九州大学病院耳鼻咽喉科で行われた鼓室形成術III型症例において、術後聴力改善の成功率とアブミ骨可動性、アブミ骨周囲病変の有無、ツチ骨キヌタ骨病変の有無、Middle ear risk index (MERI)、手術回数、術式との関連について回帰分析を用いて検討した。その中で有意な相関を認めたものは、アブミ骨周囲病変の有無と MERI であった。アブミ骨可動性の術中評価に関しては、成功率との有意な差を認めなかった。このことは、アブミ骨可動性の主観的判断には限界があり、客観的に数値化された手技が必須であることを示唆している。
血友病患者に発症した咽喉頭血腫の 1 例を経験したので報告した。血友病は X 連鎖劣性遺伝性の先天性凝固障害症で、凝固因子活性の欠乏により血液凝固過程が遅延し、出血症状を反復する疾患である。血友病患者で咽喉頭に血腫を生じることはまれである。咽喉頭血腫においては気道狭窄による窒息の危険性があり、気道の確保が必要になることがある。本症例では気管切開、気管内挿管などの処置をすることなく、第VIII因子製剤、抗生剤、およびステロイドの投与を行い保存的治療のみで速やかに改善が得られた。気管切開を施行した症例も報告されているため、血友病患者の咽喉頭血腫の治療においては、常に気道確保の必要性を念頭に置きながら、速やかに凝固因子製剤を主体とし抗生剤やステロイドなどの投与を開始する必要がある。