日本耳鼻咽喉科学会会報
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99 巻, 2 号
選択された号の論文の9件中1~9を表示しています
  • 高橋 久昭, 鎌田 信悦, 川端 一嘉, 中溝 宗永, 内田 正興
    1996 年 99 巻 2 号 p. 267-276,347
    発行日: 1996/02/20
    公開日: 2010/10/22
    ジャーナル フリー
    上咽頭癌未治療症例36例に放射線治療後に補助化学療法を施行した. その結果, 放射線単独治療症例53例に比べて生存率の改善が得られた. 特に両側頸部に転移の多発した症例では, 放射線単独治療群では遠隔転移が高頻度にみられ, その治療成績は極めて不良であったのに対して, 補助化学療法施行群の遠隔転移の頻度は少なく, 両群の生存率に統計的有意差を認めた. 今後, 補助化学療法は上咽頭癌の治療, 特に頸部転移多発症例において, 重要な位置を占める治療法となる可能性が示唆された.
  • 武田 憲昭, 肥塚 泉, 土井 勝美, 堀井 新, 丹生 真理子, 西池 季隆, 北原 糺, 久保 武, 荻野 仁
    1996 年 99 巻 2 号 p. 277-285,347
    発行日: 1996/02/20
    公開日: 2010/10/22
    ジャーナル フリー
    両側レルモワイエ症候群の症例1は, 脱水により聴力と前庭動眼反射の利得が改善したが, 眼振とめまい感が出現した. 両側の内耳に内リンパ水腫が存在し, 両側の蝸牛, 前庭機能が同時に変動することが発症のメカニズムであると推定した. 以前に報告した症例3も両側レルモワイエ症候群と考えられた. 一側レルモワイエ症候群の症例2は, バトロキソビン投与により発作が誘発された. バトロキソビンにより血液粘稠度が低下することで右内耳血流障害が急激に改善し, 右聴力は改善し, 前庭代償が破綻しめまいが発症したものと推定した. レルモワイエ症候群には両側性および一側性の2つの発症機序が存在するものと考えられる.
  • 小川 和昭, 江川 雅彦, 廣田 常治, 徳重 栄一郎, 牛飼 雅人, 福田 勝則
    1996 年 99 巻 2 号 p. 286-291,347
    発行日: 1996/02/20
    公開日: 2010/10/22
    ジャーナル フリー
    術前貯血式自己血輸血療法を10名の患者に延べ12回 (1回を1症例とする) 試みた.
    対象は男性9名, 女性1名で45歳から70歳, 全員が頭頸部領域の悪性腫瘍患者で, かつ全例に術前照射及び化学療法を施行している. エリスロポエチン及び鉄剤の投与を原則とした. 貯血開始直前のHg濃度13g/dl以上が5例, それ以下が7例であった. 9例は予定量の貯血 (8例に800ml, 1例に1000ml) に成功したが, 残りの3例はそれぞれ発熱, 下痢及び手術日の変更により予定量の半分である400mlにとどまった. 予定通りの手術が施行された10例の平均出血量は898mlであり, 前例が同種血輸血を回避し得た.
  • 寺田 修久, 浜野 ナナ子, 昼間 清, 今野 昭義, 白鳥 浩二, 石川 和夫, 戸川 清
    1996 年 99 巻 2 号 p. 292-298,347
    発行日: 1996/02/20
    公開日: 2010/10/22
    ジャーナル フリー
    ヒト鼻粘膜から分離した血管内皮細胞を対象として, 好酸球に対する接着能および血管内皮細胞の間隙通過transmigrationに対するヒスタミンの作用について検討を加えた. ヒスタミンで血管内皮細胞を刺激した18時間後において, 10-5Mでは56.4%, 10-4Mでは66.0%と有意な好酸球に対する接着能増加 (危険率5%) が観察された. 抗ELAM-1抗体の前処置により, ヒスタミンによる接着能亢進作用はほぼ完全に抑制された. ヒスタミンは好酸球の内皮細胞間隙通過に影響を与えなかった. ヒスタミンは, 血管への接着の初期段階で重要なELAM-1やP-selectinの発現を増強させ好酸球の浸潤を助長させている可能性が示唆された. 一方, 細胞間隙通過にはあまり関与していないと考えられた.
