日本耳鼻咽喉科学会会報
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112 巻, 2 号
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総説
  • 永井 博弌
    2009 年 112 巻 2 号 p. 53-59
    発行日: 2009年
    公開日: 2010/06/03
    ジャーナル フリー
    昨年 (2007年) 11月に「アレルギー疾患診断・治療ガイドライン」(日本アレルギー学会編) が新しく発刊された1). アレルギー疾患は一個体に数種の疾患が合併して発症することが多く, 臨床医が専門外の他診療科のガイドラインも知る必要があることから, 今回は“統合型のガイドライン”として作成された. 当然のことであろうが, ガイドラインの中での治療に関しては薬物治療が大きな位置を占めている. 薬物治療では個々の症例に応じたテーラーメイド治療が最終目標となるが, そのための適正使用に必要な, 現時点での標準的・平均的治療法が記されている. 今回は成人気管支喘息, 小児気管支喘息, アレルギー性鼻炎, アレルギー性結膜炎, アトピー性皮膚炎, 食物アレルギーの6疾患について述べられている. 本稿ではガイドラインで取り上げられているアレルギー治療薬についての「現状と将来」について述べる.
  • —咽頭・喉頭癌の新しい内視鏡診断—
    加藤 孝邦, 波多野 篤, 斉藤 孝夫
    2009 年 112 巻 2 号 p. 60-65
    発行日: 2009年
    公開日: 2010/06/03
    ジャーナル フリー
    NBI内視鏡は新たな画像診断機器として耳鼻咽喉頭頸部領域の表在癌をはじめ早期癌の診断, 進行癌での周囲浸潤範囲の診断に極めて有用である. NBI内視鏡では上皮乳頭内毛細血管ループ (IPCL; Intra-epithelial papillary capillary loop) の拡張がブラウンスポットとなり, IPCLのパターンとこのIPCLの集まったところに境界があり, 領域性が明らかな場合ブラウンエリアと表現され, その境界での樹枝状血管の断絶が明瞭であるか否かなどにより表在癌が診断される. このようにして咽頭・喉頭を観察すると, これまで癌と診断できなかった小さい腫瘤もはっきり癌と認識できる. また発赤と思われていた粘膜がNBI内視鏡での観察によりIPCLの集まりであることが明らかになり癌と診断することも可能であり, 今までと異なり, 画像パターンにより癌を視認することが可能となった. また進行癌でも隆起したり, 潰瘍を形成しているところだけではなく, 表在性に腫瘍が浸潤している周辺の病変なども容易に診断することが可能で, その有用性は極めて高い. このように映像診断が進歩し, デジタル画像処理を行うことでより病態を明瞭にすることが可能となり, 小さい病変, 早期の病変などを容易に診断することができるとともに耳鼻咽喉科領域の他の疾患に対しても新しい診断法となった.
原著
  • 深美 悟, 中村 真美子, 馬場 廣太郎, 平林 秀樹, 春名 眞一, 市村 恵一, 石川 浩太郎
    2009 年 112 巻 2 号 p. 66-72
    発行日: 2009年
    公開日: 2010/06/03
    ジャーナル フリー
    新生児聴覚検査事業は, 聴覚障害の早期発見・療育を目的として新生児聴覚検査を実施し, マススクリーニングに適した実施法, 療育・支援体制を検討するモデル事業であり, 栃木県でも平成14年から事業を開始した. 自動ABRを施行した6,198人中, 再検査数 (初回自動ABR検査でreferのため, 再度自動ABRを行った数) は71人 (1.1%), 要精密聴検数 (再検査で一側あるいは両側referのため睡眠下ABRが必要であった数) は44人 (0.7%) であった. 初回精密聴検の結果, 両側難聴例を20人認めたが, 最終的には両側難聴例は17人であった. 自動ABRと睡眠下ABRの不一致例は, 自動ABR偽陽性例7例, 偽陰性例3例に認められたが, 全例最終聴力は正常範囲となった. 新生児聴覚スクリーニングにより難聴児の早期発見が可能となった一方で, 難聴児に対する療育, 支援体制が十分に整っていない現状からも, 関連部門との密接な連携, 乳幼児健診制度との連携, 小児難聴に精通した人材の育成, 配備と難聴療育施設の整備が急務であり, 現時点では全出生児に対して新生児聴覚スクリーニングを行うのは困難と考える.
  • —金沢市聴力検診事業より (2000年~2005年)—
    安田 健二, 古川 仭
    2009 年 112 巻 2 号 p. 73-81
    発行日: 2009年
    公開日: 2010/06/03
    ジャーナル フリー
    金沢市耳鼻咽喉科医会では行政からの委託で2000年から聴力検診事業を行っている. この聴力検診事業は, 65歳から74歳を対象とした隔年検診であり, 今回は2000年から2005年までの検診受診者延べ15,589人 (複数回受診者は3,247人) の聴力検査結果を検討した. 結果に関してはおおむね過去の報告と大きな相違はなかった. 聴力レベルでは35dB以上の難聴と診断された割合は全体の16.4%で, そのうちの約8割は35dBから50dBの難聴であった. 聴力障害の原因としては加齢によるものがやはり多く (約80%), 次いで慢性中耳炎 (5~8%), 耳管狭窄症および滲出性中耳炎 (3~8%) であった. このうち治療の対象となったものは6~7%であった. 主に老人性難聴によると思われる高音障害型の難聴は65~66歳では40.0%, 73~74歳では66.8%に見られた. 複数回受診者3,247人の聴力変化を検討したところ (平均6年間の観察期間), 高音障害型の聴力を呈する受診者における2.1%に, また高音障害型の聴力を呈しない受診者においては10.5%に会話域での15dB以上の聴力レベルの低下を認めた. 補聴器装用を勧奨した受診者を追跡したところ, 装用対象者の70%以上が装用に消極的であった事実は, 今後の補聴器普及や聴力検診事業の最終的な目的を考えると, 補聴器メーカーとともに何らかの方策をとる必要性を痛感した. 行政, 地域医師会に聴覚の重要性の理解を得て, 聴力検診事業を今後とも継続したいと考えているが, 地域だけの努力には限界があると考えられる.
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