耳鼻咽喉科臨床

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音響傳導並ニ感覺上ノ問題ニ對シテハ今日尚論爭未解決ノ事項ガ存在スル. 音響感覺ニ關スルヘルムホルツ氏共鳴説並ニエーワルド氏音像説ハ何レモ淋巴液壓衝動ノ觀念ニ缺クル處アリ而シテ音響傳導問題ニ對シテハジーベンマン氏學派ノ氣導説トウイツトマーク氏學派ノ骨導説トガ對立シ各其ノ主張ヲ異ニスル處アルハ周知ノ事實デアル.
然ルニ音響傳導ニ關スル此等兩學説ハ何レモ實驗病理組織並ニ組織生理學的方面ヨリ論議セラレタルモノニシテ未ダ音響傳導ノ實際問題ニ就テ吟味サレ論ジラレタル處ガ無イ.
余ハ音響傳導並ニ感覺上ノ問題ニ對シ聽器ノ診斷學ニ於テ音叉並ニ單絃琴ヲ使用シウエーベル氏骨導檢査法ニヨリ音響偏倚並ニ不偏倚現象, 音響聽取増強並ニ不増強現象ノ立場ヨリ觀察シ, ウイツトマーク並ニジーベンマン學派對立ノ空氣傳導及骨傳導ニ關スル問題ヲ究明シ, 同時ニ音響感覺ニ關スルヘルムホルツ並ニエーワルド説ヲ實際問題ニ照合シ檢討セントスル.
文献的研究ニ於テハ主トシテ音響傳導並ニ感覺問題ニ對スル先人業績ニ就テ史的觀察ヲ試ミ而シテ音響傳導ニ關スルウイツトマーク氏緊張學説ニ對シテハ特ニ精細ニ檢討セリ. 蓋シ其ノ學説ノ核心タルベキ液體壓衝動即チ静水學的壓作用並ニ動水學的壓作用ガコルチ氏膜, コルチ氏器官並ニ神經纎維ニ對シ如何ニ作用スルカウイツトマーク氏ノ理論ヲ闡明センガタメデアル. 且又其學説ハ以下第2篇ニ於ケル實驗成績ノ檢討並ニ説明ニ緊要ナルヲ以テナリ.
實驗的研究篇ニ於テハ最初ニ開放耳側ニ於ケル外聽道ヨリスル音響ノ流出並ニ閉塞耳側ニ於ケル音響潴溜ニ關シテ論ジ, 次デ音叉ト單絃琴トノ關係ニ移リ特ニ單絃琴ニ於テハ與ヘラレタル振動数 (c⁵) ト滑架固定トノ關係ヲ説キ, 實驗ニ當リテハウエーベル氏骨導檢査法ニ基キ振動數ヲ異ニスル各種音叉並ニストルイケン・シエーフエル氏單絃琴ニヨリ音響偏倚並ニ不偏倚現象, 音響聽取増強並ニ不増強現象ヲ觀察シ次ノ如キ實驗成績ヲ擧ゲ得タリ.
1) 強度一定ノ振動力ヲ有スルC_-2, C_-1, C, c, c¹, c², c³音叉 (第1群) ヲ使用シテ生理的ウエーベル偏倚ヲ檢スル時, 音響偏倚並ニ音響増強聽取ノ度合ハC (64) ヲ基準トシテC, c, c¹, c², c³音叉列ニ關スル限リ振動數ノ増加ニ逆比例シテ漸減シ, C_-2, C_-1, C音叉列ニ關スル限リ生理的ウエーベル偏倚並ニ音響聽取増強ノ度合ハ振動數ノ減少ト比例シテ漸減スル. 2) c⁴, c⁵音叉, c⁵單絃琴 (第2群) ヲ以テ生理的ウエーベル偏倚ヲ觀察スルトキ, 偏倚ハ何レモ不確實トナル. 尚c⁵音叉音トc⁵單絃琴音 (シエーフエル氏法横振動) トヲ使用シテ生理的ウエーベル偏倚ヲ檢スルトキ, 何レノ場合ニ於テモ偏倚現象ヲーニシ, 此事實ハc⁵音叉音, c⁵單絃琴音ノ音響傳導路ニ逕庭ナキコトヲ推知セシメル. 3) ストルイケン氏法縱振動ヲ以テc⁶, c⁷ (第3群) ヲ檢スルニ其振動力ノ強サ如何ニ拘ラズ生理的ウエーベル偏倚並ニ音響増強聽取ハ出現シ來ラズ.
實驗成績ノ批判並ニ理論篇ニ於テハ外聽道氣柱共鳴説, 中耳腔氣層共鳴説, 傳音連鎖共鳴説ニ立脚シ. 1) 第1群 (C_-2, C_-1, C, c, c¹, c², c³) 音叉音ヲ使用シテ生理的ウエーベル偏倚ヲ檢スル際, C, c, c¹, c², c³音叉音使用時ニハ偏倚ノ強サガ理論的豫想ニ反シ何故振動數ノ増加ト逆比例シテ漸減シ來ルカ其理由ヲ述ベ, 更ニC_-2, C_-1, C音叉列ヲ使用スル時生理的ウエーベル偏倚ノ強サガ振動數ノ減少ト比例スル事實ノ理由ヲ述ブ. 即チ使用セル音叉列ニ於テ振動振幅ノ大イサ, 鳴響持續時間ノ長短ノ相違並ニ最低可聽値ノ差違ニ之ヲ歸ス. 2) 第2群 (c⁴, c⁵音叉, c⁵單絃琴) ヲ使用シテ生理的ウエーベル偏倚ヲ觀察スル際, 偏倚ガ不確實トナル事實ニ對シテハ其ノ因ヲ i) 外聽道軟骨部閉塞ノ側ニ於テ外聽道潴溜音ノ一部ガ, アル前提認容ノ下ニ於テハ正圓窓附近ニ於テ純骨導音ト略完全ニ干渉ノタメ打消サレ得ル事ト, ii) 傳音連鎖ニヨル微弱共鳴ト, iii) 傳音連鎖共鳴音振幅ガ中耳腔氣層傳導音ノ夫ニ比シテ總壓力 (Gesamtdruck) ガ異常ニ大ナル事トニ之ヲ求メ, 3) 第3群 (c⁶, c⁷單絃琴) ニアリテハストルイケン氏法縱振動ニヨリテ生理的ウエーベル偏倚並ニ音響増強聽取ノ出現シ來ラザル理由ハc⁶及c⁷ガ兩者共ニ純粹骨傳導ノミニヨル結果ナルコトヲ論ジ, 實驗病理組織學的根據ニ立脚セルウイツトマーク氏ノ純粹骨傳導存立説ニ對シ, 音響傳導殊ニ直接骨導ニ關スル實驗成績及ビ理論物理的見地ヨリシテ其説ニ賛意

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