日本耳鼻咽喉科学会会報
Online ISSN : 1883-0854
Print ISSN : 0030-6622
ISSN-L : 0030-6622
108 巻, 11 号
選択された号の論文の8件中1~8を表示しています
  • 森 憲作
    2005 年 108 巻 11 号 p. 1067-1070_1
    発行日: 2005/11/20
    公開日: 2010/10/22
    ジャーナル フリー
    1991年にLinda BuckとRichard Axelがにおい分子受容体群を発見して以来, この十数年間に嗅覚神経系の基礎研究が急速に進んだ. これらの研究により, 多種多様なにおい分子を受容し識別するための分子ロジック, 細胞ロジック, および神経回路ロジックが解明されるとともに, 嗅球の糸球層の「におい分子受容体地図」の知識が蓄積されるようになった. この「におい地図」の解析の結果, よく似た構造的特徴をもったにおい分子群に応答する糸球は, 嗅球の特定の部位に集合し, Molecular Featureクラスターを形成していることがわかった. 嗅球におけるMolecular Featureクラスターの空間的配置は, 異なったラットでも一定に保たれていた. それぞれのクラスターを活性化するにおい分子の構造と, ヒトがこれらのにおい分子を嗅いだときに感じる「においの質」との間には強い相関関係があることより, 「におい分子受容体地図」は「においの質の基本成分」を空間的に表現していると予想される. ラットやマウスで見られたこのような「においの質」の空間的表現がヒトの嗅球でも見られるかどうかはまだ確かめられていないが, 嗅球の神経回路や糸球の構造が哺乳類全体でほぼ共通していることから, ヒトの嗅球にも存在すると思われる. したがって, 「質的嗅覚異常」の主要原因部位の候補の1つとして, 嗅球の「におい地図」を考えることが重要である.
  • 福田 寛, 金田 朋洋, 窪田 和雄
    2005 年 108 巻 11 号 p. 1071-1076_2
    発行日: 2005/11/20
    公開日: 2010/10/22
    ジャーナル フリー
    18Fフルオロデオキシグルコース (FDG) を用いるPET (Posltron Emission Tomography) 検査により, 癌の糖代謝の程度, すなわちバイアビリテイーを反映する画像が得られる. このため形態情報を主とするCTやMRIと比べて以下の点で優れている. (1) 頸部リンパ節転移の原発巣の検出: PETによる検出率は平均30%でそれほど高くはないが, CT/MRIによる検出は困難である. (2) 病期診断 (特にリンパ節転移診断~: PETによる病期診断の感度, 特異度は平均84%, 89%である. 一方, 頭頸部は解剖学的構造が複雑であること, 組織密度差が少ないことからCT/MRIによる感度, 特異度は75%, 65%程度である. (3) 再発診断: 治療後の解剖学的構造の変化, 組織密度の変化のため, CT/MRIによる再発の診断精度は低く, 感度, 特異度はそれぞれ67%, 61%程度であった.
    一方, PETにも弱点がある. 1) 分解能が低いこと: PETの分解能は5~6mm程度であり, 1cm以下の腫瘍の検出率はかなり低下する. 2) 解剖学的情報の欠如: 糖代謝の多寡に依存した画像で解剖学的情報を欠く (最近, CTとPETを合体したCT/PETが導入され, この欠点が補なえるようになってきた). 3) 悪性腫瘍でも集積の少ないもの, 良性腫瘍や炎症などにも高集積を示す場合がある.
    PETは, 科学的データに基づく癌診療を行う上で, 極めて有用であるが, その限界についても十分把握した上で利用する必要がある.
