耳鼻と臨床
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51 巻, 3 号
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  • 4年間のまとめ
    賀数 康弘, 中川 尚志, 野口 敦子, 大庭 典子, 中条 恭子, 山下 道子, 白土 秀樹, 中島 寅彦, 小宗 静男
    2005 年 51 巻 3 号 p. 163-169
    発行日: 2005/05/20
    公開日: 2013/05/10
    ジャーナル フリー
    2000年9月から2004年6月までに当科で行われた小児人工内耳埋め込み術後のITMAIS 、MUSS、ノッティンガムテストのスコア経過を示した。ほぼ全症例で術後スコアの向上が認められたが、療育機会が不十分なためにスコア上昇が鈍り、その後療育環境の改善に伴いスコア向上が改善したケースがあり、術後療育の重要性が示された。また、術後に順調なスコア向上を示したものの、言語発達の遅れが認められたケースもあったことから、上記評価法だけでは言語概念の発達を評価することは困難で、ほかの発達評価法の併用も考慮すべきであると思われた。
  • ラットと唾液腺癌由来細胞を用いた検討
    渡邉 寛康
    2005 年 51 巻 3 号 p. 170-182
    発行日: 2005/05/20
    公開日: 2013/05/10
    ジャーナル フリー
    加齢により唾液分泌量が減少することは多くの研究者により報告されており、特に女性において、性ホルモンとの関係が示唆されているが、詳細は不明である。卵巣ホルモンはアポトーシスにより唾液腺細胞数を調節すると仮説をたて、まずラット耳下腺においてアポトーシスの変化を検討した。さらに唾液腺由来の培養細胞を性ホルモン存在下にアポトーシスを誘導しその変化を検討した。造腫瘍性ヒト唾液腺介在部導管上皮細胞 (HSG細胞) を用い、24時間INF-γ存在下に培養後、坑FAS抗体およびエストロゲン、プロゲステロンを添加培養し、実験群を作製した。これらを位相差顕微鏡での経時的観察、アポトーシスによる細胞変化の電子顕微鏡観察および43時間経過後フローサイトメトリーにて、TUNEL法および活性型Caspase-3の測定によりアポトーシス誘導後の変化を分析した。エストロゲン添加群ではアポトーシスは抑制され、プロゲステロン添加群ではアポトーシスは充進した。卵巣ホルモンは耳下腺でのアポトーシス調節因子であり、エストロゲン投与が耳下腺でのホルモン欠乏によるアポトーシスを抑制し、閉経期以降増加する口内乾燥を軽減する可能性が示唆された。
  • 白土 秀樹, 山本 智矢, 中島 寅彦, 平川 直也, 三原 丈直, 小宗 静男
    2005 年 51 巻 3 号 p. 183-188
    発行日: 2005/05/20
    公開日: 2013/05/10
    ジャーナル フリー
    頸静脈孔症候群は頸静脈孔を走行する脳神経の麻痺によって、特徴的な臨床症状を呈する系統的脳神経障害を示す症候群で、類縁疾患に後頭顆・頸静脈孔接合部症候群 (Collet et Sicard症候群: 舌咽、迷走、副、舌下神経麻痺) がある。原因は腫瘍、外傷、血管炎、内頸動脈解離など多岐にわたる。今回われわれは誤嚥、榎声、頭痛を主訴として当科紹介され、MRIで上咽頭病変が明らかになり、上咽頭深部感染症が原因と考えられるCollet et Sicard症候群の1例を経験した。症例は71歳男性、胸膜炎 (MPO-ANCA関連性血管炎: microscopic polyangitis) にてプレドニゾロン (PSL) 30mgを長期内服中であった。2004年3月誤嚥、嗄声、頭痛などの症状出現し、当科紹介。Collet et Sicard症候群と診断、MRIにて右頸静脈孔周囲から上咽頭におよぶ腫瘤を認めた。全麻下に生検施行。上咽頭炎の診断であったが、ステロイド長期内服中であることから深部真菌症を疑い抗真菌症薬投与開始し、臨床症状、CRPともに改善した。本症例のように膠原病にて長期間ステロイドを投与されている患者はいわゆるcompromised hostとなっており深部真菌症の可能性も疑うことが必要である。
  • 松本 あゆみ, 南 豊彦, 中川 のぶ子, 多田 直樹, 井野 千代徳
    2005 年 51 巻 3 号 p. 189-192
