日本耳鼻咽喉科頭頸部外科学会会報
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125 巻, 7 号
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総説
  • 喉頭科学専門医師として医師少数地域の専門研修基幹病院統括責任者として
    小林 俊樹
    原稿種別: 総説
    2022 年 125 巻 7 号 p. 1053-1056
    発行日: 2022/07/20
    公開日: 2022/08/11
    ジャーナル フリー

     数多くの機能を扱う耳鼻咽喉科領域において, 喉頭科学は音声・嚥下という人間の「楽しみ」にかかわる機能を扱う領域である. これらの機能は加齢に伴い低下するため, 超高齢社会を迎えつつある国内において, 今後治療ニーズがさらに増していくことが予想されるが, 他領域と比較して専門医師は少ないのが現状である. また2017年に開始された新専門医制度に伴い, 各研修基幹病院では喉頭領域を含めた全領域の臨床だけでなく, プライマリーな耳鼻咽喉科疾患に対応できるよう, 地域医療を含めた複数環境での経験を提供できるようなプログラム編成が求められている.

     喉頭科学専門医師であり, 大学の医局長を経験した後, 地域基幹病院の診療部長として勤務している自らの経験を踏まえて「次世代育成」について述べる.

  • 児嶋 剛, 長谷部 孝毅, 藤村 真太郎, 堀 龍介
    原稿種別: 総説
    2022 年 125 巻 7 号 p. 1057-1061
    発行日: 2022/07/20
    公開日: 2022/08/11
    ジャーナル フリー

     われわれは音声のデータを含んだ診療情報について人工知能 (AI) を活用し音声障害の評価を行うシステムを開発・臨床応用することを目指している. 声の性質の評価には知覚に基づく要因も多く含まれるので物理的な要素としてだけでは測定・表現が難しいが, AI は今までにない独創的な問題解決手法を提案できる可能性を秘めている.

     これまでにわれわれは AI を用い, 聴覚心理的評価法の一つである GRBAS 尺度を主観的ではなく客観的に求める手法を報告している. 一つは TensorFlow という Google の提供する機械学習に用いるライブラリを用いたモデルで, 病的音声データを GRBAS 尺度に基づき客観的かつ効果的に分類できることを示した. もう一つは Apple の提供する Create ML を用いた機械学習モデルを使用したもので, リアルタイムに GRBAS 尺度を評価することができる iPhone アプリ「GRBASZero」に組み込み無料で公開している. これらの AI モデルは異なる手法で作られているがその性能に差は認めなかった. 現在は TensorFlow でのモデルをもとに病的音声から病気診断を行うことに取り組んでいる.

     客観的な音声評価に AI は有用な手法でありそれを臨床に応用できる状況も整ってきているものの, 実際に活用するにはまだまだ物足りないのが現状である. いかに精度の高い AI をつくるのかというのは大事ではあるが, 同時に AI をどのように臨床に活用するのか・生活に取り入れていくのかを考える必要がある. 今後は AI による音声評価が健診や救急, 地域医療等において評価・診断支援に活用されていくことが予想される. 日常生活でも音声情報を活用できる場面はたくさんあるため, 身近なデバイスで音声障害を正確に評価することが予防医学につながる可能性があり, 将来的にも意義のある研究であり発展していく分野であると考えている.

  • 塚原 清彰
    原稿種別: 総説
    2022 年 125 巻 7 号 p. 1062-1066
    発行日: 2022/07/20
    公開日: 2022/08/11
    ジャーナル フリー