  • 樫尾 明憲, 鈴木 光也, 渡辺 英寿
    2005 年 108 巻 11 号 p. 1077-1082
    発行日: 2005/11/20
    公開日: 2010/10/22
    ジャーナル フリー
    Hardy法は現在まで下垂体腫瘍の摘出の標準的な方法となっている. 近年, より低侵襲, 安全性を求めて, 内視鏡・ナビゲーションシステムを用いた経鼻経蝶形骨洞的下垂体摘出術が報告されるようになってきた. 我々は2000年10月~2003年10月において東京警察病院にて内視鏡・機械式ナビゲーションを用い経蝶形骨洞的に下垂体腫瘍を摘出した12例を経験した. ナビゲーションシステムは機械アーム式のニューロナビゲーターIIIを用いた. 当初2例を除き片側総鼻道経由にて蝶形骨洞に達した. 術側決定には鼻中隔弯曲, 蝶形骨洞中隔弯曲を考慮した. 片側総鼻道経由手術は内視鏡下下垂体手術の中で最も低侵襲であり有効なアプローチ方法と言える. ただし, 出血の状態, 腫傷の大きさなど条件によってはその他の方法を選択する必要もありうる. ナビゲーションシステムは手術を安全に進めるにあたり有効であり, その中で機械式ナビゲーションシステムはコストパフォーマンスを考え合わせると, 今後も選択肢の一つとなりうると考えられた.
  • 伊地知 圭, 長谷川 泰久, 小川 徹也, 寺田 聡広, 兵藤 伊久夫, 山田 裕子, 村上 信五
    2005 年 108 巻 11 号 p. 1083-1090
    発行日: 2005/11/20
    公開日: 2010/10/22
    ジャーナル フリー
    1985年から2002年までに愛知県がんセンター頭頸部外科を受診した原発不明頸部リンパ節転移症例36例について検討した.
    初診時原発不明であった症例は56例であり, そのうち治療開始までに原発不明であった症例を対象とした. また, 治療開始後に原発巣が判明した症例が11例であった.
    Random Biopsyを施行したのは56例中35例 (62.5%) であった. そのうち35例中5例 (14.3%) にて原発巣が判明した.
    初期治療として頸部郭清術を施行した症例は36例中24例 (61.5%) であった.
    治療開始後に原発巣が判明した症例について, 判明した原発部位は中咽頭が最も多かった.
    治療開始時に原発不明であり, 1年以上経過が明らかな31例についてKaplan-Meyer法にて生存率を検討した. 粗生存率は63.7%, 疾患特異生存率は69.2%, 無病生存率は46.8%であった. N分類, 組織型, 原発判明の有無, 頸部郭清術施行の有無, 化療施行の有無, 放財線照射施行の有無について生存率を検討したが, 有意差が見られたのは頸部郭清術施行の有無であった.
  • 善浪 弘善, 竹腰 英樹, 菊地 茂, 飯沼 壽孝
    2005 年 108 巻 11 号 p. 1091-1100
    発行日: 2005/11/20
    公開日: 2011/02/18
    ジャーナル フリー
    鼻腔拡張テープ, Breathe Right®は, 使い捨てで, 外鼻に貼り, 侵襲なく鼻前庭の外側壁を引き上げることによって, 鼻弁部の断面積を増加させ, 鼻腔の通気を増加させるものであり, 鼾, 鼻閉の改善に効果のあるものとして, 広く認識されている. しかし, 外鼻の形態は, 人種によって差があり, 鼻弁部の形態も日本人と白人とでは差を認める. 白人では, 鼻弁角は, 10度から15度, 日本人で約30度と, 白人と比較すると, 日本人では角度が大きいことが判明している. このように. 鼻弁の角度が, 比較的大きい日本人においても, Breathe Right®は, 白人と同様に有効であるのか. 特に, 鼻閉に関してはどうか. 日本人におけるBreathe Right®の効果を検討した結果を報告した. 目的は, 1) Breathe Right®による鼻腔開存効果を, コントロールであるnonBar-Breathe Right®と比較検討する. 2) Breathe Right®による鼻腔開存効果に対するnasal cycleの影響を調べることであった. 対象は, 18歳以上の健常者35例, 男性20例, 女性15例であった. 測定は, 音響鼻腔計測法によって行った. 結果は, (1) Breathe Right®は, C-Notchの断面積, および鼻腔入口部より1-3cmの容積において, コントロールと比較して有意に鼻腔を拡張する効果を認めた. (2) C-Notchにおいて, Breathe Right®群では, 経時的に断面積の変化率が減少する傾向が見られたが, コントロール群では認めなかった. 外鼻皮膚と鼻腔粘膜との間のコンプライアンスの変化が影響している可能性が考えられた. (3) nasal cycleによる容積変化率とBreathe Right®による容積変化率とは, 有意な相関性を認めなかった. すなわち, Breathe Right®の鼻腔開存効果は, nasal cycleによって影響されなかった.
