耳鼻と臨床
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50 巻, 6 号
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  • 垣内 康徳, 龍頭 正浩
    2004 年 50 巻 6 号 p. 417-421
    発行日: 2004/11/20
    公開日: 2013/05/10
    ジャーナル フリー
    頸部膿瘍の症状にて発症した鯉性癌と思われる1例を経験した。症例は49歳の男性で、急激な側頸部腫瘤の増大が見られ、抗生剤投与を行ったが不変であったため、鯛性腫瘍感染の可能性を考え、摘出術を施行した。病理結果は扁平上皮癌であり、鯛性癌と思われた。術後、放射線併用化学療法を施行し、現在再発は認めていない。頸部膿瘍・嚢胞の鑑別診断の一つとして鯛性癌を念頭に入れる必要がある。
  • 福島 慶, 濱田 昌史, 中谷 宏章, 東山 佳澄, 竹田 泰三, 鷲頭 洋三
    2004 年 50 巻 6 号 p. 422-426
    発行日: 2004/11/20
    公開日: 2013/05/10
    ジャーナル フリー
    臨床上混乱が見られる顎下型ガマ腫の成因と治療法について、1981年から2003年の間に手術的に加療した自験例 (9例10側) を振り返り検討した。術前のMRI画像からは3パターンの貯留進展形式が確認されたが、共通したのは舌下部の貯留であった。手術所見からも嚢胞と舌下腺の癒着はほぼ全例で確認されており、顎下型ガマ腫の発生由来は舌下腺であることが示唆された。造袋術後再発し、頸部外切開で嚢胞と顎下腺のみ切除した1例のみ再発を繰り返しており、このことも舌下腺成因説を裏付けると考えられた。術後病理所見では上皮成分を持たない仮性嚢胞であることが確認され、嚢胞の全摘は必要ないと判断された。以上のことから総合して、口内法を用いた舌下腺全摘術がより低侵襲で、成因に基づく有効な治療法であると結論された。
  • 三好 彰, 程 雷, 殷 敏, 時 海波, 白川 太郎, 唐 金海, 扎西 加措, 尼 珍, 幸野 健
    2004 年 50 巻 6 号 p. 427-431
    発行日: 2004/11/20
    公開日: 2013/05/10
    ジャーナル フリー
    われわれは世界で初めて、チベットにおける系統的アレルギー疫学調査を実施した。この地におけるアレルギーの頻度は日本や中国のほかの地域よりもはるかに低く、HD・ダニ・スギのいずれかのスクラッチテスト陽性率は、6・9・12歳の平均で9.2%であった。アレルギーは文明病の一種であり、社会的経済的発展に伴って増加すると推測されている。チベットにおけるアレルギーの頻度の少なさは、この仮説を裏付けるものといえる。今後調査を継続し、チベットの経済的発展に伴うアレルギーの頻度の変化を確認するとともに、それによりアレルギーに対する戦略的対策の確立に努める。
  • 龍頭 正浩
    2004 年 50 巻 6 号 p. 432-445
    発行日: 2004/11/20
    公開日: 2013/05/10
    ジャーナル フリー
    今回われわれは、スギ花粉症患者の鼻症状に対する塩酸オロパタジンの効果を抗ロイコトリエン薬であるプランルカスト水和物と比較することにより、スギ花粉症患者の薬物治療における両剤の臨床的位置付けを明確にすることとした。対象は、2003年2月17日から2月28日までに九州中央病院耳鼻咽喉科を受診したスギ花粉症患者の中で本試験への参加に同意が得られた22症例である。オロパタジン群、プランルカスト群、オロパタジン+プランルカスト併用群の3群で検討を行った。くしゃみ、鼻汁、鼻閉の各鼻症状に対し、薬剤投与による症状改善効果を「鼻アレルギー診療ガイドライン」で定められた分類およびVAS値を用いた患者アンケートを基に調査を行ったところ、オロパタジン群およびオロパタジン+プランルカスト併用群は有意な症状改善効果が認められたが、プランルカスト群では症状改善効果は認められなかった。眼症状および日常生活の支障度の改善効果にも同様な傾向が認められ、オロパタジン群とオロパタジン+プランルカスト併用群の間に臨床効果の差がないことから、塩酸オロパタジンは、激しい鼻症状を伴うことで知られるスギ花粉症の治療薬として、効果が高く安全性に優れた有用な薬剤の一つであると思われた。
  • 218例の検討
    平田 佳代子, 小松 正規, 河合 敏, 石戸谷 淳一, 大石 公直, 池間 陽子, 名古屋 孝夫, 近藤 律男, 榎本 浩幸, 山岡 秀之 ...
