耳鼻と臨床
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67 巻, 4 号
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原著
  • 松吉 秀武, 山田 卓生, 小川 晋太郎, 後藤 英功
    原稿種別: 原著
    2021 年 67 巻 4 号 p. 219-227
    発行日: 2021/07/20
    公開日: 2022/07/20
    ジャーナル フリー

    立ちくらみや、近年問題となっているスマートフォンやゲームなどの視覚刺激に伴う入眠障害、中途覚醒による睡眠の質の低下、およびストレスの有無、片頭痛の有無などの日常生活習慣についての問診を行い、小児めまい発症の原因を調べることを目的とした。小児めまい症例 70 例と、めまいを自覚したことのない小児 60 例を対照として、めまいと日常生活についての問診を行い、比較検討を行った。日常生活の問診では、小児めまい症例において、めまいがない症例と比較し、有意に、入眠障害や中途覚醒などの睡眠障害を多く認めた。慢性的な睡眠障害が自律神経失調を生じ、起立時の循環制御の調節不全を起こし起立性調節障害を来したものと考えた。小児めまい症例は、めまいのない症例と比較して、有意に、片頭痛を多く認めた。また小児めまい症例において、めまいがない症例と比較し、有意に、学校などへの遅刻を多く認めていた。日常生活において入眠障害や中途覚醒を改善し、睡眠状態を改善すること、起立性調節障害と片頭痛の早期発見、早期治療が、小児めまいを改善させ、学校への遅刻などの社会不適合を減らしていくために重要であると考えた。

  • 山野 貴史, 西 憲祐, 西 隆四郎, 大森 史隆, 鵜木 あゆみ, 和田 佳央理
    原稿種別: 原著
    2021 年 67 巻 4 号 p. 228-232
    発行日: 2021/07/20
    公開日: 2022/07/20
    ジャーナル フリー

    外来通院での嚥下リハビリテーションについての報告は少ない。当院では、以前より比較的軽症な症例を中心に外来通院での加療を行っており、一定の成果を得ている。今回、高齢者に対する通院での嚥下リハビリテーションについて検討した。口腔期から咽頭期にわたっての障害に対して、それぞれに対応したリハビリテーションメニューで介入し、 15 例中 6 例に改善を認めた。われわれが対象としているような、比較的軽症例であり、通院ができる程度の ADL が保たれている症例に関しては、外来通院での治療は選択肢の一つであり、診断とリハビリテーション手技の選択を含め、耳鼻咽喉科医も積極的にかかわるべきと考えられた。

症例報告
  • 嶋崎 絵里子, 倉富 勇一郎
    原稿種別: 症例報告
    2021 年 67 巻 4 号 p. 233-240
    発行日: 2021/07/20
    公開日: 2022/07/20
    ジャーナル フリー

    菊池病(組織球性壊死性リンパ節炎)の多くは若年女性に発症するとされ、発熱と有痛性の頸部リンパ節腫脹を主症状とする。今回、高齢男性の耳下腺内リンパ節および上内深頸部リンパ節に生じた非典型的な菊池病の 1 例を経験した。症例は 66 歳、男性。左耳前部の腫瘤と左頸部痛を主訴とし、画像検査で左耳下腺腫瘤と左上中内深頸部領域に多発するリンパ節腫大を認め、MRI では ADC 値が低値であった。耳下腺癌リンパ節転移や悪性リンパ腫などの悪性疾患や、耳下腺腫瘍と炎症性リンパ節腫大の合併を鑑別に挙げた。手術では、頸部リンパ節生検の術中迅速検査で癌転移はなく、耳下腺浅葉切除術を施行し終了した。耳下腺の腫瘤は耳下腺内リンパ節であり、頸部リンパ節も含め組織診断は菊池病であった。頸部リンパ節腫脹や耳下腺腫瘤の診断においては、典型的な菊池病の臨床像に合致しない場合でも、菊池病を鑑別診断の一つとして念頭に置くことが重要と思われた。

  • 熊井 良彦, 伊勢 桃子, 折田 頼尚
    原稿種別: 症例報告
    2021 年 67 巻 4 号 p. 241-246
    発行日: 2021/07/20
    公開日: 2022/07/20
    ジャーナル フリー

