耳鼻と臨床
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67 巻, 6 号
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原著
  • 葛西 崇, 佐々木 亮, 出石 りさ, 三浦 栞, 武田 育子, 松原 篤
    原稿種別: 原著
    2021 年 67 巻 6 号 p. 345-351
    発行日: 2021/11/20
    公開日: 2022/11/20
    ジャーナル フリー

    近年、鼓膜穿孔に対する治療として、従来の手術治療に代わるさまざまな閉鎖法が報告されている。本研究では、キチン膜および点耳薬を使用した鼓膜穿孔閉鎖法につき検討した。当科を受診した鼓膜穿孔 16 例 18 耳を対象とし、外来にて穿孔縁を硝酸銀で焼灼し、穿孔にキチン膜を貼付した。さらに、患者に自宅で抗菌点耳薬を自己点耳してもらった。 全体の穿孔閉鎖率は 44.4%であり、特に慢性穿孔性中耳炎における閉鎖率が低値であった。今回の結果は先行研究の閉鎖率に劣るが、簡便かつ低侵襲な方法であり、短時間で施行可能なため、従来の手術治療の代替法として第一に試みる価値があるものと考えられた。

  • 首藤 洋行, 中島 俊之, 進 武幹
    原稿種別: 原著
    2021 年 67 巻 6 号 p. 352-360
    発行日: 2021/11/20
    公開日: 2022/11/20
    ジャーナル フリー

    ビスホスホネート製剤(以下、BP 製剤)の重大な副作用として外耳道骨壊死・外耳道真珠腫が知られているが、症例報告数はいまだに少ない。BP 製剤は強力な骨吸収抑制作用を有しており、骨粗鬆症や骨転移を有する癌患者に対する第一選択薬であるため、高齢化著しい本邦では今後ますます BP 製剤使用者は増加すると予想される。今回、われわれは BP 製剤が原因と考えられる外耳道真珠腫 10 例を経験した。また、本症例と渉猟し得た既報告 19 例との臨床的な進展度分類による比較検討を行ったが、両報告共に多くは高齢女性に発症し、いずれも長期間にわたり BP 製剤を使用していた。進展度と投与期間は逆の相関を示しており、投与期間が長くても必ずしも病状が進行するとは限らないことが分かった。進展度に関係なく、片側発症例が多く、外耳道下壁から前下壁に好発する傾向があった。本症例は全例、局所処置のみで上皮化を得たが、既報告例では治療別や進展度別にみた治療後経過は一定ではなかった。今後、症例数の蓄積により診療方針が定まるのを期待したいが、現時点では BP 製剤使用の有無の確認を怠らずに、外耳道真珠腫・骨壊死の早期発見に努め、必要に応じて整形外科や内科と連携し治療方針を検討することが重要である。

  • 熊井 良彦, 伊勢 桃子, 折田 頼尚
    原稿種別: 原著
    2021 年 67 巻 6 号 p. 361-366
    発行日: 2021/11/20
    公開日: 2022/11/20
    ジャーナル フリー

    抗生剤の改良により、近年慢性中耳炎は重篤化しない傾向にあり、反復する頑固な耳漏が問題とされる症例は減少しているが、薬剤耐性菌の増加で、保存的加療では、耳漏が完全に停止しない症例が存在するのも事実である。このような、頑固に反復する耳漏を認める慢性中耳炎に対する手術の主な目的は、耳漏の停止と聴力の改善である。特に耳漏停止目的としての手術の適応や、鼓室形成術のみならず、乳突削開術を合わせて行うかどうかなど術式の詳細に関しては、はっきりとしたコンセンサスが得られていないのが現状である。当科では、保存的加療に抵抗性の難治性耳漏を呈する慢性中耳炎に対しては、耳漏停止を最優先に、できる限り聴力改善も目指した手術を積極的に行ってきた。術後成績を検証し、今後の治療方針決定に役立てたい。

  • 前原 宏基, 澤津橋 基広, 梅野 悠太, 西 龍郎, 坂田 俊文
    原稿種別: 原著
    2021 年 67 巻 6 号 p. 367-374
    発行日: 2021/11/20
    公開日: 2022/11/20
    ジャーナル フリー

    B 型肝炎ウイルス(hepatitis B virus:HBV)既往感染者は、免疫抑制薬や化学療法によって HBV が再活性化することがあり、さらに肝炎を発症すれば、時に致死的となる。われわれは、ステロイド投与を行った末梢性顔面神経麻痺および突発性難聴症例(治療開始時に HBs 抗原検査を行った合計 148 例)に対して HBV に関するマーカーの検討を行った。 HBs 抗原陽性は、148 例中 0 例(0 %)だった。HBs 抗体陽性例は、33 例中 12 例(36.4%)、HBc 抗体陽性例は 25 例中 7 例(28.0%)であ った。治療終了後 HBV 再活性化や肝炎発症例は認めなかったが、治療終了後に定期的に検査された症例 8 例中、肝機能の悪化症例が 2 例(25.0%)に見られた。ステロイドの投与期間が 2 週間以上の症例は 47 例(31.8%)、 2 週間未満は、101 例(68.2%)であった。HBV の再活性化はステロイドの投与量より投与期間に大きく依存するとされており、治療に十分な量のステロイドを投与するには、必然的に治療期間が 2 週間を超える可能性が想定される。そのため、ステロイド投与開始時は、HBV スクリーニングとして HBs 抗原、HBs 抗体、HBc 抗体の 3 項目とも測定するべきであると考えられた。

