耳鼻と臨床
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63 巻, 6 号
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原著
  • 塚田 景大, 福岡 久邦, 宇佐美 真一
    2017 年 63 巻 6 号 p. 203-210
    発行日: 2017/11/20
    公開日: 2018/10/20
    ジャーナル フリー

    ムンプス難聴症例におけるめまい・平衡機能障害について、めまい症状の頻度および平衡機能検査による評価を行った。2009 − 2015 年まで当科で平衡機能検査(温度刺激検査、cVEMP、oVEMP)を施行したムンプス難聴確実例もしくは準確実例 15 例について検討した結果、40%の症例にめまい症状を訴え、53%の症例で何らかの平衡機能障害を認めた。また、めまい症状の有無と平衡機能障害について検討を行ったところ、めまい症状がある症例では 83%、めまい症状がなかった症例では 33%に平衡機能障害を認め、めまい症状があれば、平衡機能障害が起こる頻度が高く、ムンプス難聴でめまい症状を有する場合は平衡機能障害が生じている可能性があることを念頭に診療にあたる必要がある。ムンプス難聴は、高頻度に平衡機能障害を来すことが示唆され、ムンプスによる難聴・平衡機能障害の予防のために、ムンプスワクチンの接種を広く普及させることが重要である。

症例報告
  • 福嶋 晴太, 上薗 健一, 門田 英輝, 中川 尚志
    2017 年 63 巻 6 号 p. 211-214
    発行日: 2017/11/20
    公開日: 2018/10/20
    ジャーナル フリー

    症例は 48 歳、男性。先天性腎低形成、先天性難聴の既往を認めた。生下時より両側耳前部、両側頸部に瘻孔を認め、少量の浸出液が漏出していた。耳前部の瘻孔は 2 カ月前に当院形成外科で切除された。今回は両側頸瘻の加療希望があり当科受診、手術の方針となった。頸瘻は両胸鎖乳突筋前縁、甲状軟骨下縁のレベルに開口していた。術前に瘻孔から造影剤を注入し CT を撮影した。瘻孔は舌骨方向の外側より、扁桃窩付近に連続していたが、咽頭への交通は認めなかった。また、CT 画像を 3D 化することで瘻孔の構造を分岐も含め立体的に評価し得た。全身麻酔下に両側頸瘻を損傷することなく摘出した。術後経過は良好であり、術後 4 日目に退院した。鰓耳腎症候群はまれな疾患であるが、早期に診断することで、腎疾患の合併を予測することができるため、先天性の難聴や鰓原性奇形がみられる症例では本症候群を念頭に置いておくことが重要である。また、CT 画像の 3D 化が、瘻孔の形態評価、術前のシミュレーションに有用であった。

  • 吉福 孝介, 西元 謙吾, 松崎 勉, 野元 三治
    2017 年 63 巻 6 号 p. 215-222
    発行日: 2017/11/20
    公開日: 2018/10/20
    ジャーナル フリー

    症例は 60 歳、男性で、5 年前から左側頭部の腫瘤を自覚していたが、増大してきたため近医を受診し、2016 年 7 月初旬に当科紹介となった。局所所見では左外耳道前方から側頭部にかけて索状の腫瘤を認めた。MRI 検査では、索状の構造物を認めた。浅側頭動脈の肥厚を疑い、9 月下旬に全身麻酔下摘出術を施行した。病理組織学的検査に ImmunogloblinG4(IgG4)関連血管炎の診断であり血清 IgG4 も上昇していた。IgG4 関連血管炎の報告としては腹部大動脈、腸間膜動脈、脾動脈、椎骨動脈周囲、冠動脈などがあるものの、浅側頭動脈に発生した IgG4 関連血管炎の報告は渉猟できなかったことから、まれな疾患であると考えられた。

  • 岡 正倫, 瀬川 祐一, 白𡈽 秀樹, 玉江 昭裕
    2017 年 63 巻 6 号 p. 223-227
    発行日: 2017/11/20
    公開日: 2018/10/20
    ジャーナル フリー

    鼻腔内に発生した骨血管腫の 1 例を経験したので報告する。症例は 55 歳、男性。右鼻閉感を主訴に来院した。CT にて右鼻中隔後端から硬口蓋にかけて石灰化を伴う腫瘤を認めたため摘出する方針となった。手術は内視鏡下に行われ、骨性腫瘍をノミにて摘出した。病理所見は海綿状血管腫であり、骨血管腫と診断した。骨血管腫は時に頭蓋顎顔面に発生することもあるが、頭蓋冠・下顎骨の報告が多く鼻内での発生はまれである。術前診断には CT が有用であり特徴的な所見を有する。

  • 川﨑 佳奈子, 島津 倫太郎, 倉富 勇一郎, 佐藤 慎太郎, 上村 哲司
    2017 年 63 巻 6 号 p. 228-232
    発行日: 2017/11/20
    公開日: 2018/10/20
    ジャーナル フリー

    進行喉頭癌に対する喉頭全摘術の術後合併症の一つとして咽頭皮膚瘻があり、全身状態不良症例や化学放射線療法後の症例ではその発生率が高く治療に難渋することも少なくない。今回われわれは全身状態不良の 62 歳、男性の喉頭癌肉腫症例に対して喉頭全摘術を施行し、咽頭欠損部が大きく術後に咽頭皮膚瘻の発生が懸念されたため、頤下皮弁を用いて咽頭腔形成を行った 1 例を経験した。術後咽頭瘻孔は生じず経過は良好であり、喉頭全摘後の咽頭皮膚瘻の発生を予防するために頤下皮弁は有用な手技の一つと思われた。

臨床ノート
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