耳鼻と臨床
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56 巻, Suppl.2 号
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第33回日本嚥下医学会
〔シンポジウム : 頭頸部領域の疾患による嚥下障害への対応〕
総説
[パネルディスカッション:嚥下障害患者の外来診療 - 問題点と工夫 -]
総説
[公開パネルディスカッション :嚥下障害患者の外来診療 - 問題点と工夫 -]
総説
原著
  • 三瀬 和代, 本吉 和美, 兵頭 政光
    2010 年 56 巻 Suppl.2 号 p. S119-S124
    発行日: 2010年
    公開日: 2011/12/01
    ジャーナル フリー
    頭頸部領域の疾患による嚥下障害に対するリハビリテーションの実際とその効果、その特徴について、自験例と文献から考察した。リハビリテーションのポイントは残存機能を最大限に活用させ、いかに代償的嚥下法を獲得させるかにある。障害様式に応じて、さまざまな代償的嚥下法を使用できることが特徴である。脳血管障害とは異なりリハビリテーションを行う上で有利な点が多く、可能な限り早期から積極的な直接訓練を導入することが重要と考える。症例の多くは経口摂取自立可能となるが、なかには嚥下障害が遷延する症例もあり、その場合は漫然としたリハビリテーションを行わず、外科的治療を検討する必要がある。
  • 片山 直美, 足土 由里佳, 一野 晃代, 長坂 恵樹子, 加藤 江理, 伊藤 えり, 太田 陽子, 梶川 典子, 蟹谷 未香, 下林 真知 ...
    2010 年 56 巻 Suppl.2 号 p. S125-S132
    発行日: 2010年
    公開日: 2011/12/01
    ジャーナル フリー
    日本人の食の満足に及ぼす影響が大きい主食である「飯」に注目し、おいしく簡単に炊き上げるための工夫として、一般家庭で用いる炊飯器によって炊飯した飯の 3 種類の水(純水、ミネラル水、水道水)による違いを検討した。さらに選択した水を用いて、嚥下食・介護食に用いることが可能な離水しにくい粥を作製するために 5 種類の増粘剤(トロミパーフェクト、ソフティア、つるりんこ、とろみ名人、スルーキング)を用いて違いを検討した。方法として被験者である健康成人女性 92 名により各飯の「味」、「香り」、「見た目」、「総合」における官能試験を 5 点満点で評価し、物性を硬さ・粘り計(サタケ製)にて「弾力性」、「硬さ」、「粘り」、「バランス」について評価した。結果、無洗米の炊飯の際に用いる水は純水が最も高い評価であり、熱湯で炊飯することで、加水する時間なしで十分に評価の高い飯が炊き上がることが分かった。また離水しにくい粥も同様に熱湯を用いて加水する時間なしで炊き上げ可能であった。増粘剤を用いることで時間が経っても離水せず、軟らかい粥ができるため、嚥下食・介護食に適していることが分かった。
  • 山口 優実, 梅崎 俊郎, 宮地 英彰, 安達 一雄, 菊池 良和, 片岡 和子, 小宗 静男
    2010 年 56 巻 Suppl.2 号 p. S133-S137
    発行日: 2010年
    公開日: 2011/12/01
    ジャーナル フリー
    摂食・嚥下を改善すると考えられている代償方法の一つとしてリクライニング位がある。リクライニング位では気道と食道の解剖学的位置関係から誤嚥が起こりにくくなり、嚥下反射遅延患者においても有効であると考えられている。このことから多くの嚥下障害患者に対して用いられているが、食塊の流入に対する嚥下反射の遅れを計測し有効性を検討した報告はなく、その有効性は十分に解明されていない。そこで、喉頭挙上遅延時間 (laryngeal elevation delay time : LEDT) を用い、リクライニング位の有効性を検討した。