日本耳鼻咽喉科学会会報
Online ISSN : 1883-0854
Print ISSN : 0030-6622
ISSN-L : 0030-6622
102 巻, 5 号
選択された号の論文の8件中1~8を表示しています
  • 村田 潤子, 土井 勝美, 小畠 秀浩, 北原 糺, 近藤 千雅, 奥村 新一, 久保 武
    1999 年 102 巻 5 号 p. 605-612
    発行日: 1999/05/20
    公開日: 2010/10/22
    ジャーナル フリー
    真珠腫性中耳炎の手術時に内耳に瘻孔が形成されていた症例についてその臨像を検討し, 特に瘻孔の位置や進展度と術前・術後の骨導聴力との相関について調べることを目的とした. 対象としては大阪労災病院耳鼻咽喉科, 大阪大学医学部耳鼻咽喉科, および関連各施設耳鼻咽喉科で平成4年から平成8年の間に初回手術を施行した症例のうち, 骨迷路にびらんまたは骨欠損がみられた症例を選び, 瘻孔の進展度にはDornhofferとMilewski1) の分類に準じてI, IIa, IIb, IIIの4段階に分類した. 内耳瘻孔症例としては, 進展度IIa以上の24症例24耳を対象とした. このうち半規管, 前庭にのみ瘻孔を有したのは21症例であった. 蝸牛に瘻孔を有したのは残りの3例で, すべて蝸牛に単独に瘻孔があり, 進展度はIIIであった. 軸位断での術前CT診断を施行していたのは14症例で, 内耳瘻孔についての陽性率は71.5% (10症例) であった. 術前骨導聴力は蝸牛に瘻孔を有した症例が, 半規管, 前庭に瘻孔を有した症例よりも悪かったが, 半規管, 前庭に瘻孔を有した症例の中で, 進展度による大きな差異はみられなかった. 全例に鼓室形成術を施行した. 半規管, 前庭に瘻孔を有した症例の中で, 進展度IIaの症例13例中で術後骨導聴力低下と判定されたのは2例 (15%) で, 進展度IIb以上の症例8例では, 3例 (38%) であった. このように, 進展度IIaの症例に比べてIIb以上の症例で術後に骨導聴力の悪化が起こりやすい傾向がみられた.
  • 松浦 一登, 志賀 清人, 横山 純吉, 舘田 勝, 中野 浩, 西條 茂, 高坂 知節
    1999 年 102 巻 5 号 p. 613-621
    発行日: 1999/05/20
    公開日: 2010/10/22
    ジャーナル フリー
    近年の分子生物学・分子遺伝学の進歩により, 癌の発生・進展はDNAなど遺伝子レベルでの変異による癌遺伝子の活性化と癌抑制遺伝子の不活化との蓄積により生じてくるという考え方が支持されている. 特に癌抑制遺伝子の変異やその領域の染色体の欠失は腫瘍化, 腫瘍の悪性化, 癌の生物学的悪性度の増強に関与していると考えられており, 診断分野への応用が試みられている.
    頭頸部癌においても種々の染色体欠失 (LOH: loss of heterozygosity) が調べられており, 9pの染色体欠失が最も頻度が高く, 3pの欠失もしばしば認められる. そこで今回我々はp16 (MTS1/CDK4I/CDKN2/INK4a), p15 (MTS2/INK4b) などの癌抑制遺伝子やIFNα遺伝子が存在する第9番染色体短腕9p21のLOHと, 上部消化管・呼吸上皮の扁平上皮癌に多く見られるとされる第3番染色体短腕3p21のLOHについて検討し, これらの染色体欠失が頭頸部癌患者の予後因子となりうるか検討を行った. 対象は頭頸部扁平上皮癌93例であり, 3p21領域のmicrosatellite markerであるD3S1067と9p21領域のmicrosatellite markerであるIFNA, D9S171を用いてPCR法にてLOHを検出した. 93例の内, informative caseは57症例であり, 27例 (47%) にLOHが認められたが, TNM分類などとの間には関連は認められなかった. しかし再発群ではLOH陽性例が有意に多く認められた. また他病死した5例を除いた52例についてカプラン・マイヤー法にて死因特異的5年生存率を求めたところLOH陽性例では有意に予後が悪かった. 3p, 9pのLOHは癌の悪性化に大きく関わっていると考えられ, これらのLOHは頭頸部癌における新しい予後因子として有用性が示唆された.
  • 石井 豊太
    1999 年 102 巻 5 号 p. 622-634
    発行日: 1999/05/20
    公開日: 2010/10/22
    ジャーナル フリー
    日本語の促音の発音に際して構音器官, 特に下口唇や舌の運動が, 単音の場合や長母音の場合とどのように異なっているかをX線マイクロビームシステムを用いて解析を行った.
