日本耳鼻咽喉科頭頸部外科学会会報
Online ISSN : 2436-5866
Print ISSN : 2436-5793
124 巻, 9 号
選択された号の論文の15件中1~15を表示しています
総説
  • 塚原 清彰
    原稿種別: 総説
    2021 年 124 巻 9 号 p. 1231-1236
    発行日: 2021/09/20
    公開日: 2021/10/01
    ジャーナル フリー

     頸部腫脹を主訴に来院した症例を提示しながら, 悪性疾患を見落とさないためのポイントを述べる. 一つ目は年齢で良悪性を判断しないことである. 甲状腺癌, 上/中咽頭癌など比較的若い年齢層であっても悪性腫瘍の症例がある. 積極的に穿刺細胞診を行うことをお勧めする. 二つ目は口腔咽喉頭をすべて観察することである. 当たり前かつ容易に思えるが, 歯肉, 口腔底, 下咽頭輪状後部など見逃されている部位も少なくない. Modified Killian 法や NBI モードを併用した観察が必要である. 三つめは嚢胞状腫瘤である. 側頸部の嚢胞状腫瘤を側頸嚢胞とすぐに診断するのは危険である. ヒトパピローマウイルス陽性中咽頭癌や甲状腺乳頭癌を鑑別診断とする必要がある. ヒトパピローマウイルス陽性中咽頭癌では穿刺した嚢胞内容液を細胞診に提出しても「悪性」と診断できないことが少なくない. 細胞診の結果を見て「悪性ではない」と判断するのは早計である. 四つ目は反回神経麻痺による気息性嗄声 (症例4) や顔面神経麻痺など神経麻痺症状や早い進行などの臨床経過である. 乳頭癌の未分化癌転化などは腫瘤自覚時点から長期間経過していることも多い.「だいぶ前からありました」との問診に油断しないことが重要である. 五つ目は悪性リンパ腫である. 非特異的ではあるが, 悪性リンパ腫の腫瘍マーカーとして可溶性 IL-2 受容体がある. また, ワルチン腫瘍は悪性リンパ腫の鑑別が必要である. 画像所見などでワルチン腫瘍を疑った場合でも, 一度は穿刺細胞診などをお勧めする. 六つ目は他癌腫の頸部リンパ節転移である. Virchow リンパ節転移が有名であるが, ほかにもさまざまな部位のリンパ節に転移が見られる. 転移リンパ節は原発部位の細胞と類似するため, 穿刺細胞診が重要である. 以上, 画像所見が良性パターンでも, 油断禁物である. 頸部腫脹・腫瘤では積極的に穿刺細胞診を行うことをお勧めする.

  • 林 達哉
    原稿種別: 総説
    2021 年 124 巻 9 号 p. 1237-1241
    発行日: 2021/09/20
    公開日: 2021/10/01
    ジャーナル フリー

     医療分野における AMR 対策の中心は抗菌薬の適正使用であり, その考え方自体は決して目新しいものではなかった. しかし, 言葉が持つ新鮮な響きのおかげで, 現在にいたるまで薬剤耐性対策に対する高い関心が続いている. 多くの上気道感染症を扱う耳鼻咽喉科医には, この領域の専門家集団として AMR 対策の基本的な知識と, 実践で使える力が求められる.

     これを実現するためにはまず, ほかの多くの薬剤と異なる抗菌薬の特性を理解する必要がある. すなわち, 抗菌薬使用は常に耐性菌増加のリスクを持つことを知らなければならない. このリスクを最小化することが将来の患者に対する責任であり, またベネフィット (目の前の患者を速やかに治癒に導く) がリスクを上回らなければ, 抗菌薬を投与すべきではない, というのが抗菌薬治療の基本原則である.

     小児急性中耳炎ガイドラインはこの原則を分かりやすく表現している. 軽症例には抗菌薬を処方せず, 中等症以上での初期治療薬はアモキシシリンである. 治療失敗例に対する治療オプションとして, 第3世代セフェムやキノロン薬も推奨している点は, 目の前の患者を速やかに治癒に導くための必要な措置である. セフェムやキノロンについては多くの誤解も受けたが, 2019年に発表された抗微生物薬適正使用の手引き第二版は, 間接的表現ながらガイドラインの方針を支持しており, 大部分の誤解は解消したと考えている.

