北海道大学耳鼻咽喉科において1989年から1997年までの9年間に経験した咽喉食摘, 遊離空腸再建例49症例を対象とし, 1. 術後合併症, 2. 術後の嚥下に関連する因子, 及び摂食状況と吻合形式の関係について検討した.
症例の内訳は男39例, 女10例, 手術時年齢は44~78歳で, 平均60.8歳であった.
原疾患は下咽頭癌が39例で最も多く, ほか頸部食道癌4例, 喉頭癌3例, 甲状腺癌2例, 気管癌1例であった.
再建材料別では遊離空腸単独例が45例で, 空腸吻合形式の内訳は端側吻合 (以下端側) 22例, 端々吻合 (以下端々) 18例, ρ形吻合 (以下ρ形) 4例, パッチ状吻合 (以下パッチ状) 1例であった. 遊離空腸と胃管の併用例は4例だった.
軽症のものも含めると, 術後合併症は49例中24例 (49.0%) に生じたが, 空腸自体の合併症に限定すると空腸壊死は1例 (2.0%), 瘻孔は3例 (6.1%), 狭窄は2例 (4.1%) で, うち再手術を要したのは空腸壊死1例 (2.0%), 瘻孔2例 (4.1%) のみであった. これまでの報告と同様に, 本再建術の高い安全性が確認された.
術後の摂食状況は端々例と端側例を中心に検討を行った.
術後の嚥下に対しては腸管の緊張の影響が最も強いことが確認された.
吻合形式別の常食摂取率は端々例の方が高い傾向があった. 端々例における摂食不良例は腸管の弛みが著明だった1例 (5.9%) のみであり, 腸管に緊張をもたせなかったことが原因であった. 一方, 端側例では4例 (22.2%) が摂食不良であり, うち2例に透視上端側例特有の所見である空腸盲端部のpoolingが確認された. 摂食状況からは端々吻合がより望ましい術式と考えられた.
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