    被検者は日本人男性 (東京方言) 1名で, pelletの位置は舌には, 舌体部及び, 舌背部に各1個, 下口唇に1個, 下顎に1個, 歯科用接着剤で接着した. reference pelletsとして, 鼻背部及び, 被検者の左上顎金義歯1番を使った. 各発話ごとにペレットの動きがX線マイクロビームシステム (ウイスコンシン大学) により記録され, そのデータは直接コンピュータに入力されて構音器官の運動が解析された. 発話サンプルは, 無意味後で/papiH//paQpiH//paHpiH/を用い, 各構音器官の動態について, 単純な子音, 促音/Q/, 及び長母音/H/の場合を比較した. また, 会話の速さを, 普通の場合と, できるだけ速くした場合の2種類で行い, 両者での構音器官における移動距離や運動のパターンを比較した.
    各発話時の速度の検討から, 下口唇の上下方向の運動速度は, 各発話間, また発話する速度に無関係でほぼ一定の速度をとり, 比較的ばらつきが少なかった. それに比較して, 舌体や舌背の運動は, 促音の発話時に単音や長母音の場合よりも有意に遅く, またばらつきも多かった. 促音に関する舌体や舌背の運動の様式は, 音形論的な記述における, underspecification (不完全指定) と言われる素性指定の調音的な表れとみられた.
  • 真栄田 裕行, 宇良 政治, 野田 寛, 山里 将司, 又吉 重光
    1999 年 102 巻 5 号 p. 635-642
    発行日: 1999/05/20
    公開日: 2010/10/22
    ジャーナル フリー
    頸部リンパ節腫脹を主訴とする疾患の中でも予後良好な亜急性壊死性リンパ節炎について, 表在リンパ節生検総数に占める割合, 及びその臨床像について統計的に観察した.
    対象及び方法: 1987年4月~1997年3月までの10年間に, 県立那覇病院において全身各所の表在リンパ節生検を行い, 病理学的に確定診断された例のみを対象にした.
    結果: 表在リンパ節生検総数629例中, 本疾患は54例存在し, 生検全体に占める割合は9%, 頸部リンパ節生検に占める割合は13%であった. 54例の内男性18例, 女性36例であた. 年齢は男女とも10~30歳代までの若年者で87%を占めた. 発症時期については1993年頃より減少傾向にあり, 発症月別には10~3月に好発した. 発熱, 腫脹, 疼痛, 合併症については54例中40例が調査対象となった. 発熱を伴った例は85%であった. 腫脹はすべての例で認められ, その期間は平均で2ヵ月持続した. 片側腫脹例は88%, 両側腫脹例は12%であった. 疼痛は75%に認められた. 合併症は30%に認められ, 内訳は薬物アレルギー, 皮疹, 糖尿病, 甲状腺機能低下症であった. 血液所見では白血球低下が82%にみられた. CRPは17%, ESRは13%, LDHは55%の症例で上昇した. 治療は, ステロイドは使用例全例に効果があった. 抗生物質は使用例のうち, 有効19%, 無効32%, 増悪29%であった. 解熱鎮痛剤については56%に効果があり, 25%は無効であった. 死亡例は1例もなかった.
    結論: 本疾患は生検にいたらない数を考慮すると, 外来診療におけるリンパ節腫脹をきたす疾患の中に占める割合は高い. 片側腫脹例が88%で従来の報告より高かった. 本症例の30%に薬物アレルギーや自己免疫疾患などの合併症がみられたことや, 寒冷期に多く発症することなどから本疾患とアレルギー, 上気道感染との関係が示唆された.
  • 頸部振動刺激との比較
    佐久間 文子, 相原 康孝
    1999 年 102 巻 5 号 p. 643-649
    発行日: 1999/05/20
    公開日: 2010/10/22
    ジャーナル フリー
    体平衡を維持するため前庭系, 視覚系と同時に深部知覚系が重要である. 後頸筋の深部知覚受容器の体平衡に対する重要性は既に検討されているが, 下肢や体幹の筋の関与については, いまだ十分な検討がされていない. そこで, 体幹や下肢筋の深部知覚の主たる感覚器である筋紡錘に振動刺激という外乱を与え, 重心動揺を観察し, 後頸部と比較検討した.
    対象は健康成人50名で, 振動刺激装置を装着した後, 重心動揺計の上に直立させた. 後頸筋, 僧帽筋, 腰部, 大腿二頭筋, 大腿四頭筋, 前脛骨筋, 腓腹筋を刺激し, 総軌跡長, 前後左右移動距離, 外周面積, 動揺中心の移動などについて, 解析した.