    2004 年 50 巻 6 号 p. 446-456
    発行日: 2004/11/20
    公開日: 2013/05/10
    ジャーナル フリー
    スギ花粉症に対するTh2サイトカイン阻害薬トシル酸スプラタストの初期治療の効果を評価する目的で、スギ花粉の大量飛散年であった2000年、2001年、2002年に神奈川県内の19病院を受診したスギ花粉症患者218例を対象として検討を行った。スギ花粉飛散開始日2週間前より前に投薬を開始した長期初期治療群109例、飛散開始日2週間前以内より投薬を開始した短期初期治療群57例、飛散後治療群52例の3群について、鼻アレルギー診療ガイドラインに基づきsymptom medication score(SMS)を算出した。SMSはスギ花粉飛散後6週目まで飛散後治療群に比べて長期初期治療群と短期初期治療群で低く、特に長期初期治療群では飛散後2週目と4週目で有意に (p<0.001) 低い値を示し、本剤の初期治療は花粉大量飛散年においても、スギ花粉症の鼻症状を抑制すると考えられた。初期治療の開始時期は花粉飛散2週間以上前からが推奨される。
  • 森 満保
    2004 年 50 巻 6 号 p. 457-462
    発行日: 2004/11/20
    公開日: 2013/05/10
    ジャーナル フリー
  • 池ノ内 紀祐, 下方 薫, 太田 清人, 小久保 晃, 上村 晃寛, 大石 尚史
    2004 年 50 巻 6 号 p. 465-470
    発行日: 2004/11/20
    公開日: 2013/05/10
    ジャーナル フリー
    誤嚥性肺炎に対する新たな呼吸管理を行ったので報告する。症例1は81歳、男性。脊髄小脳変性症後生じた誤嚥性肺炎に対して、排痰を促したが改善が得られず、非侵襲的陽圧換気 (NPPV) 使用下による気管支鏡を実施した。食物残渣をはじめとする多量の気道内分泌物を吸引し、救命し得た。症例2は73歳、男性。鯖歯後に生じた誤嚥性肺炎に対して、排痰を促したが改善が得られず、NPPV使用下による気管支鏡を実施した。左右両気管支を閉塞させる膿性痰を吸引し救命し得た。挿管拒否、二次感染の危惧される症例では、NPPV使用下による気管支鏡の実施が、救命およびADLの維持に有用と考えられた。
  • 安達 一雄, 梅崎 俊郎, 松山 勝哉, 佐藤 公治, 小宗 静男
    2004 年 50 巻 6 号 p. 471-476
    発行日: 2004/11/20
    公開日: 2013/05/10
    ジャーナル フリー
    喉頭癌に対し、喉頭を摘出した後に脳梗塞を生じ、一時的に嚥下不能となった症例を経験した。症例は61歳男性。声門上癌の喉頭全摘後の原発巣の再発に対し、放射線照射30Gy施行後、咽喉食摘、右頸部郭清、遊離空腸による再建を行った。その後、脳梗塞を生じ、嚥下不能となった。脳梗塞は中大脳動脈領域の大脳皮質に生じており、嚥下の責任病巣である、弁蓋部にまで及んでいたためであると考えられた。また、その後の治療により障害の範囲も縮小し、嚥下可能となったと推測された。
  • 山下 弘之, 菅 孝文
    2004 年 50 巻 6 号 p. 477-480
    発行日: 2004/11/20
    公開日: 2013/05/10
    ジャーナル フリー
    脳血管障害による嚥下障害症例4名に対し輪状咽頭筋切断術を行ったので報告する。症例1は77歳の男性で、原疾患は脳幹梗塞および小脳梗塞である。気管切開を受けており鼻腔栄養の状態で当科に入院した。2001年6月8日に両側の輪状咽頭筋切断術および甲状軟骨・下顎骨接近術を行った。術後に嚥下の改善を認めたが完全経口には至らなかった。症例2は73歳の男性で、原疾患はワレンベルク症候群である。鼻腔栄養であるが気管切開は行っていない。2001年6月25日に両側の輪状咽頭筋切断術および甲状軟骨・舌骨固定術を行った。術後に嚥下の改善を認めたが完全経口には至らなかった。症例3は49歳の男性で、原疾患は脳梗塞である。気管切開を受けており鼻腔栄養の状態で入院した。