加齢に伴い生じる味覚機能低下との関係を解明する一手段としてエブネル腺に注目し, 加齢に伴う同腺の変化を3次元解析法にて検討した.
剖検例の舌の有郭乳頭の部位で検体を採取した. 検体をアルコール脱水, パラフィン包埋したのち100μmごとに5μmの薄切切片標本を作製した. 染色はヘマトキシリン, エオジン染色法で行った. 作製した標本を白黒撮影し, これを拡大焼き付けし, 有郭乳頭, 上皮, エブネル腺の3組織をOHPシートにトレースし, それぞれの情報をコンピュータに入力し, Cosmozone 2SA 3次元解析ソフトおよびI-BASone画像解析システムを用いエブネル腺体積および腺房細胞占有率を測定した.
対象は30歳代, 40歳代, 50歳代, 60歳代, 70歳代, 80歳代の各年齢毎に男性各5例, 女性各5例の計60例について検討した.
エブネル腺の体積の平均値は30歳代, 40歳代, 50歳代, 60歳代, 70歳代, 80歳代の各群でそれぞれ67.0mm
3, 64.6mm
3, 59.8mm
3, 39.2mm
3, 33.9mm
3, 30.4mm
3であった. 統計処理の結果, 年齢の要因が危険率1%で有意となった. 腺房細胞占有率と年齢は負の相関を示し加齢と共に腺房細胞占有率が減少することがいえた (相関係数: 男性-0.858, 女性-0.838). エブネル腺の腺房細胞の推定体積と年齢は負の相関を示し加齢と共に腺房細胞の推定体積は減少することがいえた (相関係数: 男性-0.929, 女性-0.854).
加齢変化に伴って生じる味覚機能低下へエブネル腺が間接的に関与していると考察した.
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