    振動刺激による重心の動揺は, 刺激部位によりANOVA法にて有意な差を認め, 後頸筋刺激時に最も大きく, 次いで前脛骨筋と腓腹筋, その次に腰部の順に大きかった. 大腿二頭筋刺激では, 動揺がわずかに増大したが, 僧帽筋, 大腿四頭筋刺激ではほとんど変化がなかった.
    動揺中心の偏位は, 腓腹筋刺激で後方へ, 前脛骨筋, 後頸筋, 大腿二頭筋刺激の順で前方へ偏位した. 後頸筋への刺激では, 背面にもかかわらず前方に移動し, 動揺中心の偏位の完成までに数秒の時間を要する例が多かった.
    以上より, 直立姿勢維持には, 足関節に直接作用する下腿筋群と中枢神経系を介して関与すると思われる後頸筋が重要と考えられた.
  • 栫 博幸
    1999 年 102 巻 5 号 p. 650-655
    発行日: 1999/05/20
    公開日: 2010/12/22
    ジャーナル フリー
    感音難聴に伴う耳鳴 (感音難聴性耳鳴) 44耳および無難聴性耳鳴10耳に対して, 耳管通気法による耳鳴抑制効果を評価して, その適応について検討した. 感音難聴性耳鳴全体としての通気による耳鳴抑制効果は30% (44耳中13耳) であり, その詳細を検討すると, 耳鳴のピッチが1000Hz以上の高音性耳鳴では抑制効果が10% (31耳中3耳) で, ピッチが1000Hz未満の低音性耳鳴での抑制効果は77% (13耳中10耳) であった. 無難聴性耳鳴では抑制効果60% (10耳中6耳) であった. その詳細は, 高音性耳鳴を示した6耳中3耳 (50%), 低音性耳鳴を示した4耳中3耳 (75%) に耳鳴の抑制が認められた. しかし, 今回検討した54耳において通気後に耳鳴が全く消失したものはなかった. 耳鳴り抑制効果の持続時間は, 高音性耳鳴ではすべてが10分以内であり, 低音性耳鳴でもその多く (69%) は20分~2時間であり, 2時間以上持続するものはなかった. 疾患別に検討すると, 耳管通気法が適応と考えられる耳鳴は次のように考えられる. 1) 感音難聴性耳鳴でピッチが1000Hz未満の低音性耳鳴, 特に, メニエール病や急性低音障害型感音難聴に伴う耳鳴, 2) 無難聴性耳鳴. これらの疾患において, 耳管通気後に一過性の耳鳴軽減がみられるが, 耳鳴が消失することはない.
  • 森山 正臣, 渡辺 哲生, 鈴木 正志, 児玉 悟, 須小 毅, 茂木 五郎
    1999 年 102 巻 5 号 p. 656-659
    発行日: 1999/05/20
    公開日: 2010/10/22
    ジャーナル フリー
    稀な所見・経過を呈した副鼻腔真菌症2例について報告する.
    症例1は30歳男性で5ヵ月前より両眼球突出が出現した. 両側中鼻道には鼻茸を認めた. アスペルギルスの皮内反応は陽性で, 血清総IgE, アスペルギルス特異的IgEは有意に上昇していた. CT, MRIでは骨破壊を伴い汎副鼻腔に陰影を認めた. 治療として両側上顎洞根本術, 鼻外前頭洞篩骨洞蝶形骨洞根本術を施行した. 病理組織学的検査で, allergic mucinの中に散在する真菌の菌体を認めた. 現在, 副鼻腔洗浄とフルコナゾール, トシル酸スプラタストの内服を続けている.
    症例2は78歳男性. 2ヵ月前から鼻閉, 3週間前から頭痛が出現した. 既往歴には糖尿病があった. 鼻腔内は鼻中隔膿瘍のため鼻中隔が腫脹していた. CTでは鼻中隔の膿瘍腔と左蝶形骨洞内に陰影を認めた. 骨破壊はみられなかった. 鼻外蝶形骨洞手術により左蝶形骨洞を開放した. 病理組織学的検査で蝶形骨洞アスペルギルス症と診断された. 手術後2ヵ月目に視力障害, 左眼瞼下垂が出現した. MRAで左内頸動脈の閉塞がみられ, アスペルギルスの頭蓋内浸潤によるものと考えられた. 抗真菌剤を投与したが意識レベルは低下し, 右片麻痺も出現した. 発症後1年で死亡した.
    症例1はアレルギー性アスペルギルス性副鼻腔炎, 症例2は侵襲型副鼻腔アスペルギルス症であった. 我々の経験と過去10年の国内の文献から, アスペルギルスの頭蓋内浸潤の症候として頭痛, 糖尿病が重要と考えられた.
  • 副鼻腔嚢胞鼻内開放手術
    長舩 宏隆
    1999 年 102 巻 5 号 p. 660-663
    発行日: 1999/05/20
    公開日: 2010/10/22
    ジャーナル フリー
feedback
Top