その結果、液体嚥下時に LEDT は有意に延長した。誤嚥量が増加した症例もあったことから、流入速度の速い、つまり粘性の低い物性のものをリクライニング位で嚥下する際、咽頭期嚥下惹起が遅延する可能性が示唆された。その傾向は咽頭期嚥下の惹起が不良な症例ほど顕著であり、リクライニング位ではさらに誤嚥のリスクが高まり注意が必要であると考えられた。一方、ゼリーのような有形物の嚥下では、送り込み障害がある例では咽頭への送り込みがスムーズとなる。適度なリクライニング位は流入速度の遅い物性のものを嚥下する場合に有効である可能性が示唆された。
  • - LEDTによる検討 -
    宮地 英彰, 梅崎 俊郎, 山口 優実, 安達 一雄, 澤津橋 基広, 清原 英之, 菊池 良和, 小宗 静男
    2010 年 56 巻 Suppl.2 号 p. S138-S144
    発行日: 2010年
    公開日: 2011/12/01
    ジャーナル フリー
    ゼリー状の食塊は液体に比べて誤嚥しにくく、喀出しやすいために嚥下障害患者の経口摂取開始において頻用されている。その要因として液体と異なりゼリー状の食塊はその物性(硬さ、付着性、凝集性を持つ)のために咽頭への流入速度が遅いことが考えられる。しかし、現在までに嚥下造影検査においてその仮説を裏付ける目的であらかじめ物性の分かっている二つの嚥下物の咽頭期嚥下動態の違いを、嚥下惹起遅延を評価するのに有用と考えられているパラメーターを用いて比較した報告はない。そこで進が 1994 年に報告した laryngeal elevation delay time (LEDT) という咽頭期嚥下の遅れを評価するパラメーターを用いて、異なる物性を持つ二つの嚥下造影剤における咽頭期嚥下動態の違いを検討した。その結果、われわれが用いた LEDTは、1) 液体造影剤とゼリー状造影剤の二つの物性の違いをよく表し、2) 低粘性造影剤を用いることで咽頭期嚥下の遅れを評価する有効なパラメーターであることが確認され、3) ゼリー状の食物形態が咽頭期嚥下惹起遅延による誤嚥を来す症例の食事に有用であることを裏付けるパラメーターであると考えられた。
  • 中村 智之, 藤島 一郎, 萩原 直子, 加藤 真理, 橋本 育子, 佐藤 友里, 片桐 伯真
    2010 年 56 巻 Suppl.2 号 p. S145-S150
    発行日: 2010年
    公開日: 2011/12/01
    ジャーナル フリー
    緩徐進行性の両側食道入口部開大不全を伴う嚥下障害のみを呈し、輪状咽頭筋切断術での病理所見でミオパチーと考えられる症例を経験した。ただ、現在の診断基準では既知の疾患の確定診断は困難であり、過去の文献に示唆されるような頸部・咽頭筋に限局されたミオパチーの一つと判断したので報告する。疾患概念の確立のために、今後、同様の症例の集積・検証が必要と考える。輪状咽頭筋切断術の有効性は認められているが、新たな検査法・診断基準により早期の診断・加療が行われるのが望まれる。
  • 山野 貴史, 村上 健, 樋口 仁美, 市川 大輔, 深浦 順一, 梅崎 俊郎, 梅本 丈二, 中川 尚志
    2010 年 56 巻 Suppl.2 号 p. S151-S156
    発行日: 2010年
    公開日: 2011/12/01
    ジャーナル フリー
    小脳橋角部髄膜腫術後に生じた下位脳神経麻痺を原因とした嚥下障害症例に対し、外科的加療および嚥下リハビリテーションを併用し、改善を得た症例を経験した。右声帯の運動麻痺に対して、声門閉鎖強化による誤嚥の防止、咳嗽効率の改善目的に声帯内脂肪注入を行った。また、軟口蓋麻痺による鼻咽腔閉鎖不全を伴っていたので、嚥下圧が上咽頭から鼻腔方向に逃げることを防止する目的で軟口蓋挙上装置を作成した。これに加え、嚥下リハビリテーションを行った結果、経口摂取が可能となった。
  • 金沢 英哲, 鹿野 真人, 藤島 一郎