     急性鼻副鼻腔炎, 急性扁桃炎についても, 目の前の患者を速やかに治癒に導き, 将来の耐性菌の増加リスクを最小化するという, 急性中耳炎と同様のバランス感覚に優れた感染症診療を実践することが肝要である.

  • 鹿野 真人
    原稿種別: 総説
    2021 年 124 巻 9 号 p. 1242-1250
    発行日: 2021/09/20
    公開日: 2021/10/01
    ジャーナル フリー

     医療技術の進歩とともに寿命が著しく延長した現在, 外科的気道確保術の適応となる症例は高齢者や長期管理を要する症例など多様化し, 従来の気管壁を通過する気管切開術では術中・術後の合併症が危惧されるハイリスク症例が増加している. 喉頭低位, 肥満・短頸などの頸部異常, 気管カニューレ長期留置による気管孔狭窄や気管損傷のハイリスク症例に対して, 意図的に輪状軟骨を鉗除する輪状軟骨切開術は合併症回避の新たな術式の選択肢となる.

     輪状軟骨を鉗除して形成する切開孔は気道到達まで最短であり, 甲状腺の操作がなく緊急時の安全に寄与する. また喉頭低位, 肥満や甲状腺腫脹など頸部異常を有する症例では輪状軟骨の高さは大きな利点である. さらに輪状軟骨の鉗除は気管カニューレとの接触をなくすことで気管孔の肉芽・瘢痕形成やカニューレ抜去された切開孔の狭窄を防ぐ. 輪状軟骨の高さと鉗除は重大な事故となる挿入困難や迷入の根本的な防止策につながる.

     現在の医療環境に合わせた外科的気道確保術の安全には, 患者の状態や気管切開術後の長期管理でのリスクを術前に十分に評価し, より安全な術式を選択することがポイントとなる.

  • 花井 信広
    原稿種別: 総説
    2021 年 124 巻 9 号 p. 1251-1255
    発行日: 2021/09/20
    公開日: 2021/10/01
    ジャーナル フリー

     再発転移頭頸部癌に対する免疫チェックポイント阻害薬として2017年3月にニボルマブ, 2019年12月にペムブロリズマブが承認され, 再発転移頭頸部癌の薬物療法は一変した. 抗 PD-1 抗体であるニボルマブおよびペムブロリズマブは細胞傷害性 T 細胞が癌細胞を攻撃する段階 (エフェクター相) における逃避メカニズムを阻害し, 本来備わっている免疫システムに作用してがんと闘う作用機序を有する.

     再発転移頭頸部癌は再発・病勢進行がプラチナベースの全身化学療法または化学放射線療法の施行後6カ月以内/以降であるかによってプラチナ抵抗性/感受性として区別されるが, プラチナ抵抗性であればニボルマブが標準治療となり, プラチナ感受性であればペムブロリズマブ単独あるいは化学療法との併用療法として用いられる. 再発転移頭頸部癌の臨床試験における生存期間の中央値は時代と共に延長が見られ, 例えば KEYNOTE-048 試験におけるペムブロリズマブと化学療法を併用した全体集団においては生存期間の中央値が13.0カ月にまで達している.

     免疫チェックポイント阻害薬はこれまでの殺細胞性抗がん薬とは副作用のプロファイルも異なる. 特有の免疫関連有害事象が発症することがあるため十分な注意が必要であり, 診療科の垣根を超えた連携体制の構築が必要である. 現在, 免疫チェックポイント阻害薬を用いた数多くの治験が行われており, 再発転移頭頸部癌だけでなく, さまざまな治療の局面における有用性が検証されている. 今後も頭頸部癌の標準治療が目まぐるしく変わる可能性があり, しばらくは目を離すことができない状況が続くと思われる.