     本稿では頭頸部癌に対して免疫療法を行う際に知っておくべきエッセンスを述べる. 癌治療はエビデンスに則って行うことが重要である. 化学放射線療法に免疫チェックポイント阻害薬 (ICI) を併用することの有用性を検討した JAVELIN Head and Neck 100 試験 (JHN100) では, 予想に反して全生存期間 (OS), 無増悪生存期間 (PFS) とも ICI の上乗せ効果が認められなかった. JHN100 の結果からも分かるように, 理論や経験に基づいた推測は裏切られることが少なくないためである. 一方, ICI 後の化学療法が OS の延長に寄与することが分かってきた. そして,「PFS2=OS」との考えから, ICI が再発転移頭頸部癌の第一選択となってきている. エビデンスに基づいた ICI 投与では, プラチナ抵抗性・感受性かが重要である. そのため, プラチナ製剤の最終投与後「6カ月経過前」に画像検査を行うことが重要となる. プラチナ抵抗性では CheckMate141 試験結果よりニボルマブが選択肢となる. プラチナ未使用/感受性では KEYNOTE048 試験結果によりペムブロリズマブが中心となる. 東京医科大学では CPS≧20 ではペムブロリズマブ単剤投与, 20>CPS≧1 ではペムブロリズマブとシスプラチン/カルボプラチンと 5-FU の併用投与を行っている. 光免疫療法では抗体ともに癌細胞へ運ばれた水溶性 IR700 が, 690nm の近赤外線と反応し, 非水溶性に変化することで癌細胞の細胞膜を損傷する. 2021年8月の時点で, 頭頸部癌の保険適応は放射線治療などの標準治療が終了し, 切除困難かつ頸動脈などの大血管に浸潤のない症例で, 最大4回まで行うことができる. 適応, 費用対効果などを含め, 解決すべき課題も多いが, 新たな治療選択肢として注目を浴びている. 今や免疫療法は頭頸部癌治療になくてはならない存在であり, その知識と経験は頭頸部外科医にとって必要不可欠なものである.

  • 小川 令
    原稿種別: 総説
    2022 年 125 巻 7 号 p. 1067-1070
    発行日: 2022/07/20
    公開日: 2022/08/11
    ジャーナル フリー

     広義の形成外科には, 狭義の「形成外科」・「再建外科」・「美容外科」が含まれる. 患者が病院を訪れる理由が異なる3科が, 広義の形成外科としてまとまって診療を行っているのは, マイナスからプラスまで整容・機能の獲得を目的とする「理念」そして「手術手技」が共通だからである. 形成外科は紀元前600年ごろに活躍したとされるインドの医師ススルタによる鼻再建から始まると考えられている. 形成外科は耳鼻科と共に発展してきたといっても過言ではない. 1900年代の半ばから発達したマイクロサージャリーの技術は, その後の形成外科の急速な発展に寄与した. 現在では免疫抑制剤を使用した上で他人から顔を移植することもできるようになった. しかし形成外科の究極の目標は, 失われた臓器や組織を再生させる再生医療であろう. ただし iPS 細胞が開発された現在でも, 体外で臓器や組織を再生するのは困難である. その理由の1つが, われわれが地球上で生活している際に意識せずに影響を受けている物理的刺激である. このメカニズムを研究するメカノバイオロジーの理解は, 創傷治癒や再生医療に必須であり, 物理的刺激をコントロールする医療をメカノセラピーという. すでに臨床では, 物理的刺激を加えて創傷治癒を促進する器機や, 物理的刺激をコントロールして目立たない傷あとにするための手術が行われている. このようなメカノセラピーを担っているのも形成外科医であり, これからの創傷治療や再生医療への貢献が期待される.

  • 湯田 厚司
    原稿種別: 総説
    2022 年 125 巻 7 号 p. 1071-1077
    発行日: 2022/07/20
    公開日: 2022/08/11
    ジャーナル フリー