    2010 年 56 巻 Suppl.2 号 p. S157-S162
    発行日: 2010年
    公開日: 2011/12/01
    ジャーナル フリー
    Wallenberg 症候群による重度の摂食・嚥下障害に対して甲状軟骨舌骨下顎骨固定術および両側輪状咽頭筋切除術を行った。経口摂取が可能となったが、術後数年のうちに段階的に全身状態が悪化し、誤嚥が増加するとともに喀出不良 (気道クリアランスの低下) となり嚥下性肺炎を反復した。本症例に対して喉頭蓋管形成術が奏功し、経口摂取・音声機能をはじめとする quality of life (QOL) を維持・向上させることができた。嚥下機能改善手術後の経過不良例に対する救済手術には、選択肢の一つとして喉頭蓋管形成術の適応を考慮する価値がある。
  • 片平 信行, 小川 徹也, 池田 篤彦, 稲川 俊太郎, 平山 肇, 谷川 徹, 植田 広海
    2010 年 56 巻 Suppl.2 号 p. S163-S168
    発行日: 2010年
    公開日: 2011/12/01
    ジャーナル フリー
    われわれは進行舌根癌に対し、導入化学療法 (induction chemotherapy) による振り分けを行い、喉頭機能温存手術と適切なリハビリテーション、栄養管理の工夫をし、良好な quality of life (QOL) を獲得できた症例を経験した。舌根癌の治療方針の決定は難しく、中咽頭領域において、化学放射線療法 (chemoradiotherapy) の感受性は側壁型ほど良好ではない。また手術療法は嚥下機能を低下させる恐れがあり、術式・切除範囲を熟慮する必要がある。本症例は、導入化学療法による振り分けを行い、根治治療として化学放射線療法ではなく手術療法を選択した。それにより重要な神経などを温存することが可能であり、精度の高い手術を行うことができた。その徹底した機能温存手術に併せ、残存組織による嚥下機能の代償に重点を置いたリハビリテーションが、術後の嚥下機能回復に大きく影響したと考えられる。
  • 鮫島 靖浩, 讃岐 徹治, 兒玉 成博, 東家 完, 宮丸 悟, 熊井 良彦, 湯本 英二
    2010 年 56 巻 Suppl.2 号 p. S169-S175
    発行日: 2010年
    公開日: 2011/12/01
    ジャーナル フリー
    嚥下機能改善手術の治療成績に影響する因子について検討し手術適応について考察した。対象は 1994 年から 2009 年までに熊本大学病院耳鼻咽喉科で嚥下機能改善手術を行った 23 例である。術後に全量経口摂取可能となったのは 13 例 (56%)であった。術後の手術成績に有意に影響を与えた因子は咽頭知覚低下の有無で、咽頭知覚が低下していた 7 例中 6 例は経管栄養から離脱できなかった。そのほか、痰の喀出ができなかった 3 例、胃切除術を受けていた 3 例、心肺機能が低下した 2 例も経管栄養から離脱できなかった。このような症例では手術による効果はあまり期待できないと考えられた。
  • 秋定 健, 兵 行義, 原田 保
    2010 年 56 巻 Suppl.2 号 p. S176-S180
    発行日: 2010年
    公開日: 2011/12/01
    ジャーナル フリー
    川崎医科大学附属病院において、誤嚥防止手術における喉頭全摘出術と Lindeman 手術 (喉頭気管分離術、気管食道吻合術) について比較検討した。1991 年 9 月から 2000 年 6 月までに嚥下性肺炎患者 12 例に対して喉頭全摘出術を施行した。手術時間は平均 2 時間 34 分で、術中出血量は平均 120.3 mlであった。経口摂取までの期間は平均 19.4 日であった。2002 年から 2009 年 6 月までに嚥下性肺炎患者 10 例に対して Lindeman 手術 (喉頭気管分離術 7 例、気管食道吻合術 3 例) を行った。手術時間は平均 2 時間 33 分で、術中出血量は平均 20.4 mlであった。経口摂取までの期間は平均 12.4 日であった。手術時間は両群間で有意差を認めなかったが、術中出血量は喉頭全摘出術に対して Lindeman 手術が有意に少量であった。経口摂取までの期間は Lindeman 手術がやや短いが有意差は認めなかった。今後も Lindeman 手術を施行していく予定である。