  • 藤坂 実千郎
    原稿種別: 総説
    2021 年 124 巻 9 号 p. 1256-1261
    発行日: 2021/09/20
    公開日: 2021/10/01
    ジャーナル フリー

     補聴器は, われわれ耳鼻咽喉科医が最も慣れ親しんだ, 触れる機会の多い人工聴覚機器である.

     難聴者の日常生活の質を向上させるには欠かせないものである. 近年, 認知症の発症リスクに難聴が挙げられたことから, 厚生労働省を中心とした認知症施策推進総合戦略 (新オレンジプラン) にも, 認知症発症の危険因子に難聴が記載された. 従って, われわれ耳鼻咽喉科医が補聴器を中心とした難聴対策にかかわる重要性が増している. そこで本稿は, あらためてわれわれ耳鼻咽喉科医が補聴器の過去, 現在を知り, 難聴対策に十分な役割を果たしていく一助となるように解説を試みた.

     また先人達が目指したように, 技術革新によってもたらされる, まだ見ぬ未来の補聴器への展望も述べてみたい.

  • ―新生児期 (新生児聴覚スクリーニング, 先天性サイトメガロウイルス感染症含む)―
    神田 幸彦, 吉田 晴郎, 佐藤 智生, 小路永 聡美, 木原 千春, 北岡 杏子, 熊井 良彦, 髙橋 晴雄
    原稿種別: 総説
    2019 年 124 巻 9 号 p. 1262-1269
    発行日: 2019/09/20
    公開日: 2021/10/01
    ジャーナル フリー

     2003年10月以来, 長崎県では全県新生児聴覚スクリーニング (以下新スク) が導入開始された. 政治, 行政, 医療, 教育関係者等, 多職種の方々と連携しながら長崎県の全県新スクは18年間継続してきている. 新スク実施率は年ごとの変動はあるが公費補助を長年受けて95~100%である. 新スクのシステムと長崎県の新生児期先天性サイトメガロウイルス感染症診断・治療システムを述べる. 先天性サイトメガロウイルス感染症は3週間以内に診断し, できるだけ早期に1カ月以内に治療を開始するシステムが産科・耳鼻咽喉科・小児科の連携のもと続けられている. そのほか, 長崎県新スクにおける妊婦への啓発と出産後のケア, 難聴診断後のご家族への精神的ケアとペアレントトレーニングなどを解説し, 新スク pass 後の難聴発生・進行の予防や豊かな言葉が育つための説明なども記した. また, 新スクのない時期と, 新スク開始後の時期と比較し, 診断, 介入, 補聴器開始時期は, いずれも新スク開始によって有意に早くなっており, 人工内耳装用児の研究では新スクを受けた児の通常学校進学率は84.3%で, 新スクを受けた児が新スクを受けていない児よりも2.9倍通常学校に進学しやすい結果であった. 先天性サイトメガロウイルス感染児においても通常学校への進学は92%と高い結果であった. 手術年ごとの人工内耳装用児の通常学校就学率を比較すると, 新スクが始まった2003年の6年後の2009年頃から通常学校就学率は約80~90%と増大した. また, このような新スクの進歩と診断技術の進歩, そして補聴器の性能アップなどにより一側難聴でも補聴器を装用するケースが近来増加しており, 当施設の一側難聴への現時点での指針を記した. さらに当施設の体制やシステム構築の歴史的背景を述べた.

  • 東野 哲也
    原稿種別: 総説
    2021 年 124 巻 9 号 p. 1270-1275
    発行日: 2021/09/20
    公開日: 2021/10/01
    ジャーナル フリー

