耳鼻と臨床
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58 巻, 4 号
選択された号の論文の7件中1~7を表示しています
原著
  • 柴崎 修, 水野 正浩, 伊藤 彰紀
    2012 年 58 巻 4 号 p. 143-148
    発行日: 2012年
    公開日: 2013/07/01
    ジャーナル フリー
    めまい発作を反復するメニエール病難治例に対して、ステロイドホルモン剤の変更がめまい発作の抑制に有効であった 4例を経験した。いずれもプレドニゾロンからデキサメタゾンへの変更によってめまい発作が抑制された。ステロイドホルモン剤の使用にあたっては、副腎不全など副作用の発生に注意しなければならないが、今回の症例では明らかな副作用は確認されなかった。めまい発作を反復するメニエール病難治例に対しては、ゲンタマイシン鼓室内注入や内リンパ嚢開放術、前庭神経切断術などの観血的治療が推奨されているが、これらの治療を行う前に、ステロイドホルモン剤の慎重な投与と長時間作用型ステロイドへの変更についても、検討してみる必要があると考える。
  • 菅村 真由美, 今村 明秀, 原田 博文, 上野 哲子, 宮城 司道, 中川 尚志, 久保 和彦
    2012 年 58 巻 4 号 p. 149-156
    発行日: 2012年
    公開日: 2013/07/01
    ジャーナル フリー
    内耳疾患の多くは原因不明であり、その病態生理を探ることはその後の治療においても極めて重要である。いくつかある内耳機能検査の中でも、グリセロールテストは外来で簡便にできる内リンパ水腫推定検査である。今回、われわれは、福岡大学病院耳鼻咽喉科外来にてグリセロールテストを施行した患者 53耳(年齢は 15歳 -71歳、男性 20名、女性 33名)に対し、難聴の臨床像とともに種々の検査結果とグリセロールテストの関連について検討を行った。グリセロールテストは蝸牛系の検査としては有効であるが、前庭機能を反映しているとはいえないと考えられた。内リンパ水腫推定には、外来で簡便にできるグリセロール試験だけでなく蝸電図やフロセミド試験等も積極的に行っていく必要があると思われた。
  • 川本 将浩, 山本 圭介, 望月 隆一, 岩橋 利彦, 鈴木 洋, 前田 秀典, 識名 崇, 西池 季隆, 猪原 秀典
    2012 年 58 巻 4 号 p. 157-162
    発行日: 2012年
    公開日: 2013/07/01
    ジャーナル フリー
    鼻中隔彎曲症が慢性副鼻腔炎の遷延化に及ぼす影響について、解剖学的構造異常以外の疫学的要因をかなり無視できると思われる片側性副鼻腔炎 46例を対象に研究を行った。患側凸群 13例・彎曲なし群 15例・患側凹群 18例に分類し、Lund-Mackay Staging System に準じて患側副鼻腔の重症度を評価した。彎曲の方向にかかわらず、中鼻道に排泄路をもつ副鼻腔の重症度が高かった。患側凸群と非患側凸群 (彎曲なし+患側凹) の比較において、上顎洞炎の重症度に有意差を認めた (p < 0.05)。以上の結果から、上顎洞は慢性副鼻腔炎の好発部位であり、さらに鼻中隔彎曲は上顎洞炎の遷延化因子になることが示唆された。
  • 原 奈津貴, 梅崎 俊郎, 安達 一雄, 藤 賢史, 清原 英之, 小宗 静男
    2012 年 58 巻 4 号 p. 163-168
    発行日: 2012年
    公開日: 2013/07/01
    ジャーナル フリー
    声帯外方移動術 (Ejnell法) は両側声帯麻痺に対して行われる声門開大術の一つであり、当科では声門開大術の第一選択としている。本来はラリンゴマイクロ下に行うため喉頭展開を必要とする術式であるが、今回、放射線治療後の症例で頸部伸展困難による喉頭直達鏡下の Ejnell法が不可能な両側声帯運動障害例を経験した。本症例に対して、経鼻的に軟性ファイバースコープ下で ENDO CLOSE™ を用いた Ejnell法が有効であった。本術式は喉頭展開不能例に対する Ejnell手術の工夫として有効な方法の一つとなり得ると思われた。
  • 井野 千代徳, 多田 直樹, 南 豊彦, 井野 素子, 田邊 正博, 溝口 兼司
    2012 年 58 巻 4 号 p. 169-178
    発行日: 2012年
    公開日: 2013/07/01
    ジャーナル フリー
    口腔内乳頭腫と GERD との関係を主に論じた。口腔内 23例中、GERD が疑われた症例は 12例 (52.2%) であった。そこで過去 20年間の口腔内乳頭腫を調べ、その発症年齢、部位などから両者の関係を考察した。口腔内乳頭腫症例の年齢分布は若年と中高年に症例の集積をみるとわずかに二峰性であったが、GERD 症例も同様の年齢分布を示すとの報告がある。口腔内乳頭腫は口蓋垂、口蓋弓そして口蓋扁桃、軟口蓋で症例の 68.3%、頬部のそれはわずか 1.4%である。HPV の感染には粘膜の微小な傷が必須であるが、粘膜損傷が多いと思われる頬に少ないこの事実は興味深い。筆者らはその理由を口蓋の小唾液腺より分泌される粘性の唾液にあると考察した。軟口蓋の小唾液腺より分泌された唾液はその部にとどまるかゆっくりと口蓋垂か口蓋弓を経由して咽頭へと動くのに対して、頬部では耳下腺導管が開口し漿液性唾液が迅速に流れ去って行く。軟口蓋の小唾液腺由来の粘液に混した HPV は上記した部位でとどまるか非常に遅く動くことで感染の機会が高まり、逆流した胃液も粘性の小唾液唾液に混して潜在感染していた HPV を活性化すると推察した。頭頸部悪性腫瘍と HPV との関係、特に口蓋扁桃の悪性腫瘍との関係が注目されている。同部位は乳頭腫発症頻度の極めて高い部位でもあり感染・発症に同様の機序が想定できる。今回報告した症例で乳頭腫が悪性化した例は確認していない。ただ、3例に部位を異にして口腔、咽頭、喉頭に悪性腫瘍が発症した。偶然の発症と捉えてはいるが興味ある事実でもある。
  • 冨山 道夫
    2012 年 58 巻 4 号 p. 179-193
    発行日: 2012年
    公開日: 2013/07/01
    ジャーナル フリー
    成人急性咽頭・扁桃炎の重症度をスコア化し、重症と判定された急性咽頭・扁桃炎症例を対象として garenoxacin (GRNX) を投与し有用性を検討した。対象は 2010年に当院を受診した重症急性咽頭・扁桃炎患者 95名である。GRNX の副作用のため投与を中止した 2名を除いた 93名を臨床効果判定の評価対象とした。GRNX 7日間単独投与により治癒した症例は 80名で治癒率は 86%であった。追加の薬剤の併用を要した症例 13名中 10名より H.parainfluenzae が検出された。細菌検査では計 147株検出され、主な検出菌 (%)、GRNX の MIC90はβ溶連菌 46株 (31%) 0.125μg/ml、H.influenzae 20株 (14%) 0.25μg/ml、H.parainfluenzae 53 株 (36%) 4μg/ml 以上であった。GRNX は重症急性咽頭・扁桃炎に有用な薬剤であるが、H.parainfluenzae 検出例では追加の薬剤の併用が必要となる場合があり、慎重な経過観察を要すると思われた。
臨床ノート
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