日本耳鼻咽喉科学会会報
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99 巻, 8 号
選択された号の論文の9件中1~9を表示しています
  • 小山 悟, 飯野 ゆき子, 大蔵 眞一, 加我 君孝, 大平 泰行, 小川 恵弘
    1996 年 99 巻 8 号 p. 1079-1084,1153
    発行日: 1996/08/20
    公開日: 2010/10/22
    ジャーナル フリー
    いわゆる奇形症候群ではしばしば難聴を伴うことが知られている. しかし, 種々の奇形を有するものでも, 既知の奇形症候群に分類されていないものもあり, それらにおける耳科学的評価は不明な点が多い. 今回われわれは重症な内臓奇形を有するものの, 骨系統疾患・染色体異常・先天性代謝異常など特定の先天異常症や奇形症候群には分類されなかった6例11耳の側頭骨病理組織を観察した. その結果, 内耳, 中耳を中心とした外・中胚葉性由来の異常が認められた. 内耳の異常は半規管の形成不全がもっとも多く認められ, 中耳の異常は顔面神経の走行異常が多く認められた. また重症内臓奇形に耳介, 顎口蓋の異常が合併することで, 聴覚, 前庭系の異常を伴う危険性が増加することも推察された.
  • 是永 克実, 牧嶋 和見, 吉田 雅文, 工藤 香児, 樋口 哲
    1996 年 99 巻 8 号 p. 1085-1094,1153
    発行日: 1996/08/20
    公開日: 2010/10/22
    ジャーナル フリー
    正常被験者における垂直性OKN, OKANの上下方向非対称性について研究を行った. 速度蓄積機構は上向き刺激では水平と同様であるが, 下向き刺激では働かないことが分かった. また, この速度蓄積機構の上下方向非対称性により, 高速度刺激ではOKNの上方向有意性が生じると推測された. さらに, 固定視標を固視しつつ視運動刺激を与えると, 刺激終了後に刺激と逆方向に移動する細かい点状の残像が生じ, 緩徐相が刺激と逆向きの後眼振が出現する例がみられた. この後眼振は, 残像を追視させるとより明瞭となった. この事実より, 網膜誤差を入力として逆向きの後眼振を発現する機構が存在すると考えられ, 我々はこれをRAN機構と呼称した.
  • 岡本 茉莉子, 坂倉 淳, 中井 健, 牧本 一男, 高橋 宏明, 加藤 尚美
    1996 年 99 巻 8 号 p. 1095-1103,1153
    発行日: 1996/08/20
    公開日: 2010/10/22
    ジャーナル フリー
    大阪医大耳鼻咽喉科において1991年5月より1993年12月までの2年8カ月の間に行った全麻手術件数は677であり, そのうち輸血件数は37 (自己血輸血症例1例を含む) であった. 輸血症例の多くはPRBC輸血が1000ml以下であり, 大部分の症例が自己血輸血の対象となりうると考えた. 当科では1989~1994年までの6年間に貯血式自己血輸血10症例を行った. 2症例を提示し, Hb値, 網状赤血球, 血清鉄の推移について検討した. 貯血による貧血に鉄剤服用は意義があり, 術前より慢性貧血がある患者には鉄剤+エリスロポエチンの併用が有効であった. 術後貧血があっても輸血を行った症例はなく, 鉄剤の経口投与, または静注を行うと改善した.
  • 篠原 孝之, 暁 清文, 村上 信五, 柳原 尚明
    1996 年 99 巻 8 号 p. 1104-1109,1153
    発行日: 1996/08/20
    公開日: 2010/10/22
    ジャーナル フリー
    blood patch療法は自己血を中耳腔に満たすことで内耳窓〓孔の閉鎖を促進させる外リンパ〓の治療である. モルモット13匹を用い, 外リンパ〓モデルを作製し蝸牛窓破裂後に自己血あるいは市販のフイブリン糊を鼓室内に注入し, 蝸牛窓周囲の組織学的所見を観察した. その結果, 自己血, フイブリン糊のどちらの材料においても注入後は膜欠損部が注入材料に覆われて閉鎖し, 処置後3日目から4日目以降には膜破裂断端部での肉芽の増生により穿孔が閉鎖することがわかった.
