日本耳鼻咽喉科頭頸部外科学会会報
Online ISSN : 2436-5866
Print ISSN : 2436-5793
129 巻, 1 号
選択された号の論文の10件中1~10を表示しています
総会講演
  • 工 穣
    2026 年129 巻1 号 p. 1-10
    発行日: 2026/01/20
    公開日: 2026/02/07
    ジャーナル フリー

     感音難聴は乳児から高齢者まで広く影響を及ぼす主要な疾患であり, その多くは遺伝的背景に基づくことが明らかになってきた. 近年のアデノ随伴ウイルス (AAV) ベクター技術や内耳への投与法の進歩により, 疾患の根本原因にアプローチする内耳遺伝子治療が現実的な治療選択肢となりつつある. 特に OTOF 遺伝子病的バリアントに対する臨床試験では, 聴性脳幹反応閾値の改善が報告され, 国際的に大きな注目を集めている. また GJB2 遺伝子を標的とした研究も国内外で進展しており, 非ヒト霊長類モデルでの検証を経て臨床応用が期待される. 内耳標的細胞への送達効率, 免疫応答の制御, 倫理的配慮などの課題は残るものの, 本治療は補聴器や人工内耳といった従来の聴覚補償デバイスとは一線を画す根本的治療法として期待される. 今後, 遺伝子診断と連携した個別化医療の進展により, 感音難聴治療は新たな時代を迎えるだろう.

原著
  • 佐藤 文彦, 千年 俊一, 深堀 光緒子, 栗田 卓, 末吉 慎太郎, 梅野 博仁
    2026 年129 巻1 号 p. 11-18
    発行日: 2026/01/20
    公開日: 2026/02/07
    ジャーナル フリー

     本研究では, 一側声帯麻痺に対する甲状軟骨形成術Ⅰ型 (thyroplasty type I: TPI) 単独施行例における披裂軟骨の受動運動 (passive gliding movement: PGM) が術後音声に与える影響を検討した. 2017~2022年までに TPI 単独を受けた8例を対象とした. PGM の有無に基づいて2群に分け, 喉頭内視鏡および音声検査結果を比較した. PGM あり群では術後も声帯突起間間隙や後部声門間隙が残存し, 音声検査の改善は限定的であった. 一方, PGM なし群では全ての症例で音声検査が明確に改善していた. また PGM あり症例において, TPI 単独と披裂軟骨内転術 (arytenoid adduction: AA) 併用の治療効果を術中に検証した. この症例では, TPI のみでは PGM が残存し音声改善が不十分であったが, AA を追加することで PGM が抑制され, より音声改善が得られた. PGM は, 麻痺側声帯が健側からの接触によって受動的に外上方へ移動する運動であり, TPI 単独では補正困難である. よって PGM が存在する症例では, AA の併用が術後音声の改善に有効と考えられる. 本研究の結果から, 術式選択の判断基準として PGM の有無を加えることで, より効果的な音声改善と患者の QOL 向上が期待される.

  • 浅井 淨二, 岩城 翔, 川北 大介, 的場 拓磨, 髙野 学, 蓑原 潔, 柘植 博之, 塚本 康二, 菊地 世界, 嘉味田 朝太, 岩﨑 ...
    2026 年129 巻1 号 p. 19-25
    発行日: 2026/01/20
    公開日: 2026/02/07
    ジャーナル フリー

     腸管気腫症 (Pneumatosis intestinalis: PI) は腸管の粘膜下や漿膜下に多数の含気性小嚢胞を形成する病態である. PI は近年, 頭頸部癌の薬物治療例でも報告が散見される. 当院にて, 頭頸部癌治療例と関連して PI を発症した症例を複数経験したため報告する. 2014年4月~2023年12月に名古屋市立大学病院で頭頸部癌に対して薬物療法中に PI と診断された症例を対象とした. 9症例が PI と診断され, 年齢中央値は69歳, 原発部位は下咽頭4例, 中咽頭3例, 口腔1例, 上顎洞1例であった. 発見の契機は, 腹痛が4例, 偶発的な発見が6例であった. 実施された頭頸部癌治療の内訳は, 化学放射線療法5例 (シスプラチン: 4例, セツキシマブ: 1例), 薬物療法4例 (セツキシマブ+パクリタキセル: 2例, シスプラチン+5-フルオロウラシル: 1例, セツキシマブ+シスプラチン+5-フルオロウラシル: 1例) であった. PI に対する治療は, 絶飲食+抗菌薬投与が5例で, 2例は絶飲食のみ, 抗菌薬投与が1例, 無治療が1例であった. 経口摂取・経管栄養は中央値7日 (範囲: 3~14日) で再開可能であり, 全例で外科的治療を要さずに改善した. PI はまれな疾患であるが, 薬物療法を実施している症例, 絶食期間が長期化している症例, 経鼻胃管や胃瘻などの栄養介入を行っている症例などでは注意が必要である. 重篤な病態に至る可能性がある有害事象の1つとして念頭に置く必要がある.

  • 榊 和哉, 田畑 貴久
    2026 年129 巻1 号 p. 26-30
    発行日: 2026/01/20
    公開日: 2026/02/07
    ジャーナル フリー

     建設現場にて防塵装置不良かつマスク未着用で作業中, コンクリート粉塵を短時間に高濃度曝露した27歳男性が急性喉頭蓋炎を発症した1例を報告する. 受診時には著明な咽頭痛と呼吸困難を認め, 喉頭内視鏡検査では高度の喉頭蓋浮腫を確認し, 緊急気管切開術を施行した. ステロイドと抗菌薬投与により速やかに症状は改善した. 本症例はコンクリート粉塵曝露という発症起点から短期間で喉頭症状が出現したことにより, 化学性刺激による非感染性喉頭蓋炎が強く示唆された. コンクリート粉塵による急性喉頭蓋炎の報告は極めてまれであり, コンクリート粉塵の曝露が急性喉頭蓋炎の発症の一因となることを, 本症例を通じて報告する.

専門医スキルアップ講座
ANL Secondary Publication
feedback
Top