力が弱く組織侵入が少ないことが推測された。
  • 宇高 毅, 藤吉 達也, 平木 信明, 森尾 崇, 吉田 雅文, 牧嶋 和見
    2003 年 49 巻 3 号 p. 184-189
    発行日: 2003/05/20
    公開日: 2013/05/10
    ジャーナル フリー
    副咽頭間隙に発生した多型腺腫内悪性筋上皮腫を報告した。本症例は、臨床的、病理組織学的に極めて高い悪性度を呈した症例であった。本腫瘍の悪性度は症例によって相違が見られ、病理組織学的所見と臨床的予後が、必ずしも相関しない症例が多く見られる。このため、治療方針決定や経過観察には十分な注意が必要と思われた。また本腫瘍の悪性度に関しては依然として不明な点が多いため、今後、遺伝子を含めた更なる検討が必要と思われた。
  • 谷口 雅信, 渡邉 昭仁, 川堀 眞一
    2003 年 49 巻 3 号 p. 190-193
    発行日: 2003/05/20
    公開日: 2013/05/10
    ジャーナル フリー
    比較的まれな先天異常である甲状腺片葉欠損の2例を経験したので報告する。症例は59歳男性および68歳女性であり、いずれも当科にて超音波検査による甲状腺スクリーニングが行われた。その際に左甲状腺片葉欠損症が疑われ、CTおよび甲状腺シンチグラム検査を行い確定診断がなされた。2症例とも問題となるような甲状腺疾患を伴わないため、特に治療を行わず、現在経過観察中である。近年、超音波検査で容易に甲状腺スクリーニングが行われるようになり、本症の発見頻度が今後ますます高まることが予想される。
  • 井野 千代徳, 芦谷 道子, 南 豊彦, 浜野 巨志, 中川 のぶ子, 多田 直樹, 小野 あゆみ, 山下 敏夫
    2003 年 49 巻 3 号 p. 194-200
    発行日: 2003/05/20
    公開日: 2013/05/10
    ジャーナル フリー
    昨今うつ病の増加が指摘されている。特に軽症うつ病の増加が注目されている。軽症うつ病とは身体症状が強いことに特徴があるが、その身体症状の中に耳鼻科医にとってなじみ深いものが多い。そこで、耳鼻咽喉科とうつ病との関係を調べた。対象とした疾患は耳鼻科医が一般外来でしばしば遭遇する疾患の中でその発症に心因性要素が関与するとされる疾患ないし症状のうち突発性難聴、低音障害型感音難聴、めまい、耳鳴、Bell麻痺、顎関節症、口内異常感症を対象とした。方法はSDSを用いた。結果、306人中56人がうつ病の範囲に入った。検査期間の4カ月に少なくても56人のうつ病患者が耳鼻科を受診したことになる。疾患別では口内異常感症が最もSDS値が高く、50例中23人46%がうつ病と判定された。他疾患がすべて18%未満であることより驚異的に高い数値と思われた。これからさらにうつ病の増加が指摘されている。耳鼻科医も積極的に対応すべきと考えている。
  • 野田 哲哉
    2003 年 49 巻 3 号 p. 201-205
    発行日: 2003/05/20
    公開日: 2013/05/10
    ジャーナル フリー
    平衡機能障害の正確な定義が存在しないのは大きな問題である。筆者はいかなる条件下でも、姿勢や運動をコントロールできない時は平衡機能障害があると考える。この考え方では、あまい感はなくとも平衡機能障害のある事例が数多く存在する。動揺病ばかりではなく、めまいや平衡機能の研究において、平衡機能障害を考慮していなかったり、判断を誤っている場合があると思われる。早急に平衡機能障害の定義を確立する必要がある。
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