舌扁平上皮癌におけるラミニンγ2鎖の発現を免疫組織学的に調べ,臨床的予後との相関について検討した.癌細胞同士が接着し胞巣状に増殖浸潤している場合,ラミニンγ2鎖の発現は胞巣の辺縁細胞のみに観察され,これを辺縁性発現(peripheral expression)とした.癌細胞間の接着性が低下し,癌細胞が分散性に強い浸潤を示す場合,癌細胞一つ一つにラミニンγ2鎖の発現がみられ,これをびまん性発現(diffuse expression)とした.舌癌原発巣組織におけるラミニンγ2鎖の発現パターンがすべて辺縁性発現のものを辺縁性発現型,浸潤の先進部を中心に一部でもびまん性発現がみられるものをびまん性発現型に分類したところ,stage II以上の舌癌30例のうち辺縁性発現型が19例(63%),びまん性発現型が11例(37%)であった.辺縁性発現型の3年死因特異的累積生存率が64%であったのに対し,びまん性発現型の3年死因特異的累積生存率は34%であり,びまん性発現型の予後は有意に不良であった.ラミニンγ2鎖は舌癌の増殖•浸潤において重要な働きを有しており,特に細胞分散性の強い浸潤を示す場合にみられるラミニンγ2鎖のびまん性発現は癌細胞に高い悪性度をもたらすものと考えられた.加えて,ラミニンγ2鎖の発現パターンの検討は予後判定に有用であると思われた.
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