日本耳鼻咽喉科学会会報
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113 巻, 10 号
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総説
  • 長縄 慎二, 中島 務
    2010 年 113 巻 10 号 p. 783-789
    発行日: 2010年
    公開日: 2011/05/28
    ジャーナル フリー
    従来, 難聴やめまいのMRI (Magnetic Resonance Imaging) 診断では聴神経腫瘍の有無や奇形, 椎骨脳底動脈循環不全, 脳腫瘍, 多発性硬化症などが診断される程度であり, 内耳のリンパ環境の変化については, 迷路炎によるリンパ腔の形態的変化や著明な内耳出血がない限り検出が困難であった.
    近年, 3Tの登場とマルチチャンネルコイルによる信号雑音比の向上, 新しいパルスシークエンスソフトの開発による高速化などのMR技術の顕著な進歩が複合して, 内耳リンパ環境の変化を鋭敏に捉えることのできる3D-FLAIR (fluid attenuated inversion recovery) が臨床応用可能となり, 従来は画像的な異常を検出できなかった突発性難聴やハント症候群, ムンプス難聴などの多くの患者で異常所見を検出し得るようになった. さらに3D-FLAIRを鼓室内ガドリニウム造影剤投与と組み合わせることによって, 内リンパ水腫を検出することが可能となった. しかし, 本法はガドリニウム造影剤の適応外使用であり, 侵襲性もあるので, 次のステップとして静脈注射での内リンパ腔描出を目指した. まず血液迷路関門の透過性が亢進していると思われる突発性難聴症例を対象に通常量静脈投与4時間後には迷路外リンパ腔が増強され, 前庭において内リンパ腔の認識が造影欠損として可能であることを示した. メニエール病については国内で認可されている最大量である2倍量のガドリニウム造影剤の静脈投与4時間後の3D-FLAIRで蝸牛, 前庭において内リンパ水腫を描出することに成功した. しかし, 静脈投与4時間後撮影は鼓室内ガドリニウム造影剤投与に比べて造影剤の外リンパ移行が不十分なことも多く, さらに薄い濃度の造影剤を検出する方法を検討している. このようにさまざまな内耳MRI研究は, 感音性難聴とめまいにおける画像を使った客観的医療の導入のきっかけとなることを目指して進化している.
原著
  • 森岡 繁文, 坂口 博史, 瀧 正勝, 兵庫 美砂子, 鈴木 敏弘, 久 育男
    2010 年 113 巻 10 号 p. 790-797
    発行日: 2010年
    公開日: 2011/05/28
    ジャーナル フリー
    耳小骨奇形は胎生期の耳小骨形成障害によって生じ, 時に耳介や外耳道の形態異常を伴ったさまざまな病態を示す. 近年の手術技法の進歩により, 耳小骨奇形の多くの症例では手術によって聴力の著明な改善が得られQOLの向上につながっている. しかしながら, 一部には手術による聴力改善が不可能な症例や, 術中には改善を見込むものの聴力改善に至らない, もしくは改善した後に再び悪化する症例も存在する. 今回は過去7年間に当院で手術を行った耳小骨奇形症例27耳の検査所見, 病態, および手術成績等につき検討し, 特に聴力改善不成功もしくは遅発性に悪化した症例の要因について考察する.
  • 仲田 拡人, 柴崎 修, 中嶋 正人, 善浪 弘善, 加瀬 康弘
    2010 年 113 巻 10 号 p. 798-804
    発行日: 2010年
    公開日: 2011/05/28
    ジャーナル フリー
    はじめに: 高IgG4血症に加え, 各種外分泌腺や節外臓器にリンパ球, とりわけIgG4陽性形質細胞浸潤と繊維化を同時性, 異時性に示す疾患群が近年注目されている. しかし, その疾患概念には統一がみられないのが現状である. 今回われわれは, この疾患群のうちにIgG4関連Mikulicz病と考えられた3症例を報告する. 症例: 症例1は61歳, 男性. 顎下腺標本でIgG4陽性形質細胞浸潤を認めた. 症例2は61歳, 男性. 舌下腺標本で確定診断となった. 症例3は57歳, 女性. 口唇腺, 舌下腺標本で確定診断となった. 3症例ともに主訴は口腔乾燥, 両顎下部腫脹であった. 症例1, 2はプレドニゾロン (以下PSL) 20~30mg漸減投与で経過良好である. 結論: 疾患概念や診断基準, 治療法の確立が望まれる. また, 疾患確定のために必要となる生検部位は, 舌下腺腫脹を認める症例では, 舌下腺生検も有用であると考える.
  • 三枝 英人, 山口 智, 中村 毅, 小町 太郎, 小津 龍一朗, 門園 修, 粉川 隆行, 愛野 威一郎, 松岡 智治
    2010 年 113 巻 10 号 p. 805-809
    発行日: 2010年
    公開日: 2011/05/28
    ジャーナル フリー
    高齢発症の重症筋無力症は, 加齢による生理的変化や脳血管障害などの既往のために症状が顕在化し難く, 診断に至るまでの困難さがあると同時に, 既往や合併症のために治療に制限が加わることが多く, 治療にも難渋する.
    症例は84歳女性. 2年前から嚥下困難, 構音障害などの症状が出現. 今回, 誤嚥性肺炎を契機にクリーゼを起こし, 当科へ緊急入院. 入院後, 重症筋無力症と診断された (胸腺腫の合併はない). 人工呼吸器管理と抗コリンエステラーゼ剤投与によりクリーゼから離脱し, 再び自力呼吸, 歩行ができるようになったが, 嚥下・構音障害の改善は得られなかった. 本症例に対しては, 二度の腰椎圧迫骨折の既往を伴う高度の骨粗鬆症のためステロイドが使用できなかった. また, 超高齢であり, 痩せが強く, 免疫予備能の低下が予想されたために免疫抑制剤も使用できなかった. そこで, 輪状咽頭筋切除術および両側の口蓋咽頭側面縫縮術を行ったところ, 常食の経口摂取が可能となり, 構音も著明改善した.
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