喉頭内腔に対する超音波断層検査は, (1) 肉眼による観察がある程度可能である, (2) 甲状軟骨に囲まれた腔である, (3) 気道である, などの理由によって, 他領域における超音波断層検査に比較して, 過去において, その方法や診断意義に対する検討があまりされなかった. そこで, 消化器や循環器領域ですでに用いられている細径プローブを, 撓性内視鏡の鉗子孔に挿入することによって内腔の観察と同時に断層像を描出させ, その診断意義について検討した.
摘出喉頭における水浸下での実験により, 断層像の評価を行い, 声帯層構造を確定した後に, 臨床例について検討し, その診断意義について検討した.
水浸下の断層像では, 声帯膜様部における粘膜は, 3層に分離し, 上皮および粘膜固有層浅層は低エコー, 粘膜固有層中間層は高エコー, 粘膜固有層深層は低エコーとして描出された. 臨床例における充満法での断層像でも粘膜の3層構造が描出可能であり, 声帯結節, ポリープなどの良性疾患では, 粘膜の層構造が確認でき, とくに, 出血性のポリープでは, 病変が, 高エコーを示すなどの特徴的な所見を示した. また, 声帯癌では, 粘膜外への浸潤像を描出できた.
以上により, 充満法による喉頭内腔からの超音波断層検査により, 声帯構造の把握が可能であることから, 喉頭腫瘍の浸潤範囲の補助診断に用いることにより, 切除範囲の決定に有用であると考えられた.
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