2002年10月18日に両側の輪状咽頭筋切断術および甲状軟骨・下顎骨接近術を行った。術後に嚥下の改善を認めたが完全経口には至らなかった。症例4は55歳の女性で、原疾患は後下小脳動脈の破裂である。気管切開を受けており鼻腔栄養の状態で入院した。2003年6月10日に両側の輪状咽頭筋切断術を行った。喉頭挙上術は行わなかった。術後に嚥下の改善を認め、完全経口の状態で退院した。手術の結果を分析した。症例1は高齢者でADLが不良であった。症例2はADLが良好であったが高齢者であった。症例3は高齢者ではなかったがADLが不良であった。症例4は高齢者ではなく ADLが良好であった。以上のことから、手術の結果を左右するものは嚥下障害の程度ではなく年齢とADLであると考えられた。
  • 千年 俊一, 梅野 博仁, 濱川 幸世, 中島 格, 庄司 紘史
    2004 年 50 巻 6 号 p. 481-487
    発行日: 2004/11/20
    公開日: 2013/05/10
    ジャーナル フリー
    水痘・帯状庖疹ウイルス (varicella-zoster virus: 以下VZV) により一側の第IX、 X脳神経にのみ障害を来した2症例を経験した。各症例に血清VZV抗体価の有意な変動があった。さらにVZV感染の診断を強く支持する所見として、症例1で髄液検査における細胞数の増加があり、症例2では喉頭の粘膜疹を認めた。各症例とも神経麻痺の経過は咽頭収縮不全、喉頭挙上不全の改善が先行し、遅れて声帯麻痺が徐々に改善した。声帯麻痺の回復が遅れた理由として、解剖学的に反回神経はVZVの病巣とされる迷走神経節からの距離が最も長いたあに障害が残りやすいものと考えられた。また、粘膜疹の有無やその存在部位のみから、咽喉頭領域でのVZV感染の診断とその脳神経障害の責任病巣を確定することは困難な場合が多いと思われた。
  • 長崎 信一, 橋詰 顕, 柴 芳樹, 山科 敦, 末井 良和, 藤原 百合, 栗栖 薫, 谷本 啓二
    2004 年 50 巻 6 号 p. 488-493
    発行日: 2004/11/20
    公開日: 2013/05/10
    ジャーナル フリー
    命令嚥下前後のヒト大脳賦活領域を明らかにするために、全頭型脳磁計を用いて、嚥下障害の既往ならびにその障害を認めない右利き成人6名を対象として研究を行い、感覚運動野付近においてのみ検討を行った。等価電流双極子による電流源推定では嚥下開始前は左側半球優位であったが、開始後では推定された双極子の位置は分散する傾向があった。周波数分析ではα帯域において運動開始前後で左側が同期する傾向、β帯域においては、運動開始前で右側が脱同期、開始後では、左側が同期する傾向がみられた。以上の結果より、命令嚥下における大脳の賦活領域は左側感覚運動野近傍であることが示唆された。
  • 二藤 隆春, 三崎 義堅, 竹内 啓, 山本 美雪, 安達 のどか, 田山 二朗
    2004 年 50 巻 6 号 p. 494-498
    発行日: 2004/11/20
    公開日: 2013/05/10
    ジャーナル フリー
    皮膚筋炎により高度の嚥下障害を呈した一症例における病理組織像を検討したので報告をする〇症例は70歳の女性であり、輪状咽頭筋切断術施行時に、病変の伸展範囲を確認するために頸部諸筋からの生検も行った。輪状咽頭筋、甲状咽頭筋、食道筋に筋線維の萎縮や線維化が認められたのに対し、広頸筋、胸鎖乳突筋、肩甲舌骨筋、胸骨甲状筋は、ほぼ正常な組織像であった。輪状咽頭筋の病理組織像は、高度の嚥下障害に対して輪状咽頭筋切断術を行った過去の報告例と同様であり、共通した所見であると考えられた。咽頭収縮筋や食道筋において選択的に炎症が生じ、筋萎縮や線維化に至る原因は、現時点では不明であり、さらなる検討が必要である。
  • 横山 智一, 佐々木 拓雄, 弓削 忠, 田山 二朗
    2004 年 50 巻 6 号 p. 499-504
    発行日: 2004/11/20
    公開日: 2013/05/10
    ジャーナル フリー
