耳鼻と臨床
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61 巻, 3 号
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原著
  • 新川 樹一郎, 新川 真那実, 山本 英永, 陶 陽, 大石 真綾, 矢野 さゆり, 宮本 ゆう子, 新川 敦
    2015 年 61 巻 3 号 p. 75-79
    発行日: 2015/05/20
    公開日: 2016/05/16
    ジャーナル フリー
    初期の聴神経腫瘍の診断において、CT 検査はあまり有用ではなく、造影 MRI 検査がスタンダードな診断方法とされている。内耳道内腫瘍、あるいは小脳橋角部腫瘍の存在が耳鼻咽喉科でなく、他科から指摘されるようになり、耳鼻咽喉科がその診断に関与することが少なくなっているとわれわれは考えている。コンビーム CT は今までの CT と比較し小型で詳細な画像が得られるデバイスである。今回は聴神経腫瘍と診断した症例のうち、コンビーム CT にて内耳道内に腫瘍の外側壁と思われる部位に弧状の隔壁を疑わせる陰影を認める 2 例を報告した。近年、聴神経腫瘍は手術が第一選択ではなくなり、治療の選択の幅が広がっている。今回のコンビーム CT 所見が腫瘍の外側壁であることが今後追加報告などで明らかにされれば、聴神経腫瘍の診断の一つの選択肢になる可能性があると考える。
  • 加藤 明子, 安松 隆治, 小池 健輔, 藤 賢史, 中島 寅彦, 中村 和正, 小宗 静男
    2015 年 61 巻 3 号 p. 80-84
    発行日: 2015/05/20
    公開日: 2016/05/16
    ジャーナル フリー
    上咽頭癌に対する治療効果、転帰および再発形式について検討を行った。2004 年 4 月 − 2014 年 3 月までの 10 年間に当科で一次治療を行った上咽頭癌 24 例を対象とした。治療は全症例において S-1 内服を併用した化学放射線治療(CCRT)を行い、CCRT 終了後に頸部リンパ節転移巣残存症例に対しては頸部郭清術を行った。全体の 3 年疾患特異的生存率(CSS)は 82.1%であり、4 例が原病死した。他施設の報告では、CCRT に併用する薬剤として CDDP、CBDCA といった白金製剤が選択されているが、その成績と遜色はなかった。遠隔転移のある M(+)症例 4 例についての3年 CSS は75.0%であり、喉頭癌や下咽頭癌の M(+)症例と比較すると、予後良好であり治療開始時に遠隔転移を有していても、積極的な加療が望まれる。
  • 江浦 正郎, 伊藤 恵子
    2015 年 61 巻 3 号 p. 85-96
    発行日: 2015/05/20
    公開日: 2016/05/16
    ジャーナル フリー
    成人の難治性急性中耳炎の起炎菌では、血液寒天培地上でムコイド型コロニーを形成するムコイド型肺炎球菌が知られており、これによる中耳炎はムコーズス中耳炎と呼ばれる。今回われわれはムコーズス中耳炎と類似の臨床的特徴を示した A 群 β 溶血性連鎖球菌(Group A Streptococcus : GAS)による難治性急性中耳炎を経験した。症例は 55 歳の女性で咽頭痛、左耳痛・耳漏を主訴に来院し、左外耳道腫脹、左漿液性耳漏、左混合難聴を認めた。左急性中耳炎と診断し、ガレノキサシン投与開始、受診 3 日目にセフトリアキソンとアモキシシリンに変更、さらに 6 日目にはミノサイクリンに変更したが左耳漏を制御できなかった。7 日目に施行した耳漏の GAS 抗原検出迅速テスト(陽性)から GAS による急性中耳炎と診断し、入院の上ピペラシリンとステロイドの点滴静注を行った。入院 2 日目には耳漏は停止し、その後順調に軽快した。成人の難治性急性中耳炎の場合、ムコーズス中耳炎のみならず、GAS による急性中耳炎も考慮すべきである。
  • 齋藤 雄一, 上薗 健一, 澤津橋 基広, 小宗 静男
    2015 年 61 巻 3 号 p. 97-104
    発行日: 2015/05/20
    公開日: 2016/05/16
    ジャーナル フリー
    腎細胞癌の鼻腔内(鼻中隔)転移のまれな症例を経験した。症例は 56 歳、女性で、止血困難な左鼻出血を主訴に当院を紹介受診した。左鼻腔内に充満する易出血性の比較的柔らかい腫瘍を認め、既往歴、画像検査および病理組織診断検査の結果、腎細胞癌の鼻中隔転移と診断した。腫瘍は非常に易出血性であったが、鼻腔内に限局しており、蝶口蓋動脈の塞栓術後に経鼻的内視鏡下腫瘍切除術(以下、内視鏡下腫瘍切除術)を施行した。術後合併症なく、経過も良好で、再発は認めていない。腎細胞癌の鼻腔内への転移はまれであり、易出血性である。転移性腎細胞癌に対して、局所制御のための内視鏡下腫瘍切除術は有効であると思われた。
  • 新川 樹一郎, 新川 真那実, 山本 英永, 陶 陽, 大石 真綾, 矢野 さゆり, 宮本 ゆう子, 新川 敦
    2015 年 61 巻 3 号 p. 105-111
    発行日: 2015/05/20
    公開日: 2016/05/16
    ジャーナル フリー
    セラミック人工耳小骨は組織親和性が高く、生体防御反応を示さないとされている。しかしながらセラミックに柔軟性がないことから、鼓膜の位置の浅在化などの術後性変化により耳小骨連鎖が外れ、聴力改善が思わしくない場合も存在する。特にツチ骨柄が残存しない場合には通常のセラミック人工耳小骨は安定性が悪く、鼓膜あるいはアブミ骨からセラミック人工耳小骨が外れてしまうことが多いといわれている。それを防止する意味で軟骨接合型人工耳小骨が市販され臨床応用されている。しかし、この軟骨接合型の人工耳小骨を利用すると、軟骨を採取するという余分な術式が追加されるため、日帰りあるいは 1 泊の入院手術を行っていたわれわれの手術方法には適合しないと考え、今までほとんど利用していなかった。そこで鼓膜とアブミ骨の間を連結するために、鼓膜から外れることがより少ない新しい形状の棘付きセラミック人工耳小骨を開発し、2013 年 3 月に上市した。今回はそれの臨床応用を開始し、著明な聴力改善を認めた 1 例を報告した。
臨床ノート
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