耳鼻と臨床
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58 巻, 1 号
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原著
  • 伊藤 恵子, 千年 紘子, 藤田 侑希, 松田 朱加, 鮫島 靖浩
    2012 年 58 巻 1 号 p. 1-11
    発行日: 2012年
    公開日: 2013/01/01
    ジャーナル フリー
    2009 年 1 月から 2010 年 9 月までに当院補聴器外来を受診した難聴者 50 例につき、補聴器装用にかかわる要因の解明と装用前後の主観的評価、装用に至った症例における満足度とその推移について検討を行った。装用に至った症例は 34 例で、装用例では装用耳裸耳聴力レベルが有意に高く、身体障害認定をされている割合が有意に高かった。装用前後における主観的評価では、1 対1 の聞き取り、電子レンジの音の聞き取りは、装用後に聞き取れた割合が 80%以上であったのに対し、4 - 5 人の集まりでの会話は 36%であった。満足度の推移を追跡し得た23 例につき、装用 1 ヵ月後と 3 ヵ月後の満足度を回答してもらったところ、ともに中央値は 80 点であった。今後高齢化社会が進み、補聴器のニーズが増加することが予想され、障害の受容、補聴器のフィッティング、補聴器適合検査、装用後の聴覚管理、装用指導などは、耳鼻咽喉科医、言語聴覚士、認定補聴器技能者の連携が必須であると考える。
  • 清水 謙祐, 五島 史行
    2012 年 58 巻 1 号 p. 12-16
    発行日: 2012年
    公開日: 2013/01/01
    ジャーナル フリー
    耳鼻咽喉科には耳鳴り、めまい、咽喉頭異常感症などの身体症状を訴える患者が多く受診し、その中で精神症状を認める患者も少なくない。それらの患者において、偶然、鼓膜表面のツチ骨柄動脈の発赤を認めた。そのため、耳疾患のない患者で、精神疾患のうつ病 17 例、不安障害 12 例に対して、デジタル耳鏡による鼓膜写真を撮影し、ツチ骨柄動脈発赤の有無を評価した。正常コントロールは 22 例とした。うつ病、不安障害患者では正常コントロールに比較してツチ骨柄動脈の発赤が高頻度に認められた。ツチ骨柄動脈発赤とうつ病・不安障害との関連については今後の検討を必要とするが、精神疾患患者に対しても、鼓膜所見を詳細に観察することは重要と考えられた。
  • 佐藤 満雄, 藤原 良平, 宮下 美恵, 斉藤 和也, 磯野 道夫, 寺尾 恭一, 土井 勝美
    2012 年 58 巻 1 号 p. 17-23
    発行日: 2012年
    公開日: 2013/01/01
    ジャーナル フリー
    最近われわれは、耳掻きによる直達外傷から 5 年後に、伝音難聴に対して試験開放術を行い、アブミ骨脚部、底板部分骨折を確認した症例を経験した。術前診断として耳小骨奇形も鑑別疾患に挙がったが、側頭骨 CT では、明らかな耳小骨の異常、骨折、および脱臼は確認できなかった。手術所見としてアブミ骨底板とアブミ骨前脚の骨折があり、上部構造は変位していたが、前庭窓開放部は膜様閉鎖し、ピストン挿入に十分な大きさが確保されていたため、アブミ骨手術を施行した。術後はめまい・耳鳴りなどの合併症なく、42 dB の聴力改善を得た。外傷性耳小骨離断の症例において、アブミ骨手術が術式の選択肢の一つとなる。
  • 山野 貴史, 宮城 司道, 樋口 仁美, 村上 健, 梅崎 俊郎, 中川 尚志
    2012 年 58 巻 1 号 p. 24-29
    発行日: 2012年
    公開日: 2013/01/01
    ジャーナル フリー
    食道癌術後の嚥下障害に対して嚥下リハビリとともに喀出力・嚥下圧強化のために術後早期に甲状軟骨形成術 I 型を行った 2 例を報告する。術後の嚥下障害を遷延させる原因として、症例 1 は抗精神病薬 (フルニトラゼパム、リスペリドン) の内服、症例 2 は頸椎脱臼骨折による C5-7 前方固定術後の状態を合併していた。嚥下障害を遷延させる合併症を有する症例においては、可及的早期に甲状軟骨形成術I型などの声帯内転術が有効であると考えた。
  • 村上 大輔, 澤津橋 基広, 吉川 沙耶花, 西嶋 利光, 齊藤 章, 加藤 昭夫, 小宗 静男
    2012 年 58 巻 1 号 p. 30-38
    発行日: 2012年
    公開日: 2013/01/01
    ジャーナル フリー
    花粉症に対する皮下免疫(減感作)療法は、唯一根治を期待できる治療法である。しかしながら頻回に注射が必要なことや重篤な有害事象が起こる可能性があるため、より侵襲が少なく、利便性が良く、安全な減感作治療法が期待されてきた。そこで簡便に減感作を行える新規経口免疫寛容剤 (スギ抗原 - ガラクトマンナン複合体) を用いて、花粉症患者に対する減感作治療の安全性、その効果について検討した。減感作中の有害事象は、5 名中 1 名で全身倦怠感を認めたのみであった。また、花粉飛散期での鼻症状、重症度スコア、VAS、medication score は、薬物治療群と比較して減感作治療群でスコアの改善がみられた。これらの結果から少人数のパイロット研究ではあるが経口免疫寛容剤 (スギ抗原 - ガラクトマンナン複合体) を用いた経口免疫療法は、重篤な有害事象を認めず、短期間での減感作治療効果が期待でき、花粉症に対する治療の一つの選択肢になり得ると考えられた。
  • 高瀬 久光, 末田 尚之, 福崎 勉, 宮城 司道, 中川 尚志
    2012 年 58 巻 1 号 p. 39-44
    発行日: 2012年
    公開日: 2013/01/01
    ジャーナル フリー
    近年、国内においてもこれまでの患者の受動的な治療参加から能動的な治療参加 (アドヒアランス) への移行が普及しつつある。WHO によるとアドヒアランスとは「患者が主体となり自分自身の病態を理解し医師の推奨する方法に同意し、服薬・食事療法そして生活習慣の改善を行うこと」と定義されている。今回、頭頸部癌入院患者において TS-1 のカプセル剤および配合顆粒剤のクロスオーバー法による調査を実施したところ、両剤形の使用感に対する同等性が示され、服薬コンプライアンスの観点から今以上に患者視点での薬剤選択の必要性が示唆された。
臨床ノート
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