    パーキンソン病は進行性変性疾患であり、末期には嚥下障害を好発し、嚥下性肺炎を引き起こすため、誤嚥防止手術を余儀なくされる症例に遭遇する。しかし重度の合併症などから全身麻酔が不可能となる場合がある。今回われわれは全身麻酔が不可能であった重度パーキンソン病症例に局所麻酔下に声門閉鎖術を施行し、誤嚥を消失し得た。局所麻酔下声門閉鎖術の有効性について症例を提示し報告する。症例は67才男性で、16年前にパーキンソン病と診断された。嚥下性肺炎を繰り返したため、経口摂取は中止になり、気管切開がおかれた。発声機能が実質的には喪失状態であったので、2003年11月に誤嚥防止手術を目的として当院紹介、入院となった。当初誤嚥防止手術として喉頭摘出術を考慮したが、麻酔科より全身麻酔不可能と判断された。12月12日に局所麻酔下に声門閉鎖術を施行することとした。術中・術後に大きな合併症はなく、22日にVF施行し誤嚥が認められなかったため水分の経口摂取を開始した。24日に再転院となり現在経口摂取可能となっている。
  • Stephanie DANIELS
    2004 年 50 巻 6 号 p. 505-509
    発行日: 2004/11/20
    公開日: 2013/05/10
    ジャーナル フリー
    ヒトにおいて、大脳皮質の嚥下機能にかかわる部位を同定する試みは、主として傷害実験の手法、すなわち卒中患者の責任病巣がどの部位にあるかをCTやMRIを使用して調べる方法に基づいて行われてきた。嚥下研究の領域にこれらのニューロイメージング技術が登場し応用されるまでは、嚥下障害の責任病巣は脳幹かまたは両側の大脳半球にあるという考えが一般的であった。しかし、ニューロイメージング技術の利用を通して、一側大脳半球の特定の皮質領域が嚥下動作に寄与しているという概念が確立されてきた。また機能のイメージング方法を用いることにより、健康成人における嚥下運動の局在の研究が進み、テント上の領域が重要であることが確認されている。多様な画像技術を駆使して、嚥下運動にかかわる特定の部位が同定され、それには島回も含められる。島回、特にその前方部は嚥下運動を伝達する多数の皮質および皮質下領域と密接に双方向性に結びついている。島回の前方部の障害によって嚥下障害が引き起されるが、その機序としてanterior efferent cortical pathwaysおよびまたはvisceral sensorimotor pathwaysが妨げられるたあとの仮説がある。動物実験、卒中患者が示す病変部位の研究および健康成人における機能イメージング研究は嚥下機能の皮質局在説を支持している。大脳皮質による嚥下機能の情報の伝達と調整は、ヒトが安全にかつ機能的に嚥下を遂行するために求あられる十分な生理学的および生化学的特性を維持していくのに非常に重要である。
  • 石田 瞭, 有岡 享子, 森 貴幸, 北 ふみ, 江草 正彦
    2004 年 50 巻 6 号 p. 510-516
    発行日: 2004/11/20
    公開日: 2013/05/10
    ジャーナル フリー
    舌などの口腔腫瘍術後は摂食。嚥下障害を発症しやすいが、本研究では超音波診断装置 (US) を舌運動評価ならびにリハビリテーションに導入することを目的に、2名の手術後患者を対象に解析を試みた。US断面は舌矢状断、前額断とし、摂食・嚥下障害のスクリーニングテストである食物テストとRSST (反復唾液嚥下テスト) を一定期間ごとに試行した。定性的ではあるが、舌運動の円滑さ、口蓋への挙上程度、食塊移送時の反復運動などの評価が可能であった。矢状断では口腔から咽頭への蠕動様運動が、前額断では舌運動の左右差や、食塊移送時の舌正中の陥凹も評価項目として重要であった。このようなUSによる評価は、特に術後回復期の再評価に活用できることが示唆された。
  • 2004 年 50 巻 6 号 p. 517-530
    発行日: 2004/11/20
    公開日: 2013/05/10
    ジャーナル フリー
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