     舌下免疫療法 (SLIT) は発売から7年が経過し SLIT 治療数は増加している. SLIT の小児適用は日本のみで, ダニ SLIT が世界で初めて認可された治療先進国である. 小児 SLIT は, 成人と同スケジュールで行い, 効果も安全性も成人と差がない. スギ SLIT は現在シダキュアとなり, 抗原量増加で副反応が若干増えたが, 効果も増強したと考える. 重篤な副反応はまれで, 著者の1,800例の自験例の中で, 夜間の緊急連絡例は患児の弟が誤薬した1回のみであった. 事後報告として喘息既往歴のある低年齢児が疲れた状態での服用により喘息発作を誘発した例がある. スギ花粉とダニの併用 SLIT (Dual SLIT) の報告は世界でこれまでなかったが, 筆者の自験例53例と多施設共同前向き109例の検討で安全な併用が確かめられ, 当院では200例を超える Dual SLIT を行っている. スギ花粉 SLIT でアレルゲン感作数と効果を検討し, 単独感作と多重感作例で効果に差がなかった. 自験例でスギ花粉 SLIT 終了後の10年間に効果持続した例があり, 長期成績への大規模調査が期待される. SLIT 課題もまだあり, 当院では全国医療機関と共同研究を行い, ヒノキ花粉 SLIT 実現への AMED 研究も始まった.

  • 菊地 正弘
    原稿種別: 総説
    2022 年 125 巻 7 号 p. 1078-1086
    発行日: 2022/07/20
    公開日: 2022/08/11
    ジャーナル フリー

     前頭蓋底から鼻副鼻腔に進展する悪性腫瘍に対する標準的術式は, 長らく前頭開頭と Weber Ferguson アプローチを組み合わせた craniofacial surgery であったが, 2000年代に入って下垂体腫瘍をはじめとした良性前頭蓋底手術に内視鏡が使用されるようになり, その適応は病理組織型の範疇を超え, 前頭蓋底悪性腫瘍にまで広がっていった. 内視鏡下経鼻前頭蓋底悪性腫瘍手術は, 嗅神経芽細胞腫に対して広く行われており, 近年の報告では, 低侵襲かつ機能的な上に外切開手術と同等以上の治療成績が得られている. 内視鏡下経鼻前頭蓋底手術では, 術野を拡大し明瞭な術野を得ることが可能であるため, 外切開手術に比べてマージンスタディが行いやすい利点がある. 内視鏡単独手術による摘出が不可能な局所進行前頭蓋低悪性腫瘍に対しても, 内視鏡手術を外切開手術に併用することで手術の根治性が高まることが期待されている. 高解像度の内視鏡の出現, 高回転ドリリングシステム, 止血デバイス, 術中ナビゲーションシステムなどの手術支援システムのさらなる発展により, 前頭蓋底悪性腫瘍に対する内視鏡下経鼻手術は, より安全性の高い手術として, 今後さらに普及していくと思われる. 本稿では, 内視鏡下経鼻前頭蓋底手術の適応と基本手技について紹介する.

  • 河野 道宏
    原稿種別: 総説
    2022 年 125 巻 7 号 p. 1087-1091
    発行日: 2022/07/20
    公開日: 2022/08/11
    ジャーナル フリー

     聴神経腫瘍の診断の遅れが問題視されている. 年間発症率が10万人に1人と低いことから, 一側性感音難聴の患者の診療において聴神経腫瘍へ疑いの目が向けられにくく, 初発症状から腫瘍の発見までに平均で数年かかることが報告されている. 診断の遅れに加担するもう一つの要素として, 一側性急性感音難聴が「突発性難聴」と診断され, 聴神経腫瘍が除外されないまま治療が終了するケースが非常に多いことが挙げられる.「突発性難聴」は腫瘍や感染・血管障害などの原因を除外してつけられる診断名であり, 突発的に発症する感音難聴の中に少なからず聴神経腫瘍が隠れているという事実は, 腫瘍の治療を担当する側で多くの症例で詳細な現病歴をとり続けてはじめて認識できることである. 一般的に「腫瘍が原因であれば難聴は徐々に生じたり進行する」と考えられがちであるが, 実際のところは, 筆者の聴神経腫瘍シリーズで半数以上において突発的な難聴や耳鳴のエピソードが見られている.「聴神経腫瘍はしばしば急性の難聴や耳鳴で発症する」ことは, すでに一部の耳鼻咽喉科医には既知の知識であるが, この事実を初診を担当する多くの耳鼻咽喉科医に啓発していかない限り, 診断の遅れが解消されることはない. 手術する側が持っている情報を開示し, 耳鼻咽喉科医の診療の参考に供したい.