    結節性筋膜炎は線維芽細胞・筋線維芽細胞の増殖を主体とした炎症性の良性疾患で、急速に増大することから、しばしば肉腫など悪性腫瘍との鑑別が重要となる。今回われわれは、左耳甲介に発生した結節性筋膜炎の 1 例を経験した。症例は 20 歳、男性。もともと耳を触る習慣があり、前医にて左耳甲介から外耳道に充満する易出血性の腫瘤性病変を指摘され、外科的に切除されたものの再発し当科(熊本大学病院耳鼻咽喉科・頭頸部外科)を紹介された。前医での病理診断は結節性筋膜炎であったが、腫瘤の再増大が急速であり、画像上周囲への浸潤も疑われたため、十分な切除範囲をつけて全摘出した。術後病理でも結節性筋膜炎の診断で、術後 7 カ月時点で再発なく経過良好である。

  • 近松 春奈, 松本 浩平, 北岡 杏子, 木原 千春, 熊井 良彦
    原稿種別: 症例報告
    2021 年 67 巻 4 号 p. 247-251
    発行日: 2021/07/20
    公開日: 2022/07/20
    ジャーナル フリー

    Bell 麻痺と診断するためにはその他の疾患を除外する必要がある。そのうちの一つに腫瘍性疾患がある。腫瘍性麻痺を画像診断で識別することが重要である。症例は 61 歳男性で、8 年前から反復する一側性の顔面神経麻痺を主訴に来院した。過去に症状出現した際に他病院で単純 MRI 検査を複数回施行されていたが、明らかな腫瘍は指摘されなかった。今回、顔面神経麻痺に加え聴力低下や耳鳴、眩暈を自覚し、造影 MRI 検査ではじめて顔面神経鞘腫を指摘された。定位放射線治療(50Gy/25fr)で加療した。繰り返す顔面神経麻痺症状には腫瘍性麻痺を積極的に疑い、造影 MRI 検査を行い、必要に応じて複数回にわたって画像で確認していくべきであると考える。

  • 熊井 良彦, 伊勢 桃子, 折田 頼尚
    原稿種別: 症例報告
    2021 年 67 巻 4 号 p. 252-255
    発行日: 2021/07/20
    公開日: 2022/07/20
    ジャーナル フリー

    半年間の間隔で、両側交代性に再発を認めたベル麻痺症例を経験した。いずれも当科の手術適応基準(保存的加療の有無にかかわらず、発症から 10 日以上経過した最も早い段階での評価により、柳原法 8 点以下かつ、ENoG 10%以下であることとした)と患者の希望に十分かんがみて、両側高度麻痺いずれに対しても、経乳突的顔面神経減荷術を行い、術後 1 年の経過観察の後、患者の十分な満足を得ることができた。ただし、再発時の術後半年の初回麻痺側表情スコアが 8 点から 34 点に回復しても、ENoG における CMAP は回復しなかったことから、両側交代性に麻痺が発症した場合の再発時の ENoG による評価や手術効果の追跡は困難であると再確認された。両側交代性ベル麻痺は一般法による ENoG を用いた再発時の予後予測が難しい場合があり、今後は、より可能となる正中法も合わせて採用していきたい。

  • 山本 昌和, 田中 藤信, 松本 浩平, 森 彩加, 近松 春奈, 伊東 正博, 添田 李子, 西 秀昭, 熊井 良彦
    原稿種別: 症例報告
    2021 年 67 巻 4 号 p. 256-262
    発行日: 2021/07/20
    公開日: 2022/07/20
    ジャーナル フリー