  • 伊藤 彰紀, 坂田 英治
    1996 年 99 巻 8 号 p. 1110-1118,1155
    発行日: 1996/08/20
    公開日: 2010/10/22
    ジャーナル フリー
    アルコール依存症者37例に対する神経耳科学的検討を行った. 初回検査時の平均断酒期間は21.4日, 再検査時の平均断酒期間は82.0日であった. 重心動揺検査の結果より小脳前葉と脊髄小脳路の障害が疑われた. 從来から指摘されている体平衡の障害のほかに眼球運動の多彩な障害が認められた. その結果からは前庭小脳を中心とする小脳障害とさらに脳幹障害の存在も疑われた. 約3カ月間の断酒後の再検査時には重心動揺検査の一部と眼球運動検査のすべての項目で改善が認められた. アルコールによる中枢神経障害に対する断酒の効果を, 神経耳科学的検査で他覚的に捕捉することが可能であった.
  • 竹野 幸夫, 浜村 宣宏, 立川 隆治, 夜陣 紘治
    1996 年 99 巻 8 号 p. 1119-1125,1155
    発行日: 1996/08/20
    公開日: 2010/10/22
    ジャーナル フリー
    慢性副鼻腔炎において上皮の増殖動態はどのように変化するかを, PCNAを指標とし, かつ共焦点レーザー顕微鏡を用い定量的に分析した. 対照群では陽性細胞のほとんどが基底細胞であったが, 一方副鼻腔炎群では基底細胞よりむしろ杯細胞・中間細胞における陽性細胞数が基底細胞のそれを大きく上回っており, その密度は平均133.1個/mm2と, 対照群に比較して約10倍の増加が認められた. またPCNA陽性細胞の発現率と, 上皮への炎症細胞の浸潤密度には正の相関関係が認められた. 以上より慢性副鼻腔炎では, 正常とは異なり, むしろ杯細胞・中間細胞が細胞分裂能をもって, 上皮の再生と欠損の補充に寄与していることが示唆された.
  • 榎本 冬樹, 市川 銀一郎, 長岡 功, 山下 辰久
    1996 年 99 巻 8 号 p. 1126-1135,1155
    発行日: 1996/08/20
    公開日: 2010/10/22
    ジャーナル フリー
    滲出性中耳炎に対するエリスロマイシン (EM) の作用機序を解明するためにアラキドン酸代謝産物の経時的変化と, 好中球の接着分子, LセレクチンやMac-1の発現量の変化に対するEMの影響をラット滲出性中耳炎を用いて検討した.
    その結果, EMは, 末梢血好中球の接着分子L-セレクチンをdownregulationさせ, Mac-1のIL8刺激によるup-regulationを抑制した. またEMは, 滲出性中耳炎局所への白血球の浸潤, タンパク滲出ならびに滲出液中のLTB4, C4, PGE2量をLPS刺激後5日目以降に抑制した.
    以上のことから, EMは, 白血球の接着分子の発現量の変化, 中耳局所への白血球の滲出やケミカルメディエーターの産生に影響することにより, 滲出性中耳炎を和らげる可能性が示唆された.
  • 正常例, 慢性副鼻腔炎例の検討
    池田 敦子
    1996 年 99 巻 8 号 p. 1136-1143,1155
    発行日: 1996/08/20
    公開日: 2010/10/22
    ジャーナル フリー
    冠状断CT画像を用いて上顎洞体積の近似値を測定し, 正常症例と両側慢性副鼻腔炎症例の上顎洞体積を比較した. CTで描出された上顎洞の面積をプラニメーターを用いて測定し, これらを積分して体積の近似値を求めた. 平均上顎洞体積は「正常群」: 20.5ml, 「両側慢性副鼻腔炎群」: 17.3mlであった. 各群ともにかなりの個体差を認めたが胎生期の鼻腔側壁形成との関係を考えた. 両群間に有意差を認めたがこの理由として (1) 慢性炎症が原因で上顎洞が小さくなった, (2) 小さな上顎洞が慢性炎症の原因である, (3) 上顎洞が小さいことと慢性炎症両者の原因となる形態学的特徴が存在する, の3つの可能性をあげた.
  • 聴覚失認 (皮質聾)
    加我 君孝
    1996 年 99 巻 8 号 p. 1144-1147
    発行日: 1996/08/20
    公開日: 2010/10/22
    ジャーナル フリー
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