耳鼻と臨床
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57 巻, 3 号
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原著
  • 澤津橋 基広, 清原 英之, 柿添 亜矢, 村上 大輔, 織田 正道, 小宗 静男
    2011 年 57 巻 3 号 p. 89-95
    発行日: 2011年
    公開日: 2012/04/25
    ジャーナル フリー
    2009年の花粉症シーズンに、われわれは、患者とのコミュニケーション向上を目的として、花粉症用の問診票を活用し、患者の治療薬に対するニーズを把握できたので報告する。対象は2009年に祐愛会織田病院耳鼻咽喉科サージセンターを受診し、スギ花粉症と診断された202例である。男性78名、女性124名、年齢は7歳から73歳、平均32.5歳であった。過去の報告を基に、第2世代抗ヒスタミン剤を大きく2種類に使い分けて患者満足度の検討を行った。効果は高いが眠気が発現することがある第2世代抗ヒスタミン剤を効果重視型(塩酸オロパタジン、塩酸セチリジン)とし、効果はマイルドであるが眠気が少ない第2世代抗ヒスタミン剤を眠気軽減型(エバスチン、塩酸エピナスチン、ロラタジン、塩酸フェキソフェナジン)とした。患者の希望する治療薬として、61.2%の患者が「効果の高さ」を、32.2%の患者が「眠気の少なさ」を重視し、「両方の効果を重視する」は6.6%という結果であった。重症度別では、中等症以下の群では、効果重視は55%、眠気の少なさを重視する症例は37%、その両方が8%だったのに対し、重症以上の群では、効果重視は65%、眠気の少なさを重視する症例は29%、その両方が6%であった。われわれの治療に対する満足度について、「満足」が37%、「やや満足」が35%、「どちらでもない」が14%、「やや不満」が12%、「不満」が2%であった。今回の検討では、6割以上のスギ花粉症患者において、眠気の少なさよりも効果重視型の抗ヒスタミン剤を希望した。また、問診票の活用により、患者ニーズを反映した薬剤選択をすることができ、患者満足度を高めることができた。
  • - 経口摂取再開時の介入を中心に -
    高柳 博久, 小林 俊樹, 須田 稔士, 加藤 孝邦
    2011 年 57 巻 3 号 p. 96-102
    発行日: 2011年
    公開日: 2012/04/25
    ジャーナル フリー
    富士市立中央病院では2006年に栄養サポートチーム (NST : nutrition support team) が設立され、耳鼻咽喉科は摂食・嚥下・口腔ケアチームに所属している。設立後、嚥下障害患者は同時に栄養障害の問題を抱えていることが多く、それによって引き起こされる ADL の低下、感染、褥瘡などの対応が他科の医師、コメディカルとスムーズに連携できるようになった。今回われわれは摂食・嚥下・口腔ケアチームの活動を経口摂取再開時の介入を中心に活動、アウトカムを報告する。対象は 2008 年 1 月から 12 月の 1 年間に経口摂取を再開するための嚥下機能評価の依頼を受けた 141 例である。方法は初回嚥下機能評価後に重症例、中等症例、軽症例、正常に分類しそれぞれ指示した。退院時の栄養手段は経口摂取のみのものが 94例 (66.7%)、経腸栄養のみ 29 例 (20.6%)、経静脈栄養のみ 18例 (12.8%) であった。退院時に経口摂取が可能になる比率は肺炎発症がない症例が肺炎発症ありに比べ有意に高かった (χ2 検定、p < 0.05 )。退院時の経口摂取による栄養手段を可能にするためには介入後の肺炎の発症を防ぐことが重要であると考えられた。
  • - 転倒に焦点を当てて -
    久保 和彦, 柴田 修明
    2011 年 57 巻 3 号 p. 103-108
    発行日: 2011年
    公開日: 2012/04/25
    ジャーナル フリー
    救急車を要請して当院を受診した平衡機能障害患者、特に転倒患者について臨床像を検討した。2008 年 10 月 1 日から 12 月 31 日までの 3 カ月間に千鳥橋病院を「救急車で」受診した患者 879 名を対象とした。救急車出動理由として転倒は 8 %、めまい・ふらつきは 7 %だった。転倒もふらつきも 50 歳代から 80 歳代に多く、原因はつまずきが最も多くて約半数を占めており、年齢が進むにつれて増加した。転倒した 70 名のうち 19 名が骨折していた。大腿骨骨折だった 9 名が手術を必要としたが、全例 70 歳以上であった。リハビリ目的に他院に転院せざるを得なかった割合は、手術例では 56 %、非手術例では 10 %に過ぎなかった。転倒は平衡障害の結果起こり、高齢化社会が進む日本社会において転倒予防は重要な課題である。今後は、われわれ耳鼻咽喉科医が転倒=平衡障害であることを認識し、平衡機能評価を通じて積極的に転倒予防に介入していくべきである。