     耳鼻咽喉科医が育んできた伝音再建手術と補聴器を組み合わせても満足できない難聴者が人工聴覚器医療の候補者となる. 1994年に始まった人工内耳に加え, 2013年に骨導インプラント, 2016年には人工中耳が保険収載されたことで, 難聴治療法の選択が複雑化した. このように, さまざまな難聴病態に対する人工聴覚器の活用が進む今日, もはや医師だけの体制で聴力改善手術を継続的に展開することは不可能になった. 当院では聴覚に特化した言語聴覚士の所属する難聴支援センターが院内の中央診療部門として独立し, 耳鼻咽喉科と密に連携して難聴児の聴能・言語訓練から高齢者の聴覚リハビリテーションまで幅広い業務を行っている. 本センターが言語聴覚士により運営されていることで, 聴覚支援学校を含む教育関係者, 福祉, 行政担当者との接点として重要な機能を担い, 地域社会への啓発活動も積極的に展開されている. また, わが国では数少ない聴覚を専門とする言語聴覚士育成の場としての役割は大きく, 本センターからローテートした言語聴覚士が県内外の関連病院耳鼻咽喉科で補聴器や人工聴覚器診療を担うことで地域の耳鼻咽喉科医療にも貢献している. 今後, 補聴器相談医の良きパートナーとして, 耳鼻咽喉科診療所にも聴覚を専門にする言語聴覚士の活躍の場が増えていくことを期待したい.

原著
  • 藤田 彰, 柴 裕子, 志水 賢一郎, 藤木 暢也
    原稿種別: 原著
    2021 年 124 巻 9 号 p. 1276-1282
    発行日: 2021/09/20
    公開日: 2021/10/01
    ジャーナル フリー

     在宅療養中の嚥下障害は, 普段の食事が嚥下しにくくなった程度の段階から, 誤嚥性肺炎等で入院加療ののち, 経口摂取不可とされて経管栄養のみを行っている段階までさまざまな状態が見られる. 地域の診療所にはこれらさまざまな状態の嚥下障害患者が受診するが, これらの診療所での診療の包括的な実態の報告は渉猟する限りでは認められない. その観点から在宅療養中の嚥下障害患者の特徴と耳鼻咽喉科診療所における嚥下障害診療の特色を明らかにすることを目的とし, 本研究を行った.

     平成20年4月~令和元年9月までの11年間に, 神戸市内の耳鼻咽喉科診療所4カ所を受診した嚥下障害患者, 計361例を対象とした. 患者の食事摂取の在り方, 代替栄養法, 原因疾患, 肺炎の有無, 紹介元, 嚥下リハビリテーション, 介護認定等の諸点につき, その相互関係を含めて考察を行った.

     結果, 361例中137例 (38%) では従来からの食事 (いわゆる普通食) は摂取できていない状況にあり, このうち51例では胃瘻造設がなされていた. そして在宅医療関連職種から紹介を受けての受診が166例と半数近くに認められた. 原因疾患としては認知症, パーキンソン症候群, 脳血管障害の3疾患が多く認められた. また在宅でのリハビリテーション (以下リハビリ) については訪問看護の中で言語聴覚士によって行われている例が多かった.

     在宅療養においては看護・介護が入院中に比して手薄である. 耳鼻咽喉科医の役割は, 各段階の嚥下障害において適切な食事内容と食事の仕方を, 主に外来診療で指導していくことになる. また地域医療関連職種との協働が必要であり, 特にリハビリについては在宅では介護保険の活用が必要となる場合が多い.

  • 新川 智佳子, 渡邊 千尋, 金子 昌行, 大澤 悠, 那須 隆
    原稿種別: 原著
    2021 年 124 巻 9 号 p. 1283-1290
    発行日: 2021/09/20
    公開日: 2021/10/01
    ジャーナル フリー

     顎下腺唾石症に対する治療は, 唾液腺管内視鏡の出現により, 従来行われてきた顎下腺摘出術や口内法に加え, 唾液腺管内視鏡下摘出術, 内視鏡補助下口内法という選択肢が増え, 治療選択の幅が広がった. 唾液腺管内視鏡は外切開を必要としないのが大きな利点であるが, 術中に唾石摘出に難渋する症例も経験したことから, どのような症例にどの術式で対応すべきか判断に迷うことがある. そこで本検討では, 顎下腺唾石症症例の詳細を検討することで, 当科における顎下腺唾石症例の治療方針を立てることを目的とした. 検討の結果, 12歳以下の症例の83.3%が内視鏡単独で唾石を摘出できており, 年齢による制限を設ける必要はないと考えられた. 手術時間, 麻酔時間は口内法が最も短く, 口内法の利点と考えられた. 内視鏡下摘出術を予定した症例の検討では, 唾石の最小径が 3~4mm 以下であれば内視鏡単独で摘出できる可能性が高いと考えられた. 唾石の位置については, ワルトン管内であれば内視鏡で摘出できる可能性が高いが, 顎下腺移行部に唾石がある場合には, 唾石の陥頓やワルトン管の狭窄により内視鏡補助下口内法や顎下腺摘出術に移行せざるを得ない可能性が高いことが分かった. 外切開が必要となる原因として, 年齢や唾石の大きさ, 病悩期間, 急性感染の有無について検討を行ったが, 一定の傾向は得られなかった. 上記結果を考慮し, 当科における顎下腺唾石症の術式選択を報告した.