原著
  • 岡本 康秀, 小渕 千絵, 中市 健志, 森本 隆司, 神崎 晶, 小川 郁
    原稿種別: 原著
    2022 年 125 巻 7 号 p. 1092-1103
    発行日: 2022/07/20
    公開日: 2022/08/11
    ジャーナル フリー

     日常生活において, 複数人数での会話, 周囲に雑音がある中での会話, 電話での会話などで聞き取りが困難である場合, 難聴の自覚をもって耳鼻咽喉科を受診する. しかし聴覚検査で正常と診断される例では, 本人の聞こえの感じ方と検査結果に解離が見られ, 特にこのような聞こえの困難を自覚する例では聴覚情報処理障害が疑われる. しかし明確な診断基準がないためその診断には苦慮する. 今回そのような聞き取り困難例に対して聴覚心理・認知的検査の側面と背景要因の側面から検討を行った.

     多くの聴覚心理検査がある中で今回, 両耳分離聴検査, 早口音声聴取検査, 方向感機能検査, 雑音下音声聴取検査である HINT-J が聞き取り困難の訴えを捉える有効な検査であることが分かった. 特に方向感機能検査や HINT-J は簡便な検査でありながらカクテルパーティー効果等実際の聞き取り困難さを評価できた.

     一方,認知的側面では聴覚的注意検査や聴覚的記銘検査によって,注意機能やワーキングメモリが聞き取りに極めて密接に関係することが分かった.

     また, 背景要因としての ASD や ADHD 傾向のチェックも重要で, 潜在的なグレーゾーンを含めて聴覚に影響のあることを認識し, ほかの業種と連携しサポートも検討していく必要がある.

  • 鈴木 智陽, 梅﨑 俊郎, 井口 貴史, 松原 尚子, 小出 彩佳, 澤津橋 基広
    原稿種別: 原著
    2022 年 125 巻 7 号 p. 1104-1109
    発行日: 2022/07/20
    公開日: 2022/08/11
    ジャーナル フリー

     全身麻酔下手術において, 気管内挿管は日常的に行われているが, 施行医の技量の問題や喉頭展開困難などにより, 挿管操作時に喉頭および気管粘膜の損傷が生じることがある. また, 挿管チューブの不適合や過剰なカフ圧により後部声門や声門下の粘膜に壊死を来し, 抜管時点では多少の出血以外問題はないものの, 緩徐に狭窄し, 結果として呼吸困難に至る例もある. 当院でそのような例を比較的短期間に3例経験し, いずれも良好な臨床経過をたどったので, 症例毎の術前診断と外科的治療法の選択の重要性について報告する. また, 医原性の上気道狭窄としての本疾患の病態および適切な診断・治療の重要性について, 若干の文献的考察を交えて提示する.

  • 稲木 香苗, 佐々木 俊一, 大久保 啓介, 菅野 雄紀, 利國 桂太郎, 岡田 峻史, 南 隆二, 捨田利 慧, 須田 悟史, 小澤 宏之
    原稿種別: 原著
    2022 年 125 巻 7 号 p. 1110-1116
    発行日: 2022/07/20
    公開日: 2022/08/11
    ジャーナル フリー

     誤嚥防止手術はカニューレフリーを目的として永久気管孔を造設する術式が多いが, 人工呼吸器管理が必要な症例ではカフ付き気管カニューレの装着が必要となる. 気管カニューレは気管切開孔への装着を目的に設計されているため永久気管孔の形状と形が合わない場合が多い. われわれは輪状軟骨を温存することで気管切開孔の形態を残す新たな誤嚥防止手術「輪状軟骨温存型喉頭摘出術」を考案し3症例に行った. 本術式における永久気管孔の曲率半径を CT 矢状断で計測したところ, 本術式は喉頭全摘出術よりも気管カニューレの値に近似していた. 輪状軟骨温存型喉頭摘出術は気管カニューレ装着が必要な患者の誤嚥防止手術として有用と考えられる.

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