  • 東野 正明, 林 伊吹, 高橋 俊樹, 須原 均, 二村 吉継, 櫟原 新平, 青野 幸余, 松尾 彩, 川上 理郎
    2010 年 56 巻 Suppl.2 号 p. S181-S188
    発行日: 2010年
    公開日: 2011/12/01
    ジャーナル フリー
    心臓血管外科手術患者において、術後の嚥下障害を術前や術直後に予測できるかどうかを検討した。症例は、心臓血管手術後経口摂取に問題があり、本院栄養サポートチーム (NST) に栄養管理の依頼があった 20 例 (男性 14 例、女性 6 例) で、手術から最終食事内容に至るまでの期間が 1 カ月未満であった 8 例 (A 群) と、1 カ月以上かかり術後の嚥下障害が大きな問題となった 12 例 (B 群) に分けて、両群間で比較検討した。その結果、心臓血管手術後嚥下障害を起こす要因として、年齢 (70 歳以上)、Body mass index (BMI)≧25 の肥満もしくは BMI < 18.5 の低体重、高度心機能低下 (EF ≦ 40%) の有無、脳梗塞の既往の有無、呼吸器疾患の既往の有無、緊急手術か否か、大動脈手術か否か、長時間手術 (10時間以上) か否か、の 8 項目のうち 4 項目以上に該当すると嚥下障害を引き起こす可能性が高いと考えられた。その中でも緊急手術、肥満、大動脈手術が影響していると考えられた。この 8 項目をスコア化したものと手術から最終食事形態に至るまでの日数との間に相関が認められた。また、心臓血管外科手術後患者の嚥下障害に対する NST 介入の効果も示された。術前スコアから術後の嚥下障害のリスクがあると予測される患者家族に対しては、十分な術前説明をするとともに、適切かつ迅速な対策を講じる必要があると考えられた。
  • 中平 真矢, 兵頭 政光, 西窪 加緒里, 岩村 健司, 高橋 朝妃, 土居 奈央, 榎 勇人, 石田 健司, 谷 俊一
    2010 年 56 巻 Suppl.2 号 p. S189-S194
    発行日: 2010年
    公開日: 2011/12/01
    ジャーナル フリー
    下咽頭後壁癌に対する喉頭温存下咽頭部分切除後の高度嚥下障害症例に対し、長期的な嚥下リハビリテーションを実施し、経口摂取を回復できた症例を報告する。症例は 70 歳、男性。下咽頭後壁癌に対し喉頭温存腫瘍切除術、右頸部郭清術、喉頭挙上術、気管切開術を受け術後に高度嚥下障害を呈した。嚥下機能改善目的に術後 54 日目に当院耳鼻咽喉科を紹介され受診した。初診時、反復唾液嚥下テストは 0 回/30 秒、嚥下内視鏡検査にて右声帯麻痺、咽喉頭の高度感覚障害、喉頭蓋谷・梨状陥凹に多量の唾液貯留を認め、嚥下造影検査にて嚥下反射惹起遅延、喉頭挙上度の低下による高度の混合型誤嚥を認めた。そこで、これらの障害の改善を目的とした嚥下リハビリテーションを実施し、術後 14 週目には直接訓練を開始し、21 週目には軟菜食を摂取可能となり、35 週目には常食による経口摂取が自立した。本例では下咽頭癌術後による咽喉頭の感覚障害や運動障害が高度であったが、言語聴覚士と耳鼻咽喉科医が連携して適切な病態評価とそれに対応した訓練を実施し、長期的にかかわることで経口摂取の回復につなげることができた。
  • - 自己実施訓練の効果 -
    岩田 義弘, 寺島 万成, 長島 圭士郎, 服部 忠夫, 堀部 晴司, 岡田 達佳, 櫻井 一生, 内藤 健晴, 大山 俊廣, 門山 浩, ...