  • 瀬野 悟史, 鈴木 幹男, 桜井 弘徳, 北西 剛, 中嶋 大介, 園田 聡, 大脇 成広, 福井 潤, 星 参, 花満 雅一, 清水 猛史
    2005 年 108 巻 11 号 p. 1101-1109
    発行日: 2005/11/20
    公開日: 2010/12/22
    ジャーナル フリー
    手術を安全に行うため各種のナビゲーションシステムが開発されてきた. 我々は鼻副鼻腔内視鏡下手術において, Signa SP/i® (以下Signa SP/i) とStealth Station TREON® (以下Stealth Station) の2つのナビゲーションシステムを比較検討したので報告する. 対象は2000年から2004年の間に, 内視鏡下鼻副鼻腔手術の際にSigna SP/iを用いた14例 (以下Signa SP/i群) と, Stealth Stationを用いた19例の計33例 (以下Stealth Station群) とした. 対照は, 2000年1月から8月の間にナビゲーション機器を使用せず内視鏡下副鼻腔手術を行った内視鏡下副鼻腔手術症例64例 (以下ESS群) とした. 以上の症例について, ナビゲーションシステムを使用した際の, 準備に必要な時間, 使用器具, ナビゲーションの実際について検討を行った. ナビゲーションの準備に要する時間では, Signa SP/i群, Stealth Station群ともにESS群と比較して有意に長かった (p<0.01). 使用器具では, Signa SP/iでは, 高磁場環境で使用するため, 非磁性の手術器具を自作する必要があった. Stealth Stationでは, 器具の制限がなかった. ナビゲーションの精度は, Signa SP/iのリアルタイム画像では画像が荒く, レジストレーション画像と併用してナビゲーションを行う必要があるものの, 誤差は少なく, 病変切除をその場で確認できる大きな利点があった. Stealth Stationでは, 誤差は満足できるが, 術中ヘッドバンドのズレが生じないよう注意をする必要があった. 今後個々の症例に応じて機器を選択する必要があると考えられた.
  • 従来型補聴器との補聴効果の比較
    岩崎 聡, 橋本 泰幸, 名倉 三津佳, 武林 悟, 水田 邦博, 峯田 周幸
    2005 年 108 巻 11 号 p. 1110-1113
    発行日: 2005/11/20
    公開日: 2010/10/22
    ジャーナル フリー
    BAHAシステムは耳介後部側頭骨に埋め込むチタン製インプラントと外部装置からなる埋め込み型骨導補聴器であり, その適応は気導補聴器の装用が困難な両側混合性難聴または伝音性難聴である. 今回我々は骨導補聴器と気導補聴器を併用していた両側慢性中耳炎2症例に対しBAHA手術を施行し, それぞれの補聴効果をファンクショナルゲイン, 音場語音明瞭度検査, 騒音下音場語音明瞭度検査により比較検討した. BAHAは骨導補聴器よりも良好な補聴効果が得られた. 2症例とも装用下閾値が同一であれば気導補聴器, BAHAとも非騒音下の音場語音明瞭度には差がみられず, 騒音下では症例1でほぼ同一, 症例2ではBAHAの方が良好な結果であった. 気導―骨導差が大きい場合は, 骨導刺激であるBAHAの方がより補聴効果が得られやすいと思われた.
  • 本邦における重篤な有害薬物反応
    南光 弘子
    2005 年 108 巻 11 号 p. 1114-1117
    発行日: 2005/11/20
    公開日: 2010/10/22
    ジャーナル フリー
feedback
Top