日本耳鼻咽喉科学会会報
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102 巻, 8 号
選択された号の論文の7件中1~7を表示しています
  • 井上 真郷, 庄司 和彦, 児嶋 久剛, 平野 滋, 内藤 泰, 本庄 巖
    1999 年 102 巻 8 号 p. 971-975
    発行日: 1999/08/20
    公開日: 2010/10/22
    ジャーナル フリー
    様々な言語活動を行っている時の脳の活動部位を特定する有力な方法として, 脳血流をPET (positron emission tomography) で計測しSPM (Statistical Parametric Mapping) で解析する手法がある. SPMは脳全体にわたって有意な活動部位を検出する優れた解析方法である. しかし, 従来これらの表示方法は平面スライス, 3方向投影図, 脳表面着色図がほとんどで, これらでは立体的位置関係が分かりにくく読影が困難であった. そこで今回我々は脳機能画像をより分かり易く読影できるよう, これらを3次元再構築した画像作成を試みた.
    対象は正常ボランティア12名で, 日常会話文聴取時のPET画像をSPMで解析した後, 1) SPM付属の従来の表示, 2) 3次元静止画像, 3) 3次元動画の作成を試みた. 2), 3) の3次元表示にはVTK (The Visualization Toolkit) のvolume rendering機能を使用したのが特徴である. また, 脳機能画像には元の脳画像が含まれないため, MRI脳画像との合成などを自作C++プログラムによって行った. 3) の動画は2) の静止画で一コマーコマを作成し, 市販ソフトウエアを用いて動画にした. 2), 3) の画像作成はパソコンを用いて行った.
    この結果, 従来の表示方法に比べ, 3次元再構築を行うことで脳活動部位の同定がより容易となった.
    脳機能画像は従来神経内科, 脳外科などの領分であったが, 耳鼻咽喉科でも言語の聴取, 表出を扱っている点から今後ますます重要な領域になると考えられる. 今回のように, 従来分かりにくかった脳機能画像を正確な3次元表示画像にすることが, 脳機能画像を正確で直感的に読影するのに重要であり, ひいてはこの分野での発展につながると考えられた. また, 3次元表示で一般的に知られている手法はsurface modelであるが, 脳のようなものの表示には今回用いたvolume renderingの方が優れていると考えられた.
  • 八田 千広, 小笠原 寛, 栗花 落昌和, 垣淵 正男, 山田 信幸, 中井 謙之, 吉永 和正, 阪上 雅史
    1999 年 102 巻 8 号 p. 976-982
    発行日: 1999/08/20
    公開日: 2010/10/22
    ジャーナル フリー
    自殺企図目的で生じた酸アルカリ腐食による下咽頭食道の狭窄と縦隔の高度な瘢痕形成のため, 胸骨前の食道再建を行った2症例を報告した. 症例1は66歳男性で, アルカリ摂取後の高度な食道狭窄のため, 回腸および右半結腸を用い胸骨前で食道再建を行った. また下咽頭の完全閉塞と喉頭入口部の瘢痕性狭窄を合併するため, 嚥下機能を優先して, 喉頭全摘出を行った. 手術後吻合部 (中咽頭から回腸) の通過性は良好だが, 結腸の腸管運動が不良のため嚥下困難や通過障害が残存し, 現在空腸瘻より経腸栄養を併用している. 症例2は81歳女性で, 酸摂取後の高度な食道狭窄のため空腸を用い胸骨前で食道再建を行った. 術後通過障害はなかったが, 食事に対する意欲が乏しく摂取量が少なかった. 上部消化管造影では吻合部の通過性は良好で誤嚥も認めなかった. 精神科的治療により徐々に食事量が増加し, 術後2ヵ月で7分粥が全量摂取可能となった.
    両症例とも縦隔内は瘢痕化していたため, 食道は抜去せず離断した残存食道の上端を頸部皮膚瘻とし, 再建経路は胸骨前とした. 胸骨前を再建経路とした場合, 再建食道に用いる消化管上端部の血流不全が問題であるため, 再建食道上端部の血管と頸部の血管との血管吻合を行い (super charge) 良好な結果を得た. 腐食性食道炎後の食道再建治療は再建時期, 再建材料, 再建方法についてその症例に応じた方法を考慮し, 耳鼻咽喉科医も治療に積極的に参加すべきと思われた. また食事に対する意欲が乏しい症例に対しては, 精神的ケアが重要と思われた.
  • 田村 悦代, 北原 哲, 小倉 雅實, 甲能 直幸, 田部 哲也, 中之坊 学, 古川 太一, 松永 毅
    1999 年 102 巻 8 号 p. 983-989
    発行日: 1999/08/20
    公開日: 2010/10/22
    ジャーナル フリー
    喉頭内腔に対する超音波断層検査は, (1) 肉眼による観察がある程度可能である, (2) 甲状軟骨に囲まれた腔である, (3) 気道である, などの理由によって, 他領域における超音波断層検査に比較して, 過去において, その方法や診断意義に対する検討があまりされなかった. そこで, 消化器や循環器領域ですでに用いられている細径プローブを, 撓性内視鏡の鉗子孔に挿入することによって内腔の観察と同時に断層像を描出させ, その診断意義について検討した.
