発症後半年以上経過した陳旧性突発性難聴症例に対し, 日本語版HHIA
1) (Hearing Handicap Inventory for Adults, 以下HHIA) と, 治療後の状態を尋ねるアンケートを施行し, 聴力固定後の突発性難聴患者のQOLについて検討した.
両側性感音難聴症例との比較では, 突発性難聴症例のHHIA点数は合計点, 社会面, 感情面とも有意に低かった (p<0.01). 聴力レベルとの関係, 罹患期間との関係においても, 両側性感音難聴症例と突発性難聴症例は, 異なる傾向を示した.
補聴器の使用は3例のみであったが適応外の1例も含まれていた. HHIAの点数が0点の症例は, 1例が難聴, 約1/3が耳鳴で困ると答えたのみであったが, 0点以外の症例は, 1/2以上の症例が難聴で困ると答え, 44点以上の症例は全例, 難聴と耳鳴を訴えていた. 約半数の症例が聴力固定後も難聴, 耳鳴に悩まされており. めまい, 耳閉塞感に比して高率であった. 中には, 症状は残っているが困ってはいない, とコメントをつけた症例も見られた. 治療後の自覚的聴力変化について悪くなったと答えた症例 (13%), 当科の治療後に他院を受診したことがある症例 (16%) は, HHIAが有意に高かった.
これらの結果から, 陳旧性突発性難聴におけるQOL改善のためには, 治療後のインフォームドコンセント, 定期的聴力検査など, ニーズに応じたフォローアップが重要であると考えられた.
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