  • 首藤 洋行, 中島 俊之, 進 武幹
    原稿種別: 原著
    2021 年 67 巻 6 号 p. 375-380
    発行日: 2021/11/20
    公開日: 2022/11/20
    ジャーナル フリー

    アレルギー性鼻炎に対する治療は抗 IgE 抗体製剤の登場で広がりをみせているが、依然として治療の中心は第 2 世代抗ヒスタミン薬である。佐賀県および近隣の耳鼻咽喉科医を対象として電子メールを用いたアレルギー性鼻炎の薬物療法に関するアンケート調査を行った。耳鼻咽喉科医自身やその家族、患者への処方薬はいずれもビラスチンが最多であった。アレルギー性鼻炎の有病率は増加しており、各薬剤の効果や服用のしやすさ、副作用の発現の有無などを考慮しながら、適切な治療を行うことが重要である。

症例報告
  • 中野 貴史, 久保 和彦, 吉田 崇正, 小出 彩佳, 中川 尚志
    原稿種別: 症例報告
    2021 年 67 巻 6 号 p. 381-385
    発行日: 2021/11/20
    公開日: 2022/11/20
    ジャーナル フリー

    仰臥位で聴力が改善した外リンパ瘻の 1 例を経験した。症例は 54 歳女性で、初診 1 年前、飛行機搭乗時に右耳でポンと音がして右聴力低下を自覚した。初診 2 週間前、上を向いたときに動揺性めまいが出現した。脳神経内科で良性発作性頭位めまい症かメニエール病といわれるも改善なく、千鳥橋病院耳鼻咽喉科紹介受診となった。初診時、聴力は右 30.0 dB、左 15.0 dB、頭位によらず右向き眼振を認めた。瘻孔症状検査は右ではっきりとしなかった。さらに、仰臥位聴力検査にて、坐位で右 31.7 dB が仰臥位で 15.0 dB と改善したことから、右外リンパ瘻と判断した。安静入院ではめまいの改善がなかったため、初診 1 カ月後に右内耳窓閉鎖術施行したところ、正円窓から外リンパ液の漏出を認めた。術後にめまいは消失した。瘻孔症状検査陽性は外リンパ瘻を示唆するが、特異的検査ではない。坐位と仰臥位で聴力を比較することはどの耳鼻咽喉科でも可能であり、外リンパ瘻を検出する簡便な方法といえる。

  • 大塚 雄一郎
    原稿種別: 症例報告
    2021 年 67 巻 6 号 p. 386-392
    発行日: 2021/11/20
    公開日: 2022/11/20
    ジャーナル フリー

    再発性多発軟骨炎は全身の軟骨組織の進行性・再発性炎症を来す難治性疾患で自己免疫性疾患と考えられている。主に外耳、鼻、喉頭、気管の軟骨が侵され、気道病変は時に致死的となる。症例は 47 歳女性、原因不明の口内炎と外陰部潰瘍で加療歴がある。耳介軟骨炎と鼻軟骨炎と甲状軟骨炎を認めステロイドセミパルス療法でも病勢をコントロールできず免疫抑制剤の投与を必要とした。ステロイドで病勢をコントロールできない再発性多発軟骨炎は免疫抑制剤の投与が必要となる。特に気道病変を認める症例はステロイドが無効の場合が多く免疫抑制剤の併用が推奨されている。

  • 西 龍郎, 三橋 泰仁, 竹内 寅之進, 打田 義則, 木村 翔一, 竹下 盛重, 坂田 俊文
    原稿種別: 症例報告
    2021 年 67 巻 6 号 p. 393-401
    発行日: 2021/11/20
    公開日: 2022/11/20
    ジャーナル フリー

    鼻腔の Glomangiopericytoma(以下 GPC)は 2005 年の WHO 分類で疾患分類された比較的新しい概念である。われわれは術後 13 年の経過で再発を来した鼻腔 GPC 症例を経験したので報告する。症例は 82 歳、女性。13 年前に右鼻腔腫瘍摘出術を施行し hemangiopericytoma-like tumor と診断された。右鼻閉が再燃したために再診し、右鼻腔内に充満する腫瘍を認めた。CT、MRI 検査では右鼻腔内に限局する腫瘍性病変を認めた。内視鏡下に鼻腔腫瘍を一塊に摘出し、病理組織検査、免疫組織化学染色、遺伝子学的検査(NAB2-STAT6 融合遺伝子)の結果、GPC と診断した。GPC は局所再発や転移も生じることから境界から低悪性度の腫瘍に分類され、局所再発率は 7 − 40%、5 年生存率は約 90%と予後良好な疾患である。しかし、13 年という長期の経過で再発することもあり長期間の観察が重要である。

  • 佐藤 明日香, 石原 久司, 假谷 彰文, 秋定 直樹, 藤 さやか, 赤木 成子, 竹内 彩子
    原稿種別: 症例報告
    2021 年 67 巻 6 号 p. 402-406
    発行日: 2021/11/20
    公開日: 2022/11/20
    ジャーナル フリー

    ファーストバイト症候群(first bite syndrome:以下、FBS)は、食事開始時に耳下腺部痛を生じ数回の咀嚼により徐々に軽快することを特徴とする。手術既往や腫瘍性疾患がない FBS は特発性 FBS と分類される。特発性 FBS に対する治療法として少数ではあるが立効散の内服が報告されており、本症例でも立効散が奏功した。特発性 FBS の治療法は未確立であり、有害事象の少ない立効散は食事療法と並んでまず考慮すべき治療法であると考える。

臨床ノート
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