日本耳鼻咽喉科学会会報
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110 巻, 9 号
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原著
  • 佐藤 克郎, 富田 雅彦, 渡辺 順, 松山 洋, 高橋 姿
    2007 年 110 巻 9 号 p. 623-628
    発行日: 2007/09/20
    公開日: 2008/12/25
    ジャーナル フリー
    当科で根治手術を行った下咽頭梨状陥凹瘻の13症例を臨床的に検討した. 患側は12例 (92%) が左側で1例のみ (8%) 右側に発生しており, 確定診断までの感染回数は平均4回であった. 発症年齢は中央値5歳, 手術時年齢は中央値13歳であったが60歳以上の高齢者も2例みられ, 81歳発症症例は咽頭異物の関与が推察された. 確定診断以前に頸部の疾患として手術を受けた既往が54%にみられた. 診断は下咽頭造影での瘻孔の描出をもって確定診断とした. CTおよびMRIは, 特に冠状断が病態の把握に有用であった. 当科での術式は, まず直達下咽頭鏡で瘻孔を確認し染色した後に頸部操作に移り, 甲状咽頭筋を切開して梨状陥凹を明視下に置き瘻管を末梢まで同定して摘出する方法をとった. 甲状腺と反回神経の処理は必ずしも行われていなかったが術後再感染した症例はなかった. 手術においては下咽頭との連絡を確実に絶つことが最も重要と考えられ, 当科で行っている瘻管を確実に同定して摘出する術式が有用と思われた.
  • 鈴木 秀典, 小川 徹也, 寺田 聡広, 有馬 忍, 小澤 泰次郎, 鈴木 政博, 中島 務, 玉木 恒男, 西尾 正美, 長谷川 泰久
    2007 年 110 巻 9 号 p. 629-634
    発行日: 2007/09/20
    公開日: 2008/12/25
    ジャーナル フリー
    頭頸部扁平上皮癌の病期診断に際して, FDG-PET施行159例とFDG-PET/CT施行116例の診断能を検討した. 原発巣・頸部リンパ節転移・遠隔転移について, FDG-PETもしくはFDG-PET/CTからの画像診断結果と臨床診断結果を比較検討した. また両検査による頸部リンパ節転移の診断能も検討した. 両検査ともに, 原発巣・頸部リンパ節転移・遠隔転移の精度は80%超で, 頸部リンパ節転移陰性と診断した症例の陰性的中率は90%超であった. FDG-PETで頸部リンパ節転移陽性と診断された症例の陽性的中率は78%, FDG-PET/CTでは82%であった. FDG-PETで頸部リンパ節転移単発と診断された症例の陽性的中率は63%であり, 比較的低いと考えられた. 両検査は頭頸部扁平上皮癌の病期診断において高い診断能があり, 今後FDG-PET/CTの普及に伴って高い診断能を有するスクリーニング検査になる可能性があると考えられた. しかし, 両検査は全身の悪性腫瘍画像ではなく全身の糖代謝分布画像である. 少なからず偽陽性や偽陰性例が存在することに常に留意しなければならない.
  • 久保田 彰, 古川 まどか, 花村 英明, 藤田 芳史, 杉山 正人
    2007 年 110 巻 9 号 p. 635-642
    発行日: 2007/09/20
    公開日: 2008/12/25
    ジャーナル フリー
    中咽頭進行癌に対する化学放射線同時併用療法の中間成績を検討した. 対象は前治療のない扁平上皮癌の34例 (男/女, 32例/2) で年齢の中央値は63歳 (47歳-72), stage III/IVが9例/25, T2/3/4が14例/15/5, N0/1/2/3が5例/5/22/2, 根治切除可能/不能が19例/15, 前壁/側壁/後壁/上壁が10例/18/5/1であった. 重複癌は食道が3例, その他が2例であった. 放射線の中央値は66Gy (58Gy-70) で, 化学療法は5-FUの1000mg/m2を4日間の持続点滴とCDDPの60mg/m2の2コース同時併用とし, 28例 (82.3%) で計画通りの治療を行った. grade 3以上の毒性は粘膜炎を61.8%, 嘔吐を14.7%, 白血球減少を20.6%, 血色素減少とクレアチニン上昇を2.9%の順に認めた. 奏効度はCR/PRが7例/22で奏効率は93.5%であった. 2年progression free survival (PFS) は55.1% (stage III/IV ; 77.8%/47.7, N0, 1/N2, 3 ; 70.0%/49.7, T2, 3/T4 ; 63.7%/0, 根治切除可能/不能 ; 88.8%/26.7), 2年生存率は57.1% (stage III/IV ; 71.4%/51.9, N0, 1/N2 ; 70.0%/54.5, T2, 3/T4 ; 60.6%/40.0, 根治切除可能/不能 ; 84.6%/33.3) であった. 再発形式は局所・頸部リンパ節が14例, 他因死が1例で, 再発後の頸部郭清を1例に行ったが原病死した. 生存率およびPFS率は根治切除可能が根治切除不能より, T2+3がT4より有意に良好であった. 化学放射線同時併用療法は中咽頭癌の臓器温存率と生存率を向上し, QOLを維持しながら生存期間を延長する.
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