日本耳鼻咽喉科学会会報
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114 巻, 10 号
選択された号の論文の5件中1~5を表示しています
総説
  • 岩崎 聡, 茂木 英明, 工 穣, 宇佐美 真一
    2011 年 114 巻 10 号 p. 801-806
    発行日: 2011年
    公開日: 2011/12/02
    ジャーナル フリー
    既存の補聴器の装用が困難な高音急墜型感音難聴に対し, 言葉の聞き取りが改善できる新たな方法が残存聴力活用型人工内耳 (electric acoustic stimulation: EAS) である. 蝸牛内に電極を挿入し, 電気刺激する装置と外耳道から音響刺激する装置からなり, 高度難聴の中・高音部を人工内耳で, 残聴のある低音部を音響刺激で聞き取るシステムである. 直接的な機械的組織損傷を最小限にするため, 電極の先端がより柔軟になるよう改良が進められ, また手術時に聴力温存の観点からできるだけ蝸牛基底回転の損傷を避けることが重要となる. 正円窓アプローチによる電極挿入法がより蝸牛へ低侵襲であると思われる. 海外の術後聴力温存率は80~100%であり, EAS装用による単音節聴取能の大幅な改善が確認され, その有効性が認められている. 聴力温存成績向上のため, 蝸牛損傷を軽減するためのdrug delivery systemの応用, さらなる電極の改良が必要と思われる. 難聴の原因によっては内耳の脆弱性により聴力の温存が困難な場合や難聴の進行が考えられる. 事前にこれらを予測するためにも難聴遺伝子検査が有効になっていくと思われる.
原著
  • 細川 誠二, 杉山 健一, 岡村 純, 瀧澤 義徳, 高橋 吾郎, 細川 久美子, 三澤 清, 峯田 周幸
    2011 年 114 巻 10 号 p. 807-813
    発行日: 2011年
    公開日: 2011/12/02
    ジャーナル フリー
    副咽頭間隙腫瘍は比較的まれな疾患である. またその解剖学的複雑さや, 腫瘍の組織学的多様性から, 術前診断, 治療法の決定に苦慮することが多い. この間隙には脳神経, 内頸動静脈などの重要な臓器が存在するため, 手術に際しては慎重を要し, 術後合併症の対応に難渋することも少なくない. 今回われわれは, 副咽頭間隙腫瘍症例について, 若干の文献的考察を含めて, その治療方針に関する検討をしたので報告する. 対象は1991年1月から2010年12月までの20年間に, 浜松医科大学耳鼻咽喉科にて副咽頭間隙腫瘍と診断された24症例である. 年齢は6歳から87歳, 平均57.7歳で, 男女別内訳は男性13例, 女性11例であった. 初診時の主症状としては, 頸部腫脹10例, 咽頭腫脹6例などを多く認めた. 病理組織学的内訳は, 多形腺腫7例, 神経鞘腫7例などで多くは良性腫瘍であり, 悪性腫瘍は6例であった. これらのうち, 術前診断に穿刺吸引細胞診を施行したのは9例で, 術前開放生検を2例に施行した. 多形腺腫と診断されたものは3例で, 嚢胞1例, 唾液腺組織1例, 明らかな悪性所見はないが組織型は不明であったものが4例であった. 術式の内訳は, 経頸部法11例, 下顎骨正中離断法3例, 経頸部耳下腺法1例であった. 合併症は3例にホルネル徴候を認めた. 嗄声を4例に認め, First bite syndromeは2例に認めた. 4例でインフォームドコンセントを得た上で, 経過観察をしている.
  • 平位 知久, 福島 典之, 中下 陽介, 片桐 佳明, 久保田 和法, 石橋 卓弥
    2011 年 114 巻 10 号 p. 814-819
    発行日: 2011年
    公開日: 2011/12/02
    ジャーナル フリー
    喉頭悪性リンパ腫はまれな疾患で, 全喉頭悪性腫瘍の約1%にすぎない. 中でも喉頭蓋NK/T細胞リンパ腫の報告は極めてまれである. 今回, 診断に苦慮した喉頭蓋NK/T細胞リンパ腫の1例を経験したので, 若干の文献的考察を加えて報告した. 症例は33歳男性で, 1カ月間継続する咽頭痛を主訴に受診した. 喉頭蓋に発赤を伴う白苔病変を認めた. 原因不明の喉頭炎として加療するが改善せず, 炎症は潰瘍へと進行した. 確定診断に至るまでに3回にわたる生検を繰り返し, 4カ月を要した. NK/T細胞リンパ腫と診断後, DeVIC療法4コース, 放射線療法が施行され, 初期治療効果は寛解であったが早期に再発し, 1年9カ月後, 肺多発転移による呼吸不全にて永眠となった. 本例は, 喉頭蓋NK/T細胞リンパ腫としては2例目の報告である.
  • 児玉 悟, 平野 隆, 鈴木 正志
    2011 年 114 巻 10 号 p. 820-823
    発行日: 2011年
    公開日: 2011/12/02
    ジャーナル フリー
    近年, 内視鏡下の鼻内涙嚢鼻腔吻合術が行われるようになったが, 術者により手技が異なっている. われわれの手術の工夫について報告する.
    鼻堤を基部としたaxillary flapを下方に延長した粘膜弁を作成し, 上顎骨前頭突起と涙骨を削開し, 涙嚢を露出させる. 涙嚢を工の字形になるように, 縦切開と上下に横切開を加え, 前後に翻転する. 開窓部の大きさに合わせて, 粘膜弁をトリミングし, 骨面を被覆し, シリコンシートによるステントを留置する.
    われわれの方法では, 全周性に露出した骨面をすべて被うことができ, 十分な開窓を保つことが可能である. また眼窩側, 涙点側からの操作は不要であり, 耳鼻咽喉科単独で施行可能である.
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