  • 三谷 健二, 鎌倉 綾, 板倉 志織, 浅井 拓也, 河村 理恵, 山下 麻紀, 山本 圭介, 佐々木 崇博, 岩橋 利彦
    原稿種別: 原著
    2021 年 124 巻 9 号 p. 1291-1301
    発行日: 2021/09/20
    公開日: 2021/10/01
    ジャーナル フリー

     深頸部膿瘍は重篤な感染症であり, 発症後急速に降下性壊死性縦隔炎に進行し死に至る危険性があり迅速かつ適切な対応が必要である. 治療の原則は適切な抗菌治療と並行して, 外切開により膿瘍を開放,排膿し洗浄を行うことである. 創部は開放創とするべきとされているが, 術後処置の苦痛, 二次感染, 瘢痕治癒による醜形など問題点も多い. 今回われわれは, 市立豊中病院にて過去11年に受診した深頸部膿瘍患者20例 (男性16名女性4名) に対し, 外切開および一般頭頸部手術で用いられる閉鎖式陰圧ドレーンによる術後管理を行い, その患者背景, 重症度, 治療結果につき検討した. 患者の平均年齢は54.5歳, 糖尿病合併例は4例, 舌骨下に進展した症例が16例, そのうち縦隔進展例は3例であった. 喉頭浮腫は10例に認め, 気管切開例は5例であった. 合併症として再手術を3例, 術後嚥下障害を1例で認めたが, 全例軽快退院した. ドレーンの留置期間は平均7.3日, 全例の平均入院期間は15.7日, 縦隔進展例を除くと12.9日であり, 過去報告例と比べ早期に退院可能であった. 閉鎖式陰圧ドレーンは術後感染予防に優れ, 創傷治癒を促進する効果があり, 感染創である深頸部膿瘍にも有用である可能性が示唆された. また苦痛を伴う術後のガーゼ交換や洗浄が不要なこと, 整容面に配慮した皮膚切開が可能になることなど患者術後の QOL 向上にも貢献できると考えられた.

  • 増村 千佐子, 是松 瑞樹, 寺田 理沙, 天野 雄太, 福田 雅俊, 小川 真, 猪原 秀典
    原稿種別: 原著
    2021 年 124 巻 9 号 p. 1302-1308
    発行日: 2021/09/20
    公開日: 2021/10/01
    ジャーナル フリー

     穿刺吸引細胞診のまれな合併症の1つに血腫形成があり, その発生リスクの1つとして抗血栓療法がある. 現在さまざまな作用機序をもつ抗血栓薬が存在し, また薬剤によって周術期の休薬期間が異なる. 近年の抗血栓療法の周術期の取り扱いについてガイドラインでは, 出血性合併症よりも抗血栓薬の休薬による血栓性合併症の発生の方を重視して休薬を不要としているが, 気道に接近した頸部領域の手技にもこのガイドラインに準拠してよいか, 疑問が残る.

     今回, われわれは新世代の抗凝固薬内服中の61歳男性に甲状腺穿刺吸引細胞診を施行し, 数時間後に頸部血腫を形成し, 外切開による血腫除去術を施行した症例を経験したので, 文献的考察を加えて報告する.

専攻医トレーニング講座
専門医スキルアップ講座
第122回 日本耳鼻咽喉科学会総会・学術講演会を終えて
ANL Secondary Publication
feedback
Top