    2010 年 56 巻 Suppl.2 号 p. S195-S201
    発行日: 2010年
    公開日: 2011/12/01
    ジャーナル フリー
    われわれは下顎を支え前頸部舌骨上下筋群と胸鎖乳突筋に等尺性収縮の運動負荷を短時間に行うことにより嚥下機能の改善につながることを報告してきた。等尺性収縮は短時間での筋力増加が期待できる訓練手技であり、この訓練を高齢者 11 名 (60 - 88 歳) に毎食事前 4 - 6秒 3 回ずつ、自分自身で行い、2 - 4週間後にその効果を確認した。結果、repetitive saliva swallowing testは訓練前平均 2.7 (± 1.2) から訓練後 6.2 (± 1.6) と変化した。頸部側面単純レントゲン撮影では頤 - 舌骨間が11.1%、頤 - 甲状軟骨間が 8.4%短縮した。胸骨 - 甲状軟骨間は12.0%延長した。年齢とともに胸骨に近づいた舌骨・甲状軟骨の位置はこの訓練により頤に近づいた。このことは嚥下運動の開始が早くなり誤嚥防止に役立つと考えられる。舌骨・喉頭周囲の筋力増強を目的とした嚥下訓練は確立されたものは少なく、本手技は高齢者の嚥下機能改善に寄与することが考えられると同時に手技が簡便で短時間での効果発現が見込まれるため各種嚥下障害への応用が期待される。
  • - 訓練前後に嚥下造影画像の解析を試みた症例 -
    木村 幸, 巨島 文子, 植田 秀貴, 今田 智美, 倉智 雅子
    2010 年 56 巻 Suppl.2 号 p. S202-S206
    発行日: 2010年
    公開日: 2011/12/01
    ジャーナル フリー
    前舌保持嚥下法 (Tongue-Hold Swallow : 以下 THS) は1996 年に Fujiu らによって嚥下咽頭期の嚥下圧生成源となる舌根部と咽頭後壁の接触不全に対し、咽頭後壁隆起を増大させる訓練法として提唱されたが、実際の訓練効果に関してはほとんど報告がない。今回われわれは、検査所見上、嚥下障害の問題の一つが咽頭期における舌根部と咽頭壁の接触不全による嚥下圧 (咽頭圧) 生成不足と考える症例に対して、THS のみを 3 カ月間施行した。訓練前後に嚥下造影検査を実施し、咽頭期における舌根部と咽頭壁の運動幅を測定した結果、舌根部と咽頭壁の接触不全が軽減された。THS は咽頭壁のみならず舌根部の後退運動を増大させる可能性が示唆された。
  • - 舌骨上筋群に対する筋力トレーニング方法への展望 -
    福岡 達之, 吉川 直子, 川阪 尚子, 野崎 園子, 寺山 修史, 福田 能啓, 道免 和久
    2010 年 56 巻 Suppl.2 号 p. S207-S214
    発行日: 2010年
    公開日: 2011/12/01
    ジャーナル フリー
    本研究の目的は、舌骨上筋群に対する筋力トレーニングの方法として、等尺性収縮による舌挙上運動の有用性を検討することである。対象は健常成人 10 名 (平均年齢 27.4 ± 3.8歳)、方法は各対象者の最大舌圧を測定した後、最大舌圧の 20%、40%、60%、80%の負荷強度で舌を挙上させた時の舌骨上筋群筋活動を表面筋電図で記録した。さらに、最大舌圧で舌を挙上させた時と頭部挙上、Mendelsohn 手技、挺舌について、各動作時の舌骨上筋群筋活動を記録した。舌骨上筋群筋活動は最大舌圧時の値を 100%として正規化し%RMS を用いて比較した。結果から、舌圧が上昇するに従い舌骨上筋群筋活動も増大を示し各強度で有意差を認めた。種々のトレーニング動作の比較では、最大舌圧による舌挙上時の舌骨上筋群筋活動が最も高く、頭部挙上 (34.8 ± 15.6%)、Mendelsohn 手技 (42.5 ± 14.8%)、挺舌 (43.0 ± 16.4%) と比べて有意差を認めた。以上より、等尺性収縮による舌挙上運動が、舌骨上筋群に対する筋力トレーニングの方法として有用となる可能性が示唆された。
