耳鼻と臨床
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61 巻, 2 号
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原著
  • 吉福 孝介, 西元 謙吾, 松崎 勉
    2015 年 61 巻 2 号 p. 35-40
    発行日: 2015/03/20
    公開日: 2016/04/25
    ジャーナル フリー
    結核は、今現在も日常診療で遭遇する疾患であり、時には診断や治療に難渋し、また集団感染や院内感染など公衆衛生上も問題となることが少なくない疾患である。肺外結核の中で最も頻度の高いものはリンパ節結核であり、リンパ節結核の約 70%が頸部に出現するとされており、頸部リンパ節結核の患者が耳鼻咽喉科医を初診することが十分に考えられる。今回われわれは、2009 年 4 月から 2014 年 4 月までの過去 5 年間に鹿児島医療センターを受診し、頸部リンパ節結核と診断し得た 6 例を経験したので、若干の文献的考察を加え報告する。性別は男性 1 名、女性 5 名で年齢は 36−83 歳までであり、これらの症例において、①既往歴および病悩期間、②画像所見、③リンパ節穿刺吸引の結果についてまとめた。早期診断、早期治療のためにも、頸部リンパ節が腫脹した患者を診察した際には、頸部リンパ節結核を念頭に置くことが重要であると考えられた。
  • 宮之原 郁代, 宮下 圭一, 原田 みずえ, 間世田 佳子, 井内 寛之, 馬越 瑞夫, 川畠 雅樹, 黒野 祐一
    2015 年 61 巻 2 号 p. 41-48
    発行日: 2015/03/20
    公開日: 2016/04/25
    ジャーナル フリー
    スギ花粉症患者を対象に、新たに開発したオンラインシステムを用いてスギ花粉飛散期の患者 QOL 調査を行った。スギ花粉の治療目的で来院した患者(保護者)に同意を得て、オンライン登録の依頼を行った。これにより、臨床的にスギ花粉症と診断できる患者を対象にすることができ、調査時期に再診しない患者も含めて、一斉にインターネットを使って QOL 調査を行うことができた。飛散ピーク期までに 236 例の症例登録があり、飛散ピーク期の QOL 調査は、133 例(56.4%)から回答を得た。シーズン中の患者動向、QOL の継時的推移、治療開始時期の違いによる QOL の比較が可能であった。双方向性の活用が今後の課題であり、多年度で行ってデータを蓄積することや舌下免疫療法の治療効果の評価や満足度調査など他のさまざまな調査への応用を考えている。
  • 冨山 道夫
    2015 年 61 巻 2 号 p. 49-57
    発行日: 2015/03/20
    公開日: 2016/04/25
    ジャーナル フリー
    近年 drug-resistant Streptcoccus pneumoniae (DRSP)や ampicillin (ABPC)耐性 Haemophilus influenzae による難治性急性鼻副鼻腔炎が報告されている。その原因として集団保育を受けている小児からの薬剤耐性菌感染が想定されている。そこで今回は、急性鼻副鼻腔炎症例における集団保育児との同居と薬剤耐性菌の検出頻度、薬剤感受性の関係について調査した。対象は 2010 年 7 月より 2013 年 6 月までに当院を受診した成人急性鼻副鼻腔炎症例 670 名である。集団保育児との同居例は同居していない症例と比較し、DRSP、ABPC 耐性 H. influenzae の検出頻度が有意に高く、検出菌の薬剤感受性が不良となる傾向がみられた。成人急性鼻副鼻腔炎の治療にあたり、集団保育児との同居例では薬剤耐性菌の感染を念頭におき重症度も評価した上で抗菌薬を選択する必要があると考えられた。
  • 井口 貴史, 梅﨑 俊郎, 安達 一雄, 小宗 静男
    2015 年 61 巻 2 号 p. 58-63
    発行日: 2015/03/20
    公開日: 2016/04/25
    ジャーナル フリー
    気管食道瘻は、先天的にみられるものが多いとされているが、後天性要因によって生じることもある。頸部食道癌など腫瘍性に生じるものが多いが、気管内挿管や胃管等の不適切な管理による圧迫により、局所の壊死が生じて瘻孔形成に至ることがあり、注意が必要である。今回、慢性腎不全の透析治療の継続を希望して飛び込みで受診した外国人患者に、飲水時に必発する原因不明の咳嗽がみられたため、精査を行った結果、医原性と思われる気管食道瘻を認めた。母国では、原因不明の経口摂取障害として、数カ月にわたる経鼻胃管管理が行われていた。また、呼吸不全にて救急搬送され、長期気管内挿管が行われていた履歴もあった。喉頭内視鏡上は原因不詳であったが、嚥下造影検査にて気管食道瘻が簡単に同定できた。日本ではおよそ起こり得ないことと思われるが、医療過疎地域に居住歴があり、先行する医療行為があって、原因不明の咳嗽が生じた患者の鑑別疾患としては一応念頭に置くべきだと思われた。
  • 金田 将治, 濵田 昌史, 小田桐 恭子, 岡田 信也, 大上 研二, 飯田 政弘
    2015 年 61 巻 2 号 p. 64-71
    発行日: 2015/03/20
    公開日: 2016/04/25
    ジャーナル フリー
    中耳真珠腫はたとえ無症状であっても術後に再発している可能性を常に念頭に置いて経過観察を行うべきであり、患者の転居など社会的事情の変化も考慮して患者教育や診療情報提供への配慮が必要である。術後既に長期間が経過した症例においても真珠腫再発の可能性が排除できない場合は、CT、MRI 所見を参考にした上で、積極的な revision 手術が望まれる。
臨床ノート
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