副咽頭間隙腫瘍は比較的まれな疾患である. またその解剖学的複雑さや, 腫瘍の組織学的多様性から, 術前診断, 治療法の決定に苦慮することが多い. この間隙には脳神経, 内頸動静脈などの重要な臓器が存在するため, 手術に際しては慎重を要し, 術後合併症の対応に難渋することも少なくない. 今回われわれは, 副咽頭間隙腫瘍症例について, 若干の文献的考察を含めて, その治療方針に関する検討をしたので報告する. 対象は1991年1月から2010年12月までの20年間に, 浜松医科大学耳鼻咽喉科にて副咽頭間隙腫瘍と診断された24症例である. 年齢は6歳から87歳, 平均57.7歳で, 男女別内訳は男性13例, 女性11例であった. 初診時の主症状としては, 頸部腫脹10例, 咽頭腫脹6例などを多く認めた. 病理組織学的内訳は, 多形腺腫7例, 神経鞘腫7例などで多くは良性腫瘍であり, 悪性腫瘍は6例であった. これらのうち, 術前診断に穿刺吸引細胞診を施行したのは9例で, 術前開放生検を2例に施行した. 多形腺腫と診断されたものは3例で, 嚢胞1例, 唾液腺組織1例, 明らかな悪性所見はないが組織型は不明であったものが4例であった. 術式の内訳は, 経頸部法11例, 下顎骨正中離断法3例, 経頸部耳下腺法1例であった. 合併症は3例にホルネル徴候を認めた. 嗄声を4例に認め, First bite syndromeは2例に認めた. 4例でインフォームドコンセントを得た上で, 経過観察をしている.
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