  • 西窪 加緒里, 兵頭 政光
    2010 年 56 巻 Suppl.2 号 p. S215-S222
    発行日: 2010年
    公開日: 2011/12/01
    ジャーナル フリー
    咽喉頭異常感における嚥下障害の関与を検討することを目的として、咽喉頭異常感を愁訴に愛媛大学および高知大学医学部附属病院耳鼻咽喉科を受診した 244 例を対象に嚥下造影検査所見を検討した。誤嚥を5.1%に認め、男性に有意に多かった。また、男性の 52.3%、女性の 19.5%で咽頭クリアランスが低下しており、やはり男性が有意に多かった。頸部食道 web、輪状咽頭筋圧痕像、下咽頭ポーチ、頸部食道憩室、頸椎骨棘増殖はそれぞれ 13.1%、5.7%、5.7%、3.3%、17.2%に認められ、器質的疾患も少なくなかった。これらの結果より、機能的・器質的異常に基づく嚥下機能障害が、特に高齢者においては咽喉頭異常感の発症に関与していることが推測された。
  • 永田 博史, 武藤 博之, 西嶋 文美
    2010 年 56 巻 Suppl.2 号 p. S223-S228
    発行日: 2010年
    公開日: 2011/12/01
    ジャーナル フリー
    脳血管障害や神経・筋疾患を伴わない、特発性の輪状咽頭嚥下困難症 2 例を経験した。2 例とも嚥下造影検査にて食道入口部での通過障害があり、側面像にて輪状咽頭筋圧痕像 (cricopharyngeal bar) を認めた。症例 1 は 80 歳の女性。発症後数年で高度の嚥下障害を来したが、輪状咽頭筋切除術により嚥下障害は改善した。輪状咽頭筋の病理組織検査で、筋線維の萎縮と減少、間質の線維化、脂肪化、リンパ球浸潤が認められ、ミオパチーによる所見と考えられた。症例 2 は 61 歳の男性。4 年来の嚥下困難を訴え受診した。その後 7 年以上経過を見ているが、自覚症状および嚥下造影所見に明らかな悪化は見られていない。発症後 11 年以上経過しているが、日常生活に支障を来しておらず、積極的な治療を行わずに経過を観察している。特発性輪状咽頭嚥下困難症の経過は、おそらく多様であり、治療方針も症例により異なると考えられる。
  • - 声門閉鎖不全症例について-
    安達 一雄, 梅崎 俊郎, 宮地 英彰, 藤 翠, 小宗 静男
    2010 年 56 巻 Suppl.2 号 p. S229-S234
    発行日: 2010年
    公開日: 2011/12/01
    ジャーナル フリー
    嚥下内視鏡検査は嚥下機能を評価するにあたり、さまざまな利点を有している。しかしながら、その手技は一つの重大な欠点を有する。われわれは嚥下した瞬間は映像を見ることができない。いわゆるホワイトアウトといわれるまっ白い映像しか見えない。そこでわれわれはホワイトアウトの瞬間の嚥下機能を評価するために同時に嚥下圧を計測してみることとし、一側性声帯麻痺において甲状軟骨形成術前後の嚥下圧について評価した。嚥下圧は術後明らかに改善しているにもかかわらず、同時記録している嚥下内視鏡検査ではホワイトアウトが生じるのみで、何ら変化を認めなかった。嚥下内視鏡検査にはホワイトアウトという大きな欠点があるが、嚥下圧の同時記録により、十分に補えるものと考えられる。
  • 山本 敏之, 小林 庸子, 村田 美穂
    2010 年 56 巻 Suppl.2 号 p. S235-S239