  • 冨山 道夫
    2011 年 57 巻 3 号 p. 109-117
    発行日: 2011年
    公開日: 2012/04/25
    ジャーナル フリー
    成人重症急性上咽頭炎症例 88 名の検出菌および薬剤感受性に関て調査を行った。計 115 株が検出されその内訳は、β 溶連菌 8 株 ( 7%)、S. pneumoniae 3 株 ( 3%)、S. aureus 11 株 ( 9%)、H. influenzae 39 株 (34%)、H. parainfluenzae 33 株(29%)、H. parahaemolyticus 2株 ( 2%)、M. catarrhalis 19株(16%)であった。cefditorenはβ溶連菌、H. influenzaeH. parainfluenzaeM. catarrhalisの 4 菌に対していずれもMIC90が0.5 μg/ml以下と良好な感受性を示した。
  • 杉山 喜一, 山野 貴史, 市川 大輔, 大西 克樹, 樋口 仁美, 宮城 司道, 中川 尚志
    2011 年 57 巻 3 号 p. 118-123
    発行日: 2011年
    公開日: 2012/04/25
    ジャーナル フリー
    クリニカルパスは入院中に行う患者指導、検査、手術、与薬、食事、処置などについて時間軸に沿ってまとめたもので、医療の質の向上、医療資源の有効活用、患者のインフォームドコンセントの向上を目的としている。当院では 2002 年 4月より喉頭微細手術のクリニカルパスを導入している。その中から 2002 年 4月から 2010 年 3 月の間で良性疾患に限った各 52 症例を無作為に抽出した。クリニカルパス導入前後で在院日数、抗菌剤使用期間、常食までの移行期間について比較検討を行ったところ、それぞれについて有意に期間の短縮を認めた。
  • 塚原 桃子, 濱田 昌史, 大貫 純一, 小田桐 恭子, 飯田 政弘
    2011 年 57 巻 3 号 p. 124-130
    発行日: 2011年
    公開日: 2012/04/25
    ジャーナル フリー
    Gradenigo 症候群は中耳炎、三叉神経痛、外転神経麻痺を三徴候とする錐体尖端含気蜂巣への炎症波及で生じるまれな中耳炎合併症である。近年では中耳炎に対する知識の普及や診断の進歩、適切な抗菌薬使用により発症はまれとなった。本症例では、妊娠初期に発症した急性中耳炎に対し適切な抗菌薬投与が行われず、錐体尖に炎症が波及し生じたと考えられた。また、Gradenigo 症候群に対しては抗生剤やステロイド剤の点滴治療が考慮されるが、妊婦であったためまず抗生剤内服のみで治療を開始した結果改善が得られ、追加治療は必要としなかった。妊婦への抗生剤使用に対する知識の必要性、まれな疾患である Gradenigo 症候群の存在について改めて考えさせられた 1 例となった。
  • 山野 貴史, 樋口 仁美, 市川 大輔, 中川 尚志
    2011 年 57 巻 3 号 p. 131-137
    発行日: 2011年
    公開日: 2012/04/25
    ジャーナル フリー
    口腔癌手術後にたこつぼ型心筋症を来した症例を経験した。症例は 71 歳、女性。左下口唇 T4N2bM0 として照射と併行して CDDP 100 mg / body の超選択的動注療法を計 4 回施行後に気管切開、左下口唇腫瘍摘出 (左下顎骨部分切除、皮膚合併切除)、左頸部郭清術、下顎骨再建、口唇再建を施行した。術後 7 日目にインスリン抵抗性の高血糖、心電図で V1 - V3 の ST 上昇と T 波の陰転化、心エコーで左室心尖部の収縮異常像を認め、たこつぼ型心筋症と診断した。発症については精神的・身体的ストレスが誘因となるといわれており、本症例のように頭頸部癌手術が契機で発症することもあり、耳鼻咽喉科医も認知すべき疾患であると考えた。
臨床ノート
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