耳鼻と臨床
Online ISSN : 2185-1034
Print ISSN : 0447-7227
ISSN-L : 0447-7227
59 巻, 5 号
選択された号の論文の9件中1~9を表示しています
原著
  • 安松 隆治, 佐藤 方宜 , 澤津橋 基広 , 藤 賢史, 中島 寅彦
    2013 年 59 巻 5 号 p. 189-195
    発行日: 2013/09/20
    公開日: 2014/09/10
    ジャーナル フリー
    1995 年− 2011 年に鼻・副鼻腔乳頭腫もしくは乳頭腫発生の鼻副鼻腔癌の診断で治療を行った 57 例を対象として癌合併症例と癌非合併症例の臨床的特徴を比較することで治療前に癌合併を予測する因子がないか解析を行った。さらに癌合併が疑われた、あるいは判明した場合の治療方針について検討を行った。内訳は男性 38 例(67%)、女性 19 例(33%)で年齢は 7− 94 歳(平均 57.8歳)であった。鼻・副鼻腔乳頭腫症例 57 例のうち、10 例 (18%)に癌合併を認めた。女性、50 歳以上に癌合併の頻度が高く、疼痛、鼻出 血は癌合併を疑う症状と考えられた。Krouse 分類 T4 の鼻・副鼻腔乳頭腫に関しては、癌合併の頻度が高く、乳頭腫であったとしてもいったん悪性転化を来した場合、極めて予後不良であるため、初回から悪性腫瘍に準じた治療を行う必要があると考えられた。
  • 久保 和彦, 松本 希, 梅野 好啓, 小宗 静男
    2013 年 59 巻 5 号 p. 196-200
    発行日: 2013/09/20
    公開日: 2014/09/10
    ジャーナル フリー
    グリセロールテスト(G テスト)は内リンパ水腫の存在を推定する簡便で有用な検査である。当科における G テストの結果について検討した。2010年4月1日から 2012 年 8 月 31 日までに九州大学病院耳鼻咽喉科で G テストを施行した 39 例 43 耳を対象とした。疾患群をメニエール病と遅発性内リンパ水腫の内リンパ水腫(ELH)群と非内リンパ水腫(non ELH)群に分類すると、ELH 群では陽性例と擬陽性例を合わせて陽性率は 35.5%(11/31 耳)であった。さらに初診日よりもグリセロール負荷前の聴力が改善している例を加えると、G テストの陽性率は 64.5%(20/31 耳)となった。一方、non ELH 群でも陽性+擬陽性となったものが 2 名いた。今後はグリセロール負荷前後で聴力検査以外の検査項目も組み込んで、より内リンパ水腫を簡便かつ高率に検出するシステムを構築したい。
  • 大門 康子, 上野 哲子, 菅村 真由美, 久保田 由紀子, 今村 明秀, 原田 博文, 坂田 俊文 , 中川 尚志, 久保 和彦
    2013 年 59 巻 5 号 p. 201-208
    発行日: 2013/09/20
    公開日: 2014/09/10
    ジャーナル フリー
    持続する発熱と体幹失調を主訴に受診し、upbeat nystagmus を認めた小児平衡障害の 1 例を経験したため、文献的考察を加え報告した。これまでに upbeat nystagmus は脳幹障害での報告が多い。本症例は MRI の画像所見から急性小脳炎と診断された。しかし小脳障害では、通常 downbeat nystagmus が起こる。これは小脳片葉からの前半規管から上直筋へ向かう経路の抑制が障害されて脱抑制されるために、前半規管から上直筋へのトーヌスが増すことで眼球が上方へ偏移し、そのために脳幹の垂直積分器が動いて急速に下方に眼球が向かう、と説明されている。本症例においては、小脳片葉障害により前庭眼反射の不均衡が生じ、炎症性に小脳のプルキンエ細胞が興奮し過抑制が起こり upbeat nystagmus を生じたのではないかと推測した。
  • 末田 尚之, 三橋 泰仁, 宮崎 健, 福崎 勉, 宮城 司道 , 中川 尚志, 鍋島 一樹
    2013 年 59 巻 5 号 p. 209-215
    発行日: 2013/09/20
    公開日: 2014/09/10
    ジャーナル フリー
    われわれは、喉頭と頸部に発生した多発性成人型横紋筋腫例を経験したので報告する。 多発性成人型横紋筋腫は非常に珍しく、本症例前では 17 例の報告に過ぎない。症例は 54 歳、男性で嗄声を主訴に受診した。一つの腫瘍は左喉頭から披裂喉頭蓋ひだにかけて存在し、もう一方は右頸部に認めた。喉頭、下咽頭腫瘍からの組織学的診断は摘出術前に喉頭微細手術により行った。両腫瘍とも手術で摘出し、弾性、茶褐色、被膜があり喉頭腫瘍は 90 × 65 × 30 mm、右頸部腫瘍は 65 × 50 × 20 mm であった。しかし、喉頭腫瘍はブドウ房状の構造も伴っていた。患者の手術後の経過は良好である。
  • - 労働生産性の観点から -
    高畑 淳子, 松原 篤 , 西澤 尚徳, 工藤 直美, 永井 政男, 池野 敬一, 福士 栄治, 神 均 , 谷田 次郎 , 藤田 猛志, ...
    2013 年 59 巻 5 号 p. 216-221
    発行日: 2013/09/20
    公開日: 2014/09/10
    ジャーナル フリー
    アレルギー性鼻炎は quality of life を障害し、労働生産性も低下させる疾患である。今回、通年性アレルギー性鼻炎患者を対象として、鼻症状調査票と WPAI-AS(Work Productivity and Activity Impairment-Allergy Specific)を用いて、ベポタスチンベシル酸塩 2 週間投与前後の鼻症状の変化、労働生産性の変化について検討した。鼻症状については、くしゃみ、鼻みず、鼻づまりの 3 項目で有意な改善が認められた。WPAI-AS については、平均労働能率低下で改善傾向が認められた。くしゃみ、鼻みず、鼻づまりの症状改善度と労働関連スコア改善度には有意な相関が認められ、ベポタスチンベシル酸塩投与による鼻症状改善は労働生産性の改善に寄与することが示唆された。
第 28 回西日本音声外科研究会
原著
  • 兵頭 政光, 弘瀬 かほり, 伊藤 広明
    2013 年 59 巻 5 号 p. 225-231
    発行日: 2013/09/20
    公開日: 2014/09/10
    ジャーナル フリー
    従来、「血管腫」と総称されていた病変は国際血管腫・血管奇形学会(ISSVA)により、血管系腫瘍と血管奇形に分類された。血管奇形はしばしば対応に苦慮することがあり、さまざまな治療法が必要になる。今回、われわれは喉頭および下咽頭の血管奇形の 8 例を経験したので報告する。症例は男性6 例、女性 2 例で、平均年齢は48.9 歳であった。3 例では他部位の血管奇形病変を合併していた。治療は、4 例は直達鏡下に切除術を行い、このうち 1 例では CO2レーザーを、2 例ではマイクロデブリッダーを使用した。3 例ではポリドカノールによる硬化療法を行い、輪状後部に基部を有する大きな血管奇形に対しては頸部外切開による切除術を行った。切除術を行った 5 例では、病変の再発を認めず経過良好である。喉頭・下咽頭の血管奇形では症状の程度、局在部位や進展範囲、血流、年齢、治療による侵襲度などを考慮して治療の適応や方法を決定することが重要と考える。
抄録
臨床ノート
訂正
feedback
Top