日本耳鼻咽喉科学会会報
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112 巻, 8 号
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総説
  • 長尾 俊孝
    2009 年 112 巻 8 号 p. 601-608
    発行日: 2009年
    公開日: 2010/11/30
    ジャーナル フリー
    唾液腺腫瘍は組織像が多彩で, 30種類を超える腫瘍型や種々の亜型が存在しており, 病理診断に難渋することが少なくない. しかしながら, 唾液腺腫瘍では, 病理学的な組織型によって, 多くの場合その生物学的態度が規定されるため, 腫瘍の組織分類を理解することが治療方針の決定や予後の判定には必要不可欠となっている. 国際的に広く認知されている唾液腺腫瘍の組織分類はWHO分類であると考えられるが, 2005年にはこの第3版目となる改訂版がPathology and Genetics of Head and Neck Tumoursとして刊行された. この新WHO分類では第2版の内容を踏襲しつつも, 発生頻度の低い腫瘍型 (リンパ腺腫, 明細胞癌NOS, 唾液腺芽腫など) がリストの中に新たに加わったこと, 第2版以降に報告された亜型や非常にまれな腫瘍型が記載されたこと, さらにはいくつかの腫瘍型では名称の変更が行われたこと, などの改訂がなされている. 本稿では, 唾液腺腫瘍新WHO分類の紹介を含めた病理組織学的分類の解説に加えて, 実際に病理診断を行う際のアプローチの仕方と注意点についても述べる.
原著
  • 大橋 正嗣, 千葉 伸太郎, 太田 史一, 森山 寛
    2009 年 112 巻 8 号 p. 609-614
    発行日: 2009年
    公開日: 2010/11/30
    ジャーナル フリー
    睡眠時の嚥下がなぜ起こるかということに関して諸説あるが, 現時点では定まった見解および検査法はない. しかしながら嚥下性肺炎の多くに睡眠中の不顕性誤嚥が関与するといわれ, 睡眠時嚥下の評価法が必要と考えられる. 今回われわれは睡眠呼吸障害が疑われた症例に行った食道内圧測定を併用した終夜ポリソムノグラフィーのデータをもとに, 記録された嚥下波形から睡眠時の嚥下および睡眠との関係について検討を行った. 各睡眠段階における単位時間当たりの嚥下数について多くはStage 1で認められており, 次いでREM睡眠, Stage 2の順であった. Stage 3, 4ではほとんど嚥下は認められなかった. 今回の検討からは各睡眠段階における嚥下数に差が認められたが, 閉塞性睡眠時無呼吸症候の重症度による睡眠時嚥下数への影響は限定的であった.
  • 木村 光宏, 濱村 亮次, 梅原 毅, 青井 典明, 佐野 千晶, 片岡 真吾, 川内 秀之
    2009 年 112 巻 8 号 p. 615-622
    発行日: 2009年
    公開日: 2010/11/30
    ジャーナル フリー
    急性低音障害型感音難聴は比較的予後良好な疾患と一般的に考えられている.しかし, 長期間経過を観察すると, 反復したり, 再発したり, さらにはメニエール病へ移行する場合もあり, 治療に難渋することがしばしばある.
    本疾患は, 厚生労働省急性高度難聴研究班の診断基準において, 急性あるいは突発性に蝸牛症状 (耳閉塞感, 耳鳴, 難聴など) が発症し, めまいを伴わない低音部領域のみの感音難聴であるとされている. しかし, 当科にて過去5年間に精査, 加療を行った急性低音障害型感音難聴31症例について検討したところ, 神経耳科学的検査において閉眼頭位, 暗所開眼頭位眼振検査で眼振を認め, 潜在的な末梢前庭機能の不均衡を認める症例や, 温度刺激検査で左右差を認めた症例は約半数におよび, その中には高度半規管機能低下 (緩徐相速度左右差60%以上) を呈する症例も認められた. これらの検討結果は, 急性低音障害型感音難聴においても半規管機能低下を呈する症例があり, 末梢前庭系にも障害が及んでいる可能性を示唆した.
  • 笹井 久徳, 渡邊 雄介, 宮原 裕
    2009 年 112 巻 8 号 p. 623-627
    発行日: 2009年
    公開日: 2010/11/30
    ジャーナル フリー
    目的: ゴアテックスのヒト喉頭における親和性・安定性について評価すること.
    方法: 声帯麻痺の患者にゴアテックスを用いて甲状軟骨形成術I型を行った. 折り重ねたゴアテックスは甲状軟骨開窓部から軟骨片, 内軟骨膜は保存し挿入した. 術後12カ月経過後の喉頭病理像を検討した.
    結果: 挿入したゴアテックスの周囲には線維性皮膜の形成を伴うわずかな炎症反応を認めるのみであった. またゴアテックスの多孔構造内にはコラーゲンと無数の線維芽細胞の侵入を認めた.
    結論: 病理学的にゴアテックス内部構造への線維芽細胞・線維組織の侵入が認められたことはヒト喉頭における安定性の高さおよび親和性の高さを示唆するものと思われた.
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