    摘出喉頭における水浸下での実験により, 断層像の評価を行い, 声帯層構造を確定した後に, 臨床例について検討し, その診断意義について検討した.
    水浸下の断層像では, 声帯膜様部における粘膜は, 3層に分離し, 上皮および粘膜固有層浅層は低エコー, 粘膜固有層中間層は高エコー, 粘膜固有層深層は低エコーとして描出された. 臨床例における充満法での断層像でも粘膜の3層構造が描出可能であり, 声帯結節, ポリープなどの良性疾患では, 粘膜の層構造が確認でき, とくに, 出血性のポリープでは, 病変が, 高エコーを示すなどの特徴的な所見を示した. また, 声帯癌では, 粘膜外への浸潤像を描出できた.
    以上により, 充満法による喉頭内腔からの超音波断層検査により, 声帯構造の把握が可能であることから, 喉頭腫瘍の浸潤範囲の補助診断に用いることにより, 切除範囲の決定に有用であると考えられた.
  • 舘田 勝, 橋本 省, 松浦 一登, 高坂 知節
    1999 年 102 巻 8 号 p. 990-995
    発行日: 1999/08/20
    公開日: 2010/10/22
    ジャーナル フリー
    頭頸部癌の治療において, 気道の確保と管理は重要な因子の一つであるが, 気管切開術 (以下気切と略す) は確実な気道確保が得られるため, 根治手術の際に施行されることが多かった. しかし, 気切を行うことにより嚥下障害や誤嚥が生じやすくなることが以前より指摘されており, 術後QOLの向上を図る意味でも, 気切の適応について再検討を行う時期に来ているものと考えられた. 我々は1995年6月以降, 従来気切が必要とされてきた再建を要する口腔・中咽頭の手術に際し, 可能な限り気切を行わずに経鼻挿管による術後管理を取り入れる方針をとり, 術後再挿管が困難な症例 (顎間固定例など), 舌根を2/3以上切除する症例にのみ気切を行うこととした. その結果, 20例中11例に気切を避けることができたが, そのうち1例は皮弁の静脈血栓による鬱血に対する再手術時に気切を施行した. 結局, 10例において全経過を通し気切を回避できたが, それらの症例は早期に発声・経口摂取が可能であった. これらの結果により, 術後に気道を確保できる症例においてはできるかぎり気切を行わないことが, 術後のQOL向上に大きく寄与するものと思われた.
  • 磯野 道夫, 宮下 仁良, 村田 清高, 川本 亮, 田中 久哉, 斎藤 啓
    1999 年 102 巻 8 号 p. 996-1002
    発行日: 1999/08/20
    公開日: 2010/10/22
    ジャーナル フリー
    顔面神経麻痺の後遺症として顔面表情筋の異常共同運動に関してはこれまでさまざまな報告がありまた種々の評価法が試みられてきている. 生理的にも表情筋はいくつかの筋肉が共同して表情を作っており, 異常共同運動と正常の複合した筋肉の動きの間の異同が気になるところである. 我々は経験的に顔面表情筋が共同して動くことは知っている. 例えば, イーと口を広げると眉毛外側のあたりが動いたり, 口笛の動作をすると無意識のうちに鼻根部あたりに力が入っていることなどである. 今回の研究ではこれらの動きを定量的に評価し, 様々な顔面表情筋運動において使われる表情筋の動きを解析し, 将来的に異常共同運動の他覚的評価を行う際の基礎データを得ることを目的とする. 対象は顔面神経麻痺の既往のない正常者37例 (男性18例, 女19例). 年齢20~40歳. 方法は被検者の顔面上に24点のマーカーを貼り, ビデオCCDカメラで被検者の顔面をとらえ, パーソナルコンピューターに取り込んだ. この画像を2値化処理し, 静止時より最大運動時までの10段階の顔面の動きに伴うマーカー各点の動きからその軌跡を計測した. 今回検討したのは閉眼運動, 額のしわ寄せ運動, 口笛運動, イーと歯をみせる運動の4つの表情運動であるが, いずれの表情運動においても, 顔面全体が協調しあって表情が作られていることが数量的に評価される結果となった. 正常者において, 少なくともある表情をつくるためには, 随意的に動かそうとする表情筋以外の表情筋の15-20%程度の共同は必要であり, このことが数量的に証明できた. 今後この結果は異常共同運動の評価の参考となろう. また, 男女間ひいては各個人の表情の微妙な違いは, 今回数量化できた随意的に動かそうとする表情筋以外の表情筋の動きつまり正常の共同運動の違いにあることが示唆された.
  • 先天性耳瘻孔・耳介血腫
    高橋 姿
    1999 年 102 巻 8 号 p. 1004-1007
    発行日: 1999/08/20
    公開日: 2010/10/22
    ジャーナル フリー
  • 小崎 寛子
    1999 年 102 巻 8 号 p. 1008
    発行日: 1999/08/20
    公開日: 2010/10/22
    ジャーナル フリー
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