游禽類に屬する家鴨が水中の食餌を求めんとして頭部を水中に沒入する期間は呼吸を營ます, 然るに頭部の水中に沒入せざる場合に於ても體位特に頭位の變化のみによりても亦無呼吸を惹起す. Huxley は之を體位性無呼吸 (Postural apnoea) と稱へ迷路反射と頸反射とが之に關與すといふ. 一方耳科學的方面に於て前庭迷路の興奮が身體の諸臟器に各種の反射性現象を招來する幾多の事實が輓近漸く闡明せらるゝに至れるも, 迷路と呼吸或は頸反射と呼吸作用との關係に就ての研究は未だ極めて乏し. 本研究は家鴨を用ひて一般體位變化に當りて生する無呼吸に就き詳檢し前庭迷路並に頸反射の呼吸作用に及ぼす影響を詳細に闡明せんとす. 正常動物, 迷路若くは脊髓後根曠置動物, 去腦若くは諸種藥物投與動物に就て, 頭位, 躯幹位, 並に頸部の身體に對する位置を種々變化せしめて呼吸状態を觀察す.
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