耳鼻と臨床
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57 巻, 6 号
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原著
  • 小山 みな子, 大橋 充, 君付 隆, 小宗 静男
    2011 年 57 巻 6 号 p. 267-274
    発行日: 2011年
    公開日: 2012/11/01
    ジャーナル フリー
    九州大学病院耳鼻咽喉科で行われた鼓室形成術III型症例において、術後聴力改善の成功率とアブミ骨可動性、アブミ骨周囲病変の有無、ツチ骨キヌタ骨病変の有無、Middle ear risk index (MERI)、手術回数、術式との関連について回帰分析を用いて検討した。その中で有意な相関を認めたものは、アブミ骨周囲病変の有無と MERI であった。アブミ骨可動性の術中評価に関しては、成功率との有意な差を認めなかった。このことは、アブミ骨可動性の主観的判断には限界があり、客観的に数値化された手技が必須であることを示唆している。
  • 安達 一雄, 梅崎 俊郎, 松原 尚子, 清原 英之, 小宗 静男
    2011 年 57 巻 6 号 p. 275-282
    発行日: 2011年
    公開日: 2012/11/01
    ジャーナル フリー
    声門癌症例における肉眼的形態と音声の関係について検討を行った。声門癌を肉眼的形態を基に、(1) 平坦型、(2) 腫瘤型、(3) 乳頭型、(4) 粘膜下型の 4 群に分け、それぞれの型と音声の関係について検討を行った。それぞれの群間でみると、平坦型は腫瘤型、乳頭型と比べ、音響分析および MPT の点から、有意に音声は良好であった。また、同じ群で、stage ごとに検討を行うと、有意な差は認めなかった。以上のことから、喉頭癌の音声を決めるものは進行度ではなく、肉眼的形態によるところが大きいことが明らかとなった。
  • 山田 卓生, 蓑田 涼生, 三輪 徹, 増田 聖子, 兒玉 成博, 鮫島 靖浩, 湯本 英二
    2011 年 57 巻 6 号 p. 283-289
    発行日: 2011年
    公開日: 2012/11/01
    ジャーナル フリー
    当科で施行した人工内耳埋込術 72 例について、「人工内耳埋込術後に何らかの追加の治療・処置を必要とした症状」を術後合併症と定義し、術後の合併症の有無について診療録の記載より調査を行った。72 例中 9 例(12.5%)に術後合併症を認めた。保存的治療もしくは経過観察のみで対処可能であった合併症(軽度合併症)は 4 例、観血的治療を必要とした合併症(重度合併症)は 5 例であった。軽度合併症の内訳は、味覚障害が 2 例、遅発性顔面神経麻痺が 1 例、人工内耳埋込部の感染が 1 例であった。また、重度合併症は、インプラント故障が 2 例、人工内耳埋込部の感染が 2 例、インプラントの露出が 1 例であった。このうち埋込部感染を認めた 2 例は、基礎疾患との関連が考えられた。インプラント故障を認めた 2 例においては、頭部打撲が原因であった。インプラントの露出を来した 1 例については、人工内耳埋込部と耳掛けの体外部との接触が原因と思われた。
  • 久保田 万理恵, 安松 隆治, 安井 徹郎, 山内 盛泰, 中条 恭子
    2011 年 57 巻 6 号 p. 290-295
    発行日: 2011年
    公開日: 2012/11/01
    ジャーナル フリー
    末梢性顔面神経麻痺に対して、プレドニゾロン 200 mg を初期投与量とするステロイド大量療法の治療成績を検討し、プレドニゾロン 60 mg を初期投与量とする従来法による治療群との治療成績を比較した。柳原法による麻痺スコア 10 点未満の完全麻痺症例 20 例のうち治癒したのは 14 例(70.0%)で、以前の当科での完全麻痺症例の治癒率と比較して有意差は認められず、ステロイド大量療法の有効性は確認できなかった。末梢性顔面神経麻痺の予後は、初診時の麻痺スコアによって影響される傾向が認められた。ただ、ステロイド大量療法を行い不完全治癒と判定した症例でも治療効果はみられたことから、顔面神経麻痺の治療に一定の見解が得られていない現段階では、ステロイド大量療法の適用を継続しさらなる検討をしていく必要があるものと考えられた。
  • 橘 智靖, 中田 道広, 小河原 悠哉, 松山 祐子, 阿部 郁
    2011 年 57 巻 6 号 p. 296-300
    発行日: 2011年
    公開日: 2012/11/01
    ジャーナル フリー
    血友病患者に発症した咽喉頭血腫の 1 例を経験したので報告した。血友病は X 連鎖劣性遺伝性の先天性凝固障害症で、凝固因子活性の欠乏により血液凝固過程が遅延し、出血症状を反復する疾患である。血友病患者で咽喉頭に血腫を生じることはまれである。咽喉頭血腫においては気道狭窄による窒息の危険性があり、気道の確保が必要になることがある。本症例では気管切開、気管内挿管などの処置をすることなく、第VIII因子製剤、抗生剤、およびステロイドの投与を行い保存的治療のみで速やかに改善が得られた。気管切開を施行した症例も報告されているため、血友病患者の咽喉頭血腫の治療においては、常に気道確保の必要性を念頭に置きながら、速やかに凝固因子製剤を主体とし抗生剤やステロイドなどの投与を開始する必要がある。
臨床ノート
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