    呼吸上皮腺腫様過誤腫(REAH;respiratory epithelial adenomatoid hamartoma)とは、鼻・副鼻腔に生じた過誤腫であるといわれている。今回われわれは、術前の臨床所見から通常の慢性副鼻腔炎や乳頭腫を疑い、内視鏡下鼻副鼻腔手術を行った後に、術後病理で REAH と確定診断した症例を 2 例経験した。REAH は CT 画像上、非特異的な軟部組織陰影と認識されるのみのため、画像診断をもって、他の副鼻腔疾患と鑑別することは困難である。一方肉眼所見は、炎症性ポリープと類似しているため、シェーバーで炎症性ポリープとの判断のもと掻爬され、病理診断を経ぬままに、見過ごされている例もあると思われる。今後疾患概念が広く認知されるためには、さらなる症例集積が必要であると考え、今回 2 例の症例の詳細と若干の文献的考察を併せて報告する。

  • 小島 綾乃, 川北 大介, 的場 拓磨, 高野 学, 小栗 恵介, 蓑原 潔, 村嶋 明大, 岩城 翔, 柘植 博之, 田中 伸和, 今泉 ...
    原稿種別: 症例報告
    2021 年 67 巻 4 号 p. 263-268
    発行日: 2021/07/20
    公開日: 2022/07/20
    ジャーナル フリー

    甲状腺乳頭癌は予後良好であるが、未分化転化を来すと極めて予後不良となる。また、甲状腺癌に分子標的薬が汎用されるようになり、救済手術の報告も散見される。今回レンバチニブ治療中に救済手術を行い、術後病理で未分化転化を認めた症例を経験したので報告する。症例は 80 歳男性。甲状腺乳頭癌・気管・食道浸潤、右頸部・縦隔リンパ節転移の診断、レンバチニブ療法を約 2 年間継続していたが、局所病変の増悪による経口摂取困難のため、約 2 カ月の休薬後に、甲状腺・咽喉頭全摘、遊離空腸再建を施行した。術後病理では、約 1/3 の成分が壊死を伴った未分化癌の組織像を呈していた。術後 1 年以上経過し、局所領域再発は認めず、縦隔病変も縮小を維持している。分子標的薬を長期投与されている分化癌においても未分化転化のリスクがあることを考慮しておく必要がある。

  • 井野 千代徳, 大津 和弥, 花田 巨志, 井野 素子, 田邉 正博
    原稿種別: 症例報告
    2021 年 67 巻 4 号 p. 269-278
    発行日: 2021/07/20
    公開日: 2022/07/20
    ジャーナル フリー

    舌痛症と診断した症例の中に 6 例の脳腫瘍を確認した。6 例全例が小脳橋角部腫瘍であり、聴神経腫瘍 3 例、血管腫、三叉神経鞘腫、髄膜腫が各々 1 例であった。腫瘍の存在に気付いたのは舌痛発症後 5 年を経過した症例もあったが、約 3 年であった症例が 3 例であった。貴重な時を奪ってしまった責任は治療側にある。なぜに、脳腫瘍を見過ごしたのか、それを避ける方法について症例の提示と当科での舌痛症例の統計、他家よりの報告例で検討した。その結果、「舌痛症は心因性疾患である」、「舌痛は食事中には認めない」とする舌痛症の特徴の盲信に pitfall があったことを確認した。その pitfall に陥らないためには舌痛が舌の片側辺縁である症例には安易に舌痛症と診断してはいけないことを知った。 舌痛症例 453 例中 57 例(12.6%)が片側辺縁であり、その内 6 例(10.5%)が脳腫瘍であった。突発性難聴で聴神経腫瘍である率は 0.8 − 5.7%と報告されているが、それよりも高率であることは銘記すべき事実である。自発性異常味覚を自覚する率は舌痛症で 41.2%であったのに対して腫瘍例では 6 例中 0 例であった。耳鳴を自覚することがある率は舌痛症では 51.9%で、腫瘍例では 6 例全例が患側に耳鳴を自覚することがあった。 難聴・耳鳴の有無を問うことは重要であるが、左右を問いただすことでさらに重要な情報となる。それら項目を慎重に吟味して対応を決めるべきと考えている。Pitfall に陥らないためには、片側辺縁の舌痛を訴え局所に異常などなく舌痛症を疑いたい症例では、舌痛症と確診する前に、耳鳴・難聴、味覚障害の自覚症状の有無にかかわらず聴力検査、電気味覚機能検査をすべきであり、そこで異常が確認されれば速やかに MRI を行うべきと結論した。

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