    発行日: 2005/05/20
    公開日: 2013/05/10
    ジャーナル フリー
    持久性隆起性紅斑 (EED) に合併して口腔病変を有した症例を経験した。当科で経験した症例は口蓋の正中に潰瘍と瘢痕とが混在しており、皮膚病変は足関節の背部に隆起した紅斑が認められた。口腔粘膜病変と皮膚病変は病理組織学的に類似していた。持続性隆起性紅斑はしばしば血液中のlgAが上昇することが知られており本症例にもそれが認められた。持久性隆起性紅斑はまれな疾患であるが、口腔病変を伴う症例となるとさらに頻度は少なくなる。しかし慢性扁桃炎、慢性副鼻腔炎など慢性炎症に合併する可能性があることから耳鼻咽喉科医にとっても全く無縁な疾患ではなく銘記すべき疾患と考える。
  • 吉田 聖, 中島 寅彦, 中川 尚志, 久保 和彦, 小宗 静男
    2005 年 51 巻 3 号 p. 193-198
    発行日: 2005/05/20
    公開日: 2013/05/10
    ジャーナル フリー
    Lemierre症候群は扁桃炎、咽頭炎より波及する血栓性内頸静脈炎から重症の敗血症、多発性転移性感染症などの重篤な全身症状を呈する感染症である。今回われわれはLemierre症候群の1症例を経験した。症例は32歳男性。主訴は発熱、咽頭痛。CRP 22mg/dlと高度の炎症反応、血小板40,000/Mm3と低下を認めたため敗血症によるDIC を疑い入院となった。血液培養にてグラム陰性桿菌であるporphyromonas asaccharoliticaが検出された。CT、MRI、超音波検査において、肺野に空洞を伴う病変および胸水、頸部リンパ節腫大、内頸静脈内腔の血栓形成を認めた。クリンダマイシン、メロペネムなどの抗生剤投与と、ワーファリンによる抗凝固療法による保存的治療により軽快した。急性扁桃炎重症例においては、本症候群への進展を念頭におくべきである。そして本症候群と診断された場合、迅速で適切な治療が必要である。
  • 浜野 巨志, 小野 あゆみ, 南 豊彦, 多田 直樹, 中川 のぶ子, 井野 千代徳, 山下 敏夫
    2005 年 51 巻 3 号 p. 199-203
    発行日: 2005/05/20
    公開日: 2013/05/10
    ジャーナル フリー
    閉塞性睡眠時無呼吸症候群に対してLAUPなどの手術治療が行われている。その効果は個々において一定せず、期待どおりの改善が認められない症例もある。そこで、手術治療に先立ち手術後の効果を明瞭に予測する方法が必要になる。われわれは、試行錯誤の末に容易でかつ合理的な方法を開発した。その検査法とは口蓋垂を吊り上げ軟口蓋に縫合固定し、この状態でアプノモニターを施行し検査前後のAHIを調べるものである。今回27例に施行し12例が改善し、これらの症例に口蓋垂軟口蓋切除術を施行した。結果全例に予測どおりあるいは予測以上の改善が得られた。
  • 名倉 三津佳, 岩崎 聡, 峯田 周幸, 原 浩貴, 菊池 淳
    2005 年 51 巻 3 号 p. 204-208
    発行日: 2005/05/20
    公開日: 2013/05/10
    ジャーナル フリー
    睡眠呼吸障害 (sleep-disordered breathing; SDB) の手術治療として最近注目されている温度調節高周波治療装置 (radiofrequency volumetric tissue reduction; RFVTR) の効果や有用性を検討した。RFVTRは症例ごとに閉塞部位診断を行い、必要であれば軟口蓋、舌根、口蓋扁桃、鼻粘膜の複数部位に施行した。RFVTRは複数部位に施行されたものを含めてもUPPPや扁摘に比べ術後癒痛が軽度で、しかも早期に軽減する術式であることが判明した。また、UPPPやnCPAPほどではないが、自覚症状 (ESS)、他覚所見 (AHI) とも有意に (p<0.001) 改善するため、閉塞部位診断を行った上で手術部位を決定するならば、SDBに対するQOLを考慮した日帰り手術として効果が期待できると思われた。
  • 千々和 秀記, 千々和 圭一, 梅野 博仁, 中島 格
    2005 年 51 巻 3 号 p. 209-213
    発行日: 2005/05/20
    公開日: 2013/05/10
    ジャーナル フリー
