日本耳鼻咽喉科頭頸部外科学会会報
Online ISSN : 2436-5866
Print ISSN : 2436-5793
129 巻, 2 号
選択された号の論文の13件中1~13を表示しています
総会講演
  • 呉 明美
    2026 年129 巻2 号 p. 63-67
    発行日: 2026/02/20
    公開日: 2026/03/01
    ジャーナル フリー

     真性咽喉頭異常感症は「のどになにかがひっかかっている感じ」を患者は訴えるが, 検査上は異常がなく, 治療に難渋することが多い. 西洋医学的にはヒステリー球と表現し, 抗不安薬や抗うつ薬が奏効する場合がある. 一方で漢方医学では「梅核気」や「咽中炙臠」と呼び, 気鬱によって引き起こされると考えられ, 定石は半夏厚朴湯である. また, 半夏厚朴湯の合剤である茯苓飲合半夏厚朴湯や柴朴湯が有効であった報告も多い. 次の一手としては, 咽喉頭に気鬱を引き起こす気逆, さらにこの気逆を引き起こしている原因を考える. 瘀血による気逆であれば, 桂枝茯苓丸や桃核承気湯, 瘀血と肝気鬱結があれば加味逍遙散を用いる. 水滞による気逆であれば苓桂朮甘湯, 四肢のむくみがひどい場合は防己黄耆湯を用いる. パニック障害のような症状があれば苓桂朮甘湯と呉茱萸湯を併用して『肘後方』奔豚湯の方意として用いるとよい. 肝気鬱結がメインであれば柴胡加竜骨牡蛎湯, 柴朴湯, 加味帰脾湯など柴胡が配合されている方剤を用いる. 胃寒による気逆であれば呉茱萸湯, 腹痛, 腹満, 腹部の緊張が強い場合は桂枝加芍薬湯が有効なことがある. 以上のように使用する漢方薬は多岐にわたるため, 患者一人ひとりの状態に応じた処方が必要となる (随証治療).

  • 伏木 宏彰
    2026 年129 巻2 号 p. 68-75
    発行日: 2026/02/20
    公開日: 2026/03/01
    ジャーナル フリー

     慢性期めまい患者の転倒リスクに関するわれわれの研究において, 頭部回転を伴う歩行での評価では75歳以上の患者の70.8%が転倒リスクありと判定された. 比較的容易な歩行での評価でも25.0%が転倒リスクありと判定された. 心理面からの転倒リスク評価と歩行による転倒リスク評価との間で結果に乖離が見られ, 高齢のめまい患者は身体能力を過大評価している可能性が示唆された. 慢性期めまい患者のサルコペニア併存率は地域居住者の約2倍, 前庭障害患者のフレイルの併存率は地域居住者の約2.5倍であった. めまい・前庭障害患者では前庭機能低下によるバランス・歩行の不安定さに加えて, 歩行速度の低下, めまいによる日常生活のつらさ, 活動量の低下, 不安・抑うつによるフレイルの悪循環が相まって, 転倒リスクが高まり骨折や要介護に移行し健康寿命が脅かされることが明らかとなった.

     前庭リハビリテーションガイドライン2024年版では, 前庭リハビリテーションは一側末梢前庭障害患者による慢性期のめまい症状, バランスや歩行障害の改善に効果があり, 行うことを強く推奨している. 前庭障害の早期発見と前庭リハビリテーションの早期介入が前庭障害患者の健康寿命延伸の鍵となる. 課題として, 一般市民への理解促進, 診療体制の充実, 保険制度の整備を進める必要がある.

総説
  • ―宮崎県における耳鼻咽喉科医へのアンケートから―
    松浦 宏司, 竹尾 輝久, 坪井 康浩, 高橋 邦行
    2026 年129 巻2 号 p. 76-81
    発行日: 2026/02/20
    公開日: 2026/03/01
    ジャーナル フリー

