耳鼻と臨床
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66 巻, 6 号
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原著
  • 伊藤 恵子, 大和田 みつき
    原稿種別: 原著
    2020 年 66 巻 6 号 p. 197-207
    発行日: 2020/11/20
    公開日: 2021/11/20
    ジャーナル フリー

    難聴のある高齢者 27 例に補聴器をフィッティングし、補聴器装用前、装用 1 年後に Geriatric Depression Scale(GDS)、Quantified Denver Scale of Communication Function(QDS)、Hasegawa's Dementia Scale-1 Revised(HDS-R)と Mini Mental State Examination(MMSE)を施行した。また、そのうちの 18 例で、補聴器装用 2 年後にも上記検査を施行した。装用 1 年後では、4 検査とも変化を認めなかったが、装用 2 年後に MMSE スコアが増加していた。改善した MMSE の項目は、注意/集中、言語理解、図形模写で、ワーキングメモリーに関係する因子であった。補聴器装用でワーキングメモリーが改善したことにより認知機能が改善したと考えられた。

  • 永島 有莉, 土橋 奈々, 野田 哲平, 小宗 徳孝, 中川 尚志
    原稿種別: 原著
    2020 年 66 巻 6 号 p. 208-213
    発行日: 2020/11/20
    公開日: 2021/11/20
    ジャーナル フリー

    軟骨伝導補聴器は耳介の軟骨に振動子を当てることで外耳道内で軟骨が音を発生させ補聴効果をもたらす新しい原理の補聴器である。九州大学病院で軟骨伝導補聴器外来の運用を開始して約 2 年経過した現在までの軟骨伝導補聴器試聴と仮フィッティングした例の統計、購入者と非購入者の傾向を検討した。試聴した人の中で軟骨伝導補聴器を購入した人の割合は外耳道閉鎖/狭窄症、および中耳炎術後/慢性耳漏例の患者に高かった。聴力では、裸耳音場閾値に比べ装用閾値が低い患者に購入が多かった。しかし、それまで補聴器を使っていた人の装用閾値と比べて軟骨伝導補聴器の装用閾値が必ずしも低くなくても購入する人が多く、他の補聴器との比較の際は、装用閾値だけで決めていないことが示唆された。

  • 山下 道子
    原稿種別: 原著
    2020 年 66 巻 6 号 p. 214-221
    発行日: 2020/11/20
    公開日: 2021/11/20
    ジャーナル フリー

    福岡市では、平成 25 年度(2013 年度)から 「軽中等度難聴児補聴器購入助成制度」 を開始した。この 6 年間で制度を利用した 83 例についての状況を報告した。利用者の中で新生児聴覚スクリーニング(以下、新スク)の結果が記載されていた 37 例についての検討を行った。新スク refer 児は 29 例で、8 割は 3 歳までに補聴器装用を開始していた。新スク pass 児も 8 例存在しており、新スクを pass しても難聴に気をつける必要があることが示唆された。社会情勢の変化から福岡市における難聴児療育の現状と今後の対応について考察した。

  • 木村 淳子, 藤吉 昭江, 井手 朱里, 西村 美紀, 光吉 佳奈, 福島 邦博
    原稿種別: 原著
    2020 年 66 巻 6 号 p. 222-227
    発行日: 2020/11/20
    公開日: 2021/11/20
    ジャーナル フリー

    難聴者が社会で適切な支援を受け、よりよく生きるためには難聴当事者自身が自身の聴こえや補聴方法など必要な配慮について周囲に説明できるセルフアドボカシーの能力が欠かせない。セルフアドボカシーの育成のためには幼少期からの系統だった教育プログラムが必要だが、学齢期を通じてどのようにセルフアドボカシーが発達するかは明らかになっておらず、またそれを適切に育成していくカリキュラムも確立されていない。本研究では、小学校在籍中の聴覚障害児を対象にしたセルフアドボカシー能力の評価を目的に、米国版のチェックリストを元に日本語版を作成、本邦におけるセルフアドボカシーの現状について検討すると同時にチェックリストの有用性を検討した。その結果、 1 )学年が上がるにつれて得点も上昇するが、高学年でも「習熟している」レベルに達するのは 20%にとどまること、 2 )学年別の習得率は項目によって差があること等が認められた。聴覚障害児の福祉のためには、セルフアドボカシー習得のための方略を準備することが必要であるが、そのためにもまず本邦における現状把握が必要である。

症例報告
  • 宮本 雄介, 宮城 司道, 安松 隆治, 中川 尚志
    原稿種別: 症例報告
    2020 年 66 巻 6 号 p. 228-231
    発行日: 2020/11/20
    公開日: 2021/11/20
    ジャーナル フリー

    喉頭浮腫を契機に発見された遺伝性血管性浮腫(Hereditary angioedema、以下 HAE)の症例を経験したので報告する。32 歳の女性で、呼吸苦を主訴に近医受診し、咽喉頭腫脹を指摘されたため紹介受診となった。初診時より咽喉頭の腫脹および呼吸苦を自覚していたため、即日緊急入院とし、緊急で気管切開を施行した。精査の結果、HAE Ⅲ型の診断となった。HAE はさまざまな部位に腫脹が出現する比較的まれな疾患で、上気道が腫脹した場合は致死的となる。発作時の治療としては C1-INH 補充療法等があり、上気道狭窄時には補充療法を行うことで気管切開を回避できることもある。耳鼻咽喉科専門医は知っておくべき疾患概念と思われる。

  • 渡邉 一正, 内藤 祐貴, 松本 亮司, 瀧川 修吾
    原稿種別: 症例報告
    2020 年 66 巻 6 号 p. 232-236
    発行日: 2020/11/20
    公開日: 2021/11/20
    ジャーナル フリー

    初回の MRI 検査が偽陰性となった延髄梗塞例を経験したので報告する。起床時に嘔吐を伴う強いめまいを自覚した 49 歳女性が、発症 2 時間後に救急車で受診した。初診時に顔面全体、右上肢、右下肢のしびれ感を訴えたため、診察を担当した救急専門医が中枢性めまいを疑い DWI を含む脳 MRI 検査を施行したが、異常所見がみられなかったため耳鼻咽喉科紹介となった。耳鼻咽喉科医の診察で自力歩行困難、軟口蓋麻痺、声帯麻痺嚥下障害がみられたため発症 7 時間後に MRI を再検したところ、延髄梗塞の診断が得られた。 DWI は急性期脳梗塞の診断に有力な検査であるが、発症早期には偽陰性となる可能性があるため、めまい患者を診察する際にはめまい以外の神経症状にも十分注意し、MRI 再検の必要性を判断すべきである。

臨床ノート
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