    下咽頭癌が食道癌と重複する頻度が高いことはよく知られている。特に同時性重複癌の場合、その治療方法に難渋することがしばしばある。今回下咽頭・食道同時性重複癌のうち下咽頭早期癌、食道進行癌に対して、喉頭温存を目的とした一治療方法を提示した。下咽頭癌、食道癌治療後に一度盲端にしておいた食道と胃管を二期的に食道胃管端々吻合を行うという方法である。重度の基礎疾患を有する5症例に対し本治療方法を行い、全例合併症なく治療を完遂できた。本治療方法は喉頭温存が可能であり、かつ下咽頭癌、食道癌両方に対して根治治療が行える有効な治療方法である。
  • 太田 亮, 北南 和彦, 吉田 眞子, 原渕 保明
    2005 年 51 巻 3 号 p. 214-219
    発行日: 2005/05/20
    公開日: 2013/05/10
    ジャーナル フリー
    当科で最近15年間に経験した深頸部膿瘍17例および最近10年間に本邦で報告された430例につき検討を加えた。性別は男性が女性の約2倍の頻度で多く、平均年齢は44歳であった。最も多い発症原因は扁桃炎を含む上気道炎が61%で最も多く、歯性感染 (18%)、異物 (7%)、医療行為 (7%) が続いた。起炎菌についてはStreptococcus属が43%にみられ最も多く、27%に嫌気性菌が検出された。切開排膿による外科的ドレナージは記載がある375例のうち84%に施行されていた。合併症では糖尿病が16%と最も多く、日本人の糖尿病有病率5.5%の約3倍であった。糖尿病合併患者の平均在院日数47日は全症例の36日より長期で、死亡率も13%と全症例の死亡率4%の約3倍であった。本疾患の治療として積極的に外科的ドレナージを行い、嫌気性菌を標的にした抗生剤の投与が重要であり、特に糖尿病合併例では注意が必要である。
  • 松原 篤, 白崎 理喜, 王子 佳澄, 二井 一則, 井上 卓, 安田 京, 新川 秀一
    2005 年 51 巻 3 号 p. 220-225
    発行日: 2005/05/20
    公開日: 2013/05/10
    ジャーナル フリー
    スギ花粉症患者にとり花粉飛散開始日の予測は重要な情報であるが、降雪地域では冬期間の積雪や低温がスギ雄花の生育に影響を与えるため、一般的に行われている1月1日からの日最高気温の積算値や平均気温を用いた飛散開始日の予測は困難であった。そこで、予測に最も有用な気温積算の開始日 (起算日) と気温積算の基準となる温度 (基準温度) を検討することで、降雪地帯における飛散開始日の予測法の確立を試みた。その結果、弘前市においては起算日を1月21日または2月1日に設定し、日最高気温が3℃を越えた起算日からの日数から飛散開始日の予測が可能であることが示唆された。また、起算日から飛散開始日までの降雪はこの結果に影響を与えていなかったことから、この方法は降雪地域における飛散開始日の予測法として有用であると思われた。
  • 連続した4年間の臨床効果の比較
    片岡 真吾, 石光 亮太郎, 太神 尚士, 村田 明道, 木村 光宏, 森倉 一朗, 高村 薫, 錦織 朋之, 清水 保彦, 田中 弘之, ...
    2005 年 51 巻 3 号 p. 226-239
    発行日: 2005/05/20
    公開日: 2013/05/10
    ジャーナル フリー
    第2世代抗ヒスタミン薬である塩酸セチリジンを用いて2000年-2003年の連続した4年間において、スギ花粉症患者に初期療法を行い、鼻症状に対する効果を症状スコアにより評価し、スギ花粉飛散開始後に治療を開始した患者と比較するとともに、スギ花粉飛散数の異なる4年間での症状スコアについても比較検討した。その結果、塩酸セチリジンの初期投与を行うことで、いずれの年においてもスギ花粉飛散開始時期におけるスギ花粉症患者の鼻症状の発現を、飛散期投与群に比べて、有意に抑制できることが示された。しかしながら、大量飛散年においては、初期投与を行った群でも、患者の症状の緩和のために、点鼻ステロイド薬などの薬剤の併用療法が必要であった症例も多く認められた。これらの結果から、スギ花粉の大量飛散シーズンにおいては、スギ花粉の飛散状況を適切に把握し、花粉飛散の推移に伴う患者個々の症状の重症度に応じた薬物療法を行う必要があることが示された。
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