  • 河田 了, 四ノ宮 隆, 安田 範夫, 竹中 洋, 村上 泰
    1996 年 99 巻 2 号 p. 299-305,349
    発行日: 1996/02/20
    公開日: 2010/10/22
    ジャーナル フリー
    頭頸部癌21例 (喉頭癌5例, 下咽頭癌5例, 中咽頭癌3例, 口腔癌8例), 正常粘膜6例を対象に, 組織中のMMP-2濃度及びIV型コラゲナーゼ活性を測定した. MMP-2濃度は腫瘍の大きさとは無関係であったが, リンパ節転移のある症例ではないものと比較して有意に高い値を示した. 正常組織ではIV型コラゲナーゼ活性はいずれも測定感度以下であったのに対して, MMP-2濃度はリンパ節転移のない癌組織とほぼ同じ濃度であった. MMP-2濃度とIV型コラゲナーゼ活性との間に相関関係を認めなかった. MMP-2濃度を術前に測定することがリンパ節への易転移性の推定や予後の判定に, 重要な参考資料になりうると考えられた.
  • 一條 宏明, 秋田 二朗, 石井 賢治, 宮腰 靖始, 冨永 健, 新川 秀一
    1996 年 99 巻 2 号 p. 306-313,349
    発行日: 1996/02/20
    公開日: 2010/10/22
    ジャーナル フリー
    前庭神経炎26例を検討した結果, 1) 自発眼振持続期間は平均136日であったが個人差が大きかった. 2) 発症年齢と自発眼振持続期間には相関はなかった. 3) 23%の症例に回復眼振を認め, それらの症例は予後良好であった. 4) 温度眼振検査の改善の程度から, A: 患側の前庭機能が正常に回復し治癒する型, B: 左右差はあるものの患側の前庭機能が部分的に改善し前庭代償が完成する型, C: 患側の前庭機能は回復しないまま前庭代償が完成する型の3つに分類可能であった. 5) 温度眼振検査の改善しない例は罹病期間が長い傾向にあった.
  • 山口 健吾, 北原 哲, 佐藤 道哉, 羽生 よう子, 井上 鐵三
    1996 年 99 巻 2 号 p. 314-319,349
    発行日: 1996/02/20
    公開日: 2010/10/22
    ジャーナル フリー
    肝移植児童に対し, 習慣性扁桃炎, 睡眠時無呼吸発作を伴うアデノイド及び口蓋扁桃肥大と滲出性中耳炎の診断にて全身麻酔下に口蓋扁桃摘出術, アデノイド切除術, 鼓膜チュープ挿入術を施行した. 移植後手術に最も適した状態は, 適度な免疫抑制状態にあり移植肝が正常に機能しているときである. 移植後の経過が短いと脈管系の合併症を引き起こしやすいため周術期の過剰な血行動態の変化は避けるべきである. 免疫抑制剤は継続して投与しなければならない. 抗生剤投与は非移植患者と同じでよい. 移植後の習慣性扁桃炎や扁桃肥大に対しての扁桃摘出術は, 移植後の重要な合併症に対しても有効で, 肝移植の成績向上のためにも今後積極的に考慮すべきである.
  • 唐 安洲, 宇良 政治, 山内 昌幸, 野田 寛
    1996 年 99 巻 2 号 p. 320-326,349
    発行日: 1996/02/20
    公開日: 2010/10/22
    ジャーナル フリー
    蝸牛血流 (CoBF) 減少に伴う蝸牛複合活動電位 (CAP) の変化を観察するために, 内耳道神経血管束圧迫法を用いて, 一過性蝸牛虚血モデルを作製した. レーザードップラー血流計を用いて計測したCoBF減少の程度は圧迫により差がみられたが, CoBFが一定量減少するとCAPのN1波は消失する傾向が認められた. N1波消失時のCoBFは圧迫前値の0%ないし70%であり, 必ずしも血流の完全な停止を意味するものではないことが明らかとなった. また, 20分間圧迫群で血流が部分的に残存した群は, 完全に消失した群に比較し, 血流再開後のN1波の回復の程度が良好であった.
  • 吉田 雅文, 青柳 満喜, 牧嶋 和見
    1996 年 99 巻 2 号 p. 327-332,351
    発行日: 1996/02/20
    公開日: 2010/10/22
    ジャーナル フリー
    Spontaneous electrical oscillations (AC potentials) were observed in the cochlea of three guinea pigs without any exposure to noise or drugs. The AC potentials disappeared completely within one minute after the cessation of artificial ventilation, and were suppressed by presenting external tones to the ear. As the frequency of the external tone was displaced toward that of the spontaneous oscillation, the signals were increasingly suppressed. Exposure to intense tone produced residual suppression of the AC potentials for several minutes. The time course of recovery from the suppression appeared to be similar to that in the noise induced temporary threshold shift measured psychoacoustically. From these results, it was concluded that the spontaneous AC potentials in the guinea pig cochlea were generated by the active mechanical vibration system at the area on the basilar membrane where the characteristic frequency corresponded to that of the AC potentials.
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