腸管ベーチェット病の主な症状は, 腹痛, 下血, 下痢などである. 病変の好発部位は回盲部末端から盲腸にかけてであり, 打ち抜き型の潰瘍性病変を特徴とし, 食道から直腸にかけて生じ得るが, 単純性潰瘍との異同については議論のあるところである. 臨床症状,内視鏡検査, X 線検査, 診断基準を満たすベーチェット病の有無, などを考慮した改訂腸管べーチェット病診療コンセンサス・ステートメントを用いて診断される.
本稿では人工内耳の最前線の情報を解説した. まず手術の進歩に関しては近年聴力温存手術, すなわち細くしなやかな電極, 経正円窓での電極挿入, 周術期のステロイド投与がほぼルーチン化した. 適応基準については小児が2014年に2度目の改訂を行い, 成人の基準も間もなく改訂の予定であるが, 小児で療育環境重視が強調されたほか, 適応は年齢, 遺伝子, 両側, 聴力などの面で拡大し, 両耳装用も認められるようになった. 戦略的進歩としては, 両耳装用, 一側聾・難聴への適応, 耳鳴抑制効果などが挙げられるが, 若干の解決すべき問題も残っている. その他雑音, 風切り音の軽減やマイクロフォンの指向性の向上などのソフト面の進歩や MRI への対応, 小型化, ワイヤレス, 防水性, などハード面の進歩も多くみられる.
今回われわれは, 初回手術後に上縦隔にリンパ節再発を認めた甲状腺乳頭癌の3症例を経験した. いずれの症例も頸部アプローチでは大血管に至るまで瘢痕組織の処理を避けられず, 安全性を考慮し胸骨切開を選択した. 一般的に腕頭静脈より頭側の病変は頸部アプローチのみで操作が可能とする報告が多いが, 再手術症例や節外浸潤を疑う症例では術操作の安全性から必ずしも賢明とは言えない. 胸骨切開によって, 十分な視野を得ることに加えて, 瘢痕組織や浸潤の疑われる部位をいったん回避し, 尾側の新鮮な部位で大血管を確保することは, その後の操作の安全性の向上をもたらし, 大きな利点と考えられる.
鼻腔, 咽頭など上気道の狭窄は睡眠時無呼吸症候群 (OSAS) の発症に関与することが知られており, 治療方針の決定には狭窄部位の同定が重要である. OSAS に対して口蓋垂軟口蓋咽頭形成術を行った症例に computational fluid dynamics(CFD) を行い, 治療による上気道の気流の変化を検討した.
術前では中咽頭, 声門上部に流速, 陰圧の上昇を認める部位があった. 術後は中咽頭部で流速, 陰圧の低下を認めたが, 声門上部では逆に増加を認めた.
OSAS に対する気流の解析結果が術後の治療効果と関連することが示され, 気流解析によって術後の治療効果を予測できる可能性があると考えられた.
急性副鼻腔炎に伴う眼合併症は, 早期に外科的処置が必要になることのある耳鼻咽喉科救急疾患の一つである.
平成25年から26年までの2年間に, 当科で加療した急性副鼻腔炎から波及した眼合併症症例は5例であった. 症例の内訳は, 眼窩骨膜下膿瘍3例, 不全型海綿静脈洞症候群1例, 視神経炎1例であった. 全症例で手術を施行し, うち4例の視機能は回復したが, 術前視力が手動弁であった1例は改善しなかった.
視力障害残存については, 初診時視力・視野・視神経乳頭所見, および手術までの日数が予後因子であると報告されている1). 視力障害が進行する前に, 適切な診断ならびに治療を行うことが視機能の改善に必要である.