日本耳鼻咽喉科学会会報
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100 巻, 6 号
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  • 内耳メラニンについての検討
    小島 千絵, 飯野 ゆき子, 中本 吉紀, 大蔵 眞一, 鳥山 稔
    1997 年 100 巻 6 号 p. 655-662
    発行日: 1997/06/20
    公開日: 2010/10/22
    ジャーナル フリー
    悪性黒色腫は, メラノサイトや母斑細胞が悪性化したもので, 転移は全身に及び, 中枢神経系や内臓の各部位, また骨転移をきたすことが知られている. しかし悪性黒色腫症例の側頭骨病理に関する詳細な報告は少ない. そこでわれわれは, 帝京大側頭骨研究室における側頭骨標本中, 悪性黒色腫で死亡した5症例の側頭骨について, それらにおける悪性黒色腫の転移または浸潤の有無とその内耳病理を検討し, さらに内耳に存在するメラニンが悪性黒色腫症例においてなんらかの変化を示しているか否かを調べた. 対象は, 悪性黒色腫で死亡した5症例10耳 (男4例, 女1例. 43歳~68歳) である. また対照として, 悪性黒色腫以外の疾患で死亡した右側頭骨35耳 (12歳~76歳: 各年代それぞれ5耳) を用いた. これらの標本について, 悪性黒色腫の転移の有無と内耳の所見及び内耳のメラニンについて光学顕微鏡下に観察した.
    その結果, 悪性黒色腫5例10耳の側頭骨標本のうち, 3例5耳に転移が認められ, そのうち2症例4耳は内耳道転移であった. 残りの1耳は, 乳突蜂巣への転移であった. この内耳道内に転移の認められた症例では, 血管条及び内外有毛細胞に種々の変性が認められた. とくに内耳血管のうっ滞像を認めた症例では, 内耳障害も高度であった. また, メラニンは, 血管条, 蝸牛軸, 骨らせん板, 卵形嚢膜, 球形嚢膜等に多数存在した. 非悪性黒色腫症例の内耳 (蝸牛軸, 骨らせん板, 血管条) のメラニンは加齢とともに有意に増加した. また, 内耳メラニンは悪性黒色腫症例で, 内耳道に転移があり内耳血管に高度のうっ滞を認めた1症例を除く4症例で対照例に比べ増加傾向を示した.
  • 相原 隆一, 河北 誠二, 湯本 英二, 柳原 尚明
    1997 年 100 巻 6 号 p. 663-670
    発行日: 1997/06/20
    公開日: 2010/10/22
    ジャーナル フリー
    一側の視力障害を反復した症例に対し, CT・MRIによりOnodi蜂巣炎による鼻性視神経炎と診断し, 内視鏡的副鼻腔手術にて病巣を確認した. Onodi蜂巣の画像診断では冠状断CTが必須であり, 視神経管周辺の画像で蝶形骨洞が上下左右に分割されるように描出される. 鼻性視神経炎の診断においてはOnodi蜂巣炎を常に念頭におく必要がある. Onodi蜂巣に限局する病変の場合には, 過去において副鼻腔炎が軽度あるいはほとんど病変のないものに発症した鼻性視神経炎として報告されていた可能性がある. 鼻性視神経炎の疾患概念を解明するには, 視神経管周辺の詳細な画像診断と内視鏡的副鼻腔手術による病巣の確認によって症例を重ねる必要がある.
  • 宮澤 哲夫, 飯野 ゆき子
    1997 年 100 巻 6 号 p. 671-677
    発行日: 1997/06/20
    公開日: 2010/10/22
    ジャーナル フリー
    われわれは, 14員環マクロライドの少量長期投与 (以下マクロライド療法と略) の慢性副鼻腔炎に対する有効性とその作用機序を探る目的で, マクロライド療法を施行しかつ有効であった慢性副鼻腔炎の症例に対して, 副鼻腔粘膜および鼻茸の浸潤細胞についての免疫組織学的な検討を行った. 検討したのは, MHCクラスII抗原の一つであるHLA-DR, さらにT細胞表面マーカーのCD4, CD8, さらにマクロファージのマーカーであるCD68である.
    その結果, CD68およびHLA-DR陽性細胞の数は各症例ごとのばらつきが大きく, マクロライド療法施行の有無による一定の傾向はみられなかった. 一方T細胞表面マーカーでは, マクロライド療法有効群におけるCD4陽性細胞の数が対照群と比較して, 有意に減少していたのに対して, CD8陽性細胞数はマクロライド療法施行による変化は認められなかった. したがって結果的にマクロライド療法有効症例のCD4/CD8比は0.77であり, 対照群の1.92と比較して有意に低下した.
    以上の結果より, マクロライド療法はマクロファージの誘導やHLA-DR抗原発現には影響を与えないものの, CD4陽性細胞の分裂, 増殖に対しては何らかの抑制的な効果をもたらすことが観察された. そして, これらの抗原提示細胞とCD4陽性細胞の間の細胞間相互作用に対する抑制効果がマクロライド療法の作用点の一つである可能性が示唆された.
  • 柴田 修宏, 西村 忠郎, 森島 夏樹, 長谷川 清一
    1997 年 100 巻 6 号 p. 678-684
    発行日: 1997/06/20
    公開日: 2010/10/22
    ジャーナル フリー
    睡眠呼吸障害における夜間血圧への影響を知るために, 65名の患者に終夜モニター及び夜間連続血圧測定を施行した. さらに31名に手術加療を施行し, 術前後の比較を行った.