     地方における耳鼻咽喉科学校健診ならびに学校医の現状と課題を把握するために, 宮崎県内の耳鼻咽喉科医にアンケート調査を行った. 学校健診業務に携わっている耳鼻咽喉科医50名のうち, 39名から回答があった. 耳鼻咽喉科として10年以上, 最長では56年を経験している医師が現役で学校医を受け持っており, 担当校数は平均6.5校で, 医師の高齢化と学校数の多さによる負担の現状が明らかとなった. 全員健診を行っている医師は57.5%で, 重点健診は37.5%で行われていた. 学校健診の業務のみ行っている医師が89.7%, 学校行事や学校保健委員会に参加している医師は10.3%であった. 学校医と言いつつも, ほぼ学校健診のみの業務しかできないこと, また学校健診自体も全学年の健診が困難なため重点健診を行っている医師が少なくないことが分かった. 学校医としての満足度や報酬への満足度, また将来の業務継続への意向では, それぞれ約40%が肯定的で, 約20%が否定的, 約40%がどちらでもない, という結果であった. 学校医としてのやりがいを感じて耳鼻咽喉科医としての務めは果たそうという意向が感じられたが, 医師の高齢化や偏在化のために個々の負担が大きくなってきている実態がある. 学校保健法で求められている学校医のあり方と, 耳鼻咽喉科医が感じる学校医の実態に乖離が生じており, 医師会や行政を含めた制度維持のための議論が必要と思われた.

  • 世良 武大, 平位 知久, 呉 奎真, 小川 結衣, 松元 聡一郎, 升賀 智子, 和田 直覚, 五月女 有華
    2026 年129 巻2 号 p. 82-88
    発行日: 2026/02/20
    公開日: 2026/03/01
    ジャーナル フリー

     内視鏡下鼻副鼻腔手術 (ESS) において麻酔導入時にトラネキサム酸 (TXA) を静脈内へ投与することで, 術野の視認性に与える影響および推定出血量の変化について検討した. 県立広島病院耳鼻咽喉科・頭頸部外科で ESS を施行した15歳以上の両側慢性鼻副鼻腔炎100例を手術の施行時期別に TXA 投与群50例 (2023年1月から2024年10月の間に執刀した症例) と TXA 非投与群50例 (2020年11月から2022年12月の間に執刀した症例) の2群に分けた. 視認性の評価に際しては, 医師3名が患者背景を知らされていない状況下で前篩骨洞内操作中の手術動画を観察し, Boezaart scale (B. scale) を用いて判定した. その結果, B. scale は TXA 投与群が2.3 (1.8~3.0), TXA 非投与群が3.0 (2.4~3.7) であり, TXA 投与群の方が術野の視認性は有意に良好であった (P<0.01). 特に B. scale が3点以上であった症例の割合は TXA 投与群 (42%) よりも TXA 非投与群 (74%) の方が有意に高かった (P<0.01). 推定出血量は TXA 投与群が20 (20~30) mL, TXA 非投与群が28 (20~30) mL であり, 両群間で有意差を認めなかった.

     以上より, ESS における麻酔導入時に TXA を静脈内投与することで術野の視認性が向上する可能性が示唆された.

原著
  • 鈴木 憧夢, 若杉 亮, 志田 洋次郎, 高嶋 沙緒里, 大橋 瑠子, 堀井 新
    2026 年129 巻2 号 p. 89-94
    発行日: 2026/02/20
    公開日: 2026/03/01
    ジャーナル フリー

     症例は17歳男性. 右鼻腔内腫瘤を認め, 画像精査で髄膜脳瘤が疑われ根治手術を施行した. 右汎副鼻腔を開放後, Draf IIb にて右 frontal beak を削除し, 腫瘤を切除した. 再建は大腿筋膜2層と, 中隔後鼻動脈を栄養血管とする右有茎鼻中隔粘膜弁を用いた. 有茎鼻中隔粘膜弁は, 上鼻甲介を温存しかつ嗅粘膜の被覆を避けるために, 上鼻道を経由させ, 欠損部を被覆した. 術後1年6カ月が経過したが, 再発所見や髄液漏, 嗅覚低下を認めていない. 有茎鼻中隔粘膜弁を用いた前頭蓋底再建では, 嗅覚への影響を最小限にするため, 経上鼻道的に再建を行うことも考慮すべきである.

  • 黒野 祐一
    2026 年129 巻2 号 p. 95-99
    発行日: 2026/02/20
    公開日: 2026/03/01
    ジャーナル フリー

     顎関節症は耳痛を伴うことが多い疾患であるが, 本症を念頭において診察しないと見過ごされることがある. そこで, 耳痛を主訴に受診した顎関節症症例をまとめ, 本症の診断における留意点について検討した. その結果, 対象となった205例のうち約38%の症例で初診時に顎関節症が見落とされ, 急性中耳炎や外耳炎などと診断されていた. 多くの症例に歯列不正を認め, 本症の特徴であるトリガーポイントは外側翼突筋や顎関節に認めることが多かった. また, 耳閉感や咽頭痛を伴う症例も散見された. したがって, 耳所見と耳痛の経過や強さとに乖離があるとき, 耳痛とともに耳閉感や咽頭痛を訴えるときは本症を疑う必要があると考えられた.

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