腸管気腫症 (Pneumatosis intestinalis: PI) は腸管の粘膜下や漿膜下に多数の含気性小嚢胞を形成する病態である. PI は近年, 頭頸部癌の薬物治療例でも報告が散見される. 当院にて, 頭頸部癌治療例と関連して PI を発症した症例を複数経験したため報告する. 2014年4月~2023年12月に名古屋市立大学病院で頭頸部癌に対して薬物療法中に PI と診断された症例を対象とした. 9症例が PI と診断され, 年齢中央値は69歳, 原発部位は下咽頭4例, 中咽頭3例, 口腔1例, 上顎洞1例であった. 発見の契機は, 腹痛が4例, 偶発的な発見が6例であった. 実施された頭頸部癌治療の内訳は, 化学放射線療法5例 (シスプラチン: 4例, セツキシマブ: 1例), 薬物療法4例 (セツキシマブ+パクリタキセル: 2例, シスプラチン+5-フルオロウラシル: 1例, セツキシマブ+シスプラチン+5-フルオロウラシル: 1例) であった. PI に対する治療は, 絶飲食+抗菌薬投与が5例で, 2例は絶飲食のみ, 抗菌薬投与が1例, 無治療が1例であった. 経口摂取・経管栄養は中央値7日 (範囲: 3~14日) で再開可能であり, 全例で外科的治療を要さずに改善した. PI はまれな疾患であるが, 薬物療法を実施している症例, 絶食期間が長期化している症例, 経鼻胃管や胃瘻などの栄養介入を行っている症例などでは注意が必要である. 重篤な病態に至る可能性がある有害事象の1つとして念頭に置く必要がある.
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