    重症度は, AHI, 低酸素暴露時間 (Desaturation Time: DT), 及び血圧変動値 (BP change) について判定を行った.
    術前の検討において, DTと血圧変動との間に有意な相関を認め, 夜間血圧への影響を推測するのに有効であると思われた.
    手術加療による改善率50%以上の割合 (有効率) はAHI 19/31 (61.3%) で, DT・BP changeはそれぞれ21/31 (67.7%), 14/31 (45.2%) であった.
    術前の重症度判定においてAHI≧50, DT≧40%のものがそれぞれ10例, 18例あり, さらにBP change≧40mmHgのものは19例認められた. これらが術後には, それぞれ1, 5, 2例となり, 他はすべて満足のいく効果が得られ, 手術加療による効果が認められた.
  • 蝸電図変化, 雑音負荷による影響
    大橋 徹, 剣持 睦, 木下 祐継, 越智 健太郎, 菊地 仁
    1997 年 100 巻 6 号 p. 685-693
    発行日: 1997/06/20
    公開日: 2010/10/22
    ジャーナル フリー
    モルモットを用いて, 5/6腎切除法により慢性腎不全動物を作製した. 血清Cre, BUN値は異常上昇した. 術後1, 2, 3カ月経過動物から蝸電図を記録検討した. 術後1カ月ではまだ軽度だが, 2, 3カ月経過動物ではCAP, CMに高度異常変化が観察された. EPには少数例の検討ではあるが有意な電位低下は見られなかった. この結果から慢性腎不全は蝸牛機能障害の発生要因となることが示唆され, 障害部位として有毛細胞の関与を推察した.
    続く実験では, 術後1カ月動物に広帯域雑音を負荷し, 直後から6時間後まで蝸電図変化の推移を検討したがコントロール動物と異なり雑音負荷直後に生じた異常変化は回復することなく持続した. この結果から, 腎機能不全と雑音負荷による相乗効果の発現が示唆された.
  • 鈴木 重剛, 服部 康夫, 松生 愛彦, 町野 満
    1997 年 100 巻 6 号 p. 694-705
    発行日: 1997/06/20
    公開日: 2010/10/22
    ジャーナル フリー
    蒸留水によって生じたラット呼吸部鼻粘膜傷害とその修復過程が形態学的ならびに光顕免疫組織化学的に観察された. 粘膜傷害は線毛細胞と杯細胞の随所での剥離・脱落として観察された. 基底細胞と基底膜は残った. 修復は, 基底細胞による移動, 増殖, 分化で完了した. 細胞分裂は6時間群で増加し始め, 48時間群でピークとなり, 4日群で元に復した. Brdu標識率は, 6時間後群で増加し始め, 36時間群でピークとなり, 4日後群で元に復した. 杯細胞の占める比率が, 21日後群においても対照群よりも多かった. また, 36時間群の1細胞おいて細胞分裂像と分泌顆粒が同一細胞内に観察された.
  • 大平 真司
    1997 年 100 巻 6 号 p. 706-713
    発行日: 1997/06/20
    公開日: 2010/10/22
    ジャーナル フリー
    (目的) 聴覚系および温度眼振反応の加齢変化については今までにもいくつかの報告があるが, まだ統一した見解が得られておらず, その両者の関係も明らかでない. そこで, 同一被験者で温度眼振反応と純音聴力の加齢変化について調べ, その両者間の関係を調べた.
    (対象および方法) 今回, 年齢24歳から84歳までの神経耳科学的に異常のない健康なボランティア12人 (24耳), 自覚的に難聴およびめまいのない耳鳴患者74人 (148耳) の合計86人 (172耳) を対象とし, 温度刺激検査 (20℃冷水5ml 10秒間注水20秒間刺激) および純音聴力検査を行い, 年齢別, 性別に温度眼振反応の最大緩徐相速度 (以下SPEVと略す) と高周波域平均聴力レベルの平均値を調べ, それぞれの加齢変化について調べるとともに, その両者間の関係について検討した. また, SPEVおよび聴力の各年齢層間あるいは男女間の有意差検定には, Wilcoxon testを行い, SPEVと高周波域の純音聴力との関係についてはPearsonの相関係数を求めた.
    (結果) 1) 温度眼振反応の最大緩徐相速度 (SPEV) は, 高齢まではほとんど変化せず, 男性では65歳以降, 女性では75歳以降有意に低下し, 男性のほうが女性より早く加齢変化がみられた. 2) 高周波域の聴力レベルは, 50歳以降急速に低下するが75歳以降緩慢に推移する. 65歳以降は, 男性のほうが女性より有意に聴力が低下していた. 3) SPEVと高周波域聴力との間には, 加齢変化において弱いながらも相関関係が認められた.
    (結論) 1) SPEVがかなりの高齢まで変化しないことから, 半規管の加齢変化は少ないと推察された. 2) SPEVも高周波聴力も65歳以降, 男性のほうが女性より加齢変化が進んでいた. 3) 聴力とSPEVの加齢変化に相関性が認められた.
  • 内耳奇形
    内藤 泰
    1997 年 100 巻 6 号 p. 714-717
    発行日: 1997/06/20
    公開日: 2010/10/22
    ジャーナル フリー
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