    発行日: 2010年
    公開日: 2011/12/01
    ジャーナル フリー
    嚥下動態を経時的に評価することを目的に新たな解析法を考案した。健常者 8 人とパーキンソン病 (PD) 患者 1 人の嚥下造影検査 (VF) 記録を対象とした。2 次元動画解析ソフト (Move-tr/2D®) で毎秒 30 コマで録画した VF 記録内にマーカーを置き、マーカーで囲まれた領域の面積変化と嚥下中の液体の位置を経時的に評価した。すべての健常者は、中咽頭下部 (P1) 領域が下咽頭 (P2) 領域に先行して拡張、収縮、弛緩した。健常者では P1 領域と P2 領域の運動の時間差によって咽頭内に圧較差が作られ、食物を下方へ輸送していることが示唆された。PD 患者は P1 領域と P2 領域の運動に時間差が少なく、食道入口部の開大が不良で、十分な送り込みができなかった。本研究で提案した VF の解析法は、従来の解析法で評価が困難であった経時的な嚥下関連筋群の動きを評価でき、嚥下運動パターンの評価に有用であると考えた。
  • 常行 美貴, 前田 達慶, 米澤 宏一郎, 森本 浩一, 谷本 均, 齋藤 幹, 大月 直樹, 丹生 健一
    2010 年 56 巻 Suppl.2 号 p. S240-S245
    発行日: 2010年
    公開日: 2011/12/01
    ジャーナル フリー
    当院では同時併用化学放射線療法 (concurrent chemoradiotherapy : CCRT) によって生じる嚥下障害に対し、言語聴覚士による嚥下リハビリテーション (嚥下リハビリ) を行っている。今回、われわれは CCRT 終了時の口内炎と嚥下障害について、また嚥下リハビリの実施状況と嚥下障害の関係について検討した。対象は 2008 年 4 月から 2009 年 11 月までに CCRT または CCRT と頸部郭清術を行った頭頸部癌患者 51 名 (男性 44 名、女性 7名) で、平均 63 歳 (39 - 80 歳) であった。有害事象共通用語基準 CTCAE v4.0 を利用して口内炎 grade と嚥下障害 grade の評価を CCRT 終了時に行った。CCRT 終了時、上咽頭癌、中咽頭癌、下咽頭癌、喉頭癌それぞれの口内炎 grade の平均は 1.8、2.1、1.8、0.8 で喉頭癌患者が軽症であった。嚥下障害 grade の平均はそれぞれ 2.4、2.7、2.2、1.2 であり、中咽頭癌患者が重症で、喉頭癌患者が軽症であった。51 名中 CCRT 前から CCRT 中にかけて筋力アップの嚥下リハビリを指導した 17 名について検討したところ、嚥下リハビリを毎日行えた患者の方が嚥下障害の悪化は少ない傾向にあった。
  • 清野 由輩, 中山 明仁, 横堀 学, 岡本 牧人
    2010 年 56 巻 Suppl.2 号 p. S246-S251
    発行日: 2010年
    公開日: 2011/12/01
    ジャーナル フリー
    放射線治療後再発喉頭癌に対して喉頭亜全摘出術 (supracricoid laryngectomy with cricohyoidoepiglotto-pexy : SCL-CHEP) を行った症例の 12 年以上の嚥下機能の追跡について報告した。嚥下機能は経過中良好に維持され、患者は外食も可能で自然気道での生活を過ごすことができている。本症例を通じて、残った 1/4 の喉頭で再獲得した嚥下機能は、長期間にわたりまた患者が 80 歳以上の高齢になっても維持されることが確認された。
抄録
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